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名無しさん@秘密の花園
日常(漫画・アニメ)で百合萌え

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日常(漫画・アニメ)で百合萌え
172 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/04(土) 19:00:48.04 ID:rCa7G2R+
水上麻衣が相生祐子の危険性に気がついたのは、何かと鋭い彼女にしては珍しくごく最近になってからの事だった。
その兆候は麻衣がゆっこと出会ってから、実際のところ度々見られた筈だったのだが、麻衣はその尽くを看過してしまっていた。
そしてごく最近、ついにゆっこの危険性が目に見える形を持って現れ始めた時でさえ、麻衣はしばらくの間、その事に気付くことすら出来ずにいたのだ。
だが、それもある面ではやむを得ない事なのかも知れない。
ゆっこが麻衣に与える衝撃はいつも強力無比で、麻衣はいつだって何とか自分を保つだけで精一杯だったのだから。

麻衣がゆっこによる痛烈な打撃に一番最初に襲われたのは、ある日の放課後の校舎屋上での事だった。
「……ゆっこ…好きなの……」
その日その時刻、麻衣はゆっこに告白した。
大好きだと、愛していると、恋人になって欲しいと。
当然、予想もしなかったその言葉にゆっこは大パニック、顔を真赤にしてしどろもどろになり、それでもようやく麻衣の言葉に応えてくれた。
「………うん、いいよ。……麻衣ちゃんなら……いい……」
いつもの元気はどこへやら、ぽつりぽつり、途切れがちな言葉で放たれたゆっこの精一杯の答えに麻衣はこくりと肯いた。
顔から湯気でも出しそうなくらい、恥ずかしそうにしているゆっこの姿に、くすり、微笑んだ。
麻衣だってこの告白の為にどれほど悩み、どれほど緊張したか分からないけれど、
こんなにまっすぐにこちらの気持ちに向きあって、心も体もぜんぶぶつけるみたいに全力で応えてくれた今のゆっこを見ていると、
この気持を告げる事が出来て良かったと、しみじみとそう思えた。
そんな時、麻衣の思考の中でむくりと頭をもたげたのは、いつもの彼女らしい悪戯心。
未だに頭の中の整理がついていない様子のゆっこにもう一押し何か仕掛けて、ゆっこの可愛い反応を見てみたい。
そんな事を思いついた。
「………………」
そして、麻衣は無言のまま一歩、また一歩とゆっこの方に近づき……。
「ゆっこ……」
俯き気味なゆっこに合わせて、少し背中をかがめて、恋人として最初のキスをもらってしまおう、なんて考えていた。
しかし、麻衣がその行動に移るよりも早く……
「麻衣ちゃん………っ!!!」
ほとんど体当たりのようにぶつかってきたゆっこに、強く強く抱きしめられて、そんな企みなど一瞬で消し飛ばされてしまった。
「麻衣ちゃんっ!…好きっ!」
いくら屋上とはいえ、誰が見たり聞いたりしているかも分からないというのに、直球ストレートのゆっこの言葉は辺りに響き渡り、
その言葉の破壊力と、自分を包み込む腕の暖かさ、そこに込められた情熱に、麻衣は呆気無く行動不能に陥った。
「…私も好きっ!!大好きだよ……麻衣ちゃんっ!!!」
不意打ちの衝撃にホワイトアウトした麻衣の意識に流れこんでくるあまりにまっすぐに過ぎるその言葉達。
いかな麻衣といえども、想い人からのこの熱烈な愛情表現に抗う術はなく………
「ゆっこ……」
「麻衣ちゃん……」
結局、その日、二人初めてのキスを交わした事はかろうじて覚えているのだが、その前後の記憶は麻衣の中でもはっきりとしないままである。

その後も、ゆっこの恋人として過ごす日々の中で同じような事態に麻衣は度々遭遇した。
仏像についての本を読んでいた麻衣の背中に、いつのまにやらゆっこがおぶさるように寄りかかって、肩口から同じページを覗き込んでいた事もあった。
昼食時、自分のお弁当のおかずを至極当然のように、箸でつまんで麻衣の口元まで持ってきて「あ〜ん」なんて言われた事もあった。
不意打ちのハグは既に三桁を大きく超えて、そこから流されるまま、どちらともなくキスを交わす事もしばしば。
「好き」と言われた回数を正確にカウントしたら、計数途中に自分の頭の方がオーバーヒートしてしまう自信がある。

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173 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/04(土) 19:01:50.40 ID:rCa7G2R+
………麻衣を戸惑わせる、ゆっこの愛情表現とその危険性。
キーポイントとなるのは、「不意打ち」と「ストレートな表現」の二つに尽きるだろう。
基本的に、ゆっこは非常にシャイで、麻衣の側からスキンシップを行った場合はたやすく耳まで真っ赤になってしまう。
キスなど求めれば、言葉はしどろもどろ、動きはガチガチ、すっかり麻衣のなすがままになってしまうのであるが………。
しかし、ゆっこはもう一つの側面を持っていた。
即決即断、考えるより先に動き出してしまう、素直で直情的な彼女らしい一面。
しかし、これが全ての原因でもあった。
ゆっこはその直情径行故に、麻衣に対する「好き」という感情が高まれば、それが大きなものであれ小さなものであれ、彼女自身が意識するよりも早く行動してしまうのだ。
抱きつくのも、愛の言葉を告げるのも、キスをするのだって、ゆっこの胸に火が灯った次の瞬間には即実行。
これまで様々なボケや悪戯でゆっこを振り回してきた麻衣が、今度はゆっこに振り回される番だった。

という訳で、麻衣は目下、ゆっこによる不意打ち対策に頭を悩ませている最中だった。
(何とかしなくちゃ…私が主導権を取り戻さなきゃ………)
確かに、ゆっこの示す屈託の無い愛情を一身に受けるのはとてもとても心地良い。
しかし、麻衣だって受け手にばかり回るのは嫌なのだ。
そもそも告白だって麻衣の方からだったというのに。
麻衣の中にはゆっこに伝えたい気持ちが山ほどある。
それをぶつけるには、このままゆっこに流されるだけではダメなのだ。

さて、ちょうどその日、天気予報は降水確率ゼロパーセントの快晴を請け合っていたのだが、
午後の授業を受けている辺りから雲行きが怪しくなり、放課後には前方の視界が怪しくなるほどの土砂降りに天候は急変していた。
「うわあ、どうしよ…傘持ってきてないよ」
生徒用玄関で途方に暮れるゆっこは雨具の類を持って来ていなかった。
置き傘なんかもなし。
そんなゆっこの背後から、麻衣は近づいて行って
「ゆっこ、ちょっと待ってて……」
鞄の中から、いつも携帯している折りたたみ傘を出して、ゆっこの前で広げてみせた。
いわゆる一つの相合傘、これは麻衣にとってチャンスだった。
「でも、これ折りたたみ傘で小さいから、肩とか凄く濡れちゃうと思う。だから、ゆっこ……」
同じ傘の下に入ったゆっこと麻衣。
麻衣はそこでさりげなくゆっこの肩に手を回して
「しっかりくっついて帰ろう、ゆっこ……」
「う、うん…わかったよ、麻衣ちゃん……」

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174 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/04(土) 19:02:50.98 ID:rCa7G2R+
果たして麻衣の目論見は的中し、肩を抱き寄せられるゆっこはすっかり赤面して、麻衣に促されるまま雨の道を歩き始めた。
当然というべきか、やはり麻衣の思った通り、小さな折りたたみ傘では麻衣とゆっこを滝のように降り注ぐ雨から完全に守る事は出来ず、
二人の制服や鞄はそこかしこがずぶ濡れになっていった。
雨に濡れて冷えていく二人の体、だけどそれが逆に、麻衣とゆっこにお互いの体温を意識させる。
「すごい雨だね。ゆっこ……」
「う、うん……本当、麻衣ちゃんの傘があって助かったよ……」
「うん、私も傘があって、本当に良かったと思う。だって、ほら、ゆっことこんなにぴったりひっついていられるんだもの……」
「あうう……麻衣ちゃん………」
この雨の帰り道の途上、二人のやり取りの主導権は完全に麻衣のものになっていた。
すっかり赤くなってもじもじとしているゆっこの姿に、麻衣は小さく微笑む。
やっぱり、こんな風に照れてるゆっこは可愛い。
このままゆっこと色んな事を話しながら、雨の日の帰り道を存分に楽しもう。
そして、最後に「愛してる」、そう耳元で囁いて、ぎゅっと抱きしめてキスをしてあげよう。
その時のゆっこも、きっととびきり可愛いに違いない。
だが、その時である。
「……えっ!?…いけない…傘が……!」
横殴りの雨と共に吹き荒れた凄まじい風に、麻衣の折りたたみ傘が捕まった。
雨のせいで傘の柄を握る手が濡れていた麻衣は、うっかりそのまま手を滑らせて、傘を攫われてしまった。
傘はそのまま風に乗って飛ばされて、運悪く勢い良く水の流れる深い側溝に落ちてしまう。
「ま、麻衣ちゃんの傘が……っ!!!」
ゆっこも慌てて追いすがるが、傘はそのまま側溝を流れる泥水に乗ってどこかへ行ってしまった。
「…………………」
一瞬の出来事に、呆然と立ち尽くす麻衣とゆっこ。
その間にも土砂降りの雨は二人をみるみる内に濡らしてゆく。
二人が歩いていた一角はちょうど周囲のコンビニからもかなりの距離があり、今から代わりの傘を買う事も出来ない。
もはや、麻衣の目論見も何もあったものではない。
二人はこれからずぶ濡れのまま駅まで走るしかないのだ。

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175 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/04(土) 19:03:29.28 ID:rCa7G2R+
「ごめん、ゆっこ……私がと傘をはなしちゃったから………」
少し落ち込んだ様子の声で、麻衣はゆっこに謝った。
しかし、ゆっこはそんな麻衣に向けてゆっくり首を横に振り、いつもの笑顔を浮かべて
「何言ってるの、麻衣ちゃん。麻衣ちゃんが謝る必要なんてないよ。少なくとも、麻衣ちゃんのお陰でここまで雨に濡れずに来られたんだし……それにさ」
言ってから、ゆっこは麻衣の手を取ると、
「………麻衣ちゃんの傘が飛ばされちゃったばかりなのに、こんな事言うの変だけど………雨でびしょ濡れの麻衣ちゃんも…その…可愛いかな、なんて」
「えっ?」
照れくさそうに頭をぽりぽりとかいてから、ゆっこはそう言った。
「水もしたたる……ってヤツかな?私なんかがずぶ濡れになっても、雨降りの野良犬みたいになっちゃうけど、麻衣ちゃんに触れるとただの雨粒まで綺麗に見えるよ」
それを言うならゆっこだって、雨に濡れた髪の毛や肌の上を流れ落ちて行く雫がとても綺麗で、麻衣はそう言おうとしたのだけれど、それは出来なかった。
麻衣の体はゆっこの手に引かれて、いつの間にかゆっこの腕の中に抱きしめられていたからだ。
「それに……ちょっとだけ、こういうのにも憧れてたんだ。土砂降りの雨の中で、ずぶ濡れになるのも気にしないで、大好きな人と抱きしめあうの………」
「ゆ、ゆっこ………」
「麻衣ちゃん、大好き…………」
いつの間にやらいつもの如く、麻衣はゆっこの、ストレートに胸の奥まで斬り込んでくるあの言葉に心を射抜かれて、ゆっこに応えるように彼女の背中を抱きしめていた。
水に濡れた夏の制服はぴったり肌に張り付いて、そのまま抱きしめあうと二人の体温がさっきよりもずっと熱く鮮烈に伝わってくる気がした。
もうこうなってしまっては、麻衣に勝ち目はない。
「私も、ゆっこの事、好きだよ……」
「うん、麻衣ちゃん!!」
凍える雨の中、これ以上無く温かな腕の中で麻衣は心中僅かにため息をつきながらも、はっきりとゆっこにそう応えた。
結局、こうなってしまうんだ。
やっぱり、ゆっこには敵わない。
こんな事されたら流されちゃうのも仕方がない。
だって、私はこんなにゆっこが好きなんだから、愛してるんだから。

そのまま、雨降りの中で麻衣とゆっこは随分と長い間、抱きしめ合ったり、キスをしたりもした。
だけど、長雨にうたれたというのに、二人は風邪ひとつひかなかった。
それはきっと、体を凍えさせる雨よりも、もっとずっと暖かいものが抱き合う二人の中にあったからなのだろう。




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