トップページ > レズ・百合萌え > 2011年06月01日 > e6svxd7O

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嵐の使者と、時の子供 2/4 ◆2GQkBO2xQE
嵐の使者と、時の子供 3/4 ◆2GQkBO2xQE
Child in Time 4/4 ◆2GQkBO2xQE
Stomrbringer Coming 1/1 ◆2GQkBO2xQE
名無しさん@秘密の花園
ゼリービーンズ 1/3 ◆2GQkBO2xQE
ゼリービーンズ 2/3 ◆2GQkBO2xQE
ゼリービーンズ 3/3 ◆2GQkBO2xQE
魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 23

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魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 23
350 :嵐の使者と、時の子供 2/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 00:00:38.61 ID:e6svxd7O
「いい言葉だね。でも、聖書の言葉じゃないな」
「相田みつをよ」
「なんだか、急に安っぽく思えてきた」
 杏子は背中を揺らしてくすくすと笑った。
「何故かしらね」
「ありふれてるだろ」
「言えてるわね」
 私も笑う。ベッドランプだけが照らす薄暗い部屋の中に、さざめくような二つの笑い声。
 そう。一つではなく、二つ。誰かがいるからこそ、私は笑える。
 その事実が、例えどれだけ虚しくても私は嬉しい。
 髪を梳く指先に引っかかりを覚えて、私はそれを指先で優しく解きほぐしていった。

「あんたは、綺麗なままでいろよ」
 私のつま先を撫でる杏子の指。そこできらりと光る銀色の指輪。魂の形。
 その光が濁ることは、私達にとって死を意味する。
 こんな安らいだ暗闇の中ですら、私の心を突き刺す、冷徹なその輝き。
「じゃあ、貴方も綺麗なままでいて」
 どうか、貴方を信じさせて欲しい。
 貴方の力。美しさ。それを信じることこそが、私の救いとなってくれるのなら。
 私は例え死の淵にあってでも、どこまでも貴方を信じていける。
 故さえあれば、どこまでも。地獄の果てまで共に征く。
「まあ努力するよ。……努力するさ。その前に――――取りあえず、もう一回風呂に入っておくか」
 杏子はタオルを乱暴に洗面器の中に放り込むと、私の体を抱え上げた。
 ふわりと体が浮き上がる感触と共に、杏子の体温が私の全身を包み込む。
 冷え性な私にとっては熱いとすら感じる、その、子どものように高い体温。
 ふと、まどかを思い出した。

「まさか、冗談でしょう?」
 私を抱え上げて、ゆっくりを立ち上がるその行為。その意味。考えるまでもなくわかってしまう。
「裸の付き合いってのも乙なもんだ」
「聞こえなかったの?冗談でしょうって言ったのよ」
「なら冗談だと思ってみろよ。こんなの大したことじゃあない」
 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
 一緒にお風呂に入るだけ。ちょっと体を流し合うだけ。
 さっきまでの自分たちは、それとほとんど変わらないことをしていたはずだ。
 だけど、風呂場で生まれたままの姿を晒し合うというのは、戦友同士のやることとはかけ離れてはいやしないだろうか?
 その懸念が、ちくりと私の胸を刺した。
「離しなさい、佐倉杏子」
「嫌なら逃げてみればいいじゃないか」
 逃げてもいいのかもしれない。
 そんな小さな期待を持って、私はほんの少しだけ腕に力を込める。
 だが、杏子の腕はしっかりを私の体を抱きしめていて、その程度ではふりほどけそうもない。
「噛みつくわよ」
「いいさ。どうせ、痛くもかゆくもない」
 杏子は私を抱きかかえたまま、バスルームへと入っていった。
 さっき着替えたばかりの服も着たまま。体にコーヒーとチョコの匂いを纏わり付かせたまま。
 杏子は空っぽになった湯船の中に、私をそっと横たえた。
「冷たいわ」
 さっき使ったばかりのそこは、ところどころに涙のような水滴が付いていて、
 それは私の背中だとか、足だとかにぴたりと張り付いて、どうにも冷たい感触を与えてくる。
「じゃあ、早速暖まるか」
 杏子はシャワーの蛇口を捻り、うっすらとした蒸気と共に熱いシャワーが私達へと降り注いだ。
 あっという間にずぶ濡れになる。
 私はすぐに手元を探って、湯船の底に栓をした。

「熱くない?」
「これぐらいのほうが気持ちいいわね」
 杏子はシャワーのノズルを手でもって、そっと湯船の中へと入り込んできた。
 二人分の男性用の大きなワイシャツが、湯船の底でゆらゆらと揺れている。
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351 :嵐の使者と、時の子供 3/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 00:01:47.84 ID:e6svxd7O
 ぺたりと素肌に張り付くその感触が薄れるようにと、私は杏子の手を取って、シャワーのお湯を直接かぶった。
「嫌なんじゃなかったの?」
「嫌よ。すごくいや」
「今の、すげぇ傷ついたんだけど」
「そう思うなら、やらなきゃよかったのよ」
「つまんねぇやつ」
「知ってたでしょ?」
「違いないねぇ」
 そうして、二人はまた笑う。
 さざめくようなシャワーの水音を、鼓膜の奥で共有しながら、私はそっと目を瞑った。
 ふくらはぎから向こう脛へ。脛から膝へ。やがて腰へと上ってくる湯気と熱気。
 そして、肩口から伝わってくる、シャワーとは違う杏子の温度。
 なにもかもが温かく、心地よくて――――ひどく、吐き気がした。 

「風呂から上がったら、もう一杯コーヒーを飲むか」
「次からはルームサービスはやめましょう。高くて、まずくて。損なだけよ」
「必要な物は?」
「ヤカン。ドリッパー。フィルタ。豆」
「あたし、ブルマンってのが飲んでみたいんだ」
「盗みは得意よ。任せなさい」
「頼もしいね」
 そう言いながら、杏子は私の手を取った。
 それはもう腹を抱えて笑えることに、まるでらしくない、おずおずという言葉がよく似合う謙虚さで、
 指先をじりじりと動かすように、そっと私の指を握った。
 ああ。恐いのだな、と思う。
 抱き合って、おぶさり合って、素肌に触れることはあっても、
 手を繋ぐという、友達同士のようなその所作。
 私と杏子の間で初めて行われる、その友情めいたやり取りが、彼女はきっと恐ろしいのだろう。
「案外、意気地がないのね」
「……臆病じゃなきゃ生き残れないからな」
 はにかんでそっぽを向く杏子のその手を、私はぎゅっと握りしめた。
 そう。臆病であればあるほど良い。危険な物とは、遠ければ遠いほど良い。
 他人なんてもってのほか。何を考えてるのか、わかったものじゃないそれとは、距離を取るのが一番良い。
 損得だけで物を考えて、用が無くなったら置き去りにして、
 まるでコーヒーの豆を取り替えるように、美味しいものだけ求めてればいい。

 手を繋ぐ意味なんて、これっぽっちもありはしない。

「なあ、ほむら」
「なにかしら、杏子」

 私は杏子の友達じゃないし、杏子も私の友達じゃない。
 そんな風に考えたことはないし、考えて欲しくもない。
 近づいて欲しくない。ずっと距離を取ってて欲しい。
 戦友のままで、利害関係が一致するだけの仲でいて欲しい。
 どこか一部が交わったまま、だけどどこまでも平行線でいたいのだ。

 だって、私達は戦友として出会ったから――――いつか戦友として別れなくてはいけない。
 そして、手を繋ぐなんてのは戦友同士のやることじゃない。
 そんなのは、損得関係なんて関係ない友達同士がやることで、
 それで、友達同士は一緒にいるのが当たり前なのだから。
 いつか、『利害の不一致』というものに別たれてしまう私達は、決して。決して友達同士にはなれないのだ。
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352 :Child in Time 4/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 00:02:05.93 ID:e6svxd7O
「……なんでもない」
「言いなさい。気持ち悪いわよ」

 私は杏子が好きだ。彼女の笑顔が。話が。温もりが好きだ。愛してる。心の支えにしてしまいたい。
 戦いが終わったその後で、縋るものが何一つなくなった時、そこに彼女がいて欲しい。
 力強く、優しく、寂しい彼女の側にいて、彼女と支え合って生きていたいのだ。

 だけど。彼女は戦友で。命を預け合う仲で。互いに損得だけを考え合うような仲だから――――そんなものは夢なのだ

 だけど。ねえ。本当に。

「……あったかいな」

 繋いだ手だけはあったかいのだ。
 なみだが、こぼれてしまうほど。
 温かい思い出が、私の胸を切り裂いていった。
 そして、それに別れを告げる、二つの小さな戦士の影。
 
「じゃあな。ほむら。楽しかったぜ」
「さよなら。杏子。またいつか」

 手を振って、にやりと笑って、私達は別れを告げた。
 またいつか。それは恐らく叶わない。これはきっと今生の別れ。
 そう。だって私達は交わらない。
 私達はいくさ仲間。血濡れの戦場、そのただなかで、背中を預け合うだけの絆。
 槍も通さぬ。剣でも切れぬ。どんな矢玉も弾く絆は、道行く車輪の轍によって、いとも容易く断ち切られる。

 そう。それが二人の交わした約束故に、私達は決別する。
 いくさが二人を呼んでいる。それぞれの場所から、それぞれの場所へ。
 杏子が求める明日には、私の求める明日はない。
 そして、私が求める明日にも、杏子がいるべき場所はない。ないのだ。あり得ない。
 戦友として知り合った私達は、戦友として別れなければならない。
 互いの求める物が違う以上、決して友にはなれないのだ。

「あんたの力を過信すんなよ」
「そっちこそ、流れ弾には気をつけて」

 拳をぶつけ合い、そしてその固さを確かめ合う。
 そこにはどんな弱さもない。
 手と手を取り合う、甘い時間は終わりを告げて、戦いの運命が二人を呼んでいる。
 涙に濡れて温もりを求めた、時の子供はもういない。
 互いの流した血によって育まれた私達は、今自らの戦場へと向かおうとしている。

「無駄にするな」
「ええ。絶対に」

 無駄にはならない。流した血は。繋いだ手の温もりは。零れた涙は。
 いつか私が血反吐を吐いて地に伏したとき、必ず私を奮い立たせるだろう。
 私はそう信じている。杏子。私は信じている。貴方が与えてくれた、その力を。
「幸運を祈る」
「貴方に神の祝福を」
 そして、必ず勝てよと誓いを込めて。くるりを二人は背を向けて。
 それでもう。振り向くことなくそれっきり。
 私と杏子はそれっきり。
 涙を流すこともなく、惜しむ言葉も掛けることなく。

 それが戦友の姿を見た最後だった。
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364 :Stomrbringer Coming 1/1 ◆2GQkBO2xQE [sage寝オチ寸前…]:2011/06/01(水) 01:52:06.92 ID:e6svxd7O
 ――――だから。
 血を吐き大地に伏した私の前に、音もなく現れたその影は、
 決して、戦友のものではなかったのだ。

「待たせたね」
 ごうごう渦巻く嵐の直中、気高く佇むアナタは誰だ。
「このまま帰ったんじゃ、カッコ悪いまま歴史に残っちまうからね」
 真っ赤なたてがみを翻らせて、眠りから覚めた獅子のように、気怠く首振るアナタは誰だ。
「別に気にすることないさ。これはあたしが勝手にやってる。あたしのためにやってることさ」
 きらりと八重歯を光らせて、カカオの香るアナタは誰だ。
「マミやさやかだって怒りゃしないさ。これもあたしの約束だ」
 頬に流れる血も拭わずに、にやりと笑いを浮かべながら、手を差し伸べるアナタは誰だ。
「友達のために、もう一度戦ってみせるって、あたしは約束したからさ」

 ああ、私は全部知っている。今まで認めようとしなかっただけで。
 彼女が一体何者か、ずっと前から知っていた。

「さあ、行こうぜ。ほむら。あいつらを、一緒にぶちのめそうぜ」

 アナタは嵐。嵐の使者。
 何処からともなく現れて、雨のように突き進む。
 稲妻と雷の轟きを引き連れて、敵を滅ぼす鋭い光。

「一緒にだ。一人じゃない。あたし達で倒すんだ」

 アナタは火の玉。熱く燃える。
 誰より強い、その祈り。
 貴方こそ、誰よりも魔法少女に相応しい人。

「一人ぼっちは、もうお終いだ」

 あなたは杏子。佐倉杏子。
 私の仲間。私の戦友。私の友達。



 私の。暁美ほむらの――――最高の友達。
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366 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 03:45:33.81 ID:e6svxd7O
>>365
最高の友達は何人いてもいいじゃないっすかぁ!
そう書けば良かったかな。でも、文章的に蛇足っぽくない?

私の。暁美ほむらの――――最高の友達。
その一人。

なんて。
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367 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 04:21:51.54 ID:e6svxd7O
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=316335
じゃーもー、意識失いかけですげぇ間が開いちゃったし、手直しも込みでまとめたリンク貼る。
◆iLGejjidiIさんとかおながいです。もっとSSください。こんな毎日SS書いてたら俺アホだと思われます
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385 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 11:21:42.97 ID:e6svxd7O
>>370
さやかが誰かの救いになろうとするのはどうだろうか。
自分がいないと、こいつは生きていけないと思った相手がいたら、さやかは助けに行っちゃうのでは。

あと、さやかにとっての恭介は救いというかなんというかだと思うなあ。
まどほむと比べて、どっちが崇高かって話しじゃあなくて、
なにより大事な存在だっていうのは否定しないけど、それは飽くまで純粋な恋愛だと思うし。
命を賭けられるぐらい純粋に求める恋愛であっても、
必ずしも欲しい物が手に入るのが人生じゃないから、無くしたときに人生をお終いだと感じるんじゃなくて、
そこから、もうちょっとショボくていい幸せを見つけるのが大事なんじゃないかと思うのだ。
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391 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 13:27:51.56 ID:e6svxd7O
>>387
さやかはさやかわいい。
そういう、恭介相手には出来なかったやり取りが出来る相手がいることは、
それはそれで幸せのはず。さやかはそれに気づけ。
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393 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 14:16:06.76 ID:e6svxd7O
>>387見てほむさや滾ってきた。
昼休みを無駄遣いしたくてたまらない。
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404 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 17:44:53.77 ID:e6svxd7O
>>396のせいで、今日も六十分クオリティが炸裂しそうな予感。
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406 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 17:56:25.65 ID:e6svxd7O
>>405
流れブチ切ったら困るかと思って結構気を使ってるんだけど、
気に障るなら次からは無差別爆撃することにする。
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410 :ゼリービーンズ 1/3 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 18:32:09.35 ID:e6svxd7O
じゃあみんなのご厚意とお言葉に甘えて。>>396のネタを借りて。


「ただいま、マミさん!」
 さやかは帰って来るなり、後ろからマミに抱きつくと、すぐさま黄色いエプロンの下に手を突っ込み、
 そのたわわに実ったマミマミに、ただいまの挨拶を告げていた。
「こら。お料理中でしょ。手を切ったりしたらどうするの?」
「そんときはあたしが治してあげますよ!こう、ぺろっとね!」
 さやかはマミをマミマミしながら、ぺろぺろマミの耳たぶを舐める。
 くすぐったそうに身をよじるマミ。
 だけど、その眉は八の字につり上がっていて、たれ目のマミにしては迫力のある表情を作っていた。多分。
「だめよ、さやか。少しは暁美さんを見習って」
 マミはイワシを捌いていた手を止めて、ぺらいビニール手袋を取り外すと、ぱちんとさやかの額を弾いた。
 途端、さやかは二百七十度ほど回転しながら後ろに吹っ飛び、ぼふんと可愛い音を立てて、クッションの上に転げ落ちる。
 恐るべきは魔法少女の底力。でこぴん一粒五メートル。引っかけ橋にかに道楽。
 大阪松竹カーネル・サンダース。さやかじゃなければ死んでいた。
「愛が痛いよ、マミさん」
「甘えちゃだめよ。困ったさん」
「はーい」
 さやかが赤くなったおでこをさすり、ふりふり揺れるマミのおしりに見とれながら、
 ゆっくりゆっくり起き上がろうとすると、かわいい黒猫プリントのエプロンを着けた、ほむらがそっと手を差し伸べる。

「早く手伝いなさい、馬鹿」
「言われなくたって。あんたみたいなぶきっちょに、マミさん任せておけないからね」
 手を取って、ほむらの肩に手を置きながら、やっぱりゆっくり立ち上がる。
 ふんわりた髪がはためいて、さわやかミントの香りが舞って、味噌汁の匂いと混ざって消えた。
「そうだ。杏子はまどかんちでご飯食べるって」
「そう。誰かイワシ二匹食べれる?」
「みんなで分ければ恐くない」
「私、いらないわ」
「暁美さんはもっと食べなきゃだめよ」
「脂っこいんだもの」
「じゃあ、あたしのがんもどきあげるよ」
「あんかけのほうをちょうだい」
「注文多いなあ」
 三人は肩を並べて、せっせと夕飯の支度をした。
 手慣れた付きでワタを抜くマミ。さくさくと素早く野菜を刻んでいくさやか。
 ほむらは使い終わった鍋や小皿をざぶざぶ洗い、食器置き場へ並べていく。
 一人でやってはただめんどくさい、淡泊でありふれた作業でも、
 後ろで流れるおされなジャズをBGMに、お喋りしながらするそれは、とてもとても楽しいものだ。
「転校生。そっち、もういいからお皿出して」
 ほむらはきびきびとした手付きで、のろのろ皿を拭いていた。
 手際よく、隅から隅まで。何度も何度も。同じ所を丁寧に、不必要なまでにぴかぴかに磨く。
「少し待って。もう終わるから」
 ほむらはちらりと二人を見たあと、ようやく手に持った一枚の皿を置き、次の皿へと手にかけた。
「三人だと狭いのよ。後で私がやっておくから」
「あと、たったの二枚だけよ。移動する時間がもったいないわ」
 ほむらはがんとして譲らない。
 移動する時間はもったいない。そんなの非効率的だなんて、いかにもそれらしい理屈をつけて、
 飽くまで二人の側に突っ立っていた。
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411 :ゼリービーンズ 2/3 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 18:32:55.01 ID:e6svxd7O

「なら、あたしの肩でも揉んでなよ」
「嫌よ。どうして貴方のなんて」
「揉んであげたら?暁美さん。この前だって、ご飯をご馳走になったんでしょ?」
「そうだそうだ。転校生はもっとあたしに優しくするべきだ。さあ、来い。さやかちゃんを甘やかせ!」
 マミとさやかはくすくす笑って、お互い顔を見合わせながら、せっせせっせとご飯を作る。
 ほむらは髪を掻き上げた。
 しょうがない。そこまで言うならやってやるかと、嫌々な素振りを見せながら、
 牛乳石けんでごしごしその手を洗ってから、タオルできっぱり水気を切って、優しくさやかの肩に触れた。
「しか――――」
「『仕方ないわね』」
 ほむらが何かを言いかけて、マミがそれより先に喋る。
 ほむらはたちまち顔を真っ赤にして、それでさやかが大笑い。
「あはははは!――――いて!いたい!痛いよ、ばか!」
 ほむらは真っ赤になった顔を隠すように、さやかの真後ろにぴったり張り付き、さやかの耳を引っ張った。
 マミはころころ笑いをこぼし、ほむらは真っ赤になってさやかを労い、さやかは静かに眼を細め、
 ぱちぱちイワシの脂が跳ねて、ぐつぐつお鍋のお湯が煮立って、そうしておいしいご飯の時間。
 仲良く楽しい、時間の続き。



「ごちそうさまです!」
「ご馳走様」
「お粗末様です」
 おいしいご飯。楽しい会話。三人で過ごす幸せなひととき。
 たくさんの満腹は最高の笑顔となって、進むお箸はティロ・フィナーレ。
「じゃあ、今日はマミさんが当番ってことで」
「お任せよ。お台所はよろしくね」
「あいあいさー!」
「サーじゃなくてマムよ」
「うるせー」
 さやかはほむらにメロイックサインを突き出すと、お盆に食器をまとめ上げ、よいさと台所へ歩いて行った。
 マミは手際よく布巾でテーブルの上を拭き、戸棚から瓶詰めになったゼリービーンズを取り出して、ことりとそこを飾り立てる。

「それじゃあ、髪のお手入れでもしましょうか」
「どうせ、これからお風呂に入るんでしょう?」
「いくらしたって減るものじゃないわ」
 マミはそそくさと立ち上がって、部屋の片隅にある小さなドレッサーから櫛とヘアアイロンを取り出した。
 食卓の反対側。四十二インチのプラズマテレビの中では、トミー・リー・ジョーンズが真っ白なコーヒー缶を手に持って、
 正真正銘の宇宙人が作り上げた、業界シェア率ナンバーワンの缶コーヒー、
 『クオリティ・ブラックコーヒー』、QBCのコマーシャルを熱演していた。
「これからテレビを見ようとしてたのだけど」
「テレビを見ながらだって出来ることはあるわ」
「貴方にだって、宿題とか勉強とか、他にやることがあるはずよ」
「暁美さんの髪のほうが大事よ。それに、今日は私が当番だもの」
「いい迷惑だわ」
「寂しい先輩を構ってちょうだい」
「勝手にして」
 ほむらはぷいっと横を向いて、卓上のゼリービーンズの瓶に手を伸ばした。
 わけもなくじゃかじゃかと瓶を振って、硬い蓋に四苦八苦しながらようやく蓋を取り、
 お行儀悪く手を突っ込んで、手のひらいっぱいに甘いお菓子を掴み取った。
「綺麗でしょ?杏子がこの前買ってきてくれたの」
「杏子らしいわね」
「ええ。暁美さん、案外こういうもの好きだものね」
「そんなこと言った覚えはないわ」
「うん。だけど、みんな知ってるわよ」
 そう言って、マミはほむらの髪に櫛を入れた。
「知ったことじゃないわ」
 その流れるようにすべらかな感触。引っかかりなんてどこにもない。
「そうね。暁美さんには関係ないわね」
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413 :ゼリービーンズ 3/3 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/06/01(水) 18:33:25.91 ID:e6svxd7O

 マミはにこにこ笑みを浮かべながら、そっとほむらの髪にキスをした。
 しっとりとした、いつでも濡れたような美しい髪。
 それはいつでも潤っている。
 それは至極当たり前。
 だって、みんながほむらを大事にしてる。
 みんながみんな、ほむらの髪を弄りたがって、いつでも誰かにお手入れされてるその髪は、
 誰もがうらやむぴかぴかを、休むことなく振りまいているのだ。

「かゆいところない?」
「背中がかゆいわ」
「この辺?」
「もっと下」
 横柄にゼリービーンズをぼりぼり食べるほむらだが、そのほっぺたはリンゴのよう。
 耳たぶまでを真っ赤にして、だけどマミのされるがまま。
 まるで寝ころぶ猫のように、長いおぐしをマミにあずけて、夢見心地で目をつむる。
 マミもうっとり微笑んだ。そうして何度も髪を撫でた。
 さらさら髪の手触りに、マミの心がふわりと浮いたとき、
 ふとマミは、誰かに見られている感じがした。
 にやにやしながら振り向くと、そこにはエプロンをつけたさやかの姿。
 さやかは洗い物をしながら、ちらちらとリビングのほうを振り向いて、うらやましそうに二人を見ていた。
 
 ちく、たく、てく、と時計が歌い、すいすい櫛がシルクを滑る。
 がやがやはテレビの音だけど、それを聞くはずの人達は、ふわふわ夢路の旅の途中。
 じゃぶじゃぶ水が流れる音が きゅっとなにかに止められて、
 だだだと駈ける音がして、三つのものが一つになった。

「よし終わったあー!それじゃ、一服させなよ。転校生」
 二人の背中を押したのはさやかだった。
「邪魔」
 ほむらは首まで真っ赤になって、金魚のようにぱくぱく口を動かして、なんとかなんとか言葉を吐いた。
 エプロンだってつけたまま、ほむらの背中と自分の胸で、マミをサンドイッチにしたさやか。
 それで、まあ。なにがどうなったのでしょう。
 ほむらの背中にどかんと当たる、巴さんのおっきなアレが、ほむらのハートを鷲掴み。
 ほむらはぐるぐる頭の中で、何かを考えようとしたが、どうにもこうにもまとまらず、そのままそこに金縛り。
 マミの手の平がほっぺを撫でて、ほむらははふぅと息を吐いた。
「それじゃあ、一服しましょうか」
「ざあっと一汗流しますか」
 ほむらとマミはにやりと笑って、ほむらをいきなり抱え上げた。
 視界がぐらりと傾いて、ほむらは二人にだっこをされて、そのままどこかへ運ばれて。
 やがて、きゃあきゃあ黄色い声。
 ちゃぷちゃぷ水の跳ねる音。
 うふふ、あははと笑う声。
 きゅっぷい時計が時間を告げて、夜はずんずん更けていき、ベッドの上に川の字出来て、
 三つの手と手が繋ぎ合って、色とりどりの夢の中、みんなは仲良くお日様を待った。

 そんなかわいい、おかしのじかん。


――――――――――――――――――
ゼリービーンズ達の時間
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421 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/01(水) 19:36:40.36 ID:e6svxd7O
>>417
百合百合しく頼む。
さやかじゃなくてオクタでもいいよ。


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