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214 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/29(日) 21:34:03.67 ID:CAuDP/Fu - ユーナギでまた数レス頂きます。
もしユーナギのみで夜の学校に行っていたら?というif話。
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215 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/29(日) 21:36:29.31 ID:CAuDP/Fu -
『お願い!ひとりじゃ怖すぎる!』 そんなメールが来たのは、私が雑誌に読み耽っているときだった。 ―――夜の学校に忍び込む。 臆病者のユー子にしては、なかなか大胆な策に打って出たもんだ。 プリントの一枚や二枚くらい、私がコピーしてやれば良いだけの話なんだけど、 怖がりのユー子を間近で見ながら夜の学校を散策するのも悪くない。 なかなか愉快なことになりそうだと思い、私はユー子の誘いを二つ返事で快諾した。 「お〜っ、保健室のベッドってやっぱりふかふかなんだなー」 「もうっ、うちのプリント取りに来たんやで?」 私は年甲斐もなく、真っ白なベッドの上ではしゃいでいた。 それを見ていたユー子は口では咎めていても、手を出して私を止めようとまではしないけど。 しっかし、校舎の窓も保健室のドアも鍵を掛け忘れているなんて、セキュリティ上、かなり問題があるよなー。 「いやー、だってさ、せっかく夜の学校に忍び込むんだのに、 ただ、プリントを取るだけじゃつまんないだろ?」 「うちは一刻も早く学校から出たいのに…」 夜の学校が嫌なら、プリントの忘れ物なんて諦めちまえば良いのにな。 それほど長い付き合いじゃないけど、ユー子には意外と頑固なところがある。 関西人の気質なのかねぇ。まあ、そんなユー子をいじめたくなるのが私なんだけどさ。 「そっか。それなら早く教室行ってこいよ、私はここで待ってるからさ」 「えぇっ!」 「大丈夫だって。何も出やしないよ」 「む、無理やっ、ナギが一緒に来てくれへんと…うち、うちっ、」 そう呟くと、ユー子は今にも泣きだしそうな顔をしながら、胸元で合わせた両手をもじもじし始める。 肩をブルブルと震わせていて、よっぽど夜の学校が怖いらしい。
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216 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/29(日) 21:37:53.61 ID:CAuDP/Fu - 「…仕方ないな、ちょっと来いよ」
「うん…?」 さて、ユー子の恐怖感と緊張感をどう解してやったら良いのかを考えた私は、 ベッドに腰を下ろしたまま、震える友人を呼び付けた。 「どうかしたん、ナギ?」 「隣。」 私はポンポンとシーツを叩く。 ユー子は頭に疑問符を浮かべながらも、私の隣に静かに座った。 「ほら、綺麗だろ」 私たちの目の前には小さな窓がある。 その窓の向こうから、真ん丸な月が私たちを見下ろしていた。 窓ガラスを通してでも、その円らな輪郭は私たちの目に鮮明に映る。 「…わぁ」 雲ひとつない夜空に黄金色の穴を開けたみたいに、くっきりと浮かぶ月。 「綺麗…、今日は満月やったんやね」 「あぁ、私もさっき気付いたんだけどな」 ユー子は感嘆の溜め息を漏らしながら、心地よさそうに月光を浴びている。 気付けば、ユー子の身体から震えが消えていたようだった。 ま、即興で思いついた策にしては、上出来な結果だな。 「学校に忍び込んだこと、誰にも気付かれてないと思ってたんやけど、お月さんにはバレてたんやね」 そのとき、月を見上げるユー子の横顔を見て、私は不覚にも胸を跳ねさせた。 月を映した愛嬌のある瞳、整った鼻筋、艶のある桜色の唇、そして、透き通るような白い肌。 私が男だったら間違いなく陥落してたと思う、シチュエーションがシチュエーションなだけに。
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217 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/29(日) 21:39:39.37 ID:CAuDP/Fu - 「何や、ナギ?私の顔に何か付いとるん?」
その硝子細工のように澄んだ顔が私に向いたとき、恥ずかしさの余り、 一瞬だけ目を見開いた私だったけど、何とか踏み留まり、いつもの調子で応えた。 「…いや、ユー子があまりにも青臭い台詞吐くもんだからさ」 「なっ…!」 「お月様が私たちを見ている、ねぇ。相変わらずユー子は発想が乙女チックだな、あははっ」 「何やねんっ、思ったことを口に出しただけやんか、そんなにおかしかったん…?」 「おかしいな」 「…そ、そんな直球で言わんでも」 眉毛を下げながら、ユー子が肩を落とす。 そんなユー子の様子を見ながら、私は微かな含み笑いを零しつつ、呟いた。 「でも、可愛いぞ」 ぽつりと漏れた私の言葉を聞いたユー子は鳩が豆鉄砲喰らったみたいにぽかんとしていた。 「…な、何だよ」 「だ、だって、ナギがあんまり素で褒めるもんやから…」 月明かりに照らされたユー子の頬が赤く染まるのを見て、私も何だか恥ずかしくなってくる。 くそ、ほぼ無意識とはいえ、柄にもないこと言うんじゃなかった…! 「わ、忘れろっ!」 「あははっ、ナギが照れとるっ、珍しいなぁ」 「くぅっ…!」 ユー子がお腹を抱えて大袈裟に笑った。 私は頭のてっぺんから足の先まで真っ赤になる。 「良いからもう笑うの止めろよっ…」 「あははっ、だって照れたナギがあんまり可愛かったもんやから…」 「うっ、…と、止めないと一緒にプリント取りに行ってやらないからなっ」 ふん。ちょっと卑怯かもしれないけど、こう言えば、怖がりなユー子は黙るはずだ。 ユー子の手綱捌きにかけて、私の右に出る者は居な・・ 「ええよ?」 その一瞬だけ、ユー子の口元が少しだけ緩んだように見えた。 「…その代わりに、な?」 小さな衝撃とともに、ぼすん、となだらかにベッドに押し倒される。 思わず閉じてしまっていた目を開くと、目の前に艶めかしいユー子の顔があった。
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218 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/29(日) 21:43:12.95 ID:CAuDP/Fu - 「なっ・・ゆ、ユー子?」
「確かに、プリント一枚だけ取って帰るんじゃ、勿体ないもんなあ…」 月明かりを背にしたユー子が私に覆い被さるような体勢で身体をひっ付けると、 私の顔をまじまじと見つめたと思えば、右手で私の眼鏡をゆっくりと外す。 「ナギはかわええんやから、眼鏡外したらええのに…」 もちろん、眼鏡かけててもかわええけどな、と付け加える。 ユー子は続けて、慣れた手つきで私のおさげを解いていく。 私はその行為をなぜか無抵抗に受け入れていた。 ユー子が月の魔力でも受けているような気がして、何もできなかったからだ。 「じょ、冗談は止せよ…!」 「冗談やない」 「ユー子…」 「かわええよ、ナギ」 「何、考え…ん、くっ」 ユー子の唇が私の唇を奪い、気付けばその舌が私の唇の隙間を割っていた。 「っ、ん…」 「ふっ、んぁ…ユー、子っ」 どうしてユー子がこんな行為に及んだのか、どうして私は何の抵抗もせずにユー子を受け入れたのか。 そんな疑問は浮かぶけど、私の頭の中は徐々に真っ白になっていった。 そして、私の意識はユー子の中にゆっくりと溶けていく。 事の顛末は月だけが知っている、かもな。
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