- 魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 22
199 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/24(火) 00:09:11.24 ID:N6vyysQl - キスの日に間に合わなかった!不覚!全く持って不覚!
ということでSS投下。ほむほむが主役。4レス予定。
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201 :ケー・アイ・エス・エス二回目 1/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/05/24(火) 00:11:47.10 ID:N6vyysQl - ほむらは戦慄した。眼前に広がる恐るべき光景に打ちひしがれ、その小さな唇をわななかせた。
万物を統べる因果律の超越者にして、硝煙たなびく戦場を闊歩する、歴戦の魔法少女たる暁美ほむら。 血に塗れた荒野を越え、絶望に閉ざされた闇夜に濡れて、死屍累々と横たわる、少女の骸を踏み越えて、 辿り着いた夢路の果てで、彼女を待っていたのは、未だかつて無いほどまでに強大、無体な試練であった。 (ほむらちゃん) とめどない思考の迷宮に陥りかけたほむらを、小さな声がすくい上げた。 刹那。頭の中がさっと晴れ、狭まった視界がぐっと広がる。 胃の中に冷水を流し込んだような、ハッカを噛みしめたようなフリスクな感覚。 すうはすうはと息を吸い込み、ほむらは現実へと立ち戻った。 「ほむらちゃん」 二度目の声は、幾分確かに脳裏へと響いた。 そう、ここは紛れもない現世。ほむらを待つのは愛の試練。避けようのない運命。乗り越えるべき、それ。 ほむらの名を呼ぶべき彼女のために、為さねばならない使命が、その眼前に待ち受けているのだ。 胸には未だ恐れがあった。指先には痺れがあった。喉は焼け付くように乾いていた。 だが、桜色の吟詠に呼び覚まされた紫の炎は、瞳の奥でごうごうと燃えあがっていた。 さあ、征くときだ。燃え上がれ、我が心。高く飛べよ、その魂。その手に掴めよ、無限の愛。 ――――目を開け。 震える手をぎゅっと胸に押し当て、ふたたび、みたびと息を吸う。 動悸は未だ収まらない。しかし、もはや恐れはない。叫ぶ準備は整った。 いつでも彼女の名を呼べる。 ――――拳を握れ ぎりりと拳を握りしめると、それは震えながらにほむらの意志に従った。 かじかんだように痺れる指先に、ゆっくりと血潮が走っていく。掌流れる真っ赤な血潮。 いつでも彼女を抱きしめられる。 ――――前へと踏み出せ。 けたけた笑う膝を一撃。たちまちしゃんと筋が通る。 爪先を丸めて二度伸ばす。踵で大地を一度蹴る。どしんと地球が揺れ動く。 いつでも彼女に走ってゆける。 ――――叫べ。力の限り。 「まどか」 ほむらは、最愛の人。その美しい名前を呼んだ。 まどか。鹿目まどか。我が愛。我が月。我が太陽。瞬く星よ、咲く花よ。歌う小鳥に、さざめく風よ。 今こそ、私の手の中へ。今こそ、試練に打ち勝つとき。今こそ、未来へ進むとき。 『もう、何も恐くない』と呟いて、ほむらは――――ゆっくりとその手を伸ばした。 「……ま、まだかな?」 「………………い、い、いくわよ……!」 まどかは胸の前で可愛らしく手を組んで、唇を突き出したままじっと固まっていた。 ほむらはまどかの肩に手を置き、じっとその双眸に向き直った。 「……はうっ……!!!」 途端。ほむらは胸をぎゅっと抑えると、ベッドの上へとごてんとひっくり返った。 駄目だった。またしても胸キュンだった。羞恥と幸福で頬が焼けただれそうな感触。それがほむらを転げ回らせた。 きゅっぷー。と壁掛け時計が時報を知らせた。 「ほむらちゃん……いつになったら、自分からキスしてくれるの?」 「…………ま、まどかぁ……だ、だって…」 ほむらは震える手でまどかのパジャマの裾を掴み、いやいやをするようにまどかに縋り付く。 はあ。とまどかは溜息をつく。眉を八の字にして、だけど顔はだらしなく緩みきった表情で、ほむらの頭をかいぐった。 「はうぅっ!?……ほ、ほむらちゃんは本当に可愛いなぁ〜!!えへへへへへぇ……」 まどかは完全にだめになりきった表情のまま、とろけきった声で恍惚と呟き、ほむらをぎゅっと抱きしめた。 「うふふふぅ〜。さあ、ほむらちゃん、にゃんにゃんのお時間ですよぉ〜」 まどかはほむらの頤に指をかけ、猫をあやすようにその顎先を撫でた。 キス。キス。キス。頬に、首筋に、唇に、何度も何度もキスをする。 身をよじらせながら、まどかの手の上でごろごろと喉を鳴らし、 やがてとっぷり日が暮れて、空がオレンジ色に染まっても、猫たちの鳴き声は響き続けた。
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202 :ケー・アイ・エス・エス二回目 2/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/05/24(火) 00:14:06.07 ID:N6vyysQl -
「うふふふふふ」 マミはずっと笑いっぱなしだった。 そうして何度も何度もほむらの頬にキスしては、ぎゅうぎゅうとほむらの腕を抱きしめた。 うっ、とほむらはうめき声を上げる。苦しいからではない。その腕にぶち当てられた感触が凄すぎるからだ。 薄手のキャミソール一枚を隔てたそこにある、二つの柔らかい女性の象徴。 とても、一つしか年が違わない女性のそれとは思えないほど、それはおおきく、やわらかく、なんというか、もうすごかった。 「美味しい……?今日はとっても上手に焼けたのよ」 マミはお手製のクッキーをひょいと摘んでから、自分に口に咥え上げる。 そして目を瞑ってから、んーとほむらに向かってそれを差し出した。 「あーん」 「あ……あ、あーん……」 ほむらは途轍もない労苦を覚えながら、なんとかそれを口で受け取った。 傍らからぎゅうぎゅうと右手を締め付ける、マミの柔らかな感触に神経の大部分を集中させ、 繋がれた左手が離れないように。マミの艶やかな唇に、自らの唇が触れてしまわないように。 その目をじっと見てしまわないように、首をなんとか傾けて、やっとの思いでクッキーを食した。 甘い………………気がした。味なんて全然わからなかった。 お風呂上がりでウェーブがかったマミの輝く髪と、そこから立ち上る、甘ったるい香りが気になってしょうがなかった。 ひょっとしたらわざとやってるのかもしれない。彼女は計算高い女だし、悪ふざけをするのも珍しくない。 なら、こっちだって反撃したって構わないはずだ。敵対する者には容赦無し。 戦いだと思えば、羞恥も何も関係ない。ほむらが、いざ反撃の時とマミに掴み掛かろうとした瞬間。 「どう?どうかしら?きっと暁美さんの口に合うと思うんだけど」 マミの鼻先が首筋をくすぐって、ほむらはぞくりを身を震わせた。 その子犬のように愛らしい仕草。まるで邪念の欠片もない無垢さに、ほむらは思わず後ずさった。 「お、お、美味しいわ……!」 「本当!?ありがとう、暁美さん。ねえ、こっちも食べてみて」 マミはクッキーを口に咥えたまま、ぐるりと体勢を入れ替えると、 ほむらの正面に回り、そのままほむらにのし掛かった。 ほむらの胸の上に、むにゅりと潰れる、途轍もない快楽の爆弾が投下され、ほむらは目を白黒させた。 マミの鼻息が、今度はもっと胸元に近い部分をくすぐった。その指がさわさわとほむらの手の甲を撫で上げた。 足と足の間に入ったマミの膝が、ほむらの太ももにすっと触れて、ほむらはもう少しで声をあげるところだった。 「今日は一晩中お話ししましょうね!」 そう言って、マミはもう何度目になるかも分からない、頬に触れるだけのキスをした。 その目はきらきらと輝いていて、言葉はうきうきと弾んでいたが、ほむらはどうにもやりきれなかった。 体が熱かった。なにかが爆発しそうな気がした。マミならば、それを受け止めてくれる気がした。 だが、今ほむらの目の前にいるマミは、まるで子供のようにはしゃぎ回る、ただ可愛らしいだけの女の子だった。 どうにかならないだろうか。どうにかできないだろうか。 そんなことをほむらがぐるぐると考えていると、 「あ・け・み・さん♪」 マミはにこやかに笑った。ほむらは溜息をついた。 きっと、どうしようもないのだろう。 役得だろうか?厄日だろうか?どちらとも言えるし、どちらでもないと言える。 マミにとっては、そう。最高の一日だったに違いない。 そうして、マミはあれこれ要領の得ない話をし続けて、日付が変わる前にころっと眠った。 だけど、ほむらは火照った体のまま、ただひたすらに朝を待った。 そういう、時たま困ったように甘えたがる、色気に溢れた先輩の話だった。
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203 :ケー・アイ・エス・エス二回目 3/4 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/05/24(火) 00:15:00.27 ID:N6vyysQl - 魔法少女達でごった返す、二十四時間省エネ仕様の構内食堂。
微妙な明るさの中でチョコパフェを食べているほむらの脇から、ひょっこりと赤毛のお邪魔虫が現れた。 「もーらいっと」 あっと息つく暇すらない。 ほむらが口に咥えてぽりぽりとやっていた板チョコを、杏子は口でかっさらった。 そのまま杏子の腕がほむらの襟元をぐっと捕まえて、たちまち距離がゼロになる。 ぬるりとした感触と共に、抹茶の風味が舌の先に広がった。 くちゅりと水っぽい音の響く中、杏子の手元に目をやると、抹茶味のチョコプレッツェルがあった。 この食いしん坊。一日に何食を食べれば気が済むというのか。 「んっ……ちょっと……」 「……もう一口くれよ」 ほむらが小さく身じろぎしながら口を離そうとするが、杏子はほむらのスプーンをそっと取り上げると、 ガラスの器からパフェをひとさじ掬い上げ、それをほむらの口に運び、そうして再びキスをした。 ほむらにとっては慣れ親しんだ杏子の味だが、それが同じだったことはほとんど無い。 今日はチョコと生クリーム。そしてほのかな抹茶の香り。 ただ、温かい唇の感触だけが唯一普遍。誰の物とも紛うことのない、杏子だけの味だった。 他に覚えがあるといえば…………それは他でもない、錆びた鉄。流れる血の味だった。 『遙か昔』からずっとそんな付き合いが続いていたせいか、今でも血の味は杏子の唇を思い出させる。 そういえば、ふと血の臭いがする。よく見れば、左の頬に小さな切り傷が走っていた。 杏子の体も随分と熱い。きっと一仕事を終えてきたところで、気持ちが昂ぶっているのだろう。 さやか。そしてマミ。あるいはまどかがどこかにいれば、そっちに行ったのかもしれないが、 仕事上がりの彼女が食堂に来るというのは、考えてみればごくごく自然。ここにいた自分が運の尽きということだろう。 「はぁ……そんな……お腹……空いてるの?」 「ふぅ……はらぺこ……なん……だ」 杏子がどんどん昂ぶっていき、それに自分も釣られていくのがなんとなくわかった。 神経が鋭敏になっていく代わりに、パフェの味はどんどんと薄くなっていった。 どこかで聞こえる話し声。ひそひそとした噂話。周囲の視線がここに集まっているのがよく分かった。 なにせ二人は一匹狼。懐かない野良犬。人嫌いなのかと評判の二人だ。 変わり者同士がこういう仲にあるというのは、例え『誤解』であったとしても、さぞかし不思議に見えるのだろう。 きゃーきゃーと騒ぎ立てるような声も聞こえるが、こんなのは別段騒ぐことではない。 そう。これは飢えた野良犬に餌をやっているようなものだ。 寂しがり屋で恐がりで、虚勢を張ることばかり上手になった、雨に濡れた小さな子犬。 そして、恐らくは杏子にとっての自分もそうなのだろう。 餌をあげてるつもりになって、実のところ餌をもらっているのは自分自身。 そんな二人が一度分かり合ってしまえば、あとは肩を寄せ合うのは当たり前。 腐れ縁が続くのも、当然と言えばまあ当然か。 そんな取り留めもない思考を続けていると、杏子は一度強く舌を吸い上げると、ぶるりと体を震わせた。 どういうコトになったのかを説明するのは下世話だろう。ただ、まあ、なんというか……案外、堪え性のない人だった。 「……ごっそうさま」 「……お粗末様。さやかなら、多分訓練場にいると思うわ」 「サンキュ。いなかったら晩飯よろしくな」 「今日は非番だから自宅で寝るわ。一応、.部屋の鍵は開けておくけど」 「ありがと」 「どういたしまして」 簡潔なやり取りの後、杏子はぺろりと唇を舐めると、私の顎に指で触れ、もう一度だけ唇に口付けた。 そして、深緑色をしたチョコプレッツェルの箱から、緑色の袋を取り出して、そっと私に押しつけてきた。 こういうの、好きだ。杏子がではなく、私が。 だって、杏子は自分にとってどうでもいい人間には、絶対にこんなことはしないから。私にはそれが心地よい。 パフェ二口だけではきっとお礼には足りなかろうと、気持ち焦りながら言葉を紡いだ。
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204 :ケー・アイ・エス・エス二回目 4/5 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/05/24(火) 00:16:59.30 ID:N6vyysQl - 「杏子、お疲れ様」
「ああ。あんたもな」 杏子は私のつまらないねぎらいの言葉に対し、ぴっとこめかみを擦るような軽い敬礼を返すと、 ドレスの裾を翻し、来た道をぐるりと引き返していった。 何人かの魔法少女達が彼女の背中を視線で追って、次に私を睨み付けようとして、 私の背後を見た瞬間、ちっと舌打ちをして再びテーブルに向き直った。 首をかしげて振り向いても、そこには、やたらにこやかに笑う魔法少女達がいただけだった。 なんだろう。よくわからないが、杏子は相変わらずモテるようだ。納得は出来る。 まどか一筋の私でも、時折ぐらつくことがあるのも一つの事実だし、 それが杏子の人望であるというなら、それは友人として喜ぶべきことだ。 感嘆しながら手元を見ると、パフェはだいぶ溶けていた。はた迷惑な友人を持ったものだと溜息をつきながら、 抹茶味のチョコプレッツェルを袋から取り出し、パフェにぐさぐさ差していく。 「やあ、同志ほむら。あれは君の愛かな?愛はいいよ!完璧に無限大だよ!なにせ私と―――」 「そういう物ではないわ」 突然話しかけてきた、名前も思い出せないどっかの魔法少女の一言を、私はすっぱりと切り捨てた。 「……なんだ。愛じゃないのか」 「ええ。まあ、そこまで違ってはいないでしょうけど」 生クリームの付いた、抹茶味のムースチョコ。それをゆっくりと口に運ぶ。 「じゃあ、なんなんだろうね?有限な関係かな?しかし、それは私と彼女のような――――」 「無限大よ」 「……そうか。じゃあ、それは愛だね!なにせ愛は無限大だからね!そう。言ってみれば私と彼女のように――――」 勝手に語り出す変な女をほっぽって、私は杏子の置き土産をじっくりと楽しんだ。 私と杏子の間に横たわる物。それは愛だろうか?どうなのだろう。もしかすると愛かもしれない。 私の愛はピンク色をしているが、赤とピンクはよく似ている。 だが、私と杏子を結ぶそれは、甘いけれど、ほろりと苦い。 色々な感情や、色々な前提というものが、この溶けかけたパフェのようにぐるぐると混ざり合っているそれは、 恋人だなんて、甘く単純な言葉では、とてもじゃないけど言い表せない。 その複雑怪奇な関係そのものが、そっくりそのまま、私と杏子に当てはまる。 だが、ほろりと苦いその愛も、たまに食べるぐらいなら――――それは案外イケるものなのだ。 ◆ 「てーんこーうせいっ!」 さやかの部屋で寝間着に着替えようとした私の背中に、突然さやかが飛びかかってきた。 背面から首筋にしがみつこうとしたさやかを、私はとっさに投げ飛ばそうとする。 別に悪意はない。飽くまで美樹さやかという人物に対する条件反射がそうさせただけ。 もちろん、さやか以外の人間が相手なら、そんなことはしなかっただろうが。 ともあれ、私は体を素早く半回転させてさやかへと向き直り、さやかの襟元を両手で掴んだ。 そのまま遠心力を使ってさやかの体を下方へと振り回し、さやかを地面へと放り投げた。 正確には、放り投げるつもりだった。その目論見は、ズンという感じの鈍い音に掻き消されたからだ。 さやかは体勢を入れ替えられた瞬間、空中に小さな力場を発生させて私達の体をもう半回転させた。 さやかは上に、私は下に。 そして、さやかの飛び込んできた運動エネルギーに従って、私達は向き合ったままベッドの上へ。 「『腕を上げたわね、さやさや!』」 「さやさ――――」 さやさやって何よ、と言おうとした瞬間、さやかは私の唇を塞いだ。 どうやってかなんて言うまでもない。マウストゥマウス。人工呼吸の方法でもってだ。 ある単語を使うのは敢えて避ける。そういうのは、もっと……こう……好きと言える相手でないと嫌だ。 だから、今私がさやかとしているのはキスではなく、それに似た何かであって、それ以上の何かではない。 「ふふふ……転校生好き好き大好きー」 やった。また私の勝ちだ。それはつまらない賭けごとのルール。 先に好きって言ったほうが負け。三十九戦三十六勝三敗。勝ったほうは負けたほうの言うことを聞く。 私は、速やかにこの状況を抜け出る方法を彼女に提示した。 「さやか」 「えへへ……こらこら。くすぐったいって、転校生ってば」 さやかの耳たぶにそっと噛みついた。歯を立ててはいけない。痛みは悲しみを思い出させるから。 優しく、愛撫するようにそっと触れて――――さっさと終わらせてしまえばいい。
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205 :ケー・アイ・エス・エス二回目 5/5 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/05/24(火) 00:18:43.07 ID:N6vyysQl - さやかには、彼女が気の済むように、好きなことを好きなだけさせておこう。
私は、さやかが満足するように、さやかが好きなことを目一杯してやるだけだ。 「こういうのは嫌いなのかしら」 「嫌じゃないって。でも、もうちょっとこう……なんといいますか!えへへへへ!駄目だなあ、転校生は!」 「相変わらず我が儘ね……さやかは」 「あたしのワガママボディがそんなに気に入ったの?転校生はむっつりさんだねー」 さやかはその胸元を押しつけるように、私をぐいと抱き寄せた。 巴さんほどではないが、充分にボリュームのある二つの膨らみが私の体に押しつけられて、私はふうと目眩を覚えた。 ああ。抱きしめられている。どうしてだろう。ぼんやり理由を考える。 さやかは嘘つきだ。明るい素振りを見せながら、何か辛いことを考えるのが得意な人だ。 忘れさせてしまおう。もう少しだけ優しく触れて、何か聞こえの良い言葉でおだててみようか。 「…………別にいいでしょう。好きなんだから」 「へへへ……どうせまどかの次なくせにさ」 さやかはそう言って照れくさそうに笑うと、私の耳に噛みつき返した。 歯が立っていて、少し痛い。悲しむか、怒らせるかしただろうか。でも、知ってるくせに。まどかが一番なのは絶対に変わらない。 だけど、彼女が悲しんだ分だけこの馬鹿げた時間が続くのだと思うと、歯を立て返すことも出来なくて、 私はふうふうと息を乱す振りをしながら、さやかの耳たぶを優しく甘噛みした。 「……うーん……転校生って…………転校生だよね」 「何、それ」 「うん。触り方がね。転校生って感じがするなあって」 「そう」 ひょっとして気に入らなかったのだろうか。 もっと優しく抱きしめられたいのだろうか。噛みつかれるのが嫌だったのだろうか。 どうしようか。杏子や巴さんなら、もっと上手いやり方を知っているのかもしれない。 だが、私が彼女について知っていることは、意外なほどに多くない。 名前を呼ばれるのが好きだ。抱きしめられるのが好きだ。優しいキスをされるのが好きだ。 求められたがっている。愛されたがっている。心に温もりを欲しがっている。 かつて、路地裏のどこかにひっそりと隠された愛の言葉。今ではネオンのように輝いているそれ。 ふと昔のことを思い出す。彼女のせいで、私がどんなに酷い目に遭ったことか。 そうだ。別に好きじゃない。こんなわがままで自分勝手で、誰にでも好きだなんていう人は。 もっともっと優しく触れよう。早く、早く終わらせよう。嫌な思い出が泡のように消えてしまうように。 「ふふふ。さやかちゃんは何度もお見通しだよ」 「嘘ばっかりね」 「なんだと、こいつぅ。転校生のくせに生意気じゃん」 さやかは再び唇を押しつけてきたが、それはくすぐったいだけだった。 頭の上で抑えつけられた腕がもどかしくて、体を何度もよじる。 お見通しなわけがあるものか。貴方は私の掌で踊ってるのだ。 寂しさを紛らわせたいのなら、もっと上手にやってちょうだい。私は付き合ってあげているだけだから。 「お仕置きする。マジで」 「すればいいでしょう。勝手に」 何をしてくるかはすぐに分かった。さやかは首筋を、そして次に唇を強く吸った。 ほら、そのはしたない独占欲。他にいくらだって綺麗な人はいるのに、よりにもよって私に印をつけるなんて。 「転校生」 さやかの動きは少しずつ荒々しくなっていった。その転校生という呼びかけに、少しだけ胸が苦しくなる。 やさしさが込められているかどうかは別だけど、私を転校生と呼ぶのが彼女だけだと思うと、それは少し特別な響きだった。 かつてはもっと険を込めた言い方だった気がするけど、今はだいぶ優しい感じがするし、 大人げないと周りの人間に指摘されるようになってからは、二人とも啀み合うこともなくなった。 好きか嫌いかは関係ない。ゆっくりとこの時間が過ぎるのを待てばいい。 きっと、これからもっと激しくなる。もっと早く終わるようになる。 夜が、早く明けますように。
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209 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/24(火) 00:22:48.35 ID:N6vyysQl - 日付変更線に負けないように頑張って、1/4でいきなり校正ミス。
なんでパジャマ着てベッドの上にいるのに、最後の一行で日が暮れてオレンジ色なんだよっていう。 前回書いた、さやか×その他のほむら版。 前作はほむさやをめっちゃ贔屓してたのがモロバレしたらしいので、 今回はなるべく文章量を均一に出来るように頑張った。(長くなった) だが、敢えて言おう。私はほむさや、ほむあん派です。
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228 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/05/24(火) 03:14:07.68 ID:N6vyysQl - 痛覚遮断自体は肉体のコントロールだから、魔法少女の基本機能じゃない?
さやかの凄いとこは、他の魔法少女より優れた回復能力と……ほかに何があんだろう。 武器の精製は基本技能だろうし、あとは空中移動ぐらいだろうか。
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