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名無しさん@秘密の花園
魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 11

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魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 11
578 :ドキドキプールサイド 転 01 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 11:58:36.62 ID:4TLHDJUI
キュウべぇの情報によればこうだ。

ある女子高生魔法少女(便器上『サッチー』と呼ぼう)は有能なフィギュアスケーターだった。
サッチーは間近に迫った大会のため、友人に誘われたロックバンドのライブも断って、熱心に練習に明け暮れた。
しかし、連日続く暑さのせいで整備装置が故障。
当日になって大会は延期され、ライブを断った意味はなくなってしまった。
友人は誘いを断った彼女に憤慨し、絶交。
挙げ句の果てに、彼女の熱愛するバンドはライブ会場で解散を発表。
失意のどんぞこに落ちた彼女はブログの常連メンバー達と町へ繰り出し、やけ酒を飲んで大騒ぎ。
そこを運悪く巡回父兄に補導された挙げ句、大会出場を自粛させられた彼女は、さらに逆上して運営委員会の会長を襲撃。
その様子がたまたま居合わせた人間のデジカメによって保存され、ネット上の動画サイトにアップされる。
たまたま、寄付金の使い込みで問題されていた会長をエレキギター滅多打ちにするその雄姿はあらゆる場所で讃えられ、彼女はいちやく時の人となった。
が。フィギュアを心から愛する彼女は、フュギュア以外のことで自分が注目されるという環境に嫌気が差し、ソウルジェムはいよいよ真っ黒に。
静かに練習に明け暮れられる場所を探しても、そんなものはそうそう見つからない。
行動派の彼女が起こした最後のアクションは、練習できる場所がないなら作ってしまえというものだった。
こうしてサッチーは新しい練習の舞台を求め、広くて使いでのある場所を求めて夜の町へと消えたのだった。

以上。運命に翻弄される、哀れな少女の物語である。

「………まあ、いい加減もう慣れたけどさ………馬鹿馬鹿しくない?」
「お願い言わないで………空しくなるわ。ホントにやめて………」
「……………今頃はまどかと泳いでた頃かしら」

三人は、市営プールのボイラー室に来ていた。
キュウべぇから得た彼女の極めてアレな個人情報によって、グリーフシードが孵化する場所は簡単に特定できた。
すなわち、グリーフシードの反応が検出された付近で、最も広く、スケートリンクとしての代用が可能な場所である。
サッチーは物質から熱量を奪う魔法が得意であったそうで、たびたび魔女を凍り漬けにしては愛用のエレキギターで粉砕したとか。
夏場のプールは人々でごった返すが、結界を作って閉じこもる分にはそんなことは関係ない。
なにより、この大きなプールは誰の目から見ても目立つ。
魔女とは言っても大元は人間である。
より目立つ、使いやすそうな場所を選ぶのは必然なのだ。

「外の連中は気楽でいいよな……」
「……よしなさい。本当に」
「………暗いわね。色々な意味で」
ゴンゴンと音がして、ボイラーが唸っている。
ただでさえ日中は暑いというのに、部屋の中にはボイラーの熱気と恐ろしい湿度が充満し、地獄のような熱さとなっていた。
部屋の中は真昼なのに薄暗く、カビと塩素が混じり合った独特の臭気が立ちこめている。
小さな天窓から光が差し込み、プールサイドから上がる歓声が嫌が応にも耳に入ってくる。

「……もうドクペねーの?」
「まだあるわ。でも炭酸が抜けてる」
「紅茶が飲みたいわ……」

前日までの気合いはどこへやら、すでに三人の精神と肉体は限界へ達していた。
キュウべぇは古式ゆかしい肉体労働でもってグリーフシードを探索中だが、この広い整備区画の中、手探りで手のひらサイズの物体を発見することは期待できまい。
ほむらが左腕の腕時計を確認すると、時刻はすでに十四時半。
一度全員で昼食を取ってから探索を開始して、すでに三時間以上が経過していることになる。

―――――そろそろ本格的な休憩を取らなければ。
いくらベテラン魔法少女が勢揃いしてるとはいえ、長時間作戦に従事していれば士気は嫌でも下がる。
加えて、この暑さと湿気である。
体温の調整ぐらいは魔力でどうにでもなるとはいえ、キュウべぇの情報によれば、今回の魔女は相当強力らしい。
ほんの僅かでも魔力を無駄にすれば、不覚を取る可能性もあるし、
この区画に彼女が潜伏していることが明らかである以上、感覚器官を麻痺させれば致命的な事態を招きかねない。
暑さや湿気の揺らぎから、魔女を感知することは十二分にあり得る。
人間の五感は、時に魔力をも凌駕する探知能力を持っているのだ。

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579 :ドキドキプールサイド 転 02 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 11:59:02.29 ID:4TLHDJUI
「肌が荒れそうね……」
「つうか、腹減ってきたんだけど」
「…………………」

文句を垂れているのは士気が下がってきている証拠だとは言え、三人は真剣に、慎重に探索に取り組んでいる。
見つからないことに業を煮やし、分散しようと言わないのが何よりの証拠だ。
今回の魔女が強力であるという指摘を飽くまで念頭に置き、それを判断の材料として行動できるだけの能力は維持している。
杏子も、マミもこの道に関してはプロフェッショナルなのだ。
―――――十四時五十分。そろそろ限界だろう。
ドクターペッパーの炭酸が抜けまくっていることも大きな懸念材料だが、侵入する際に魔法のスタンガンで説得した警備員も気掛かりだ。
ロープで簀巻きにしてギャグボールを加えさせてロッカーに丁寧に放り込んだとはいえ、なんらかの問題で発見されていないとも限らないし、
複数の警備員がいるとしたらそろそろ交代に来てもおかしくない。だが次も上手く説得できるとは限らない。

「二人とも」
ほむらがこの区画を脱出することを提案したその時、『用務員控え室』という掛札のある部屋、その中に、一人の少女がいることに気がついた。
この管理棟自体が、かなり老朽化しているのだろう。
暗い廊下から見渡す室内は、光量の少なくなった蛍光灯のせいで、ことさら薄暗く見える。
ところどころに染みのあるクリーム色の壁面は、くすんだ灰色となっており、
時たま、室内に置かれたぼろぼろの自販機がちかちかと点滅しては、室内に少女の影を作り、そして消えていった。
いかにも、ホラー映画に出てきそうなシチュエーションである。

少女は……恐らく高校生ぐらいだろう。
サッチーは女子高生らしいので、一致しているはずだ。
濃紺色のショートボブをいくつものピンで留め、爽やかな純白のサマードレスを着た、どことなくグラマラスな体型の女性だ。
俯いているため、その横顔は窺い知れないが、椅子に腰掛けたまま身じろぎすらすることなく、ただただ天井だけを見ている。
その魂が抜けたような様相は、どこか恐ろしさを感じさせた。

「…………っ」
少女を確認した三人が、一瞬にして息をのむ。
余計な行動は起こしていない。
まだ彼女が魔女だと確定していないうえに、突然行動を起こせば失敗を招く危険性もあるからだ。
三人は息を殺したまま、壁に半身を貼り付け慎重に部屋の様子を窺った。

(見えないわ。退きなさい)
(ちょっと杏子。もうちょっと詰めなさい)
(へ、変なとこ触るんじゃねーバカ!!)
(うるさいわ)
(で、でかい………)
(触り返してどうするのよ!)

少女はほむら達から見て、向かいの壁を向いているので表情は窺い知れない。
カバーの傷んだパイプ椅子に浅く腰掛け、手を放り出し、足をぶらぶらさせた状態で、天井を見つめている。
蛍光灯が点滅し、机上の何かに鈍く反射した。
大きな蛇革のハンドバッグ、そこからはみ出た何か。
真っ赤なエナメルのシューズ、その下部に銀色のきらめき。
スケート靴。

最前列にいる杏子がソウルジェムを取り出すと、呼応するかのように鈍く光を放つ。
鈍く、黒ずんだブラックライトのような光。グリーフシードの反応。
サッチーだ。間違いない。

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580 :ドキドキプールサイド 転 03 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 12:00:02.42 ID:4TLHDJUI
三人は顔を見合わせた。
杏子が身をかがめて、素早く周辺の状況を確認する。
薄暗い廊下に面した長方形の部屋、大きな長机と、対になって置かれた八組のパイプ椅子。
そのうち、彼女は最も入り口に近いパイプ椅子に、背を向けた状態で座っている。
部屋の小さなドアは内側に向かって開け放たれている。
ドアノブに引っかかりでもしない限り、侵入がばれることはないだろう。

(とにかく一度説得してちょうだい)
(あたしがやるの?)
(あなたなら出来るわ)
(頑張ってね杏子)

ひそひそとつぶやき声で会話する三人。
ほむらが杏子に説得を任せたのは、杏子の意外なほど聞き上手な性格を知っているからだ。
大雑把でがさつな印象を受ける彼女だが、それは彼女の意外と大らかな性格の裏返しである。
彼女には人の苦しみや痛みを理解するだけの意外と広い心があったし、なにより、
逆境にいる人間を力づける話力と、根性を持っている。意外だが。
その気になれば、人をぶっ叩いてでも前を向かせてみせるという彼女の意気込みは、落ち込みきった人間には意外なほど有効なのだ。
ほむらは、恐らく杏子がやり遂げるだろうという確信を持って、彼女に忍び寄る杏子を見つめていた。
頼りになる女性である。
恐らく、マミがいなければ彼女がチームのリーダーになっていたのは間違いないだろう。

(………あなたなら出来るわ)

杏子は、獣のように息を潜めて、しかし平静さを持って部屋の中に足を進めた。
サッチーは部屋のすぐ入り口に腰掛けている。もう、すぐ手が届く距離だ。
チャンスは一度きり。
もし自分が失敗したら、彼女は魔力を行使して、自分たちを結界の中に引きずり込んでしまうだろう。
杏子は、かつて自分の目の前で魔女になった女性のことを思い出していた。
あの時は自分の力が及ばなかった。

しかし、今度こそは―――――

杏子は決意を固めると、拳を握って彼女にゆっくりと忍び寄ると、

「………ッッ!!」
サッチーの横っ面、その顎の先に、山をも動かすようなショートアッパーを叩き込んだ。

サッチーは悲鳴をあげることすらなかった。
彼女は椅子に座った状態から、まるで修験者のようにふわりと浮き上がると、
横並びになったパイプ椅子を片っ端からなぎ倒し、部屋の反対側にあった給水器にぶつかって仰向けにぶっ倒れた。
給水器が横倒しになり、外れたパイプからどばどばと水が溢れて出してくる。
倒れたサッチーを油断無く睨み、反撃を警戒して戦闘態勢を維持する杏子。
まさしく、歴戦の戦士のみが醸し出せる重厚な佇まいである。
やがて、こぼれだした水が杏子の爪先に届いた頃、杏子はようやく両手を下げた。

「………やったぜ」
満足げな顔で振り向き、親指を立てて大戦果を報告する杏子。
その横顔に「ティロ・フィナーレ」マスケット銃の銃把が直撃した。
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581 :ドキドキプールサイド 転 04 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 12:00:43.48 ID:4TLHDJUI
マミが渾身の力を込めて振るった銃床は、鼻と唇の間にある人体急所を正確に、強烈に殴打した。
杏子は右半身から壁に叩き付けられ、大きくバウンドすると、先程までサッチーの座っていた椅子に激突し、
そのままの勢いで机を横滑りさせた後、変身が解け、髪を振り乱してその場に突っ伏した。
杏子の顔面から大量の鼻血が流れ落ち、先程のマミの一撃で飛び散った血液が薄汚れた壁面に飛び散ると、
薄暗い室内にスプラッタ映画そのものの色彩を描いた。
床に倒れた杏子の鼻血も、床を満たしていたミネラルウォーターと混ざりあい、鮮やかなマーブリングとなっていく。
僅かに開いた窓からは、プールサイドの歓声が未だに聞こえてきており、
自動販売機の唸る室内にこだまして、その静けさを嫌が応にも強調していた。

―――――薄暗い部屋に倒れる二人の少女。

灰色の壁面に刻まれた惨劇の傷痕。
まさに、死屍累々である。




「……………………」
「……………………」

まるで時間が止まったかのような静けさが、突如して打ち破られる。
ずばっ!とTシャツを翻す音がすると、杏子が背筋の力だけでその場に起き上がった。
その目には涙をいっぱいに溜めながら、両鼻から大量に鼻血を吹き出した恐ろしい形相で、ほむらとマミににじり寄る。
「ッにすんだテメェ!!!」
めっちゃヤンキー言葉である。
杏子が男言葉を使うのは、彼女が相当キてる証拠だ。
杏子は瞬く間に変身を終えると、手に持った槍でマミに齧り付こうとし、
「この馬鹿!」
珍しく、語気を荒げたほむらによってもう一度張り倒された。

「脳ーーーー!!!」
自動拳銃のクロームグリップで頭頂部を激しく殴打され、地面を転げ回る杏子。
ほむらはそんな親友兼先輩のもがき苦しむ姿を意にも介さず、さらに徹底的な攻撃を加え続けた。
「私は『説得しろ』と言ったはずよ杏子。
  一体、どこの誰が全力で拳を叩き付けなさいとあなたに言ったの」
能面のように表情を凍り付かせたまま、銃把で杏子を連打するほむら。
ガン、ゴン、と鈍い音を立てて、銃把が杏子の頭を徹底的に破壊するが、
無表情でじっとその場を眺めるマミは、決してほむらを止めようとはしなかった。

それから数分間の間ほむらは杏子を殴打し続け、流れ出る杏子の血で床が真っ赤に染まりきった頃、杏子はようやく体を起こした。
杏子は床に転がった給水器のボトルで頭から水を被り、喉を潤しながら全身に飛び散った血糊を落とした。
どうも、自分がなんらかの失敗をしたのだと自覚したらしい。
だがそれがどういう失敗かは理解してないようだ。まるで躾を受ける犬か何かである。
「くっそ……あんただってさっき、用務員のおっさんを『説得』してたじゃないか」
用務員のおっさん。
巡回中に後ろからほむらの魔法のスタンガンを喰らい、ロッカーに放り込まれた彼。
確かに説得と言えば説得である。
が、それは飽くまで一部の業界用語的な物で、日常会話で使うようなものではない。
「それで、あの有様になったわけ?」
マミが冷ややかな目で杏子、そして部屋の一角で血を流して倒れるサッチーを見やる。
魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 11
582 :ドキドキプールサイド 転 05 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 12:02:17.44 ID:4TLHDJUI
サッチーは美人だった。
はっきりとした切れ長の吊り目。手入れの行き届いた細い睫毛にパッチリした長い睫毛。
シャープな輪郭と、左右の前から飛び出したぴょこぴょことした触覚のような髪の毛。
きつめの印象を与えるが、しかし、人目を引きつける鋭利な美しさを持つ面立ちだった。
少なくとも、彼女が『通常の状態』なら男女問わず、その容姿に惜しみない賛辞を贈ったはずだ。
が、今の彼女は両の鼻孔からおびただしい量の鼻血を垂れ流し、ときおりビクンビクンと痙攣している。
普通の人間があの顔面の彼女を見ても、恐怖血塗れ女だとしか思わない。夜道で会ったら悲鳴を上げて逃げ出すだろう。

「はぁ……いいでしょ別に。さっさと踏んじばって浄化しちゃえばもうそれで終わりじゃん」
理にかなっていかると言えば……この上なく効率的である。
人間の意思という物をやり取りするのは難しい。
相手はすでに魔女になる寸前、紙っぺらのバランスの上に立つような状態だ。
例え、それが百パーセントの善意から贈られた言葉ですら、彼女にとっては重荷にしかならないかもしれないのだ。
ぶん殴って気絶させ、ソウルジェムの汚れだけさっさと取る。
魔女化さえ回避してしまえば、あとでじっくりと説得して、やり直しを決意させることは出来るだろう。しかし。

「正義の魔法少女がこんなことするわけないでしょ!!!」
ぶんぶんとドリルとおっぱいと銃を振り回して怒るマミ。
まあ、怒るのも無理はない。そんな正義の魔法少女は聞いたこともないし、いても困る。ここにいるが実際困っている。
様式美がどうこうとかではなく、なんだか間違えてはいけない物を間違ってるのだ。
「あー……もう。殴っちゃったもんはしょうがないでしょ。
 その子が間違いを犯す前に止めることが出来た。あたしたちはそれを喜ぶべきじゃないか。な?」
「それはそうだけど……な?じゃないわよあなた……」
「…………はあ。杏子とは後で私が話しておくわ。
 ええ。今は事態が一歩好転したと思っておきましょう」
「そうそう。何事も前向きにならないと」
不満たらたらなマミと、嫌々折り合いを付けるほむら。開き直る杏子。
なんともゆるゆるでぐだぐだだった。

「まったく……もういいわよもう。……ほら。早く立ちなさい」
銃をしまったマミが杏子に手を差し伸べる。
ほむらはサッチーを拘束する準備に取りかかってるようだ。
手にはギャグボールと荒縄を持ち、テーブルの上には蝋燭や鞭が置かれている。
杏子はまだガンガンと痛む頭を振って、どうにか立ち上がろうした。
「あんたがやったんだろ…………ん?…………んん……?」

しかし、杏子は腰を地面から上げようとして、再び地面に腰を着いてしまう。
訝しげな顔をしてもう一度腰を上げようとするが、ドレスの裾がどこかに引っかかっているようで、またしても尻餅をつく。
ほむらがもたつく杏子を叱咤しようとしたその時。
ようやく三人は事態に気がついた。

「「「――――!?」」」

杏子のドレス。その端の部分が凍り付いている。
零れた給水器の水に触れ、びしょ濡れになっていたその部分は、今や一枚の板のように固く凍てつき、
杏子が放り投げた給水器のタンクからこぼれ落ちた水は、地に着く端から凍り付き、ぴしぴしと音を立てて弾けている。
空気という空気が冷たく張り詰め、あらゆる水分が氷粒となって辺りに立ちこめていた。
部屋の壁という壁、物という物に露が降り、霜となってはさらさらと散っていった。
廊下との間に張られたガラスに次々とひびが入り、すでに部屋の内側から廊下は確認できない状態だ。
冷却された電子が急速に不活性化し、蛍光灯からは瞬く間に輝きが失われ、部屋は薄暗い闇に閉ざされようとしている。
魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 11
583 :ドキドキプールサイド 転 06 ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 12:04:35.28 ID:4TLHDJUI
三人の意識の中ではゆっくりと。しかし、現実には超高速で事態が変化していた。
心の冷え切った氷上の踊り子。絶望した魔法少女、佐知のりか。
その魔力の奔流が物理の世界を浸食し、そして、空間そのものを隔絶しようとしているのだ。

佐知のグリーフシードが全てを呑み込むかのような、黒い光を放っている。
蛍光灯が消えた、などという可愛いものではない。
そこから放たれる負のエネルギーが周囲のエネルギーを食らいつくし、引き込ずり込んで、周囲を暗闇へと変えていくのだ。
グリーフシードが膨張するように輝きを増していく。急激に、急速に。
食らいついたエネルギーをそのうちに溜め込み、絶望への相転移を始めようとしてるのだ。
だが、その恐るべきはその余りにも強烈な魔力の高波。
それはまるで津波のように押し寄せる、この部屋を、この施設を、この周辺全域を呑み込まんとするばかりの大渦だった。

そう。変化は一瞬だったのだ。
部屋全体が冷却され、片っ端から凍り付いていくその様。
三人の戦士は、例え一瞬の馬鹿騒ぎを隔てたとしても、その兆候を見逃すはずがなかった。
現に佐知が目の前で倒れ伏し、血を流していた時でさえ、ほむらもマミも彼女から意識を離すことはなかった。
全てが一瞬にして変化した。
佐知の魔力は、ただの一瞬にしてこの部屋を凍り付かせるほどに、冷たく、そして強大だった。

変化は一瞬。そして対応するのも一瞬。全てが全て一瞬のうちだった。

「「「――――っ!」」」
すでに佐知は魔女として活動を開始している。
その魔力が、なにより明確な殺意を知らせていた。
そして、三人がほぼ同時に動いた。

ほむらが左手に魔力を集中させる。運命の歯車が逆転する。
光を歪曲し、太陽をも凍り付かせる、不可逆を可逆とする異形の魔術。
宇宙の法則をも一方的に捻じ曲げる絶対無比のその力が発動し――――しかし、完成までには到らなかった。
佐知の暴力的な魔力が生み出す物理を超越した負のエネルギーは、ほむらの世界をも浸食し、その歯車を凍り付かせていた。
時間は止まらない。ただ、ゆっくりと進んでいた。
佐知の静かにして苛烈な抵抗は、ほむらに殺意にも似た危機感を与えさせた。

もはや拘束は不可能。討ち倒すほかに方法はない。
そう判断したほむらは五十口径の自動拳銃を取り出した。
一秒が十秒へと引き延ばされた時間の中で、猛烈なマズルフラッシュと共に弾丸と薬莢が吐き出され、ほむらの網膜を強烈な光が焼いた。
人体最大の急所、頭部にたったの三発。なぜたったの三発だったのか。四発目を撃つ前に決着は付いた。
佐知のりかが動き出してから最速で撃ちだされた最初の一撃は、寸分違わず佐知の頭部に命中した。
二発、三発と弾丸が佐知の頭部へと撃ち込まれ、その全てが佐知に触れた瞬間、運動エネルギーを失って静止した。
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584 :ドキドキプールサイド 転 07[sage]:2011/04/06(水) 12:05:42.27 ID:4TLHDJUI

マミが魔力を編み込んでいく。
佐知の動きを、魔力を封じ込める拘束の糸が紡がれ、織られ、束ねられ、
あたかも一つの空間となって佐知の周囲に殺到する。
束縛の結界が佐知を完全に取り囲み、まさにその体を拘束せんとした瞬間、
その全てが中空で氷の束へと変わり、力を失い崩れ落ちた。

杏子が吼える。
床に倒れ伏した状態のまま右手を頭上へ掲げると、そこに深紅の槍が現れ出でた。
そのまま槍を片手で保持し、上体と腕の力のみで投擲する。
ただそれだけの力で放り出された槍は、ほむらが時の流れを遅くした世界の内において弾丸よりもまだ早く、最速のタイミングで佐知へと迫った。
槍は吸い込まれるように佐知へと突き進み、地面から突き出てきた氷の柱に撃ち返されて、屋根を突き抜け虚空の彼方へと消えていった。

ほむら、マミ、杏子。
その三人の一撃はことごとくにして逸らされた。
四者の繰り出した一瞬の攻防、その帰結。
その全てが佐知の優勢を語っていた。

「消えて」

初めて佐知が口を開いた。
地面に倒れ伏し、その体を凍り漬けの状態へと変えたまま、全てを呪った憤怒の瞳で、頭上の三人を睥睨した。

――――魔力が走る。

佐知のソウルジェムが圧壊する。
己の内側から奔る負の感情が希望の総和を凌駕して、その魂の形を内側から打ち砕いた。
その瞬間、佐知のりかの魔力が現実を塗りつぶし、非現実を顕現させた。

世界が開く。世界が閉じる。
魔女の城へと破滅の馬車が蹄をならし、絶望のサバトが始まろうとしている。

光が四人を包み込んだ。
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585 : ◆2GQkBO2xQE [sage]:2011/04/06(水) 12:10:39.12 ID:4TLHDJUI
予告無しに投下するとかそもそも失敗しすぎた。

今回は前回からやたらと時間が空いた上に、最初の最初しか百合要素が無くてしかも長い……
途中でブチ切って、まとめてどっかに上げるべきかもと思ったけど、
もう半分投下した状態だったから結局こっちにやることに。
あと転とか書いてあるけど、次で終わらないことにも気づいた。

前半部分覚えてない人は、下からお求めください。
http://loda.jp/madoka_magica/?id=1154
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590 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 12:38:03.93 ID:4TLHDJUI
>>587-588
ミラクルな誤字だな……次からはtxtにまとめよう。
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598 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 13:11:52.91 ID:4TLHDJUI
前にそんな話してたけど、決着つかないし、つかせる気がないならどうでもいいんだと判断した。
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611 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 13:50:30.36 ID:4TLHDJUI
>>609
杏子にとってのさやかは魂の欠片だよな。
自分が無くしてた大切な何かを持ってる人ってイメージ。
眩しい。だけど近づきたい。でも恐くて近寄れない。そんな感じ。
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619 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 14:47:49.26 ID:4TLHDJUI
>>615
普通にあるあるだと思う。
っていうか、妹いたって過去のせいで杏子は普通に姉ちゃん属性でしょう。
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623 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 15:58:27.12 ID:4TLHDJUI
>>622
さやかはアレじゃない?愛して欲しくて愛してるってのが見え隠れしてると思う。
本人絶対に否定するであろう、根底的な打算ってやつが。
愛される立場になったとき、愛を返す立場になるのか、愛されるがままに愛されるのか、そこは強く気になるとこだな。
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628 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 16:21:12.51 ID:4TLHDJUI
>>625
そりゃそうだけど、さやかはそれ人一倍強いんじゃないかって話。
愛されたい願望強いのがさやかだと思うし。
で、さやか自身がそれを人一倍否定したがるから余計ドツボなんだと思う。
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634 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 17:29:18.61 ID:4TLHDJUI
ほむさや妄想みなぎってきた。
なにか出てくるかも。ぷりっと。
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661 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 19:20:30.87 ID:4TLHDJUI
>>660
オススメのSS作家見つけたら、ブクマ見てそっから探したりすると良い物見つけやすい。
ピクシブってこんな便利な物なのかと思ってる最近。
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694 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 21:11:18.43 ID:4TLHDJUI
>>691
渋で大人になった杏子のイラスト発見して、胸が熱くなったのを思い出した。
杏子って十年経ったらイケメン甚だしいスーパー姉ちゃんになってるだろうな。オイ。
胸が熱くなるぜ。
魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 11
713 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 21:56:24.08 ID:4TLHDJUI
あの世に人間はいなかろう。
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735 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/04/06(水) 22:36:07.23 ID:4TLHDJUI
まどかパパは宅配屋のイケメンとか巡回のおまわりさん食いまくってるよ。


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