- スイートプリキュア♪で百合2
635 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 15:51:44.08 ID:y0lDjq+D - 停電復帰したので初投下させていただきますー
以下ひびかな
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636 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 15:54:10.87 ID:y0lDjq+D - たくさん本があるね、と言ったら奏が怪訝な顔をした。
「そんなにないわよ」 「でも、いっぱいだよ」 「響の部屋には本、ないの?」 「あるけど、こんなにはない」 「ふうん」 奏と口をきくようになって数カ月。 つまらないすれ違いが原因でケンカしていた1年間を取り戻す、ってわけではないけれど、今私と奏はそれなりに仲良くやっている。 そんなわけで、なんやかやと理由を付けて訪れることが多くなった奏の部屋は、1年と少し前の自分の記憶の中の光景とあまり変わりがない。 今日も特に訪問理由はないのにこうして奏の部屋で特製ケーキをパクつかせてもらっている。 普段荒んでいるとは言わないけど、お腹がいっぱいになると自然こころに過剰な余裕が生まれるらしい、私は部屋を見渡して言ったわけだ。たくさん本があるね、と。 「奏って本そんなすきだったっけ」 「そんなに好きってわけでもないけど、面白いから読むだけよ」 「面白い、……ねえ」 あんな小さな文字を追うくらいならサッカーボール追ってたほうが百倍面白いと思うけど。 それを見透かしたように、 「たまには響も本読んだら?少しは筋肉で出来た脳みそが活性化するかもしれないわよ」 「だぁぁれが全身筋肉で出来てるってぇぇ?!」 「響以外に誰がいるのよ」 むぅぅ、と睨み合うこと数秒。 そしてお約束みたいに「ふんっ」ってしあって、数秒後笑いあう。 「……くっだらなぁ」 ぷ、と停戦を意味する苦笑がもれた。 それを聞いておんなじように奏も笑う。 「でもさ、意外」 「なにが?」 ケーキの横の紅茶をすすりながら奏が返す。 「本、お菓子作りのやつばっかかと思った」 「いくらパティシエ目指してるって言ってもそればっかりじゃないわよ」 本棚にはもちろんお菓子作りに関する本もたくさん並んでいるのだけど、それと同じかそれ以上か、いろんなジャンルの背表紙が読んでくれとこちらに声を掛けてくる。 『かんたん!心理テスト100』 『初心者の編み物』 『イチャイチャパラダイス』 『エンジニア1年生のためのoracle入門』 なんというか、ジャンルのごった煮だ。 女の子女の子している本もあればそうでないものも並んでいるそこは、奏がまわりにもたれがちなイメージを一笑に付すようで、少し笑える。 「そーいえばさ、もうコンテスト出ないの?」 「そう、……ね」
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637 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 15:56:24.01 ID:y0lDjq+D - この話題を出すと、いつも決まって奏の口調は歯切れが悪くなる。
その理由はわかるようでわからないようで、少しわかる。 奏は、コンテストで優勝するようなケーキより、私がおいしいって言ってくれるケーキを作りたいと言ったから。 あれがもしほんとにほんとに奏の本心なら、いいと思う。 だって、ずっと仲直りのきっかけが欲しかったから。 でも今は違う。 ほんとは昔みたいに仲良くしたかったのに、ついケンカ口調になってしまっていつもいつも後から後悔してたのはもう過去なんだ。 だから、奏が私を大事に思ってくれているカケラが見えるとなんだかうれしい。 お礼を口にする機会は持てていないけど、あの言葉はうれしかった。 だから、いつか言えたらいいな、とぼんやり思っている。 「ま、いーやっ!おかわり!」 「もうないわよ!」 「えぇー?まだ入るのにぃー」 「知らないわよ響の腹事情なんて」 「……ちぇー」 見つめていた本棚から離れて、ベッドに転がる。 天井は白い。 「ちょっと響!なに人のベッド占拠してるのよ!」 「いーじゃーん、おなかいっぱいになったら普通寝るでしょ」 「太るわよー」 「その分動いてるからいーんだもーん、奏だったら即デブリンになっちゃうだろーけどねー」 きしし、とからかうと案の定、 「ひぃー、びぃー、きぃー!!」 「たは、ちょ、痛い痛い!!」 馬乗りにされて額のあたりをポコポコ叩かれる。 全然痛くないけど、すれ違ってケンカばっかりしてた頃じゃありえないやりとりがやっぱりうれしい。 反撃してやろうと叩いてくる腕を掴む。外で走り回って運動ばかりしてる私と違って、その手首はちょっとぷにぷにしていた。 それをネタにまたからかってやろうと思った。 その時はそう、思ったのに。 「うりゃっ」 自慢の背筋を利用してバネみたいにぐるりと回転をかける。 「え、……ひゃ?!」 あっさり形勢は逆転し、私が馬乗りになる。 「運動部のエース助っ人の力思い知ったかっ」 …………。 返事がない。 いつもみたいな返しがないから少し戸惑う。 「ゴメン、え、どっか打った?」 ぱ、と掴んだままにしていた手首を離す。 「……かなで?」 「……どい、て」 「あ、うん、あ、……ゴメン!!」 慌ててベッドからおりる。 少し乱れた髪に触れながら奏がそろりと起き上がる。 「……ばか」 「え」 「……やめてよ」 「う、うん」 「……やめてよ……」 ぽす、と奏が額をベッド脇に立つ私の腰に預けてきた。 なんで、なんでだろ。 なんでかわからないけど、ちょっとどきどきする。 奏が触れているところがすごく熱い。
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638 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 15:58:28.31 ID:y0lDjq+D - 「……ばかぁ」
「ごめ、ん」 ふざけてごめん、どこか打った?と聞こうとした時、きゅう、と腕が腰に巻き付いた。 「……なんでああゆうこと、するのよ」 「……ご、めん?」 「なんで謝るのかわかんないなら謝るんじゃないわよ」 それに対してまたごめんと言いそうになった。 俯いているからか、声がくぐもっていて聞き取りにくい。 だから黙った。 なんて言ったらいいのかわからなくて、拘束してくる奏の髪を少しなでた。 ここ打ったのかな……とか思いつつ。 「だ、だからぁ!!」 「ほぁ?」 がばりと突然奏があひる座りから一転、立ち上がった。 ベッドの分、奏の目線が高い。 「顔、真っ赤だよ?」 「……うううるさい!」 「どしたの奏、ベリー変」 「だっ」 「だ?」 「誰の、せいだと……!!」 「え、私?」 「他にいないでしょッ、この馬鹿響っ!!」 「なんですってー?!」 売り言葉に買い言葉。 これじゃ数分前と全く同じ流れになるってわかっているのに口は止まらない。 「馬鹿って言ったほうが馬鹿ってしんないほうが馬鹿デスー」 「小学生の常套句使って反論するほうが馬鹿よ馬鹿、スポーツ馬鹿!」 「ふーんだ、奏なんて運動しないから運動音痴じゃん」 「それは関係ないでしょー!」 「あるよ、しないから誰かさんはよけーな肉ついちゃうんだし?」 うりゃ、と腰から少し上を掴んでやった。 案の定、ちょっぴりプニっている。 「ちょ、ひび……ッ!」 運動音痴というか、たぶん奏にはバランス感覚ってものが欠けているんだと思う。 ちょっとつついただけなのにぐらついて、こっちに倒れ込んできた。 「ひゃ……?!」 「お、っと」 よいしょ、と抱きとめてひとつため息。 やれやれ、こんなだからよく転ぶんだよ。奏太に危ないから走るなとかなんだかんだ言えないじゃん。 「奏は運動ダメだなー」 ぺしぺしと首筋を叩く。 「……そう思うなら助けてよ」 「助けたじゃん、今まさに」 「……うん」 「えー、素直で気持ちわるい」 よいしょ、と抱きかかえていた奏を床に下ろす。 「どしたの、顔真っ赤だけど」 「……ばか」 「まだ言うー?!どこが馬鹿だってのさ!」 奏はまたうつむいた。 うつむいたまま、私の服のすそを少し、ひっぱる。 「……響は……」 「あん?」 「……私のこと、好き?」 いきなり何言い出すんだろう。 そんなの好きに決まってる。
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639 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 16:01:04.31 ID:y0lDjq+D - 「好きだよ」
「……うん」 「なに、どしたのさ」 「奏太のこと、好き?」 「好きだよ」 「…………響」 「なに!今日の奏すんごい変!」 調子狂う。 何が言いたいのかわかんないし、なんか知らないけどどきどきする自分が意味わからなくて少しいらつく。 「わたし、は」 「うん」 「私は……響が、好き、……だよ」 「? 知ってるよ、私だって奏好きだもん」 ごちん。 何故か頭突きを喰らった。 「ばか」 べ、と舌を出された。 意味がわからない。 頭突きの理由も、奏の謎異変も、自分の妙などきどきも。 全部全部、わからない。 フィナーレっ!!
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