- 魔法少女まどか☆マギカで百合萌え 8
439 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 03:06:20.27 ID:syd2/44l - さやかは依存する相手を探してるマミさんと逆に、自分に依存してくる相手を探してるんだよ。
Sどかが、わたしにはさやかちゃんが必要なんだよ。とか言えば、コロッと落ちてくれるよ。 杏子はさやかが依存して欲しがってるの知ってるから、敢えて依存しない。 寂しがって、構って構ってって泣きわめくさやかをひっぱたいて、 しっかりしろバカヤロー!って叱りつけるのが杏子。
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454 :友情伝説 (秋) 01[sage]:2011/03/22(火) 09:09:11.66 ID:syd2/44l - 「ここでインド人を右にするのよ」
「その発想はなかった。ウリアッ上で牽制して、吸い込みの範囲にまで誘導するってことか」 四畳半の狭苦しい部屋に置かれたちゃぶ台の上で、ほむらと杏子は熱心に言を葉交わしていた。 その会話は一般人が聞いても理解できないだろうが、魔法少女がその場にいれば、 それが、ワルプルギスの夜への対策会議だということは、容易に理解できるだろう。 「かなり話はまとまってきたね。確かに、作戦自体は悪くないよ。 ………相変わらず、あんたの手の内は読めないけど」 足を投げ出した姿勢のまま、持ち込んだ菓子袋を物色する杏子。 すでに、辺りには無数の空き袋が散乱している。 「能力については、追々説明することになるでしょうね」 ほむらは、机の上に無造作に積み上げられた、様々な魔女の情報がまとめられたファイルに目を通す。 まだ、十分な数が揃っているとは言えないが、ゆくゆくはもっと充実していくだろう。 記憶を持って時間をやり直せるということは、記憶は、きわめて重要な武器になり得ると言うことだ。 段違いに強力な魔女でもなければ、事前に対策さえ打っておけばどうとでもなる。 そのために、より効率的な魔女狩りを行うための協力者を作っておく必要があった。 佐倉杏子。見滝原近郊に縄張りを持つ、名うての魔法少女。 その手口の強引さと、利己的な振る舞いは、まさに札付きと呼ぶに相応しい。 自分のために願い、自分のために戦う。 願いと対価の呪いを背負う、魔法少女にはうってつけの存在だ。 縄張り意識の強い彼女と接触を持つのは簡単だった。 彼女の縄張りの近くで、派手に騒ぎを起こし、それだけで彼女は姿を見せた。 そして、超大型の魔女であるワルプルギスの夜を餌にすることで、協力関係を構築する。 張りぼての利害関係を結び、効率的に魔女狩りを行うことで、より多くの情報を集められると践んでのことだ。 今後、魔法少女同士の抗争に巻き込まれることも予想すれば、 腕利きの魔法少女と名高い彼女の戦術を学ぶことは、今後の役に立つ……そう思っていたのだが、 肝心の杏子はほむらに目もくれず、月曜発売の少年誌を読みふけっている。 ……さすがにここまであからさまにやる気がないと、不安になってくる。 腕利きの魔法少女だと聞いていたが、これは見込み違いだったか――? まあ、私個人に関心を持っていないのは好都合とも言える。 こちらも同類を装って、淡泊な利害関係を印象づけておけばそれでいい。 もし、仮にそこにつけ込んで攻撃をしてくるようならば、返り討ちにするだけだ。 「追々ねえ。そんな口約束を信用していいもんだかね」 バリバリと音を立てて、菓子の袋を開ける杏子。 足を投げ出し、大口を開けてエビせんべいにかぶりついている。 「信用しあう必要はないわ」 そう。私は佐倉杏子の信用を勝ち取る必要はない。 彼女の利己的な合理性と攻撃性はよく聞いている。 私と同じ。自分の目的のために他人を食らうことを肯定する無頼の輩。 まったく好都合だ。 仮に彼女を殺すことになっても心が痛まずに―――
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455 :友情伝説 (秋) 02[sage]:2011/03/22(火) 09:11:13.95 ID:syd2/44l - 不意に、ほむらの顔、そのすぐ横を、一筋の風が通り抜けていった。
「………………?」 虫でも横切ったのだろうか? ふわりとそよいだ髪を手で整え、ほむらはようやく自分の置かれた状況を理解した。 自分の首に突きつけられた鋭い切っ先。 それは紛れもなく、佐倉杏子が獲物としている武器に違いなかった。 いつの間に?混乱状態に陥りながら、必死で記憶の糸をたどるほむらは、 すでに、目の前の危機に対応するということを失念していた。 「でかい顔して、人に協力しろだなんて言うから、よっぽど腕の立つ奴だと思ってたんだけど。 完全に期待はずれだね……生かしておいても役に立たないかな?」 杏子はすでに変身を終えている。 ただの一瞬。 杏子は無防備だと考え、自分の考えに没頭したその瞬間に、杏子はすでにほむらを殺す準備を終えていたのだ。 (ここまで力に差があるなんて……) 完全に侮っていた。 相手と一対一の状況なら、時間さえ止めてしまえば絶対に負けはしないと思っていたのに。 今迂闊に魔法を発動させれば、次の瞬間には自分の首と胴体は生き別れだ。 そもそも、喉元に刃を突きつけられている状態で、銃や爆弾をどうやって扱えというのか? 緊張しようとする体を押さえつけ、杏子を睨み付けると、杏子もまた、ほむらを無言で見つめていた。 いたぶっているのか?あるいは、こちらにまだ手が残されていると警戒しているのか? どちらでもいい。せめて、ほんの少しでも隙が見つかれば―― 「ま、弱い者イジメなんてダセェことしても仕方ないか。……ちっ、さっさと立ちな」 ほむらの思惑とは裏腹に、杏子は、あっさりとその槍を下ろした。 杏子は変身を解除すると、菓子袋を持って立ち上がる。 「………え?」 ほむらは状況を把握できていない。 彼女は自分の首を刎ねようとしていた……そうなのではないか? 「とぼけた声出してんじゃないよ……これだから三下は」 杏子はほむらを見下ろしている。 「――――食いな、三下。 力を付けとくんだ。これから、あたしが嫌って言うほどしごいてやるよ」 うんまい棒を差し出して、杏子は、これから起こる楽しいことを待ちわびてるかのように笑った。 ――――――― Lv20 「足を使え三下!魔力を温存しろ!楽しようと思うな!」 「……………っ!!」 杏子に叱咤されながら疾走するほむらは、息を乱しながら大型の機械の影へ飛び込んだ。 「おい、なにやってんだあんた!さっさと片を付けるんだよ!」 周囲にはおかしな液体の満たされたドラム缶やら、なにやらが散乱している。 いかにも危険物だらけの工場のような空間で、乱れ飛ぶ丸ノコの刃を躱しながら、ほむらを罵倒する杏子。 こんなの躱せるわけない。魔力を使えば、こんなのすぐになんとか出来るのに! ほむらが胸中で毒づく一方、杏子は神速のステップで、ブリキの玩具のような魔女の攻撃を回避していた。 「さあ行くよ三下、突っ込め!」 薄ら笑いを浮かべながら、ベルトコンベアの向こうに佇む魔女へと突撃する杏子。 槍をがむしゃらに振り回し、飛んでくる工具を片っ端から撃ち落としていく。 あの巴先輩だって、あんな恐ろしいことはしていなかった。 この女、頭がどうにかしているんじゃないの?
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456 :友情伝説 (秋) 03[sage]:2011/03/22(火) 09:11:58.01 ID:syd2/44l - 周囲の状況は相も変わらず。
工具は唸りを上げて飛び交い、周囲の機械に当たっては盛大に火花を散らしている。 死ぬことや、怪我が痛いわけではない。 回復のために魔力を消耗したり、四肢を失って身動きが取れなくなれば不利になるのは明白だ。 あんな馬鹿騒ぎに付き合って、時間を無駄にする必要はない――――― 佐倉杏子は、相変わらず矢面に出て大騒ぎをしている。 彼女に攻撃が集中している間なら、魔女の不意を打てるはず。 それは佐倉杏子を一方的に囮にするという、薄暗い手段の筈だったがほむらは決断を迷わなかった。 いや、決断すらしなかった。 彼女は自分の考えつく中で最善の作戦を、純粋に実行に移しただけだ。 機械の影から影へと回り、慎重に魔女へと近づいてゆく。 魔女は杏子に夢中なようで、スパナやらレンチやら、雨のような工具を杏子に浴びせ続けている。 好都合だ。この際、佐倉杏子には徹底的に暴れてもらうとしよう。 ほむらがスイス製の無反動砲を担ぎ、機械の影から魔女を覗き込もうとした瞬間、ほむらの背後に鈍い音がした。 姿勢を再び下げたほむらが、素早く首だけで振り向くと、そこには真っ二つとなったビニール缶が転がっていた。 「……………………………………」 思考が停止する。このビニール缶は、果たして、危険か、そうでないのか? しかし、『鼻をツンとつく臭い』がする。 工事現場やペンキ屋などの前を通ると感じる、お馴染みのアレだ。 思考が終わるのは一瞬だった。 高速で回転する工具が飛来し、地面を削り取って火花を上げ――――大爆発が巻き起こった。 「な、なんだ!?」 順調に歩を進め、魔女の本体と対峙していた杏子は、爆発の閃光を感知した瞬間、魔女の後ろに飛び込んだ。 足を絡め取ろうとしている銅線を叩き切り、爆発の起こったであろう方向に目をやると、 そこには、ほとんど瓦礫の山となった機械の陰に隠れ、必死で工具の雨をやり過ごしているほむらの姿があった。 外傷がないので時間を操作して逃げたのだろうが、魔力の消耗が激しいようで、地面を這うようにして攻撃を躱している。 ―――――あー、駄目だ。ホント駄目だ。あいつはマジで三下だ。 杏子は戦闘中だということも忘れたかのように、おおっぴらに溜息をついた。 不覚を取った。 まさか、魔女の攻撃とはほとんど関係がない場所で、こんな失態を犯すとは…… ほむらは地面を這いつくばっていた。 周囲の機械はほとんど吹き飛び、身を隠せるような障害物はほとんど存在しない。 かろうじて身を隠しているこのガラクタも、何かが命中する度に小さくなってゆく。 魔力の消耗が激しい。先程の爆発から身を隠すとき、時間を大幅に遅らせたためだ。 すでに肉体の修復が間に合っていないのか、保護し損ねた鼓膜から血が流れている。 ……佐倉杏子が魔女を倒さなければ、勝ち目はない。 悔しいが認めざるを得ない。本当に悔しい。 私は、もう誰にも頼らないと決めたのに。 佐倉杏子の下で三下扱いを受けながら魔女退治を続けてきたが、佐倉杏子は筋金入りのサディストだった。 巴マミは魔力の行使を指導するとき、あんなに優しく丁寧に教えてくれたのに、あの女はまるで違う。 私のことを痛めつけて、苦しむのを見て楽しんでいる。 出来もしないことを押しつけて、こんなことも出来ないのだと嘲笑し、優越感に浸るクズだ。 あの胸くその悪いクラスメートと達何が違う。あの女こそ魔女だ。 佐倉杏子は笑うだろう。私がここで倒れている限り。 ちくしょう、あの女。そんなの絶対許してたまるか。 がたがたになった三半規管のせいで、体を起こすのには大変な苦労が伴った。 爆発の閃光のせいで目がちかちかして、おかしな煙を吸い込んだ喉は酷くひりついている。 魔力は少し回復してるが、体のために使うほどの余裕はない。 泣いても笑ってもこれっきり。この一撃で勝負を決めなければならないのだ。
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457 :友情伝説 (秋) 04[sage]:2011/03/22(火) 09:13:42.49 ID:syd2/44l - 「―――まだ、一発ぐらい撃てるだろ?」
脇を見ると、いつの間にか佐倉杏子が立っていた。 憎たらしいことに、ほとんど傷が見当たらない。 ただ、よく見ると、左の頬に一筋の傷が出来ていた。 「……一発だけよ」 口に溜まった血を吐き出す。 どうせこっちはもうボロボロだ。後でなんと言われようと構わない。 だが、このまま無様に寝てるのだけは絶対に我慢がならない。 「チャンスはあたしが作る。あんたは撃つだけでいい」 槍を回転させ、飛び交う工具を弾く。 その顔は真剣その物で、いつものニヤついた笑いはどこにも見えない。 「………笑わないのね」 「………笑わねぇよ」 鎖が唸り、立ちこめた煙を吹き飛ばし、魔女の体を十重二十重にも戒めた。 「やっちまいな」 意識を集中する。 時計の歯車が止まるイメージ。 魔女の動きが鈍くなり、やがて完全に止まる。 不細工なブリキの体の中央に、佐倉杏子による損害であろう、大きな穴が空いていた。 ガタガタになった照準機を無視し、ありったけの魔力を体に注ぎ込む。 滲んでいた視界がクリアになる。 今はあの玩具のネジの一本まで、手に取るように把握できる。 引き金を絞る。 轟音と共に銃身が震え、私の手から吹き飛んでいった。 弾は当たっていない。瓦礫の山を吹き飛ばし、大きな土埃を巻き上げただけだ。 結局、私は何も出来なかったのだ。 「よくやったね。後は寝てな」 彼女が何を言っているのかわからない。 私は失敗したのだ。誰かに誉めてもらうことなんて出来るわけがない。 だけど、体がもう限界だ。優しい眠りなど、私は求めていないのに。 せめて―――――悪夢が見たい。 ほむらの体がその場に倒れるのを見た刹那、灼熱の鎖が魔女と二人を隔てた。 幾重にも編まれた鎖が空間を断絶し、肌を焦がす炎の熱まで打ち消した。 炎で照らし出されてとはいえ、工場の中は薄暗い。 杏子はポケットの中を苦労してまさぐると、シンプルな、白いレースのついたハンカチを取り出し、ほむらの傍らに跪くと、彼女の顔を丹念に拭いた。 工場内では、狂乱した魔女が生み出した工具が飛び跳ね、杏子の生み出した結界を幾度となく叩いている。 作業に没頭する杏子の頬を、一筋の血が流れ落ち、ほむらの腕に赤い雫を作り出した。 一際大きな魔女の雄叫びが走り、吹き上げった炎が次々に破裂し、工場は激しい炎に包まれた。 杏子はほむらの手にハンカチを置き、立ち上がった。 炎のように激しい目で魔女を見据え、そのまま振り向くこともなく、魔女へと槍を突き出した。
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458 :友情伝説 (秋) 05[sage]:2011/03/22(火) 09:14:05.06 ID:syd2/44l - Lv45
杏子は、ヤカンの置かれた石油ストーブの前で、赤い袢纏を翻し、両手を広げて暖を取っていた。 こたつの上には簡素ながら白磁のティーセットが置いてある。 簡素すぎるほむらの部屋にしては浮いた意匠であり、ボロい石油ストーブや、思いっきりテレビのBGMと相まって、ある種のシュールな空気を醸し出していた。 「昼食は何にするの」 狭い四畳半の部屋で、タンスから黙々と服を引っ張り出していたほむらが口を開いた。 これまた、杏子と色違いの黒い袢纏を纏っている。 「コンビニ」 体ごとストーブに向きながら、首だけ使って思いっきりテレビをみる杏子。 今の二人の光景は、まさに残念な美少女二人組である。 「2kmも向こうよ」 眉一つ動かさず、しかし、わかる人間にだけわかる不機嫌さを滲ませるほむら。 しかし。 「拒否権なんてあるわけない」 結局、ほむらが帰ってきたのは三十分ほど立ってからだった。 「…………………どういうことなの?」 「なに?目上に紅茶煎れさせておいて文句言う気?」 ほむらと杏子は、こたつで紅茶を飲んでいた。 台の上には所狭しと物が置かれており、置ききれなくなった菓子袋は床の上に散乱していた。 ちなみに、乙女の花園を守る肌着類も、天井近くに吊されている。 「その逆よ。あなたが、こんな手の込んだ紅茶の煎れ方をするとは思わなかった」 ティーポットを温め、茶葉の分量を正確に計量し、適切な温度のお湯を使い、茶葉を蒸らす。 いわゆる、ゴールデンルールというものがある。 良い茶葉を使う、という一つを除けば、今二人が飲んでいる紅茶は、 紛れもなく『美味しい紅茶の煎れ方』に忠実に煎れたものだと言える。 「あたしからすれば、同じ金払って同じ物買って、それでわざわざまずい食い方する理由がわかんないよ」 「食へのこだわり?あなた、もっとジャンクな人だと思っていたわ」 杏子の食事は、まさにジャンク漬けだ。 食事のほとんどはコンビニやスーパーの総菜、菓子だけで済まされているし、 たまに外食に行ってもカレー・ラーメン・丼物・ファーストフード。 明らかにゴールデンルールなんかとは無縁の人材である。 「食に貴賤はなんてないよ。米も、駄菓子も、コンビニ弁当も、 美味く作ろうと思ってる人間が作るから美味いんだよ」 行動を共にするようになってから数ヶ月。 暁美ほむらにとって、佐倉杏子は未だに未知の部分が多い。 ほむらが知っている佐倉杏子は風評などよりも遙かに複雑だ。 暴力的な自己中女。食い意地の張った凶悪魔法少女。 そんな薄っぺらな風評は、彼女のほんの一面も表していない。 少なくとも、今のほむらにとって、佐倉杏子はもっとずっと深い自分を持っているようにしか見えないのだ。 彼女が利己的であることは間違いない。 グリーフシードを得るために使い魔を見逃すことは見慣れた出来事だったし、 時には、喧嘩の仲裁と称して他の魔法少女に喧嘩をふっかけ、グリーフシードを奪うことすらあった。 彼女は、魔法を、力を自分のために使うことを決して躊躇わない。 悪だと言う人間からすれば、はっきりと悪だと言える人間だろう。 だが、ほむらはどうしても彼女が悪だとは思えなかった。 彼女は、優しいのだ。 恐らく、間違いなく。 そして、ほむらは、それが絶対に理解してはいけない感情だとわかりつつも、杏子の優しさを、理解せずにはいられなかった。 自分には優しさは必要ない。自分は誰にも頼らない。 そう決めたにも拘わらず、佐倉杏子があんなにも優しいから、ほむらは、杏子を好きにならずにはいられなかった。 槍を突きつけられ震えていた自分の前で。動き疲れて地面に突っ伏す自分の前で。 工場の中を飛び交う刃の直中で。彼女はいつでも誰かの味方でいたのだ。 彼女は決して、自分の優しさを認めないだろう。 他人のために祈ってはいけないと知っているから。彼女は全部自分のせい(ため)にしてしまう。
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459 :友情伝説 (秋) 06[sage]:2011/03/22(火) 09:23:27.22 ID:syd2/44l - 「三下。砂糖取って」
顔を上げると、杏子がティーポットを手にしていた。 退屈そうな表情で、先程買ってきた少年誌を眺めている。 こたつから半身を伸ばし、角砂糖の瓶を手に取る。 最近は、この生活も悪くないと思い始めてきた。 「………これぐらい、自分で取ったらどうなの」 だが、あなたの前で弱音は吐くまい。 今はあなたより弱くとも、私は強く在らねばならない。 「三下風情がナマ言ってんじゃないよ。ま、最近は少しはマシになってきたけど」 あなたに優しく接することもない。あなたに優しくされることもない。私には全て必要ない。 あなたの優しさを、私は一つも受けられない。 「いえ。言わせてもらうわ……せめて、呼び方ぐらいは変えさせてもらう」 強い力、強い心、誰より強い願い。それは、魔法少女になにより必要な物。 誰より魔法少女に相応しいあなたから、その全てを受け継ぎます。 「これからあなたを杏子と呼ぶわ………問題ないわね?」 だから、私の心は、全てここに置いていく。 ――――― Lv91 「という話だったのよ」 「うっ、うおおおおおーん………!!!な、なんていい話だー!!ぐすっ、か、感動した!」 「うえええん!!!ほ、ほむらちゃあああああん!!うええーーん!!」 「き、杏子が……私のティーセットを持っていてくれたなんて………ぐすっ」 四畳半の部屋に、四人の女子が集まっていた。 みな色とりどりのハンカチで目元を拭いては、鼻を啜っている。 「………ちなみにこれが、杏子からもらったハンカチよ」 ほむらが鞄から取り出したのは、一見すれば薄汚れた布にしか見えないものだった。 抜けきらない煤があちこちにこびり付いている上に、赤黒いシミが布の大半を覆っている。 「もっと、綺麗にしてあげたりしないの?」 「漂白すればきっと綺麗になるけど…………このままにしておきたい」
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460 :友情伝説 (秋) 07[sage]:2011/03/22(火) 09:24:05.87 ID:syd2/44l - このハンカチは杏子との友情の証だ。
全てを置いていくと決意したほむらが、唯一捨てきれなかった情愛の印だ。 あの時、杏子がいなければ、きっとほむらは生き延びることすら出来なかっただろう。 憎まれることを恐れずに、馬鹿馬鹿しいほどに押しつけられた一方通行の愛情。 誰も頼らないと決めたほむらを理解することなく、しかし、誰よりも近くで守ってくれた戦友。 忘れられるはずもない。 結局、ほむらは全部を抱えてここにいる。 「うんうん。わかるなー、その気持ち。思い出の品だもんなー」 「愛を込めてプレゼントしたティーセットで杏子とお茶会………ああ、いいわね……すごくイイ」 「あなた空気読んで」 「う、うるさいわね。厳しくされないと燃えないマゾ美ほむらさんに、何を言われても悔しくないわ」 「で、でも、あたしもちょっと強引なほうがいいかなー、なんて。………べ、別に杏子のことじゃないけど」 「えへへ。でも杏子ちゃんってかっこいいよね」 「まどか。私のほうがカッコイイわ」(ファサッ) 「三下よりはあたしのほうがカッコイイぞ」(ファサッ) 「いじめられっこだったものね。三下さん」(ファサッ) 「よっ…………って、相変わらず狭い部屋だね」 めいめいが好き勝手に盛り上がり始めたとき、ノックもなしに杏子は部屋に飛び込んできた。 「わあ……杏子ちゃん」 杏子が入ってくるやいなや、目を輝かせるまどか。 先程までのヒロイックなストーリーで、乙女心がビンビンご機嫌になってるようだった。 「よっ、なんか知らないけどご機嫌じゃん。いいことでもあったん?」 「えへへへ。ねえねえ、杏子ちゃん、見て見て!」 まどかは靴を脱いだばかりの杏子の袖を引っ張って、ちゃぶ台まで連れて行き、 テーブルの上に広げられた、ほむらの大切な宝物を指さした。 「ねえ、これ何かわかる?」 まどかは、杏子の袖を引いたまま満面の笑みだ。 ほむらは、気持ち頬を赤らめてそっぽを向いている。 さやかは、意地悪そうな顔でほむらの頬を突き回す。 マミは笑顔を浮かべたまま、杏子の紅茶を用意した。 杏子はちゃぶ台の前に腰掛け、口を開いた 「ああ、これは―――――」
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461 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 09:45:27.07 ID:syd2/44l - ほむ杏トーク議論が盛り上がっていたので書かざるを得なかった。
次こそ、萌える何かを書きたい。 ぶっちゃけ萌えないよね、これ。 杏子口調すげぇむずい。 書いてると必ず、これでいいの?ってなる。 男言葉使ってるようで、「じゃない?」とか「だよ」みたいに中性的な言い回しが非常に多い。 ――――― Lv-1 「ああ?こりゃ随分汚い雑巾だね………これでテーブル拭いたの?」 「えへへへ……ねえ、杏子ちゃんは体が痛いのと、心が痛いのどっちが大丈夫かな……? パパがね。自分が痛いことにあったことないと、人の痛みはわからないんだって言ってたよ。 杏子ちゃん。いっぱい泣いてね。だって、ほむらちゃんだけ泣くなんて可哀想だもんね」 「美談がオチに変わるって言うなら、もう死ぬしかないじゃない。杏子」 「あんたってホント馬鹿あんたってホント馬鹿……………こいつ、もう、あたがしどうにかしちゃうよ?」 「その必要はない。この魔女は私の獲物」
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467 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 10:47:49.58 ID:syd2/44l - >>465
真面目な話・綺麗なオチを書くと死ぬので発作的に書いた。 ほむらとあんこの議論を見て、ほむらちゃんあんこだいすきだよ!と主張したくて書いたのがこれ。 謎のLvは>>101のせい。好感度最低からスタートとか言ってたので、 じゃあほむらが好感度ゼロ(無関心)の杏子と友情を育む話、ということでこうなった。 途中、Lv91を割愛しようかという考えが浮かんだ瞬間、ケツの穴が開いたので、計画通りに入れておいた。 Lv-1はあってもなくてもいい。みんなのケツの穴に任せる。 自分の妄想に任せて何か書こうとすると、お前らの素晴らしい妄想力が邪魔をして憎い。
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594 :俺たちゲーセン族 1/2[sage]:2011/03/22(火) 22:42:15.27 ID:syd2/44l - 「アイアイアー、っと」
「イアイア」 比較的低難易度の曲を、完璧に近いスコアで攻略する杏子。 側には、ハムスターのようにポッキーを囓るほむらが佇んでいる。 平日のゲームセンターは人もまばらで、杏子の華麗なステップを賞賛するギャラリーは見られない。 「準備運動にしかなんないなー」 首をぐるりと回しながら、体を揺する杏子。 魔法少女ヤグディンの二つ名を持つ彼女に、星二つの曲はさすがに退屈だったらしい。 じゃあなんでそんなの踊ってるんだと言えば、ほむらが『あの曲聴きたい』とリクエストしたからである。 杏子ちゃんマジ優しい。しかし、半金はしっかり取った。杏子ちゃん、マジ厳しい。 「ふひはふぁへへ」(次はアレね) 束になったポッキー口いっぱいに頬張りながら、ガンシューティングの筐体を指さすほむら。 異常な難易度、飛び出す3Dゾンビ、血や腐肉の臭いなどが流れる臭気装置がコアプレイヤーに大人気となった、 ガンシューマニア御用達のロングセラーゲームである。 ちなみに、アンケートによって、女性プレイヤーは一万人に一人という統計が出ており、 そもそも、プレイヤー自体がほとんどいない。若年層は言わずもがなだ。 そんな金食い虫が未だに撤去されていないのは、店員の趣味だともっぱらの評判である。 「あんたじゃ、それこそ準備運動にしかならねーじゃん」 暁美ほむらにとって、3Dゾンビの群れなど張りぼてに等しい。 仮に、五万三千人の三次元ゾンビが町を埋め尽くしたところで、マジカル☆銃把パンチだけで全滅するのは明らかだった。 「ほむほむ………ゴクリ………あなただって、そこらの音ゲーぐらいで満足出来る腕前ではないでしょう」 「あたしのは趣味だし」 気がなさそうに、プライズ横に備え付けられた交流ノートを眺める杏子。 『プライズにグリシー置いて☆』 『S♪Mが強キャラばっかつかっててうざい』 特に興味を引く書き込みはない。いつも通り、平和そのものだ。 ノートに簡素なウサギの落書きを書く。首の両脇に金色の縦ロールを書き込む。 台詞も一筆。『ボクとお友達になってよ!』 「何かを撃つのはいいわよ」 親指と人差し指を立てた手をくるくると捻るほむら。 飽くまで、達成感と趣味嗜好は別問題だと主張するらしい。 「ヤローでも探せばいいんじゃないの?」 ヤローとは、魔法少女御用達のレンジターゲット兼サンドバッグ、みんなのアイドル、キュウべぇのことである。 今の彼はm、魔法少女にとって大切な物(使用済み)を回収して回る大事な仕事をしているのだが、 魔法少女に対する過去の仕打ちが大いに恨まれ、魔chAA板に虐殺専用スレが立てられるような有様になっている。
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595 :俺たちゲーセン族 2/2[sage]:2011/03/22(火) 22:42:39.26 ID:syd2/44l - ―――――
[まちゃんねる] 魔法のインターネットサーバー上に魔法で構築された、魔法少女専用の魔法のBBS。 魔法少女が日夜集まっては、安価で自分のソウルジェムを晒したり、安価に書かれた武器で魔女を倒しに行ったりと、 魔法少女界のカオスが集結する、乙女達の憩いの園である。 通称ツボ。キュウべぇが、まるで怪しい壺を売り歩く商人のようだという揶揄による。 ――――― 「この前まではそうしてたのだけど、先週ハワイから絵葉書が届いたわ」 「ハワイ?」 怪訝そうな顔をする杏子に、無言で魔法の鞄から取り出した絵葉書を渡すほむら。 燦々とした太陽の下、海辺では体中にワセリンを塗りたくった、首から下だけムキムキのキュウべぇがポージングを決めていた。 「……………コラだろ、これ」 最高に嫌そうな表情を浮かべた後、ビリビリと絵葉書を破り捨てる杏子。 「その発想はなかったわ」 「あるだろ……」 「あるある。ないわね」 相変わらず萌えない会話である。 だが、そこには真に厚い友情を交わしあった人間同士にしか発生しない、独特の連帯感が感じられる。 そういうことにして欲しい。 「まあ、いいや。付き合ってあげんよ」 「私、飲み物買ってくるわ」 「あたしのも頼むわ。ドクペ以外で」 「布教中」 「………同意を得てやれよ」 結局、二人はドクターペッパーを飲みながら、片手でゾンビを全滅させ、肩を並べて帰宅し、 物のついでとばかりにマミの家に押しかけて、賑やかな一晩を過ごした後、三人仲良く登校したのであった。 「いいだろ……マミ」(歯がキラリ) 「巴マミ、私に全て任せなさい」(ファサッ) 「やだもう……しょうがないんだから」(ノリノリ)
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611 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/22(火) 23:17:12.29 ID:syd2/44l - このスレでイチャイチャしたピンク色の妄想書いてるやつはもっと仕事するべき。
自分が萌えを表現しようとすると、だらだらしたぬるい友人関係にしか見えないアレしか出来ないっぽい。 好感度がゲージをブチ切って、一周したところで安定してるようなのが凄く萌える。 つまり、みんながみんな常時イチャついてるんだよ!! >>598 クールじゃないよ。常に39℃の保温状態だよ。 転校生の手ってあったかいナリ……
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