トップページ > レズ・百合萌え > 2011年03月02日 > RShxezXd

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名無しさん@秘密の花園
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Sound Horizonで百合 第二の地平線

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Sound Horizonで百合 第二の地平線
107 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/03/02(水) 22:51:07.50 ID:RShxezXd
>>106
ヒロイン同士の組み合わせに限らなければ青髭子は新妻ちゃんと是非ッ!

>>104
仰る通りです。わかりづらくてすみません

思いつきで書いて即投下するとぐだぐだで申し訳ない
かといって時間をかけて煮詰めてもごらんの有様だよ!!!
7レス分投下します。
>>73の続きで雪白姫と王子。好きには種類があるよねという話。
ついにエリーゼさん待望の復讐劇が始まる……かも。
Sound Horizonで百合 第二の地平線
108 :1/7[sage]:2011/03/02(水) 22:52:57.78 ID:RShxezXd
「エリーゼ」
「メル、イツモノ言ワナイノ?」
「いつまでこのバカップルを見ていればいいのかな?」
「ダッテ、マダコノ娘達、復讐シテナイモノ」
「楽しんでる?」
「ウフフッ。ホラァ、イツモノ言ッテヨォ」
「真っ白なページに書き綴る物語。策略をめぐらす作者の作為的な嘘。
深い虚構の闇に葬り去られた――知られざる八人目の女優よ。
自らの気持ちを偽ることなく、さぁ唄ってごらん……」


――むかしむかしあるところにとても美しいお姫様がおりました。
けれどそのお姫様は普通とは違いました。お姫様は女の子しか愛せなかったのです。
そんなお姫様を受け入れてくれる女の子はどこを捜しても見つかりません。
お姫様はひらめきました。生きている女の子が駄目ならば死んだ女の子ならどうでしょう?
物言わぬ死せる乙女ならば女の子である自分を受け入れてくれるに違いない。
例え自分を愛してくれなくとも……。
女の子しか愛せないという特殊な性癖をもつお姫様は理想の花嫁を捜す旅に出ました。
そうして見つけた硝子の棺で眠る姫君。
お姫様が愛したのは王子様ではなく小さなお姫様。
これは幸せなお姫様と硝子の棺を飛びだした小さなお姫様の物語――。


「雪白姫」
僕の可愛いお姫様。小さな体が震えているよ……。
僕は寒くはないけれど、雪白姫は小さいからすぐ凍えてしまうのかな?
なんて思いながら細い肩に回した腕で強引に向きを反転させる。
「冷えてきたね。そろそろ中に入ろうか」
「でも……」
雪白姫は文字通り長い黒髪を引かれる思いなのか、雪だるまを作り続ける三人を振り返った。
「風邪がぶり返すと大変だよ」
「うん」
促すと雪白姫は案外素直に従った。子供は素直でいいなあ……なんて口に出すと
子供扱いしないでとふくれっ面になるのでやめておく。ふくれっ面も可愛いけどね。

室内へ戻るとむわっとした空気が襲い掛かってきた。むせ返るほど暑い。
襟元をくつろげようと指先を伸ばすと、それを見ていた雪白姫が明らかに動揺し始める。
「あっ。えと。あの、あのっ」
「えっ?」
ああ、僕が言えないようなことがしたいなんて言ったから警戒しているのかもしれない。
服を脱ぐこと=そういうことでもないのだが説明するのは骨が折れる。
精一杯背伸びして大人ぶっても、やはり本当はそういうのが怖いのだろう。
いや、僕も特段これといって怪しいことがしたいわけではない。
ただ純粋に仲良くしたいだけであってやましいことはない。本当だからね!
「この部屋暑いね」
「そうかしら?」
今、言い訳したと思われた。否定したいけど怪しまれること間違いなし。
僕が曖昧な逃げの笑みを浮かべると、雪白姫は言葉を続けた。
「寒いところから戻ってきたばかりでそう感じるだけよ」
「そうだね」
話が終わると雪白姫は僕からすーっと離れて、床に落ちてるナイフを拾いに行った。
もしや三人が「変態」だとか言ったから避けられてる?嫌われちゃった?
僕は内心焦りながらも努めてポーカーフェイスで倒れた椅子を元に戻して着席。
雪白姫も何事もなかったかのように向かいにちょこんと着席して、籠から林檎を取り出す。
「林檎剥いてあげるね」
そういえばあんな修羅場があって忘れていたけど、僕らはお茶の準備をしていたのだった。
Sound Horizonで百合 第二の地平線
109 :2/7[sage]:2011/03/02(水) 22:55:54.18 ID:RShxezXd
目の前に置かれた砂時計はとっくのとうに空になっている。
僕は恐々とポットの中身を確認して、ポットの中身より渋い顔をした。
時計がないので正確な時間はわからないが、どう考えても必要以上蒸らしてしまったに違いない。
「お茶は淹れなおすよ。お湯をもらってくるから少し待ってて」
ポットを載せた黄金のトレーを持って立ち上がると呼び止められた。
「待って」
「なんだい……!?」
扉の手前で振り返ると雪白姫がこちらに駆けてくるのが見えた。
それだけならとても可愛らしいのだが、彼女は手に銀色に煌くナイフを持っていた。
臆病ではないと自負する僕でもさすがにうろたえる。
な、何が起こったんだ?
もしやさっきの件で犯られる前に殺らなきゃヤ・バ・イ!とでも思ったのか。
そうこう考えているうちに雪白姫がこちらに迫ってくる。逃げ場はない。――ナイフが煌いた!
「ひぃ、いやぁやめてっ」
「行かないで、行っちゃダメーッ!」
「きゃあああああ!」


「なるほど。それで君は――えっまだ早い?おっと失礼。さぁ、物語を続けようか……」


――こんなところで終わるなんて心残りがありすぎる。
こんなことなら雪白姫の心情や成熟具合など考慮せずに自分のやりたいようにやるべきだった。
まだやり残したことが沢山ある。例えばあんなこととかこんなこととか……。
そういえばまだ伝えてないことがあったな……。僕がどれだけ君を好きかってこと……。
……。
…………。
ん、痛くない?覚悟していたはずの鈍い痛みがいつまで経っても襲ってこない。
堅く瞑った瞼を恐々とあける。
「今日はずっと一緒にいて」
「雪白姫……」
はっと我に返ると雪白姫が背中にぎゅうっとしがみついていた。
不意打ちをかまされて胸がきゅんきゅんと高鳴る。
「だってずっと離れ離れだったんだもの。今日はずーっと一緒にいてね」
上目遣いの大きな瞳に見つめられ、いてもたってもいられなくなる。
――危ない。トレーを持っていなかったら押し倒してるところだった。
雪白姫が求愛する小鳥のように甘く囀る。
「お・う・じ」
「ゆ・き・し・ろ・ひ……ってああっ!」
忘れてた!
僕は抱きつかれたままテーブルの前まで移動して、そこにトレーを置いた。
次に刺激しないように雪白姫の小さな手を取ってゆっくりと指を一本一本丁寧に広げてゆく。
そっとナイフを抜き取ってトレーに放った。
「ほっ。雪白姫、ナイフを持ったまま動きまわったら危ないだろう?」
「ごめんなさい」
雪白姫がしゅんと目に見えて小さくなった。僕は身を屈めて視線の高さを合わせると、
聞き分けのない子供を諭すときと同じように雪白姫に話しかけた。
「誰かに刺さったらどうするの?転んで怪我したらどうするの?」
「だからぁごめんなさぁい」
「真面目な話をしてるの。ちゃんと聞いて。世の中には便利だけど危ないものが沢山あってね」
「むぅ……」
「使い方によって人の役に立ったり、人を危険にしたりするんだよ。だからね、きちんと――」
「王子ってお母さんみたい」
「えっ」
「あれはだめ、これはだめ。ああしなさい、こうしなさいってうるさいんだもん」
「あ、あぁ……」
「独り言だから気にしないで」
僕がお母さんだ、と……。雪白姫にとって口うるさい大人は皆お母さんみたいなのか。
だが勘違いしないでほしい。断じて母子ほど年齢が離れているわけではない!
くっ、僕がもっと若ければ……いや充分若いとは思うけど。もっと年齢が近ければ……ッ。
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110 :3/7[sage]:2011/03/02(水) 22:59:54.30 ID:RShxezXd
「とりあえず座ろうよ」
「うぅ……」
雪白姫がいじけている僕の腕を引っ張る。その手に導かれるままに着席する。
「ねぇおうじー、王子ってばあ。もぅどうしたのよぉ」
「…………」
「お話しようよー。ねーねー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。……。
揺さぶり飽きた雪白姫はため息をついて、背後から抱きついて僕の肩に顎を乗せた。
椅子に座った僕と立ったままの雪白姫。背丈がぐっと近づいた気がする。
同じ視線の高さで歩けたらいいのに。でも現実はそんなに甘くはない。

――朝、目が覚める度に彼女の寝顔を見ながらバウムクーヘンのようにぐるぐると考える。
僕がもっと若ければ、背丈が低ければ、男性であれば――。
もっと若ければ――彼女といつも笑い転げて遊んでいられる。
背丈が低ければ――彼女と同じ目線の高さで歩いていられる。
男性であれば――彼女に相応しい王子様になってみせる。
どうして君はもっとはやく生まれてきてくれなかったんだろう。
どうして僕は君よりずっと先に生まれてきてしまったんだろう。
この出会いが生まれるずっと前から決まっていたのなら、どうして神様は僕を女にしたの?
それともこの出会いは気まぐれな女神のいたずらだというのか。
どうして。どうして。どうして。

「そんなの決まってるわ」と雪白姫が耳元で呟いた。
「えっ」
「うふふっ。全部声になってるわよ」
「!?」
慌てて両手で口を塞ぐも後の祭りである。
雪白姫の口癖ではないけれど、僕だって彼女にはいつも格好いい自分を見ていてほしいのに。
こんなことぐだぐだ悩んでいるようでは格好がつかないよ……。
理想の王子様を演じ続けるのは皆が思うほど楽じゃない。
「どうして貴女が私より先に生まれてきたのかですって?
――それは私の為よ。私を探し出す為。私が迷わないように手を取って導く為」
「では君が遅く生まれた理由は?僕は君のいない世界で君を知らないまま何年も過ごした」
「十何年もでしょ」
「ハハハ……きついこと言うね」
「私だってはやく生まれたかったわ。子供扱いなんてさせなかったのに。
ねぇ、王子は私が小さくてよかったって思うことないの?」
「この僕がロリコンだと?」
いつも皆に言われるが、僕はロリコンなどではない。
たまたま好きになった娘が小さくて可愛いお姫様だっただけである。
「うーんそういう意味ではないのだけど……」
雪白姫はうまく言葉に出来ないと、僕の髪に鼻をうずめた。
「私は王子が女の子でよかったと思うわ」
それも口に出ていたのか。居心地の悪さに身を捩るが雪白姫は僕を離してはくれなかった。
動けないのなら腹を括るより他あるまい。僕は覚悟を決めて訊ねた。
「どうしてそう思うんだい?」
「逆に訊いてもいい?王子は女の子なのが嫌なの?苦痛なの?お父さんに何か言われた?
本当は男の子が欲しかったのにー。男の子でないと王位は渡せないーって」
「いいや。父は僕がこうなったことを嘆いているよ」
蝶よ花よと大切に育て上げた姫君が――もとい政略の道具がこんなになってしまって、
父は今頃とんだ番狂わせを喰らっていることだろう。
「ならどうして女の子なのが嫌なの?」
「嫌というか……女では雪白姫を」
と僕は口を噤んだ。女では雪白姫を抱けない(性的な意味で)なんて直接口に出したらドン引きされる!
いや女でも抱けるのだがそういうのはここで説明しかねるというかごにょごにょ。
「私を、なあに?」
「女では雪白姫の理想の王子様に、なれないから……」
よし、我ながらうまい落とし所だ。内心でガッツポーズを決めながら、
頬と頬が触れ合いそうなほど近くにある雪白姫の顔を横目で窺う。
雪白姫は零れ落ちそうな大きな目を更に大きく見開いて首を傾げた。
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111 :4/7[sage]:2011/03/02(水) 23:02:19.26 ID:RShxezXd
「へんなの」
「へんなのって僕は真剣に悩んでるのだが」
「王子は私の理想の王子様なのに」
「女なのに?」
「性別が関係あるの?それともお姫様って呼んだ方がよかった?」
「いや、もうお姫様という柄ではないから」
大変悔しいが、もし仮に今も女性の格好をしていたとしても、
もうお姫様と呼ばれるには少々恥ずかしい年齢であることぐらい僕も承知していた。
「私はお姫様でも王子が好きよ」
……おや、性別のことで悩んでいるのはもしかして僕だけなのか。
「好きになったら女の子とか男の子とか関係ないよね?私、おかしくないよね?」
雪白姫が不安げに瞳を揺らす。
首だけで振り返っていた僕は体ごとそちらに向いて、二人は見つめ合う形になった。
林檎のように赤い頬を両手で挟んで安心してもらえるように優しく微笑む。
雪白姫も悩んでいるんだね。君の気持ちは痛いほどわかる。
はじめての好きという気持ち。でもその相手が女の子だったという戸惑い。
どんどん加速していく好きの気持ち。どうしても止められない焦り。
好きで愛しくて、寝ても覚めても彼女のことばかり考えてる。
こんな自分はおかしいのではないかという不安。
全部僕も経験してきたこと。そして今もまた現在進行形で経験してること。
雪白姫をもっと好きになってもいいだろうか?駄目だとしてももう止められない!
「王子、女の子が女の子を好きになるのはいけないこと?」
柔らかな頬に触れた僕の手にそっと雪白姫の小さな手が重なる。
「いけないことではないよ。僕も雪白姫が好き」
「けれど王子の好きは私の好きとは違うかもしれないわ」
違う?――ドキリと心臓が飛び跳ねる。

好きには種類がある。
家族に対しての好き。友達に対しての好き。恋人に対しての好き。
愛情にも種類がある。
親が子に向ける無償の愛。親や兄弟に向ける尊敬の愛。友達同士の友愛。恋人同士の情愛。
雪白姫は僕を「お母さん」みたいだという。
彼女の僕に対する「好き」は母親のように、兄や姉のように慕っているという意味かも知れない。
その「好き」は嫌だ。家族への愛も素晴らしいものだと思うが僕はその愛が欲しいわけではない。
どうして人は恋をすると欲張りになるのだろう?
神様は欲張りな僕を嫌いになりますか。雪白姫は欲張りな僕を嫌いになりますか。
――神様に嫌われたって構わないから、どうか君は嫌いにならないでほしい。
雪白姫も何か思うところがあるのか、僕らは無言のまま暫く見つめ合った。

「雪白姫はきっと僕を家族のように思っている。尊敬を愛と履違えている」
「王子はきっと私を妹みたいに思ってる。可愛いお花を愛でるそれと同じ」
――違う。と僕らは表情だけで語り合った。
そしてどうか同じ気持ちでありますようにと祈りながら続きを口にした。
「僕の愛はきっと雪白姫の愛とは違う。僕は君を――」
「私の愛はきっと王子の愛とは違う。私は貴女を――」
重なり合う言葉が美しい音色を奏でる。
続く言葉をお互いに感じ取り、泣きそうになる。
「どうして泣きそうなの?」
「君の気持ちがわかって嬉しいからだよ。雪白姫こそどうして」
「私も嬉しいから」
言葉が無くとも想いは伝わる。けど今の僕らにはまだ気持ちを確かめ合う言葉が必要だった。
「僕は雪白姫が好き。だから恋人になってほしい」
「私も王子が好きです。だから恋人になってください」
僕が答えの代わりに赤い頬に口づけすると、雪白姫は照れた笑みを浮かべて僕の頬にお返しをくれた。
想いを伝えるのは勇気のいることだけど言葉にしてみれば至ってシンプルで、
今まで悶々と悩んでいた日々は何だったのだろう?とさえ思える。
しかしそのつらかった日々でさえ、こうして想いが通じ合った今では愛おしい。
「私達、恋人同士になれるよね?」
「なれるよ。誰が何と言おうとなるよ」
「うんっ!」
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112 :5/7[sage]:2011/03/02(水) 23:04:53.16 ID:RShxezXd
ある日、僕は硝子の棺で眠る君を見つけて城へ持ち帰った。
君はとある出来事によって目覚め、僕らは全ての事柄をすっ飛ばしてすぐさま結婚式を挙げた。
愛の告白もせず、それどころか会話だってろくに交わしていない状態で、
お互いをよく知りもせずになんとなく流れで二人は愛の契りを交わした。
それから徐々にお互いを知り合って、分かり合って、漸く告白までこぎつけた。
順番が逆になってしまったけど、これはこれで僕ら「らしい」のかもしれない。
姫のために勇んで棘の生垣に立ち向かったわけでもなく、迷い込んだ見知らぬ森で偶然に見つけ、
真実の愛のキスで目覚めるわけでもなく、とんだ起床で二人は出会った。
雪白姫に伝えたら「ロマンチックじゃない」とむすっと小さな口を窄めるだろうが、
僕はこの出会いに運命を感じている。

「うふふ。なんだか恋人同士ってドキドキするね」
「僕は雪白姫と一緒のときはいつもドキドキしてるよ」
「あらら。ドキドキのしすぎで心臓止まっちゃわないようにね」
くすくすと雪白姫が籠から林檎を取り出した。
またしても忘れていたが、僕らは先ほどからずっとお茶をしようしていたのだ。
今度こそはお茶はともかくとして林檎にはありつけそうだ。
「お茶は新しく淹れなおそうか?」
「だめ。今日はずっと傍にいて」
雪白姫はいつになく頑なだった。
風邪の期間、離れ離れだったのが相当堪えたらしい。
寝込んでいた僕でさえ時々起きだしては雪白姫の姿が見えずに寂しい思いをしたのだ。
きっとすぐに良くなった雪白姫はもっと長い間寂しい思いをしていたに違いない。
だからこうして一緒にいたがるのだろう。そう考えると胸がきゅっと締め付けられる。
雪白姫には寂しい思いをさせてしまったのだから、今日だけと言わず明日も明後日も、
ずっと未来まで出来る限り傍にいてあげよう。いいや、傍にいてほしい。

雪白姫の小さな手が赤い林檎を器用に切り分けて、
真っ白なお皿の上に愛らしいウサギさんが一匹、また一匹と並んでいく。
時折ハラハラさせられたが概ね失敗もなく指を切ることもなく、林檎はあっという間に剥けてしまった。
料理上手というのは本当だったようだ。いや疑っていたわけではないが。
「はいどうぞ、召し上がれ」
「可愛いウサギさんだね」
ウサギさん林檎を摘まんでぴょんぴょんと飛び跳ねさせる。
雪白姫も同じようにウサギさん林檎を飛び跳ねさせた。
ウサギさんは僕と雪白姫の間でご対面してキスをした。
「あ、でも王子にウサギさんは相性悪かったかしら?丸焼きだっけ?焼き鳥?」
「それはもう忘れてください」
焼き鳥の件は黒歴史にしたいというか、既に黒歴史というか。
どうして雪白姫にあんなこと暴露したんだろうか……。穴があったら掘りたい、でなくて入りたい。
「忘れてあげないよーだ。だって王子のことは何でも知りたいし、覚えておきたいもの」
「じゃ僕も雪白姫の恥ずかしいことも知りたいし、覚えておきたい」
「やだぁ、王子のえっちー」
「そ、そういう意味で言ったわけでは」
「でもぉ、知りたいなら教えてあ・げ・る♥」
「ゴクリ……」
「やっぱり教えなーい」
「えぇー」
期待させるだけ期待させておいて、おあずけだなんて僕は犬か。
でもね、どれだけ主人に忠誠を誓った騎士だって牙を剥くんだよ。雪白姫も後悔する日が来るさ。
正式に恋人同士になったのだからこれからは大手を振って色々出来る。
いずれ時期が来たら硝子の棺であんなことやこんなこと……えへへ楽しみだなあ。
おっといけない。また顔が緩んでる。
「寒気がする。とてつもなく嫌な予感がする」
「おや風邪がぶり返してきたのかな?」
「なぁにこの変態、白々しいんですけどぉ。とぼけるならもっと上手にやってくださらなぁい?」
まさかこれは三人からだけでなく雪白姫からも変態だと罵られ、からかわれるフラグ?
なんてことだ……どうして僕ばかりがこんな目に。でも雪白姫になら罵られてもいいかも。
「へんたい」
「否定のしようがないです」
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113 :6/7[sage]:2011/03/02(水) 23:08:12.71 ID:RShxezXd
「お話はそろそろおしまいにして、林檎食べましょ」
ぴょんぴょん、ぴょんぴょんとウサギさんが跳ねて口元にやってくる。

蛇に唆された二人が楽園を追われる原因となった禁断の果実。
招かれざる争いの女神エリスが祝宴に投げ込んだ黄金の林檎。
林檎はいつも災いを呼ぶもの――。

抗えない 誘ってる悪魔 7つめの罪は蜜の味。
「いただきまーす!」
「いただきます……」
白い果肉に歯を立てると甘酸っぱい切なさが口の中いっぱいに広がった。
それは永遠という名の甘い蜜の毒。
「甘くておいしいね」
「うっ」
「王子?」
目の前が真っ赤に染まり、やがて全てが真っ黒に塗り潰される。
椅子ごと床に倒れこんだ僕に雪白姫が駆け寄る。
「どうしたの?苦しいの?」
わからない。声が出ない。体がまるで自分のものでなくなったかのように動かない。
バラバラに切り刻まれて、自らの意思とは裏腹に勝手に組み直されていく。
「しっかりしてよぉ」
今にも泣きだしそうに揺らいだ大きな瞳に僕が映り込んでいる。
泣いてほしくないのに、いつまでも笑っていてほしいのに、幸せにしてあげたいのに僕は無力だ。
ついに涙が零れて雪白姫の真雪の頬を伝い、僕の頬に落ちた。
「人を呼んでくるから待ってて」
行かないで。しかし雪白姫は駆け足で姿を消してしまう。
彼女がいなくなった世界はまるで太陽を失ったかのように真っ暗になった。

いつの間にか、僕が僕を見下ろしていた。
正確に言うと僕と同じ顔をした男の人が僕を見ていた。
僕は重たい瞼をどうにか開けて彼を見上げる。
彼が僕自身だと気付いた瞬間、ページが勢いよく巻き戻った!
始まりの場所から――誰かが僕の物語を書き換える……。


――むかしむかしあるところにとても美しいお姫様がおりました。
けれどそのお姫様は普通とは違いました。
特殊な性癖をもつお姫様は理想の花嫁を捜す旅に出ました。
そうして見つけた硝子の棺で眠る姫君。
お姫様が愛したのは王子様ではなく小さなお姫様。
幸せなお姫様。
真っ白なページに書き綴るのは小さなお姫様との物語。

――歴史が事実を語るように、作者は作為的な嘘で物語を騙る。
誰にも知られることなく虚構の闇に葬り去られた八人目の姫君。
物語の掟。可哀想なお姫様を救うのはいつだって王子様の役目。
そうして書き換えられた童話。
硝子の棺で眠る姫君と彼女を迎えに来る王子様。
哀れなお姫様。
真っ黒に塗り潰されたページに存在した証さえ残せず。


「なるほど。それで君は消されてしまったわけだね。
残念ながら私にはページの外側に干渉するほどの力はない。
だがページの内側にいる君の代わりのあの男にならば可能だ。
さぁ、復讐劇を始めようか」
Sound Horizonで百合 第二の地平線
114 :7/7[sage]:2011/03/02(水) 23:11:30.00 ID:RShxezXd





「おや、復讐するのが怖いのかい?だが恐れる必要はないよ、お嬢さん。
屍揮者は君の味方さ!…………えっ長くなったから一旦切る?なるほど。ならば仕方あるまい」
「連投規制ニ怯エルダナンテ、情ケナイワァ」
「じっくりと復讐の計画を練りながら時が満ちるのを待とう、エリーゼ」
「ウフフ。良ク分カッテルジャナイ、メル。サァ、オ楽シミハ、コレカラヨ。キャハハハハッ!」





一旦切ります。
当初の死因は雪白姫が可愛すぎて出血多量で死亡。平たく言うと鼻血でした。
エリーゼさんに「ばーか」と言われるのがオチなので林檎に変更。


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