- スイートプリキュアで百合
65 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 20:07:40 ID:yb3sTe/y - 響×奏SS@
ちゃんと目を見て、言いたいことが言えたなら。 あたし達は、何かが変わっていたんだと思う。 ずっとそれを願ってきたけど、それでも今は切なくなるだけ。 「―――…、あーあ」 空は青く澄み渡っている。 これくらい綺麗な気持ちで一緒にいて、あの頃は笑いあえていたんだね。 今、その笑顔は誰に向けられているんだろう。 優しくって、可愛い笑顔。 そう、昔から奏は可愛かった。優しくて可愛くて、大好きだった。 青空はそんなあたしを責めるようで、見上げれば涙が溢れそうになる。 そんな青空から逃げるように、あたしはあの聖堂に足を運んだ。 そこは二人の思い出の場所。 ピアノの音と、レコードが焦げ付くような苦い匂い。 ちょっぴりかび臭いのも、あの日のまま。 あの日と同じ椅子に座って、目を閉じた。 蘇る柔らかな音色。 いつだって隣には奏がいた。 あのレコードは、今はどこにあるんだろう。 奏、ちゃんと保管してあるのかな。レコードは大切に保管しないと、すぐにダメになっちゃうってこと、知ってるのかな。 知らない、か。 ていうかどうせ、覚えてないよね、あのレコードのことなんて。 あたしは、ちゃんと覚えてる。 忘れたことなんてない。 一度だって、ないんだから。 今日はあったかいな。 室内だけど、太陽の光をすぐそこに感じる。ぽかぽかと気持ち良い陽なたの香り。 奏の手のひらも、こんな風にあったかかったっけ。 穏やかな睡魔があたしを誘う。 「…奏……」 そっと名前を声に出して呼ぶと、いつだって優しい気持ちになれる。 優しい気持ちになれて、あたしは浅い眠りに落ちていった。
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66 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 20:14:49 ID:yb3sTe/y - 響×奏SSA
頬に生ぬるい何かが触れた。 生ぬるいというより、あったかい。 この温度を、あたしは知っている。懐かしくて、いつだってそこにあったもののような気がする。 そうだ、奏のぬくもりだ。 「……ん…」 「…あ」 「…かな…で…?」 重い瞼を開けると、そこには奏がいた。 あの頃よりも大人びて、綺麗になったその顔。 少し驚いたように目を見開いている。最近は怒った顔ばかり見ているから、そんな表情すら、あたしの胸を優しく締め付けた。 あたしは眠い目を擦った。 擦った後、確かめるように見上げる。 やっぱりそこには奏がちゃんといた。夢ではなかった。 「なんでこんな所で寝てるのよ。風邪引いても知らないわよ」 「ん……、うるっさいなぁ、奏には関係ないでしょ」 「関係ないって何よ、心配してあげたんじゃない!」 「そんなの余計なお世話だよ!」 夢でなくて嬉しかった。奏のぬくもりを忘れていなくて、嬉しかった。 その顔を見るだけで泣きたいくらい嬉しくなるのに、そんな気持ちとは裏腹に、減らず口ばかりが飛び出してくる。 「…寝ているあたしに何かしたでしょ」 「はぁ?な、何もしてない…わよ」 あたしが睨み付けると、奏は目を逸らした。 怪しい。頬に何かを感じたんだ。絶対、何かした。奏は昔から嘘が吐けないタイプだから、目を見たらすぐに分かる。 「あたしの頬っぺに何かしたでしょ。ねぇ、何したの?落書き?」 あたしは手の甲で頬を擦ってみた。 が、そこにはインクの跡なんて残っていない。 「な、何もしてないってば!」 そう大きな声で叫んだ奏の目は、潤んでいた。 あたしははっとする。 言葉を失って立ち尽くすあたしに背を向けて、奏は聖堂の出口へ向かって駆け出した。 その頬は赤かった。 悔しかったのか、悲しかったのか、何なのか。 なんでそんな顔をするの? ねぇ、寝ているあたしに何をしたの? 優しいぬくもりが残る頬を指で撫でながら。 あたしは、その後ろ姿をただただ見送った。 また胸が強く締め付けられる。 息が出来ないくらいに、苦しいよ。奏。 〜終〜
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70 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 20:21:36 ID:yb3sTe/y - 第一話からテンション上がって勢いで書いてしまった。
お目汚し失礼しました。一話の少し前?くらいの話だと思います。 あの場所で思い出のレコードを一人で聴いてる奏とか、想像しただけで萌え禿げる。 「隣に響がいたらな…」なんて思って切なくなってる奏とか… あ、そういえばここにSS投下して良かったんですかね… スレ違いでしたら、本当にごめんなさい。次からは気を付けます。
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87 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 22:57:37 ID:yb3sTe/y - 奏×響SS@
今日はこんなにも良い天気なのに、心が晴れないのは、ショートケーキのスポンジを焦がしてしまったからか。 違う。そうじゃないってことくらい、ちゃんと分かってる。 焦げついた心は、あの日のまま。 今も私の心を揺さぶる。 甘い生クリームのように、どろどろに溶けてしまえば良いのに。 そうすれば、この焦げついた心もきっと、甘く溶けてしまえる。 二人でまた、笑いあえるのかな。 「―――…、はぁ」 ため息はそよ風に流された。 あの頃の記憶を思い描いては、胸を痛めるのにはもう飽きた。 なんでなんだろう。 幼かった私達は、何にも怯えずに素直だったから? ずっと一緒にいられるって、信じて疑わなかったから? 固く結び合ったこの手だって、今では何も掴めない。響の何一つ、繋ぎ止めることは出来ない。 そう思うと、悲しくなった。 私の足は、自然とあの聖堂の方向へと進んだ。 鞄には大切なレコードがしまってある。 宝物のように、私はそれを抱き締めた。 大切にしなくてはならない物が、本当は違うってことくらい分かっているけど。 私のこのやり場のない感情の矛先は、いつだってあの日と変わらない聖堂の静けさに溶ける、このレコードの音色だった。
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88 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 22:59:23 ID:yb3sTe/y - 奏×響SSA
ローファーの踵が石畳を叩く音が響く。 それはあの日と違う音。 身長も伸びて、歩幅も大きくなった。足音の間隔も、リズムも、変わってしまった。 私と響に、あの日と同じものなんてあるんだろうか。 この聖堂は今も一ミリも変わらず、いつだって透き通るようなひんやりとした空気で。 変わってしまった私を、優しく包み込んでしまう。 対照的すぎる私を許すように、優しく。 ゆっくりと、通路を進む。 正面に置かれたピアノが放つ光も、あの日と何も変わらなかった。 「…あ、」 人の気配を感じて足を止めた。 そこは、いつも響が座っていた椅子だった。 驚いて恐る恐る見下ろす。 その時、時が止まったように思えた。 響だ。 思わず立ち止まる。息を止める。 緩やかに呼吸を繰り返す胸が、上下して。 長い睫毛は黒々と輝く。 口をうっすら開いて眠るその寝顔は、あの日と変わらない。 長い四肢を持て余した子供のようなその寝姿に、私の胸は、不思議な音を立てた。 きらきら輝いていたもの。 私が大好きだった、響の笑顔。 二人で遊んでいた時の笑顔は、どんな笑顔よりも輝いてたって自惚れているの。笑ったって良いよ。響。 私は、頬にかかるその髪を、指先でそっと払った。 薄い唇がぴくりと動いたけれど、響は目を覚まさなかった。
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89 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 23:03:07 ID:yb3sTe/y - 奏×響SSB
なんでそんな事をしてしまったのか、分からない。 無意識でした、なんて、言い訳にしかならないのかもしれない。 私の唇は、その柔らかい頬に吸い込まれるように。一瞬、ぴったりと合わさった。 「……ん…」 「…あ」 「…かな…で…?」 その長い睫毛が瞬く。 私は咄嗟に、一歩離れた。それは大きな一歩だった。 自分の行動に、動揺する。 触れた頬の柔らかさと温かさに、動揺する。 キス……しちゃった。 響の頬に、それはキスと呼ぶものかは分からないけど。唇で、確かに触れた。 ちょっぴり甘かった。 上体を起こした響が、私を見上げる。 まどろんだ瞳が、その表情を幼く見せた。可愛いと、そう思った。 「なんでこんな所で寝てるのよ。風邪引いても知らないわよ」 そんな動揺を自身で隠す。 私の口からは、可愛げのないトーンで言葉が漏れた。 「…うるっさいなぁ、奏には関係ないでしょ」 「関係ないって何よ、心配してあげたんじゃない!」 「余計なお世話だよ!」 響の目が、だんだんといつもの目に変わってく。 その鋭い目付きはいつだって真っ直ぐで、見透かされているような気分になるから、怖くなる。
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90 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/02/06(日) 23:12:00 ID:yb3sTe/y - 奏×響SSC
「…寝ているあたしに何かしたでしょ」 「はぁ?な、何もしてない…わよ」 ほら、やっぱり見透かされてる。 心臓がずきずき痛む。 たかがキスだよ、小さい頃は、ふざけてよくしてたじゃない。戯れ合って手を繋いだり、抱き合ったり、たくさんしたじゃない。 ねぇ、だから責めるような目で見ないで。 私をこれ以上、嫌いにならないで。 「あたしの頬っぺに何かしたでしょ。ねぇ、何したの?落書き?」 響は汚いものでも拭うように、手の甲で頬を擦った。 それを見て何かが、音を立ててバラバラと砕け散っていった。 無意識だったんだよ。 そんな言い訳をしたって、響はどうせ聞く耳なんか持ってくれないでしょ。 そう思うと目の奥が熱くなって、視界がぼやけた。 「な、何もしてないってば!」 二人きりの聖堂に、その声は反響。 私は、その場から逃げ出した。 大切なレコードの入った鞄を抱えて。 いつになったら晴れるのか分からない私の心が、この青空にコントラストを描く。 零れ落ちた涙が、唇の端を濡らす。 手の甲でそれを拭った。 全然甘くなくて、胸が痛いよ。 涙はこんなにもしょっぱいんだね。響。 〜終〜 >>70です。 先ほど投下したものの奏目線でした。連投申し訳ありません。しばらくROMります。 生クリームプレイのer…とか密かに待ってますw 早漏過ぎてごめんなさい。お目汚し失礼しました。
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