- エーケービー四八で百合SSPart2
813 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/26(水) 21:06:52 ID:CvaHF57a - あつみなで、あっちゃん視点。
萌えとかなくてごめんなさい。
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814 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/26(水) 21:07:57 ID:CvaHF57a -
サイコロ状の箱の中で、膝を抱えて蹲っていた。 箱の中は空っぽで、乾いていて、私の他には誰もいない。 薄暗い灰色の世界。 じっと目を凝らしていると、段々と周りが黒くなっていく。 黒に侵されていく。 この箱が、私の心の現れだと気付いたのは、もうずっと前のこと。 四方の壁が、私を守る防壁に見えた。 気付いた後も、特に変化はなかった様に思えた。 でもそうじゃなかった。 いつからだろう。 箱の天辺から、ポタポタと雫が滴る様になったのは。 ずっと蹲っていた私の足元に、水たまりが出来始めたのは。 今ではお腹の辺りまで浸水してきている。 もう、蹲ってなんていられない。 * 「……ゃん、あっちゃん。おーい」 「……何だたかみなか」 耳にすんなり入り込んでくる優しい声に呼び起されて、私はまどろみの中から意識を浮上させた。 悪態を吐きながらも、久しぶりに見るたかみなの顔に、体の力が急速に抜けていく。 このところ映画の撮影ばかりのスケジュールで、メンバーとの仕事があまりない。 最後にメンバーと収録があったのはいつだったか。 思い出せないくらい、久しぶり。 「たかみな背縮んだ?」 「逆に伸びた」 「……」 「嘘でス。でも多分縮んでもないと思う」
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815 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/26(水) 21:08:23 ID:CvaHF57a -
くだらない遣り取りに普段の感覚が戻ってくる。 ああ、そうだ、この感じ。 この場所では、私はたかみなに、他のメンバーに甘えられる。 とても居心地の良い場所。 「たかみな」 「んー?」 「ちょっとこっち」 「何ー?……ってちょいちょいちょい」 アンケートを真剣に書いているたかみなを呼び寄せて、後ろからギュッと抱き締める。 今日もトレードマークの大きなリボンは健在で、私の頬を髪と一緒にくすぐった。 体ごと全部抱き締めたかみなは、とても動き辛そうにしながらも、アンケートを書く手は止めない。 私も書かなきゃ。 右利きのたかみなのアンケートに、左利きの私が反対側から落書きを。 ちょっと書いただけだったのに、気付けば随分とファンシーなアンケートに仕上がっていた。 「私のにはたかみなが落書きしてね」 「うぇーっ何でや」 たかみなの背中にぴったりくっ付いた私の心に、また雫が降ってくる感覚。 でも違うんだな。 たかみなと一緒にいるときは、ポタポタじゃなくて、ザーザー。 雨の様に降り続き、箱の中が満水に近付く。 水位はやがてお腹から胸へ、胸から首へ。 あと少しで、息が出来なくなる。 息が出来なくなったらどうなるんだろう。 考えたことがなかった。 「あっちゃん、いつまでこの体勢を続けるのかな」 「えーっとね、たかみなの背が伸びるまで」 「そっかそっか、つまり一生ってこと……って違う!自分で言ってて悲しいよ」 知ってるんだよ、たかみな。 実は私分かってるんだ。 箱の中に流れ込んでくる水の名前。 それは恋心。 それも、たかみなへの恋心なんだよ。 たかみなは知らないだろうけど、もうすぐ私の心の箱は、たかみなへの恋心で一杯になっちゃうんだよ。
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816 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/26(水) 21:09:16 ID:CvaHF57a -
「たかみな」 「どしたの」 「たかみな」 「なんだよー」 「たかみな」 「ん?」 「……好き」 「あっちゃんがデレた!」 あ、ヤバい。 水が一気に。 本日の私の天気予報は、雨のち、豪雨。 「高橋もあっちゃんのこと好きだよ」 ところにより、防壁が決壊するでしょう。 ご注意ください。 水が一杯になって、ミシミシと嫌な音を立てながら、箱は遂に壊れた。 今まで見えなかった箱の周りは、全部私がよく知っている恋心で満たされていて、結局は壊れようが壊れまいが同じことだった。 酸素がなくなったこの水の中で、私は今日から段々と溺れ死んでいく。 たかみなが、私を救助してくれる、その日まで。
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817 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/26(水) 21:09:53 ID:CvaHF57a - 終わり。
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