トップページ > レズ・百合萌え > 2011年01月01日 > HVq6Nxrm

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名無しさん@秘密の花園
平沢 唯 × 田井中 律 2

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平沢 唯 × 田井中 律 2
663 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:02:22 ID:HVq6Nxrm
「唯、私さ、すげーやなことがあったの。大したことじゃないかもしれないけれど、でも、すごく嫌だったんだ」
「え……ごめん」
「違う。唯と関係……あるかもしれないけど、やなことっていうのは唯のせいなんかじゃない」
「よ、よく分かんないけど」

唯は少し戸惑っているようだったけれど、唯が私を嫌な気分にさせたんじゃないってことが分かればオーケーだ。

「そのやなことっていうのが頭に残ってて……家に帰ってきた唯に、思わずさ、その、八つ当たりしちゃったんだ」

ふう、と自嘲気味に息を吐く。

「最低だよな、私。勝手に八つ当たりして、すねて、唯に余計な気使わせて。……だから、私こそごめん。唯が謝る必要なんてないんだよ。私が悪いんだ」

唯に、頭を下げた。
そんなことで、と呆れられるだろうか。怒られるだろうか。
どっちでも、受け入れるつもりだった。
すると、私の頭に唯の手がのって、そのまま撫でられた。
驚いて顔を上げると、唯が優しい笑みを浮かべている。

「……りっちゃん、やなことっていうのは、もう解消できた?」
「え、あ、うん。本当に、唯見てたら、気にならなくなった」
「そっかあ。なら、よかった」
「唯……怒って、ないのか?」
「ええ? なんで? いやあ、私がりっちゃん手伝えていないのは事実だし」
「だから、それは口が滑っただけだって。私、勝手に八つ当たりしたんだぞ、なのに」

言い募ろうとすると、そっと唇に指を当てられた。

平沢 唯 × 田井中 律 2
664 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:07:57 ID:HVq6Nxrm
「私とりっちゃんは、夫婦だよ? 八つ当たりだろうと、わがままだろうと、全部ぶつけていいに決まってるじゃん」

むしろ、ぶつけてください! と唯が照れ隠しに敬語でふざける。
なんか、ほんと、どうでもよくなってくる、唯を見ていると。

「……そーだよなー。唯、ごみ置きさぼってるしー」
「う、そ、それは、わがままということで」
「いや、単なるさぼり」
「そ、そんなあ」

くす、と思わず笑みが漏れる。すると、唯もつられて笑う。
この空間が好きだ、本当に。

「……唯、今朝の朝食だけど」
「え、あ、うん! りっちゃんをまねてみたんだけど」
「まず、鮭焼き過ぎ」
「あう、生焼けよりはいいと思って」
「限度があるだろ……卵焼きはカラが入ってた」
「上手く割れなくて……」
「ほうれんそう、灰汁取りきれてない」
「い、急いでて、ゆできれませんでした……」
「みそ汁は普通。ごはんだけは……ちゃんと炊けてたけど」
「えへ、りっちゃんがごはん好きだから、がんばったんだよ。1,2,3,4ごーは」
「調子に乗るな」
「いた、あ、なんか久しぶり」

笑いながら、頭を押さえる唯。お前はМか。

「総合評価は、だめだめ。早起きしてごみ置いたのも今日だけだし、やっぱり唯はいろいろだめだめ」
「うう、さっきは、ちゃんとやってるっていってくれたのに」
「本当にダメな奴だけど、私がいなきゃどうすんだって奴だけど」
「た、確かに、うん」
「でもな。私にとっては、世界で一番の旦那なんだよな」

思わず頬をかく。すると、少しの衝撃と共に、唯が私に飛びついてきた。
そのまま、苦しいくらいにぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

「り、りっちゃんこそ、私にとって、世界一の奥さんだよっ……!」
「当たり前だろ。このりっちゃんさまだぞ? 世界一のお前の奥さんに決まってるじゃん」
「うー、否定できない……」
「ふふん。さ、世界一の奥様が作った料理があるから、早く食べるぞ」

唯から離れようとすると、唯はがっちり私をホールドしたまま、動かない。

平沢 唯 × 田井中 律 2
666 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:10:24 ID:HVq6Nxrm
はあっ、という息とともに、私の欲が解き放たれる。
もう、六回目、ぐらいか。唯は、もう少し少ないかもしれない。
唯も、私に覆いかぶさり、ぴったりと肌をくっつけながら、はっはっと短く息を吐いていた。
汗とかいろんな水滴が混じったもので、シーツはぐっしょり濡れている。
肌をすり合わせると、ぬるっとして、体の奥が甘く痺れた。
やばい。高まりすぎ?
唯のことを「サカってる」とか馬鹿にできない。
お互いに積極的に「お・さ・か・ん」状態になって、気付けばあっという間に回数を重ねていた。
もうできない、って思うけれど、唯がふと身じろぎして、唯の胸の突起と、私のそれがこすりあった。んくっ、と突然の強い刺激に思わず声を漏らす。すると、またむくむくとやましい気持ちが立ちあがってくる。
いっつも、行為の続きを促すのは、唯の方。それに付き合ううちに、私ものってきて、っていうのがパターン。
追いつめられると、唯が促す前に、私から続きをねだることがある。
一回、死ぬほど恥ずかしい思いを我慢して声に出していったら、散々唯にからかわれたので、それ以来、無言で唯に伝えるようにしている。
私に覆いかぶさる唯の髪を、きゅっと軽く引っ張る。これが、「もう一回、して」の合図だった。
まだ、足りない。もう少し。
想いをこめて、そっと唯の髪に手を伸ばす。触れるか触れないか、というところで、急に唯が、「あっ!」と飛び起きて、裸のままベッドから下り、傍に置いていたバッグから、携帯を取り出す。
一瞬で、甘い空気が壊れた。
こっ、このやろおおおおっ!!!!
何だよ、私のこと放置かよ! つーか、この手どうすりゃいいんだよ!
なけなしの勇気返せこらあッ!
散々心の中で悪態をついていると、唯が「ああっ…」と情けない声を出した。

平沢 唯 × 田井中 律 2
667 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:12:07 ID:HVq6Nxrm
「ど、どうしようりっちゃん」
「……あー? こっちは今不機嫌なんだよ」
「レストラン予約してたの、忘れてた……」

今キャンセルするね、と手際よくボタンを押して、耳に電話を当て、謝りながら二言三言いい、電話を切った。
レストラン? 何のことだよ?
首をかしげていると、唯はまた「あああ!」と声を上げた。
どうしたんだよ。裸で電話握りしめてるとか、シュールだな。

「ぷ、プレゼントも取ってくるの忘れた……」
「ぷ、プレゼント!?」

思わず素っ頓狂な声が出る。いや、意味が分からない。

「ごめんね、明日必ず……」

そういって、涙目で振り返る唯。
いやいや、お前はその前に、服を着ろ。変な画になってる。

「唯、私の誕生日は夏だぞ? こんな十二月とかじゃ」
「知ってるよ? え、りっちゃん、覚えてないの?」

え? いや、唯の誕生日は十一月だし……。なんだ?
あっ! そうか、肉屋のおっちゃん、こういうことか。

「そうか、今日はクリスマスイブか」

納得しながら頷く私。唯は、このために早く帰ってこようとしたんだな。
唯の方を見ると、唯は、若干の苦笑いをしていた。
え、なんで?

「それもそうなんだけどね、それだけじゃないよ?」

唯は体ごと私の方に向き直り、私を見つめる。
やましい気持ちになるから、せめて前は隠してくれ。

「私たちの、記念日」

照れながら言う唯に、私は一年前の今日を思い出した。

平沢 唯 × 田井中 律 2
668 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:12:43 ID:HVq6Nxrm
12月24日。
カップルのご多分にもれず、私たちもイブのデートっていうのを楽しんでいた。
ほお、と息を吐いて、手を温める唯。
普通ならここで手をつなぐところだけれど、生憎人目が多いから。
でも、見ていられなくて、唯の手をつかんで、人気のないところに移動した。
さりげなく手を動かして、唯の手首に触れる。
白く、細い。これなら、大丈夫か。

「りっちゃん」

唯を見ると、手をつないでいるからか、頬を少し染めていた。
さりげなく手を離すと、唯はバッグをごそごそし始めて、包装された箱を取り出した。

「プレゼントだよ」

開けていいか、と訊くと、頷いたので、リボンを解いて箱を開ける。
中には、スワロフスキーが並んで綺麗な、カチューシャが入っていた。
ちなみに今も、毎日これをつけている。

「……サンキュ。高かったろ?」
「えへ、カチュー太が、りっちゃんのところまで連れて行って! っていうから、奮発しちゃった」
「早速名前をつけるな! ……でも嬉しいよ、ありがとな」
「いえいえ」

私も、と包みを取り出し、唯に渡す。開けてみて、といい、唯は中に入っていたものを取り出した。

「……これ、腕時計! わあ、すごい。これこそ高いんじゃ」
「いいの。社会人には必須アイテムだぞ? 使ってくれよ。……ん、似合う」

唯は手首が細いから、問題なく似合った。ちなみにこれも、唯は毎日付けて出社している。
へらへらと喜ぶ唯を見つめていると、唯が、急にはっとなり、うつむいた。
どうしたのかと思って覗きこむと、唯は目をそらし、顔を赤くして急にあわて始めた。

「ご、ごめん。ちょっと待ってね」
「? いいけど」

唯は背を向け、ふー、ふー、と深呼吸をする。そして、覚悟を決めたのか、振り返って、私にずんずんと近寄り目前にまでやってくる。

「な、なんだよ、どうした?」
「……りっちゃん」

唯の真剣な声色に、こっちも真顔になる。

「あの、もうひとつ、りっちゃんからプレゼントが欲しいんだけど」
「もうひとつ?」

平沢 唯 × 田井中 律 2
669 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:13:23 ID:HVq6Nxrm
こくりと頷く唯。なんだか調子が狂う。唯らしくないぞ、もじもじしちゃって。
あ、もしかして、プレゼントって、あれか?
キスか……まあ、エロいこと。
そんなのいつもお構いなしにしてくるくせに、どうして今?

「プレゼントしたくなかったら、しなくていいから」

何もかも唯らしくない。
いっつも結構強引にするくせに。
つーか、……したくないわけないだろ。

「する、するって」
「……りっちゃんが考えてるのとは、違うよ、多分」

訊き返そうとすると、急に唯が抱きついてきた。
唯は私の肩にあごを乗せ、きついくらいに抱きしめてくる。私も、唯の背中に手を回す。
すごく、温かい。唯の匂いだ。
唯と一つになったような、感触を覚える。

「……どうした、唯?」
「……」
「んー?」
「……あのね」

唯が顔を上げ、キスできそうな距離で、私をじっと見つめる。
そこには、キスも、それ以上のことも、浮かんでいないと分かる表情の唯がいて。
真剣な目に、心が射抜かれそうだった。

「私、これまで、りっちゃんの人生を、時間を、少しもらってきたけど」

だいぶ頂かれているけどな。
それだけ、唯の存在はでかい。

「りっちゃんのこと、大事にするから。ずっと、大事にするから」

唯の目の中に、私が映っている。
それくらい、強く見つめ合っている。

「りっちゃんが欲しいの」

時間が止まったかと思った。

「これからの、りっちゃんの人生、私にちょうだい。これからも、ずっとりっちゃんと一緒にいたい」

心臓の鼓動が、早くなる。それって……。

「私に、りっちゃんをください」
「……ぷろ、ぼーず?」

聞くと、こくっと真っ赤な顔で頷く。

平沢 唯 × 田井中 律 2
670 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:13:51 ID:HVq6Nxrm
「せ、籍とかは入れられないけど、そ、それでも」
「……うん」
「……ご、めんね? あ、あは、ごめんね! 欲張りすぎたかもー。何でもないや、忘れて忘れてほらっ」

離れようとする唯を、逃がさないように抱き寄せる。

「りっちゃん……?」
「ほんと欲張りだな、唯ってば。この上さらにプレゼントってさ」
「うう……でも」
「重いぞー? このプレゼント」

お茶らけた口調で言うと、唯が少し目を丸くする。

「ちゃんと受け止められる?」
「え、……も、もちろん! ごっつあんです!」
「面倒くさいこともあるかもしれないぜ?」
「そういうところがいいの!」
「なーんだよ、それ。じゃあ……」

唯に微笑む。イルミネーションなんかより、私の心が、すごくきらきらしている。

「しょうがないな。……あげる。大事にしろよ」
「り、りっちゃ……うわああああん!」

叫んで私の肩に顔をうずめ、唯は盛大に泣きじゃくった。
あとで聞けば、断られたら、切腹してしまいそうなほどに緊張していたらしい。
他の奴から言われたら、即お断りだけど。
でも、唯から言われた時、唯と一緒にいつまでもいる場面が、するりと簡単に浮かんできたから。
私は、唯とずっと一緒にいるんだろうなって、思えたんだ。
それから、翌年の私の誕生日に、ムギの家を借りて、結婚式代わりのパーティを内輪で開いた。
交換した指輪は、安物だったけれど。でも、すごく幸せだったな。

平沢 唯 × 田井中 律 2
671 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:14:32 ID:HVq6Nxrm
「結婚記念日はりっちゃんの誕生日だけど、実際に二人で一緒になろう、って決めたのは今日だから、私にはこっちの方が記念日っぽくて」

唯が幸せそうな顔で、話しかけてくる。
忘れていたわけじゃない、忘れていたわけじゃない。
けれど……唯がそこまで、今日という日を大切に思ってくれていたのは、知らなかった。

「……なんか、ごめん」
「いいよお、別に。私も、いろいろ忘れちゃったし」

レストランで食事をして、プレゼントを渡して、と思っていたらしい。

「こうやって、一年りっちゃんと一緒にいることができたから。また、来年も、再来年も、ずっとよろしくっていう意味で、準備してきただけなんだけどね」
「……すごい、罪悪感がたまってきた」
「いいよ、プレゼント渡せなかったし。明日、取りに行くね」
「ところで、プレゼントって、なんだったんだ?」

聞くと、唯は少し恥ずかしがって、いったん間をおいてから答えた。

「……指輪だよ。ほら、ちゃんとしたの、まだ渡していなかったから。だから、がんばっちゃった。奮発したよ」
「も、もしかして、最近ずっと残業だったのは……」
「うん。いろいろ仕事ひきうけて、残業代稼いでたんだよ。あ、まあ、本当に叱られただけのときもあったし、指輪の下見に行ってた時もあったけど」

えへへ、と頭をかく唯に、いとおしさがこみ上げてきた。
いいかげんなようで、ちゃんと相手を想えるところ。
……見る目あったな、私。
やっぱり、私にとって、唯は……。

平沢 唯 × 田井中 律 2
672 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/01/01(土) 00:15:08 ID:HVq6Nxrm
「でも、残業して、こっちに色々心配かけたのはホントだからな」
「はっ、う、うん」
「……罰として、もう一個プレゼントくれ」
「もう一個?」

首をかしげる唯に、そっと近づき、抱きすくめる。
肌が擦れ合って、気持ちいい。
心臓がどくどく鳴っている。

「唯が欲しい」

はっきりと、届くように伝える。

「唯と、ずっと一緒にいたい。私に、これまでも……これからの分も、全部、唯の人生を私によこしてほしい。大事に、するから」
「……お、重いよー? あ、あと、めんどくさいかもしれないし」
「そんなん、百も承知」

言い、唯をまっすぐ見つめた。唯は、ふふ、とほほ笑み答える。

「じゃあ……もらって?」
「ああ。つーかとっくにもらってるけどさ」

二人で笑い、きつく抱いて、お互いの体温を確かめあう。
しばらくそのままでいると、唯がまた「あっ」と声を上げた。
ムードぶち壊しにするのも、ほどがあるぞ、唯。
けれど、唯はさっきのように動いたりせず、さらに私を強く抱きしめる。



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