- おい、おまいら!みんなで小説を作るぞP10
471 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/07/10(木) 07:13:39.38 ID:UgPIW4Za - 涙田はトラックに来てもらった。無線はかなり遠くまで通った。
その時、背後から声をかけられた。 「涙田!」 振り返ると、道路の真ん中に幸福の錬金術の倉庫係、棚橋とその若い衆、中崎がいた。作業服の上から都市迷彩のポンチョと言う逆に目立つ格好だ。 「何ですかその格好は?」 「それはこっちのセリフだ」 「なんかのイベントなんですか」と中崎。 「いや、それがかくかくしかじかで」と涙田。 「ほう……実は俺たちも国会議事堂の様子を探りに来たんだ」と棚橋。 「では、幸福の錬金術も立つんですか?」 「それが、本部と連絡が取れない。 一応下の者が電話には出るんだが待機してろの一点張りで駄目だ。それにこっちは倉庫の係で武器はあるが残念ながら兵がない。 中崎以外は若いのが二三人いるが倉庫に残してきた」 「G3の弾薬が……もうマガジン1つしかない。つまり残り50発以下」と涙田。 「対戦車武器も使っちまった、だろ?」 LAWは厳密には残りが一発あった。
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472 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/07/10(木) 07:14:19.23 ID:UgPIW4Za - トラックからさおりが降りて来た。もちろんトナカイの衣装だ。
「え?」と中崎。 「遠藤さおりさん、トナカイだ」と涙田。 「見れば分かるよ。で、武器が必要だな」棚橋は言った。 「そうなんです、急がないと子供たちが処刑されてしまうでしょう」とトナカイは言った。 「G3の弾薬すなわち7.62ミリNATO弾はない。代わりになりそうな奴はある。対戦車兵器もちょうどぴったりの奴がある」 「すごい奴が?」とトナカイが言った。 「メデューサミサイルシステムだ。これは簡易なミサイルシステムで発射係と照準手の二名で運用する。軽トラックにも積むことが出来る」
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473 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/07/10(木) 07:45:20.07 ID:UgPIW4Za - ミサイルはアルミの三脚の上に乗った樋のような物で、そいつに鉄パイプのようなミサイル本体をセットすれば発射準備完了だった。
トナカイでも使える簡単さだ。訓練不要だ。お手軽だった。 「ミサイルは黄色と黒の対戦車弾、赤の対物弾の二種類だ」 「対物?」 「対人用だ。しかし、ハーグ陸戦条約で大口径の銃で人間を撃つのは禁止だ。 だから対物と言うのは人間用ではないと言うメーカーの言い訳用の呼称で、実際……」 棚橋は少し間をおいて続けた。 「大きな銃で人間を撃つのはNGだが、原爆で人間を殺すのはOKなんだ。信じられるか、涙田? 原爆投下を指揮したアメリカの将軍は日本政府から戦後勲章をもらってる」 「案外、犬田とか言う奴は裁判で無罪になるかも」と涙田。 「それはどうかな、浅原(オウム真理教)は死刑だったようだしな」
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474 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/07/10(木) 22:01:37.42 ID:UgPIW4Za - 「それで、照準は?」と涙田。
棚橋は出来そこないのドラゴンボールのスカウター(注:ドラゴンボールに出てくる片メガネのような敵の情報が見える奴)みたいなバイザーを出した。 「お面を取ってこれをして、何かを見る。見るだけで照準できる。コマンドはこのグリップ・コマンダーから出す。ロックしたら無線で発射指示を出す。 バイザー風の奴の両サイドにレーザー照準器が付いていてロックする仕掛けだ。発射係はミサイルを発射。ミサイルはバイザーから出るレーザーを頼りに目標に突入する。 メデューサはここからきている。見られたら終わりなんだ」 「ほう……」 照準をやってみると実に簡単だった。 「これは実に便利ですね」 「訓練はいらない。ただ、普及はしなかった。 ミサイル本体を含めて高価である事、同じ事は肩撃ち式ミサイルで一人でも出来るのに二人兵隊がどうしてもいる事。 それと、比較的安全な後方からミサイルが発射できる事が売りだが、照準兵は発射から少なくともミサイルが命中するまで目標を見ると言う危険な任務が要求される。 今の軍隊ではそいつは、汚い任務と安全な任務に就く兵がいる事を露骨に表現するってことで駄目なんだ。みんな発射係になりたいに決まってる」 「なるほど」 「そりゃ、軍隊だから、いろいろ任務はあって当たり前だが、兵器システムそのものがそう言う事では困るんだ。戦死者の遺族から確実にクレームがつくからな」 涙田は自衛隊出身だったがそれは考えた事はなかった。
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475 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/07/10(木) 22:02:47.71 ID:UgPIW4Za - メデューサでは肩撃ち式のようにミサイル本体を照準兵が担がなくても良いという利点もあり、生存率はどちらがよいかは運用してみないと分からない。
市民戦争となった場合、確実にメデューサに軍配が上がるが(訓練がいらないから)一方では訓練された兵がいる場合では肩撃ち式が良いというケースも考えられた。 メデューサは車両ないしは陣地が運用のベースだった。 安全な場所だ。 しかし、戦場でそれは矛盾する要求である。 今は軽トラに乗せようとしている。撃たれたらひとたまりもないことを承知の上でだ。 「メデューサは兵の息が合っているかどうかがカギになってくる。二人はこれなのか」棚橋は言った。 「今は二号なんです」さおりは言った。 「は?」 「本妻がいて、奪う予定なんです」とさおり。女は怖い。 沈黙。
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