- おい、おまいら!みんなで小説を作るぞP10
366 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2014/06/17(火) 07:26:34.38 ID:h06xpN0n - 「作戦準備、完了」春菜が言う。
例によって移動指揮車の中だ。作戦行動中、携帯電話のシステムがダウンする可能性は低いが、万が一の場合にはNTTの中枢を爆破する事になっているので無線が欠かせなかった。 また、警察側が故意に携帯電話のシステムをダウンさせる戦術をとる可能性が指摘されていた。それは過去の実例では、まだ、ないがSATの教本には載っているらしいとのうわさがあった。対応策が欠かせない。 また、巡航ミサイル発射部隊のプラットフォームは東京湾のタンカーだった。発射基地としてはこれ以上に安全な所はない。第一弾発射後は完全に無力な存在なのだから退避するように命じてある。 これとの連絡は無線によるしかない。巡航ミサイルは強力なのだが動かない目標にしか使えない。対艦ミサイルに使えないかと調べてみたが無理だった。 これは意外だったが、馬淵も春菜も二人とも無線関係の資格を有していた。春菜はアマチュア無線、馬淵は無線技士の資格だった。どうしてこのカップルが用意したかのように必要な資格を持っているのかは謎だった。親衛隊はやはり適材適所だと皆納得した。 「時間まで待機」 「了解」 「早く用意できたからと早く始めると、せっかく積み上げて来たタイミングが狂ってしまう」 「はい」
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367 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/06/17(火) 07:31:58.05 ID:h06xpN0n - 「落ち着いてしっかりやるんだ、春菜ならできる」
春菜は、馬淵にそう言われると出来る気がして来た。 馬淵は、こう言う時、指揮官と参謀が「大丈夫か、本当に大丈夫か、本当に絶対に大丈夫か」と話しあうとまずいと言う事を経験的に知っていた。 そう言うマイナス思考はどんなに隠そうとしても兵に伝わってしまう。兵は指揮を受けるだけではなくその向こう側を聞きとってしまう生きものであって、それによって生き残る事が出来るのだからだ。 「この指揮車も今回が二回目だが、しばらくこもることになる。コーラは用意したか?」と馬淵。 「いや、あの、その……炭酸はブシュッとなった場合、無線やPCに飛び散ると悲惨な事になるのでお水にしました」 「え、そう? お茶は?」 「それも用意してあります、500のペットボトルを10本ずつ」 「兵糧攻めへの備えか! その分では食料も用意してるんじゃないだろうな?」 「カロリーメートにしました」春菜は主婦の顔で言った。 「何だこれは、新作のビフテキ味、試作品だって?」 「で、でも、二人で一食分です」 本物のビフテキではないのは冷蔵庫も電子レンジもないからだろう。お金はないことはない。 「どう見ても丸一日分はあるぞ、丸一日俺たち二人はビフテキ味で暮らすのか」 「で、でも、どんな事態があるか分かりませんし、おみそ汁も用意してます、あ、スープの方が良かったかも」 「いやいやそう言う問題じゃなくて」
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368 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/06/17(火) 22:48:24.95 ID:h06xpN0n - よく聞いてみると、携帯トイレまで用意してあった。籠城の用意としては完全ではあったが大量の荷物に運転兼護衛担当の兵らは目を丸くしていたらしい。
携帯トイレと言うのは同棲している男女だから出来る{裏ワザ」で、そこはもう作戦だの何だのを超越していた。彼ら二人にしか出来得ない事だった。 春菜のそういう完全と言うか天然と言うか、訳が分からない部分はPCのユーザー名とパスワードにも表れていた。 万が一の場合、任務続行のためにお互いのPCのユーザー名とパスワードを知っておく必要があった。 それは二人とも生きてこのミッションを終えられるかどうか分からないからだが、実際には二人ともこの狭い指揮車で携帯トイレまで共有するのだから、 生きるのも死ぬのも同じ運命共同体だと考えられた。 それはともかく、春菜のPCはパソコンはOSが日本語のユーザー名とパスワードに対応していて、 ユーザー名が「はるなたん」、パスワードが「みんなでめがんてをとなえろ」だった。 「みんなでメガンテをとなえろってなんだ」 「いや、そう言うコマンドで」 「それに、いくらなんでも、はるなたんはないだろう?」 「そんな、ひどいわ」 「まあ仕方ないな」あっさり馬淵は折れた。 ここで自分の彼女を相手に戦っても仕方ない。そう言う「夫婦喧嘩」は戦闘前には余計にまずい事は言うまでもない。話題を変えなければならない。
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369 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/06/17(火) 22:51:07.33 ID:h06xpN0n - 「それと、指揮車の停車場所だが、作戦の進行に伴って順次移動する事になっている。これは防弾装甲も何もないから安全な後方に位置しなければならないが、後方すぎると、例えば品野町では現場の状況が把握できない恐れが大きい」
「了解」 「最初はここ、四谷駅近くのキッチン「歌風園」の駐車場に位置するが、これは一番最初だけだ。ここから、午前10時に出発……」馬淵は遠足の予定のように移動を確認する。 最終地点は国会議事堂の駐車場だ。中継などで映る事はまずないが国会議事堂にも当然駐車場はあるのであって、ここに議員や高級官僚らはトヨタセンチュリーを乗りつける。ちなみにここにくるトヨタセンチュリーは徹底的にチェックされる。 今はないがオウムが高級車をお布施で巻き上げたりしていた時期があり、高級車に乗っていようがどうであろうが警察のチェックは変わらない。 また、国会議事堂と言えば、事前の確認事項としては国会議事堂の見学者は原則怪我をさせず順次徒歩で日比谷公園へ財務省前のルートから歩かせ脱出させる事になっていた。ただし子供・老人・妊婦その他身障者などの見学者は走らせると言う事が困難な為、 一旦議事堂内で足止め、保護し、積極的にではないが「人間の壁」として利用することとなっていた。これは当然予想される桜田門方面からの警察側の反撃・奪還を想定したものであった。 警察の主力となるのはSATだ。SATの主な装備は拳銃以外は短機関銃と狙撃用のライフルだった。 国会正門前に機関砲を装備した装甲車が配備されるのだからSATが束になってかかって来たとしてもびくともしないはずだが、彼らはチャイナマンに痛い目にあわされた経験を忘れようとしても忘れられなかった。 「マブタンは国会議事堂周辺は詳しいんですか」 「マブタンは駄目だって言ってるだろ、それはそうと、それも当然で、最初は国会議員……」 「ええっ」 「の秘書をしていたからだ」 「え、それでもすごい」 「そうかな? 安い給料でこき使われたぞ」
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