- おい、おまいら!みんなで小説を作るぞP10
257 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/05/18(日) 11:58:11.31 ID:4NEYcDK4 - カトウは、妻を抱きしめた。
「とうとう、この時が来てしまった。 後悔はしていない。この任務に就いた時から、もう分かっていた。いつかはこうなることは分かっていた。 愛している」 「あなた」 「何も言うな」 「いいえ、私も愛しているわ」 「早くやれ」とスミスが言う。 「ノーサー」 「なんだと」 「爆発はしません、私が爆破コードを入力しないからです」 「貴様、反逆罪だ、逮捕する」 「大使、逮捕することはできるし、殺すこともできるが爆破するには爆破コードがいる」とカトウは言った。 「ふふん、すぐ、本国から送ってもらう。すぐにだ」 「そう、すぐに来る、しかし、今はそのわずかな時間が重要なのです。今、まさに今この瞬間、日本国政府は事態に気が付いているのではないでしょうか?」 「なんだと?」
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258 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/05/18(日) 12:00:08.39 ID:4NEYcDK4 - 「輸送会社の倉庫に核兵器は転がっているだけだ。それはそうで、見張りに「しっかり見はっておくんだぞ、それはそうとこの核兵器は予告も何もなしにいきなり無線で遠隔爆破するからな、
注意しろよ、じゃあな」って訳にはいかないからです。だから速攻で回収され自衛隊の専門家によって無害化されるでしょうよ。それはつまり、日本が核武装すると言うことを意味するんです。だから反対だったんだ。 平和とは、口先だけで説くまやかしのものではなく実際に守れば尊い効力があるものなんだ」 「……」 「戦争するぞ、戦争するぞって言いながらこうやって来てしまった。もう止められないとなった時私は国を売った。そして、今太田の手元には核兵器がどこにあるかのリストがある」 「そうか、おまえは殺すしかないようだな。今からそちらへ行く。カンパニー(ザ・カンパニー=CIA)の者をつれてな。ああ、しかし……こうしようじゃないか」 「は?」 「おまえにはガードや使用人、それにもちろん妻もいるんだし、それらの前で「裏切り者、死ね」はあまりにも残酷なショー過ぎる。 裏の教会墓地まで来い。そこで処分する。 無論、来ないという選択肢もあるんだぜ。あんたのことだ。日本側がかくまってくれるだろうが……」 スミスはカトウの性格を見透かしていた。スミスの言う通りなのだ。この場合の正解は教会墓地へなど行かず日本側のところへ行き救助してもらうことだ。 そして、カトウはそうした命が惜しいばかりにそういう風にしますと言う事が最も嫌いだった。裏切った男の最後は死あるのみだ。これはどこへいっても変わらない事なのだ。
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259 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/05/18(日) 17:44:17.81 ID:4NEYcDK4 - 驚いたことには、スミスはたった一人の日本人を連れて墓地に来た。
「誰だね君は?」 「スズキです」彼は名刺を出した。 「あ、どうも……」カトウが反射的に名刺を出した。 「ノーサー。私はホンダでありトヨタであり日産であり、はなはだしい場合、NECなのです」と男は言った。 「おお、君は、と言うか、君がカンパニー、つまりCIAの処刑人なのか?」 「イエス・サー。カンパニーマンです。大使、ここは、ここからは私が……返り血を浴びるとその高価なスーツが台無しです」 「おう、ファック」 スミスは去っていった。 二人きりになるとカンパニーマンはすっくとカトウと対峙した。処刑人とは思えない態度であった。 それがカトウには不思議だった。どうしてこの男には、殺しの暗い影がないのか。 カンパニー……CIA……の処刑人、カンパニーマンはホルスターからワルサーP38を出した。 「事件で、使われている奴ですから」とカンパニーマンは言った。 「そうかね」とカトウ。 「弾丸は、一発だけしか用意してきませんでした」とカンパニーマンは言った。 その言外の意味にカトウは気がついた。
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260 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/05/18(日) 17:46:43.16 ID:4NEYcDK4 - 走って逃げろと暗に示唆しているのだ。ワルサーは八連発なのだからわざわざ一発だけ用意してわざとそう告げるというのはそう言う意味なのだろう。
無論、ピストルから走って逃げるなんて元から無理な上にカンパニーマンは処刑のプロだ。 つまりはそう言う事なのだ。故意に外すと言うことなのだ。 「心は有り難く受け取っておく。だが、祖国を裏切った者は死なねばならん」 「あなたがいなくなったら、誰がその「仕事」をしますか。私は大変悲しい」カンパニーマンは故意に下手くそな英語を使った。 もちろん彼が英語ができないはずがない。これは一種の暗号だった。しかし最後の部分は本心だろう。 「「仕事」か」 「そうです、サー」 少し間をおいてカンパニーマンは言った。 「スミスは戦争を、あなたは平和を主張している。あなたが負けてしまえば戦争が勝つと言う事になってしまう。 平和に戦争が勝つ。そのような事があってはなりません」 悲しげな眼でカンパニーマンはカトウを見た。その視線にカトウははっとなり、やはり走って逃げることにした。 「君は弾よりも速く走る人間を見たことがあるか」カトウは聞いた。 「ノー・サー、しかし、もうすぐ見ることができます、楽しみであります」
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