- ★日蓮正宗・応顕寺の森常男を語る001★
70 :小説 応顕寺物語 00004[]:2014/05/13(火) 19:00:28.49 ID:BphTM+8S - 道寧は苦悶していた。「あいつらは当分使い物にならないからのう」先日見舞
に行ったおり、病室で目があったさい、恐怖(くふ)におびえた若い所化の目つき が痛々しかったことを苦々しく思い起こしていた。 「そうだ、こうなれば在家という手があるじゃないか」赤く充血した道寧の目は 油をそそいだよう晴天の水面のように乱反射で燃え上がった。森常男に血脈相承 について道寧から電話があったのはその夜のことである。 「御前様、ただいま伺いました」常男はうやうやしく平伏し対面の挨拶をした。 道寧は満足そうに「うむ」とうなずくと重々しく切り出した。 「のう常男よ、あいつら所化は頼りにならんわ、これでは大事の御法門もわしで 終わってしまふ、そこでおまえに大事の血脈を相承しておきたいのだよ」 「私ですか」常男は歓喜に打ち震えて思わず道寧を見上げたときやや声がうわず っていた。「御前様から自分に血脈相承、血脈相承」応顕寺の血脈相承は在家 には授けない。出家を差しおいて自分に相伝するというのである。 先祖代々の応顕寺信徒である常男はご先祖様にただ、ただ感謝するのみであった。 道寧は、はぁはぁと臭くて荒い息を振りまきながら「常男よ、では着衣を脱いで 浴衣に着替えるがよい」常男は庫裡のかたすみで感激にふるえながら着衣を脱ぎ 落として道寧にいわれるまま浴衣≠ノ着替えた。(つづく)
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