- おい、おまいら!みんなで小説を作るぞP10
119 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/04/05(土) 06:34:41.32 ID:cb2UaypM - 信じられない事だが、総本部の裏口付近は幸福の錬金術が完全に確保していた。担架で次々に負傷者が搬出されていく。搬入されている物もあった。石だ。石を投げてまで抵抗しようとする本部員のガッツに完全武装の「こうどうたい」は突入できないでいるのだ。
……勝てる。 涙田は勝利を確信した。 「みんな、弾薬が着いたぞ」装甲車を飛び降りて棚橋が叫ぶと、皆がおおっとどよめいた。 「負傷者搬出の手を休めるな、それと、騒ぐと奴らに気づかれるぞ!」涙田が注意する。その声も大声なのは仕方がなかったが、すぐにドアが開かれた。二台の装甲車はぎっしり武器弾薬を搭載していた。 「おい、そこをどけ」突然、ハンドスピーカーで怒鳴る声がした。でかい音だ。 「は?」 涙田ら倉庫から到着した救援隊とたかっている本部員らがびっくりしてそっちを見た。 と、いい年をした大人たちが、本格的な冬にはまだ早いのにおしくらまんじゅうをしていた。背広を着ているし年齢からみても幹部クラスと思われた。何をしたいのかが分からず、涙田らがポカンとしているとマイクの男が叫んだ。 「何をしておる、猊下に道を開けろ」 「ゲイカってなんですか」と涙田が聞くと、棚橋は緊急時なので短く答えた。 「小川降法の敬称だ」
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120 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/04/05(土) 21:55:46.31 ID:cb2UaypM - 涙田はそれを聞くとマイクの男につかつかと歩み寄り、ハンドマイクをもぎ取った。
「何をする」 「静かにしろ、戦闘中だぞ、今も敵は建物の向こう側にいるんだ、マイクでここに小川がいることを知らせるなんてまずいに決まっている」 「お、お、小川だと……」マイクの男は、今はマイクを持ってはいなかったが口をパクパクさせた。個人崇拝が頂点に達している幸福の錬金術ではたとえおしくらまんじゅうの向こうにいるとしても小川の目の前で小川と本人を呼び捨てにする事は最高のタブーであった。 「それで、どうするつもりなんだ? そのままそのおしくらまんじゅうで逃げるつもりか」 もう、涙田はもちろん周囲の本部員らにも、おしくらまんじゅうの真ん中に小川がいる事が分かって来た。つまりこれは彼ら幹部にしてみれば「猊下」の盾になっているつもりなのだ。そしてそれはある程度は正しかった。 なぜなら拳銃弾程度なら人間の肉体を貫通しないか、しても致命傷にならない可能性が高かったからだ。 しかし、それは相手が装甲車を装備しているという事実を無視していた。今はこの裏口付近は完全に味方が支配しているがそれは道路のこちら側に装甲車が回ってきていないからと言うそれだけの理由であった。よく考えれば敵にしても、 手元に一台しかないと言うならともかく三台も装甲車があるのだから一台をこちらに回せば包囲はできるのである。 涙田にしてみれば、敵がこの本部を包囲していないという事実が謎だった。敵のリーダーが馬鹿なのか、何か他に本当の理由があるのか? ここが品川を蹂躙しようという場合には最大の抵抗拠点になる事は明らかだし、他の抵抗拠点としては警察署があるが 警察がここまで頑強に抵抗するとは思えない。撤退して後日を期するだろう。
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121 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/04/05(土) 22:01:34.74 ID:cb2UaypM - 「猊下は脱出する。その装甲車で」偉いさんらしい一人が言った。
涙田はまた頭をめぐらした。 リーダーが逃げるのは卑怯だと非難するのはたやすいが、 そんな安っぽい「道徳」は戦場では通用しない。むしろ小川を失えば教団にとってはこの戦闘自体の帰趨よりも痛手であろう。 ここで小川が何か指揮をとっているとか言うのならとにかく、今は明らかにお荷物、どこかへ落したほうが良い。 脱出を条件にするなら、装甲車で脱出した方がいい、それもここを確保できている今の内にしたほうがいい。さらに言うなら、他の者は全員捨て石になる覚悟で総攻撃をかけた方が脱出の可能性は高くなるだろう。 絶対に高くなるだろう。脱出する瞬間が一番脆弱なのだ。 そしてその攻撃の為には武器弾薬が前提条件となるだろう。第一、乗ろうにも今はぎっしり武器弾薬が積んであるのだし、 涙田らが乗って来た運転席周りは防弾でも何でもなかった。
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122 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M []:2014/04/05(土) 22:08:38.30 ID:cb2UaypM - 「少し待て、全員聞いたか。ゲイカは脱出したいらしいぞ、みんな全速力で荷物を下ろしゲイカのお席を用意しろ、早く」
涙田は叫んだ。 「手分けして武器弾薬を運ぶんだ」 「向こうのビルまで、なんとか弾薬だけでも届けたい、志願者は?」 本部員らはてきぱきと武器弾薬を下ろした。小川が逃げる事に文句を言う者はいない。 すぐに「お席」は用意できた。 「おい、ガードマン、運転しろ。警視庁までノンストップで行くんだ」とマイクの男が言った。 涙田はガードマンと言うのが自分の事を指すのだと言うのを理解するまでにしばらくかかった。 まだ警備会社の制服を着ていたからだと気がついた。 「あ、いえ、自分は警備会社ではないんでして」と涙田は言った。 「え?」 「行動隊なんです。本物の行動隊なんです」と棚橋。 あたりの空気が凍りついた。 「みんな、本物をごらんに入れて見せる。中崎くん、LAW二発とMG42一丁、百連マガジン一個を用意してくれ。 それとなにか着替えないといかんが本当の私服以外ないんだ。それはまずい。身元がばれる」 「それだったら、幸福の錬金術本部員のブレザーを着ろよ」本部員の一人がブレザーを出してきてくれた。新品でサイズもぴったりだった。 ワイシャツも出してくれた。ネクタイは葬式用の黒だ。縁起が悪いような気もするが敵の葬式用だからいい。
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