- ★日高義樹のワシントンレポート★第8部
408 :打ちひしがれる超大国:日高義樹(ハドソン研究所主席研究員)1[sage]:2010/05/03(月) 12:29:08 ID:hTL/feQn - http://news.goo.ne.jp/article/php/world/php-20100425-05.html
2010年5月2日(日)13:00 もはや多くを期待するのは難しい ハーバード大学やハドソン研究所の学者たちは、アメリカの不景気が長く続き、失業者が減らないだろうと考えている。 不景気が長く続き、失業者が減らないということになれば、アメリカの人々は世界のことなど考えられなくなる。 ヘンリー・キッシンジャー博士が私とのインタビューのなかでこういったことがある。 「アメリカは強大な力をもっている。アメリカの能力を見くびるべきではない」 キッシンジャー博士の主張は認めるとしても、われわれは現在のアメリカがこれまでとはまったく変わっており、アメリカの人々 がこれまでとは違った考え方をしはじめたことを知る必要がある。 17%、27%、47%、50%、この4つの数字はいまのアメリカにとって、もっとも重要なものだ。17%はアメリカの現在の失業者の数である。 この数字はオバマ大統領が発表している数よりもはるかに多い。政府による日雇い労働を失業者とすれば、現在の失業者の 数は2000万に近く、全労働者の17%である。27%は黒人の失業率。47%は黒人の若者たち、16歳から19歳の失業率である。 50%というのは過去2年のあいだに6カ月以上失業していたアメリカ人の数だ。 こうした数字は、アメリカの失業がオバマ大統領の発表に比べてはるかに深刻であることを示している。 オバマ大統領は、2010年の大統領再選までに失業者の数を半分に減らしたいと述べているが、そうするためには毎月、25万の仕事を 作り出さなければならない。アメリカ労働省によると、オバマ政権は就任以来一つの職をつくるのに120万ドル掛けている。もし大統領が 公約を実施し、毎月25万の仕事をつくろうとすれば、毎月3000億ドル必要だ。 オバマ大統領が発表した2011年度のアメリカ政府の予算は4兆ドル。それに対し歳入は、税金などの収入が減っていることもあり、 2兆4000億ドル。2011年度の財政赤字は1兆6000億ドル。これに加えてオバマ大統領は、国民健康保険を改正して国家による援助を 増やすことを考えており、今後赤字が増えるが、毎月25万人もの職を作り出すためには膨大な経費が必要であり、そしてアメリカ政府の 赤字は天文学的な数字になる。
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409 :打ちひしがれる超大国:日高義樹(ハドソン研究所主席研究員)2[sage]:2010/05/03(月) 12:31:56 ID:hTL/feQn - アメリカの人々は世界戦略どころか自分たちの生活のことだけでいっぱいであり、内向きにならざるをえなくなっている。
今後さらに失業が増えつづけ、財政赤字が増大すれば、アメリカ社会全体が世界から切り離され、閉塞感にとらわれてしまう。 私の友人たちの話によると、ニューヨークの低所得の黒人やヒスパニック系の人々は、朝食事をしないで仕事に出かける。 多くの人々が電気や水道、電話を切られてしまっている。アメリカでいま失業の嵐にてひどく打ちのめされているのは 建設業や製造業、それに金融業など男性の職場である。 一方、オバマ政権の援助もあり、教育や医療の仕事は不景気に直撃されておらず、女性たちの職場は男性と比べると いま少し安全であるといえる。このためアメリカでは、家庭を支える男性が仕事を失い、女性たちに生活の重荷が かかってきている。家庭の主婦が仕事をするのに選べるのは、日本と同じようにコンビニやスーパーでのレジや雑用である。 アメリカの社会では現在、生活を支えるのは女性であり、その女性たちの給料も最低賃金の1時間8ドル50セントにすぎない。 アメリカの社会は、いま失業と不景気に押しつぶされようとしている。これまでのようにアントレプレナーが注目を浴び、 新しい仕事が次々に生まれるような雰囲気ではない。私の知っている人たちも長いあいだ失業に苦しんでおり、失業が長引けば 近所づきあいも難しくなると同時に、これまでのようにはパーティーに呼ばれることもなくなる。社会との付き合いも極端に 減ってしまう。家庭内での暴力事件が増え、社会から隔絶されているという気持ちが人々の孤独感を増大させ、 アメリカ社会が停滞している。
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410 :打ちひしがれる超大国:日高義樹(ハドソン研究所主席研究員)3[sage]:2010/05/03(月) 12:32:37 ID:hTL/feQn - ハーバード大学の私の知人であるロバート・ライシュ博士は、アメリカの景気は今後X型になるだろうという予測を最近行なった。
つまり、「これでおしまい」ということである。ライシュ博士の予測は、アメリカでこれまで経済専門家が述べてきた 二重底W型の不景気や、不景気が長引くL型、さらにはU字型、V型といわれる景気の予測をすべて否定するもので、 アメリカ経済は新しい仕組みを考えないかぎり当面立ち直ることは難しいとしている。 ボストンコンサルティンググループのデイビッド・ローズとダニエル・シェルターの二人は、経済の停滞からいかに 立ち直るかという本を書き、ハーバード大学の教授だったジョセフ・シュームペーター博士や、ロシアの 経済学者ニコライ・コンドラチェフの学説を引っ張り出してアメリカの景気停滞と失業は20年続くと警告している。 アメリカの人々は不景気の心配と失業で頭が一杯であり、中国の問題や核兵器のことを考える暇すらなくなってしまっている。 アメリカが依然として超大国であるというキッシンジャー博士の主張は否定できないが、長期間の経済停滞の見通しと 失業の重みに人々は打ちひしがれている。いまアメリカに多くを期待するのは難しい。
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