- 【ラスプーチン】佐藤優スレッド
600 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2007/10/06(土) 12:18:13 ID:Q/TBFalp - 外相交代と対露外交(下)
外相交代にともなう北方領土についての前回コラムが本紙に掲載された9月12日、安倍晋三総理 が辞意を表明し、25日には福田康夫内閣が発足したが、この機会に外交の継続性について きちんと考えてみる必要がある。(以下の役職名は9月24日時点) 安倍改造内閣の町村信孝外相は、就任直後の記者会見で、「四島一括返還というのがわれわれ の年来の主張だ」(8月30日産経新聞)と述べたが、これは対露交渉上きわめてまずい。 外交においては、継続性が何よりも重要である。東西冷戦時代、一時期、ソ連は北方領土問題の 存在すら認めなかった。そこで日本はできるだけ拳を高く上げ、「四島即時一括返還」という 立場をとった。しかし、当時の日本政府で、ソ連がこの要求を飲んで、北方四島を返還するなど とは誰も思っていなかった。それだから、問題をソ連だけでなく、国際社会に認知させることが 重要と考えて、日本の最大限要求を掲げたのである。 それと同時に東西冷戦を反映して、日本政府には隠された思惑があった。それは、ソ連が 日本領である北方四島を不法占拠しているのは、共産全体主義国家だからであるという認識を 日本国内に浸透させ、共産主義の影響力拡大を阻止することである。対日謀略を担当したソ連共産党 中央委員会国際部がもう少し頭が良ければ、ソ連はあえて北方四島を日本に引き渡すという工作を 行ったのではないかと筆者は考える。そして、「ソ連は、日本人民、特に日本の労働者階級の利益を 増進するために、自国領である南クリル四島を引き渡すことを決定した。しかし、日本に帰属する ことになる四島に米軍の基地が建設され、戦争の危機が増大することはソ日両国人民の利益に反する ので、この領域は日米安保条約の適用外にすることについて、ソ日間で特別協定を結びたい」など という変化球を投げた。そうすれば、日本の世論を二分し、日米安保体制にくさびを打ち込む 可能性が生まれる。当時のソ連指導部の対日謀略の水準が低かったため、このような工作をかけ られることがなく、日本は幸せだったのである。
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602 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2007/10/06(土) 12:23:05 ID:Q/TBFalp - 91年8月、ソ連共産党守旧派のクーデター計画が失敗した後、ソ連国家は自壊過程に入った。
その中で、指導力をつけてきたエリツィン露大統領指導部は、スターリン主義の「負の遺産」を外交面 においても清算することがロシアの国益にかなうと考えた。そこで北方領土問題について、「法と正義 の原則」に立って本格的交渉を行いたいというメッセージを日本政府に対して伝えてきた。日本政府は、 「四島一括返還」から、「北方四島に対する日本の主権が確認されるならば、返還の時期、態様、条件 については柔軟に対処する」と方針を転換したのである。その後、日本政府が外交交渉において、 ロシア政府に対して、「四島即時一括返還」や「四島一括返還」を要求したことはないのである。 ちなみに「四島一括返還」を唱える人々は93年10月の東京宣言があたかも四島一括返還を担保 しているかのごとき主張をするが、これには根拠がない。東京宣言で日露両国は、「北方四島の帰属に 関する問題を解決して平和条約を締結する」ことに合意したのに過ぎない。「帰属の問題の解決」は、 論理的に、日本4・ロシア0、日本3・ロシア1、日本2・ロシア2、日本1・ロシア3、 日本0・ロシア4の5通りの場合がある。そのいずれでも、両国が合意すれば北方四島に関する 「帰属に関する問題の解決」になるのである。
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603 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2007/10/06(土) 12:25:34 ID:Q/TBFalp - いかなることがあっても、日本が、わが国固有の領土である北方四島を放棄することがあってはならないと
筆者は考える。従って、日本4・ロシア0でしかこの問題は解決しないのである。しかし、そのことを 東京宣言から読み取ることはできない。北方領土交渉の土俵を定めたに過ぎない東京宣言に過剰な意味を 読み込むことは、かえって日本の国益を毀損(きそん)すると考える。東京宣言に安住するのではなく、 いかにして北方領土を日本に近づけるかについて戦略を立てるのが外務官僚の仕事だ。 町村外相が「四島一括返還というのがわれわれの年来の主張だ」と述べたことを、ロシア側が日本政府 の新たなシグナル、すなわち北方領土交渉に関してハードルを上げてきたと受けとめることは間違いない。 しかし、事態はそのような外交的シグナルといった高い水準の話ではないと思う。外務官僚が、町村外相に 北方領土交渉の経緯と現時点での日本政府の方針についてきちんとした説明をしていないからこのような ことになるのだというのが筆者の認識だ。 ソ連時代、モスクワを訪れた町村氏に筆者はロシア情勢について説明したことがある。そのときの経験 から筆者は、町村氏が理解力、洞察力に富んだ聡明(そうめい)な政治家であるという認識をもっている。 有力政治家が外務大臣のポストについても、外務官僚が真実を外務大臣に伝えずに、その結果、誤った シグナルをロシアに送ってしまうのは悔しくて仕方ない。それだから、このように新聞コラムを通じて 筆者は正しい情報が外務大臣に入るように努力しているのだ。
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