- 正字體復活の可能性について
16 :名無氏物語[]:2020/04/03(金) 15:20:46.84 ID:L6YnTklG - >>13
時枝先生の書籍が文庫化されるのは嬉しい。
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17 :名無氏物語[]:2020/04/03(金) 15:37:06.59 ID:L6YnTklG - ★太平記、卷第十六、正成兄弟討死(の)事、七生報國
「―― 正成正季又取つて返して此の勢にかゝり、懸けては打違へて死(ころ)し、懸け入つては組んで落ち、 三時が閧ノ十六度迄鬪ひけるに、其の勢次第々々に滅びて、後は僅かに七十三騎にぞ成りにける。 此の勢にても打破つて落ちば落つべかりつるを、楠京を出でしより、世の中の事、今は是迄と思ふ所存有りければ、 一足も引かず戰つて、機已(すで)に疲れければ、湊河の北に當つて、在家の一村有りける中へ走り入つて、 腹を切らん爲に鎧を脱いで我が身を見るに、斬創(きりきず)十一箇所までぞ負ひたりける。 此の外七十二人の者共も皆五箇所、三箇所の創(きず)を被らぬ者は無かりけり。 楠が一族十三人、手の者六十餘人、六間の客殿に二行に竝居て、念佛十返(ぺん)計(ばか)り同音に唱へて、一度に腹をぞ切つたりける。 正成座上に居つゝ、舍弟の正季に向かつて、 「抑最期の一念に依つて、善惡の生を引くといへり。九界の閧ノ何か御邊の願(ひ)なる」 と問ひければ、正季から/\と打笑ひて、 「七生まで唯同じ人閧ノ生まれて、朝敵を滅ぼさばやとこそ存じ候へ」 と申しければ、正成よに嬉しげなる氣色にて、 「罪業深き惡念なれども、我も斯樣に思ふ也。いざさらば同じく生を替へて、此の本懷を達せん」 と契つて、兄弟共に刺違へて、同じ枕に伏しにけり。 ――
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18 :名無氏物語[]:2020/04/03(金) 15:37:41.93 ID:L6YnTklG - ――
橋本八カ正員(まさかず)、宇佐美河内守正安、~宮時太カ兵衞正師(まさもろ)、和田五カ正驍始として、 宗徒の一族十六人、相隨ふ兵(つはもの)五十餘人、思ひ/\に竝居て、一度にぞ腹をぞ切つたりける。 菊池七カ竹朝は兄の肥前守が使にて、須磨口の合戰の體を見に來りけるが、正成が腹を切る所へ行合ひて、 をめ/\しく見捨ててはいかゞ歸るべきと思ひけるにや、同じく自害をして炎の中に伏しにけり。 抑元弘(ぐゑんこう)以來(このかた)、忝(かたじけな)くも此の君に憑まれ進(まゐ)らせて、忠を致し、功を誇る者幾千萬ぞや。 然れ共此の亂又出で來て後、仁を知らぬ者は朝恩を捨て敵に屬(しよく)し、勇(いさみ)なき者は苟くも死を免れんとて刑戮にあひ、 智なき者は時の變を辨(べん)ぜずして道に違(たが)ふ事のみ有りしに、智仁勇の三コを兼ねて死を善道に守るは古(いにしへ)より今に至る迄、 正成程の者は未だ無かりつるに、兄弟共に自害しけるこそ聖主(後醍醐帝)再び國を失ひて、逆臣(よこしま)に威を振ふべき其の前表の驗なれ。」 *一部讀み易くさせむが爲に假名遣を改變。
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