- 【物語】欅坂46の小説【エロも可】
270 :名無しって、書けない?(大阪府) (ワッチョイWW 89b7-9EMz)[]:2019/08/13(火) 20:31:06.30 ID:aBUYCbhQ0 - >>269
浴衣の模様が細かくて、よくそんな細かい作業が出来るなと感心いたしますw SHOWROOM見たんですが微妙に攻めた言動が目立ちますよね 16歳であれだけものを言えるのは中々です
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271 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:06:21.18 ID:aBUYCbhQ0 - T.Unintentionally
薄暗い部屋に明かりを点ける。わずかに聞こえる蛍光灯のパチっとした音。やがて安定したノイズに変わる。そして未完成のカンバスが光を吸収した。 初めて美術室に入った。夕刻にしても暗い。窓には黒いカーテンが掛けられている。明かりを点けるまで、人がいたことに気が付かなかった。 その女性は、円形に並べられたカンバスの中心に、脚を組んで座っていた。茶色い毛先が肩のあたりでカールしている。彼女をモデルにするならば、モナリザよりも美しく描けそうだった。 女性はゆっくりと瞼を持ち上げ、周囲を一瞥した。眠そうな瞳で僕を確認すると、組んでいた脚をほどいた。前髪を手でどかした。椅子を回転させ、体を正対させた。 「あなたですか」と僕は聞いた。「私の名前は佐藤詩織ですが、何か」と女性は言う。 「いえ、ここへ僕を呼び出したのはあなたですか、と聞いているのです」 「そうだとしたら?」 「用件を伺ってもよろしいですか」 「いえ、実は私ではありません。多分あの子でしょう」 詩織さんと名乗る女性はそう言って入り口を指差した。僕は後ろを振り返った。人と人とを比べるべきではないのだろうが、入り口に立つ女の子は子供っぽく見えた。女性で錯覚を覚えたのは初めてだった。 「では、ごゆっくり」と言って、詩織さんは奥の部屋に消えた。入り口の女の子は足早に部屋へ入ってきて、お辞儀をした。 「お呼び立てしてすみません。あの…詩織さんとお友達なのですか?」 「いいや、今、初めて話しました。あの人のこと知ってるんですか?」 「美術部の先輩です。確か今は修士課程の2年です」 「そうですか。あ、で呼び出したのは君ですか?」 「はい、その、率直に言います。付き合って下さい」 僕の返事も待たずに、女の子は部屋から出ていった。待ち構えていたかのように奥の部屋のドアが開いた。詩織さんが口笛を吹いて歩み寄ってきた。 「もう終わった?」
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272 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:07:21.02 ID:aBUYCbhQ0 - U.Low bow
「聞いてましたね」 「さーて何の話かな?」 「まあいいです。今の誰ですか?名前も言わずに告白だけして去っていったんですけど」 「あの子ね、2年生の森田ひかるちゃん。こっち来て」 詩織さんは手招きをする。トラのように柔らかい足取りで歩き始めた。カンバスを半周ぐるりと回って一枚の絵の前に止まった。 「どう?ひかるちゃんの絵。上手でしょ」 「これは何の絵ですか?」 「君だよ」 「え、これ僕ですか。」 「うん。なかなか上手く描けてる。ちょっと理想が含まれすぎているけれどね」 詩織さんは作品と実際の僕とを何度か見比べて、うなずいたり首をかしげたりしていた。そのうち飽きたのか、カンバスの中心の椅子に座り、再び僕がこの部屋に入ってきた時のように目を閉じた。 「それで、どうするつもり?」 「何をですか?」 「返事だよ、ひかるちゃんへの返事」 「いや、それが、告白されたの初めてで、どうしたらいいんでしょう」 「そんなの簡単だよ。好きならOK。嫌いならごめんなさい」 「はぁ…でも何で僕なんだろう?」 「君、展覧会来てたでしょ」 確かに、詩織さんとひかるちゃん、両者とも今日初めて話をした。ただし詩織さんの言うように以前から名前は知っていた。大学祭の展覧会でひかるちゃんの絵を見たからだ。簡単な名前だったから覚えている。 大学祭の雰囲気に疲れ、ふらっと立ち寄った展覧会で、その絵を見た。とても不思議な作品だった。絵画のことなんかひとつもわからないのに、20分くらいはその作品の前に立ち止まっていたと思う。 展覧会のスタッフ係に身長の低い人がいたことは覚えているから、おそらくそれがひかるちゃんだったのだろう。帰り際に深々とお辞儀をしてくれたから印象に残っている。 「嬉しかったんだと思うよ、ひかるちゃん。あの作品が初めての出展だったから」
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273 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:08:25.32 ID:aBUYCbhQ0 - V.Adviser
お菓子が何段にもわかれて積み上がっている、あのイギリス風の器具を何と呼ぶのか僕は知らない。とにかくお菓子がその器具に乗っかってでてくるような店で詩織さんとお茶を飲んだ。 高級ブランドを多く構えるビルの8階にその喫茶店はあった。シャンデリアは優しい黄金色に染まり、大理石の床は真っ白に光っていた。二人とも普段どおりの服装だった。詩織さんは場にふさわしいドレス調のワンピースだったが、僕はジーンズにパーカーだった。 詩織さんに恋のいろはを教えてもらうという名目で連れ出されていた。彼女は相当乗り気だった。 「いい?できる限り自分のことは話さないこと。その女の子の聞き役に徹するのがコツだよ。私で練習してみて」 「えっと…お名前は」 「佐藤です」 「身長は」 「161」 「じゃあ体重は」 「君は今ボケてるの?」 「えっ、ダメですか?」 「そりゃ、女の子に体重聞くのはダメだし、これじゃ尋問だよ」 詩織さんはハーブティーを一口飲んで、大きく息を吐いた。それから僕を見て、首を振った。わざとらしい演技だったが、ストレートで好感の持てる動き方だ。 「まあよくも、ひかるちゃんもこんな人を好きになったものよね。君、このままだと1日で終わっちゃうよ」 お茶代は詩織さんが全部払った。喫茶店を出ると、向かいにある服屋さんに入った。 「この人、全身コーデしてください。10万円以内で」と詩織さんは言った。その時僕は8千円しか持っていなかった。結局は全部支払ってもらったのだが、どのような魂胆で僕に服を与えたのかその時はわからなかった。
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274 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:09:31.35 ID:aBUYCbhQ0 - W.Dry run
「じゃあデートの練習をしよう」と詩織さんは親切にも恋愛経験の少ない僕の練習相手を買って出てくれた。ただ、プランを立てるところからの練習らしいので、どこへ行くかは僕の自由だった。 当日は駅で待ち合わせをすることにした。初めて降りる駅だったから、改札を出て、どの階段を使えばいいのか迷った。メールの画面を開き、待ち合わせ場所を確認する。 「遅い」 詩織さんが目の前にいた。腰に手を当てていた。大きなサングラスをかけていたが、呆れた表情をしているのはわかった。 「十分前には来なさいよ。女の子待たしちゃダメ」 詩織さんは僕の手を引っ張って歩き始めた。とても冷たい手だった。とっさに僕は手を振り払う。 「あの、練習だから別に手は繋がなくてもいいんじゃ…」 「いやだって君、こういうの慣れてないでしょ」 「あの、恥ずかしくないんですか」 「は、何が?」 詩織さんの顔は少し上にある。身長はそう変わらないけど、彼女がヒールを履いているだけ高かった。全身のシルエットでは同じ種類の動物とは思えないほどだった。つまるところ不釣り合いだった。 「その、俺があんまりにも…」 「あのね、顔上げて周り見てみな。何でみんなこっち見てると思う?」 「詩織さんが綺麗だからですか?」 「違うね、君が下を向いているからだよ」
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275 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:11:01.47 ID:aBUYCbhQ0 - X. To tell the truth
実を言うと、僕は前々から詩織さんを知っていた。大学内ではちょっとした有名人だからだ。あれだけスタイルがよければ嫌でも目が向いてしまう。ただもちろん、一方的に僕が知っているだけで、決して知り合いではなかった。 だから暗闇の美術室に彼女がいた時は、まるで運命めいたものを感じずにはいられなかった。あるはずもない希望的観測を、ほんの数十秒の間だけ、信じ込んだ。 そんな心持ちであるからだろう、突如舞い込んだデートの話は幻想以外の何物でもなかった。想像を遥かに上回る現実というのは、心が置きどころなく時間と空間とをさまよい続ける。 それを引き止めてくれているかのように、詩織さんは僕の手を握っていてくれていた。 「もっと堂々としてみて。それだけで分相応の男に見えるから」 「いや、でも…」 「ひかるちゃんの前でもそうするつもり?彼女、私と違って小さくて可愛いから変な人に絡まれるよ」 そう言われて、顔を上げて歩いた。 ふと、目の合う人がいた。別に変な人ではないのだが、外国人の風貌だった。その人は今どき珍しいガラケーで写メを撮っていた。 僕たちは美術館に行く途中である。
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276 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:13:09.84 ID:aBUYCbhQ0 - Y. Souvenir
美術館に入った。予想通り寒かった。この間、服を買ってもらったお返しとまでは言わないが、入館料は僕が払った。入場券を手渡すと、詩織さんは親指を立てて、「わかってきたじゃない」と言った。 美術館では特に面白いことは起きなかった。普通に作品を見て回って、普通に時間が過ぎていった。観覧した後、館内のカフェでお茶を飲んだ。 「君は何で美術館を選んだの?」詩織さんが聞いた。 「うーんと、お互いに興味のあるところだからですかね」 「まあ別にいいんだけどね。それ、私に気を遣ってるでしょ」 「はい、多少は」 「場所はどこでもいいんだけどね、自分が楽しめるところじゃないとダメだよ。相手を楽しませるんじゃなくて、自分が楽しむことの方がよっぽど大事だから」 帰り際には、ミュージアムショップへ寄った。たくさん並んでいるポストカードの中から、詩織さんは迷いなく一枚を取っていた。
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277 :『Scuola di Atene』(前編)(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:15:12.23 ID:aBUYCbhQ0 - Z. Fait accompli
美術館を出てすぐのところに海の見える見晴らしのいい場所があった。二人で海に向かい合うベンチに座った。しばらくの間沈黙が続いた。僕はさざ波のように弱い声で話しかけた。 「詩織さんは好きな人とかいるんですか?」 「それはどういう意味?」 「あまり浮ついた話を聞かないので。他意はないです」 「そうね。君みたいな人は好きかな。何も知らない人」 それが詩織さんの言葉であるならば、お世辞以下の言葉でも嬉しかった。自然と笑みがこぼれた。僕の心中を見透かしたかのように、詩織さんが少しだけ慌てて補足する。 「でもね、私は軽い関係が好きなの。付き合うとかはありえない」 この人は当然のことをやすやすと言う。否定されたことで勇気が出た。 「僕は詩織さんのことが好きです。付き合ってくださいとは言いませんけど」 「それは私に言うべき言葉じゃないよ」 「わかってます」 「でも嬉しい。人から好きだなんて久しぶりに言われた」 詩織さんは海を見つめている。サングラスを取った。 「あれは何だろう」と遠くを指差した。 僕は目を細めてその方向を見る。 頬にキスをされた。 僕は苦し紛れに話題を見つけ、上ずった声で聞いた。 「あっ、そう言えばさっき何のポストカードを買ってたんですか?」 「アテネの学堂」
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278 :名無しって、書けない?(大阪府) (ワッチョイ 89b7-X5Lh)[]:2019/08/13(火) 22:16:54.20 ID:aBUYCbhQ0 - 思ったよりも長くなりそうなので続きは後日ということで
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