- やっぱり貧困だった、鍼灸師。 [無断転載禁止]©2ch.net
76 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2016/08/20(土) 03:56:51.64 ID:Qej/ffce - 「掘りすぎたか?」
オッサン宅の庭には、卵の殻、スイカの皮などが散乱して隅には壊れた電化製品が積んであるが整理整頓されている。 そこでオッサンは何を思ったのか、大きなスコップで庭の土をせっせと掻き出し始めた。 俺は木陰の石段に座り、穴から掻き出される土が山積みにされていくのを見つめていた。 「……」 蝉の声だけが鳴り響いている。まだ真夏の真っ只中だ。日差しが厳しい…だがオッサンは黙々と作業を続ける。 オッサン「ここにお父さんを埋めよう」 俺は耳を疑った。まさかあの心優しいオッサンがそんな発言をするなんて信じられなかった。 俺「それはやめた方がいい」 オッサン「あの本棚の上に壺があるやろ」 オッサン「あれは親父の白骨や…」 そういえば…オッサンのオッサンは2年前に事故で亡くなったとオッサンから聞いていたのを思い出した。 オッサン「墓を立てれんかったんや…ちゃんとしたやつをな」 俺は胸を撫で下ろした。 オッサン「掘りすぎたか?」 俺は穴を覗いてみる。底が深い…大樽がすっぽり入ってしまうような深さだ。 土と汗で手足を土色に染めたオッサンが言う。 「これで我慢してくれや…」 オッサンは背を向けて下を向いている。 オッサンのオッサンも鍼灸師。決して裕福な暮らしでは無かったものの、それでもオッサンは親父が大好きだった…。いつも山菜を採ってきてくれる親父の夢を何度も見るそうだ…。 そうこうしてる内に日が暮れた。もちろん来客は今日もゼロ。それでもオッサンはいつものサバ缶を召し上がり、良い1日だったとしみじみ感じる優しいオッサンに変わりは無かった。
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