- 体験した怖い話 作り話を語り合うスレ
245 :名無し百物語[]:2023/07/28(金) 19:39:12.02 ID:lktc+JGj - >>244
[つづき] じじいは驚きましたが、ここでとり乱すと襲われるかもしれない、 犬のなき声がたまたま人の声のように聞こえたのかもしれない、と考え、続けました。 「腹がすいとったんか?」 「アア」 「人の言葉がわかるんか?」 「ワカル」 これは、明らかに人の言葉です 「どこでなろうた?」 犬答えず 「人にかわれとるんか?」 「イヤ」 「何歳ぞ?」 「ゴ」 「なかまはおらんのか?」 「オル」 「どこに?」 犬答えず 「こどもはおるんか?」 「オラン」 「もっと食うか?」 「イヤ」 「この山にすんどるんやな?」 犬答えず 「さびしゅうないか?」 「イヤ」 「そうか、親はおるんか?」 犬答えず 犬は、うずくまって眠そうにしはじめました。 じじいは、もっと会話をしてみたい気もしましたが、今日中に山を越えなければならないので先を急ぐことにしました。 「もうすぐ、冬になるけん、からだだいじにせいや。これで行くけんのう。」 犬はゆっくりと身を起こし言いました。 「あなたもお体をおだいじに。ここからの道は、峠を越えたところに岩場があってあぶないから気をつけなさい。 たべものをくださり、ありがとうございます。またここを通ることがあったら、この場所で『ハヤン』とお呼びください。きっとまいります。」 じじいはあっけにとられました。 それは、流暢で丁寧な朝鮮語だったのです。 じじいは、非常に興味を持ちましたが、このまま立ち去ることにしました。 深い関係を持たないほうが良いだろうと思ったからです。 少し歩いて、うしろを振り向くと、犬は山の斜面をのぼっていきます。 犬は、一度こちらを振り向きましたが、すぐに林の中に消えていきました。 朝鮮の秋の空は真っ青で、山は紅葉で黄金色に輝いていたそうです。
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