トップページ > 創作怪談 > 2023年02月12日 > 05Vbyuw4

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名無し百物語
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211 :名無し百物語[sage]:2023/02/12(日) 11:47:48.69 ID:05Vbyuw4
石じじいの話です。

聞き取った話の断片をいくつか。

夜でも目の見える人がいたそうです。
別に目の色が変わっているとか、その形や大きさが普通と違っているとかということはありませんでした。
ただ、眉毛が非常に薄かったそうです。
彼が言うには、「子供の頃は、私の目の色は水色だった。年齢をかさねるごとに色が濃くなってきて、今は、ほら、榛色だ。」
昼間はまぶしくないのか?とじじいが尋ねると、「いや、まぶしくない。ただ、他人の肌の色が、時々、緑色に見えることがある。」
その緑色に見える人に、何か特徴はあるのか?とじじい。
「いや、まったくない、と思う。まあ、知りようがないね。」
それは遺伝か?とじじい。
「私の曾祖母が、おなじような力があったと聞いたことがある。他の家族、親戚にこのような目を持っている者はいない。」

じじいが、山歩きをしている時に、ある集落に行きあたりました。道を尋ねるために、ある農家の庭先で作業をしている男性に話しかけました。
彼は、七輪の上の鍋で、何かを煮ていました。
料理をしているのだな、とじじいは思いましたが、鍋の中を見てみると、きれいな着物を来た女の和人形をグラグラと煮ていたそうです。
じじいは、ぎょっとしましたが、それを見なかったようなフリをして、親切に道を教えてくれる男性に礼を言ってわかれたそうです。

ある人が死んだ後、その人が死ぬ直前に書いた文字が動くことがあったそうです。
筆で書かれた文字が、もぞもぞと動くのです。ほんの少しですが。
誰が見ても、いつ見ても、動いていたそうです。
一週間ほどすると、文字は動かなくなりました。
墨もすっかり乾いて、いくつかの文字の一部がぽろりと抜け落ちたそうです。


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