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100 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:27:59 ID:eDKVa6GN0 - 最終回。２アウト。満塁。
乾いた音がグランドに響いた
真っ青な空を突き抜けるように、打球が飛び、外野手の頭を超えた
―――この時を待っていた。
一塁ベースを蹴って、二塁へ走った。
ベンチから沸き上がる仲間の歓声。三塁ランナーがホームイン。続いて、二塁ランナーも。
―――この時を待っていた。
二塁を蹴った。外野手がボールをつかんだのが視界の片すみに見えた。スタンドからあの子の声が聞こえた。
―――この時を待っていた。
三塁を蹴った。背後で内野手の誰かがボールをキャッチする音がした。
頭からホームに飛び込んだ。キャッチャーにボールが返ってきた。
その時、頭の中に浮かんだもの。
泥にまみれた仲間の笑顔。
バックネットで見つめるあの子の涙。
ありがとう。みんながいなかったら、俺はここにはいなかった。
こうして野球を続けてはいなかった。本当にありがとう。
仲間への、そして、あの子への、感謝の気持ちを込めて。
１ ０ ０ Ｇ Ｅ Ｔ
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101 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:28:49 ID:eDKVa6GN0 - 期末テストに関する報告書
制作／加藤あい姫統一戦線 完成度／３０％
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102 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:31:05 ID:eDKVa6GN0 - ●ある留年士の手記●
午前７時。我々はサイパンを出て、東に向かった。
任務はハワイ・オアフ島で拘束されているジャパニーズ英語氏の救助と、その身柄の引渡しをめぐる交渉を一方的に破棄し、ハワイ方面から侵入してきた敵国・期末テスト艦隊の撃破。
敵の戦力は
・戦艦ネクステ
・戦艦オリジナル問題
・護衛艦穴埋め
・水雷艇単語
ほか50隻
対する防衛軍の総戦力は
・戦艦ながれ
・駆逐艦はかた
・駆逐艦くろーばー
・駆逐艦呉（くれ）
・巡洋艦廿日市(はつかいち)
・巡洋艦福山（ふくやま）
・巡洋艦お好み焼
・海防艦山根
・海防艦田中
・給油艦極楽山本（ごくらくやまもと）
のみ
到底勝ち目はない。
敵国は多方面から侵入し、友軍はその対応に追われており、期末テスト艦隊に対応できるのは防衛軍しかなかった。
船員達の中にもすでに諦めの空気が漂っていた。一人一人の顔から生気が失せ、暗く、そして青ざめていた。
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103 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:32:04 ID:eDKVa6GN0 - 午前８時。拡声器から防衛軍司令長官、仙崎大輔（せんざきたいすけ）中将の声が流れた。全員が作業を止め、直立不動になる。
「全留年士に告ぐ。敵艦隊は猛烈な速さで航行中。あと一時間もすれば敵が見えてくるだろう」
終わった・・・・・・。そのことを聞いたとき私はそう思った。
先の大戦で敵国の残虐さは周知のこと。捕虜はもとより女子供も容赦なく殺害する。
降伏するにせよ、戦うにせよ、我々に用意された道は「死」のみであった。
「諸君、留年士の心得を思い出せ」
長官は続けた。
「我々留年士は自分のため、友のため、家族のため、そして、愛する者のため、全力を尽くし、必ず生きて帰ってくる。そう・・・・・・必ず」
「そう言えば長官、この任務を最後に退官するんだっけ」
隣にいた一等留年士、大馬鹿子（おおうま しかこ）が一人言のようにつぶやいた。
「伊沢大尉・・・・・・今どんな気持ちなんだろう」
そう言うと、彼女は深いため息をついた。
伊沢環菜（いざわかんな）。長官の婚約者であり、ながれの艦砲担当の留年士であった。
詳しくは知らないが、海軍兵学校時代からの恋仲で、半年後に式を挙げる予定であった。
幸せの絶頂にある二人をこの戦いは引き裂こうというのか。そのようなことがあって本当に良いのであろうか。
「諸君の健闘を、祈る」
最後に長官はそう言って話を終えた。
望みのない戦いに赴く者達。
愛するものと永遠に別れるやも知れぬ者達。
彼らはそれぞれの胸に何を思っているのだろうか？
それはきっと彼らにしか分からないだろう。
私の耳にはただ波の音が空しく響いているだけだった。
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104 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:32:43 ID:eDKVa6GN0 - ●司令官の報告書●
左前方を航行中していた福山に敵の砲弾が直撃した。福山は炎と黒煙に包まれ、海の底に沈んでいった。
仙崎の額から汗が吹き出た。戦況は最悪であった。
期末テスト艦隊は大きな円形の隊列を組み、防衛軍を取り囲んでしまっていた。まさに袋のネズミであった。
「包囲網の中心に移動！急げ！中心なら砲撃は届かない」
仙崎は叫んだ。全艦隊が素早く動き始める。
「脱出は不可能でしょうな」
脇で艦長勝田孝太郎（かつたこうたろう）がつぶやいた。
「降伏しても死。戦っても死。どうせ死ぬなら戦って死にたいものです。ですが・・・・・・」
勝田は煙草に火をつけ深く吸い込んだ。
「どうせならもっと有利な状況で戦いたかった。これじゃ、狙い撃ちです。どうでしょう。一点を集中攻撃し、そこから脱出するというのは？このまま何も出来ずに全滅するよりましです。一旦撤退し、陸軍と共同して沿岸部で迎え撃つことが得策かと」
「・・・・・・やむを得ない」
仙崎は無線を手に取った。
「全艦に告ぐ。これよりサイパンに撤退する。西に旋回！一点を集中攻撃し、突破するのだ！」
ながれは船首を西向けた。敵艦はすでに砲口をこちらに向けており、迎撃の準備は万全であった。
「進め！」
防衛軍は西に向けて進み始めた。そして敵艦の射程圏内に入った。
「撃て！」
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105 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:33:30 ID:eDKVa6GN0 - 先に仕掛けたのははかただった。轟音が響き、敵艦に着弾した。前方にあった敵艦の司令塔は木端微塵になった。
「よし！続け！敵はひるんだぞ！撃ちまくれ！」
激しい戦いとなった。時間がたつにつれ戦力で下回る防衛軍の被害が大きくなっていった。
なかなか突破出来ない。
最初に突破を試みた極楽山本は撃沈され、廿日市もすぐに沈められてしまった。呉も沈没は免れたものの、すべての艦砲が破壊されてしまった。
予想外の攻勢に動揺した敵艦も隊列を組み直し、再び包囲にかかろうとした。
「長官。このままでは全滅であります。これより本艦は敵に体当たりし、友軍の退路を切り開く所存であります」
呉の艦長からの無線に仙崎は心が痛んだ。特攻など認めたくはない。しかし、それしかすべはなかった。
呉は一番近くにいた敵艦に体当たりした。爆音とともに、敵艦と呉は炎に包まれた。
すると、海防艦山根と田中も向きを変え、はかたに猛攻を加える敵艦の側面に向かっていった。
仙崎はすぐに無線を通じて山根に停船を命じた。
しかし、山根は止まらなかった。最初に山根が、次に田中が敵艦船底に体当たりした。
敵艦の船底には穴が開き、中から積み荷が飛び出した。敵兵は山根と田中に乗り込み、戦闘が始まった。
仙崎が山根と田中の救助に向かおうとすると、山根の艦長から無線が入った。
「我々は友軍のため、名誉ある死を選びます」
銃声が聞こえ、無線は途絶えた。仙崎は目頭が厚くなった。そして、勝田に言った。
「彼らが切り開いてくれた航路を行こう」
船体が右に傾いた。呉と山根と田中の脇を通って、ながれは包囲網を突破した。
「お好み焼、はかた、くろーばー。こちらながれ。友軍が血路を切り開いた。ながれに続け」
仙崎が無線で命令を下した。
しかし、お好み焼は旋回中、敵艦と接触。船首が敵艦にめり込み、身動きが取れなくなってしまった。はかたは脱出を試みたものの、行く手を阻まれた。くろーばーは、すでに航行不可能な状態で、脱出出来たのはながれのみであった。
「全速力で航行せよ！」
勝田が船員達に檄を飛ばした。後方からは敵の砲撃音が鳴り響いていた。
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106 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:34:01 ID:eDKVa6GN0 - ●花嫁の恋文●
いつも肌身離さず持っていた。
敵の追撃を巻き、一段落ついたながれの甲板で、懐に手を当てた。ちゃんとはいってる。
誰も見ていないのを確認して、取り出して、手のひらに乗せた。大輔君が贈ってくれた指輪。日の光を浴びて、やんわりとした光を放っていた。そっと薬指にはめた。
これをもらった時のことを思い出す度に、胸がいっぱいになる。
大好きな人とやっと結ばれる。嬉しくて、涙がこぼれた。ずっと一緒にいられると信じていた。なのに・・・・・・。
司令塔を見上げると、せわしなく動いている、いくつかの人影が見えた。
悲しみが大き過ぎて、涙も出ない。
ながれの船体はぼろぼろで、ところどころに穴も開いていた。この状態で敵に遭遇したら、最後だろう。
任務中は会わないようにって、約束したんだけど。
指揮官としての役目も、果たさなくちゃいけないんだけど。
もし、ながれが最後の時を迎えたら、その時は、側にいてもいいよね。
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107 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:34:50 ID:eDKVa6GN0 - ●戦場の交信記録●
―――こちら防衛軍旗艦ながれの加藤留年士、誰か応答せよ
敵の攻撃凄まじく、我が旗艦を除き、すべて撃沈されたし
損傷激しく、船員みな飢えている
現在位置不明
きゅ…ｶﾞｰ…じょ…ﾋﾟｰ…もと…ｻﾞｰｻﾞｰ
―――こちらホワイトベース
貴艦の援軍に向かいたいのは山々なのだが、我が艦隊も今ソロモン中域において戦闘中である
こちらも109号機が中破され、戦力的にも非常に厳しい状態にいる
残念だが、我が艦は援軍には迎えない
しかし、自分が苦しい時は敵も苦しい時である
どうかその事を肝に命じて最後の総力戦を敢行してほしい
皇国の興廃この一戦にあり
遥か遠い海洋から
貴艦の無事を願う
ﾋﾟｰ…
―――…ｻﾞｰｻﾞｰ…いんだが…ｻﾞｰｻﾞｰ…ｻﾞｰｻﾞｰ電波…ｻﾞｰｻﾞｰ…ｻﾞｰｻﾞｰ…ドーン！
艦長…ﾋﾟｰ…ﾋﾟｰ…奇襲…ｻﾞｰｻﾞｰ…ドーン！…ﾊﾞｰﾝ！…ワァァァ！……ｻﾞｰｻﾞｰ…ｻﾞｰｻﾞｰ
ｶﾞｰｶﾞｰ…ﾍｲ！ｺﾉｸｿﾔﾛｳｶﾞ！…ｻﾞｰｻﾞｰ…ｻﾞｰｻﾞｰ…ﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ！…ｵｳ！…
艦長！加藤が海に落ちました！…ドーン！…ﾍｲ！ｼﾞｬﾊﾟﾆｰｽﾞ！…ｲｻｷﾞﾖｸｺｳｻﾝｼﾅ…ｻﾞｰｻﾞｰ…ﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ！…ワァァァ…ドーン！…バキ！…ﾌﾞｯ
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108 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:35:16 ID:eDKVa6GN0 - ―――…ﾋﾟｰ…お…ｻﾞｰ…れ……ﾋﾟｰ
…応答…ﾋﾟｰ…
…応答せよ！ながれ！ こちらトラック島司令部！
先程軍議会により急遽選抜隊を編成し、貴艦の援軍及び救助に向かう事が承認された
今さっき、航空基地から選抜隊が出撃した
二時間後にはそちらに到着する計算である
━━━━━二時間後━━━━━
操縦士Ａさん「…こちら110号機！ウェーク島南西沖に“ながれ”発見しました！」
司令部隊員Ｂさん「…状況はどうか？」
Ａさん「損傷激しく、船上に上陸した米兵と白兵戦を展開している模様！上空からの狙撃は無理です！」
謎の老人「…加藤は生きているか…？」
Ａさん「…ハッ？」
謎の老人「通信の加藤は生きているのかと聞いている！」
Ａさん「…か！加藤軍曹でありますか？なにか御用でも？」
謎の老人「海に落ちたと聞いたからな。少し心配しただけだ」
Ａさん「はあ…！！…うわぁあぁあぁあぁあぁあぁ」
ｶﾞｯ…ﾋﾟｰﾋﾟｰﾋﾟｰ…
Ｂさん「110号機！撃墜されました！」
謎の老人「いかん！余計なことを聞かなければ良かった！」
司令部隊員Ｃさん「112号機、113号機撃墜！」
Ｂさん「111号機撃墜！選抜隊全滅！！」
謎の老人「…！！私が行くしかないのかもしれん…」
お茶くみバイトのお姉さん「東郷長官！」
東郷「直ちに連合艦隊に通告せよ。これから仲間を救いに行くと」
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109 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:36:13 ID:eDKVa6GN0 - ●ある一等留年士の回想録●
やっとまいたと思ったのに、敵艦が、一隻だけだったけど、後ろからやってきたの。燃料が底を突いてたんだから、当然のことだけどね。
まだ動いていた時から軍曹が無線送ってたんだけど、どこの部隊も援軍を送ってくれなかったの。ひどいもんよね。
ホワイトベースからの交信が途絶えた時、敵の攻撃が始まって、船体が激しく揺れたの。
敵艦がすぐ側まで来てて、もう絶体絶命だった。
あたりは騒然としてて、応戦の準備でひっきりなしだったんだけど、その時伊沢大尉の様子が少し変だったのね。甲板で何か必死に捜してたの。
聞いたら、長官からもらった指輪落としちゃったんだって。
まじ大尉テンパってて、一緒に捜したんだけど、みつかんなかったのね。
したら、なんか無線機の前で軍曹がなんかいじっててえ、見たら、指輪でえ、大尉にそれ言ったら、きっとそうだって言って、軍曹のとこ行ったんだけどお、あいつなにしたと思う？
懐にしまってんの。まじきもかったし。高そうだったから、ネコババしようとしたんじゃない。
大尉もそれみて切れて、取っ組み合いになったんだけどお、敵兵乗り込んできちゃって、もおヤバくて。
なんか、クソヤロウガって言いながら、あっちは撃ちまくってたんだけど、ほら軍曹チキンじゃん。びびって海に落ちてんの。ん？ああ、指輪も一緒。うざいよね？
大尉は「艦長！加藤が落ちました！引き上げてください」って言ってたんだけど、艦長は加藤の一人二人死んでも全く関係ないって取り合ってくんなかったの。
別に軍曹はどうでっていいんだけどね。指輪も一緒に落ちちゃったから、そっちがうちら心配なんだよね。
敵がどんどん乗り込んできて、もうかなりやばくて、大尉と一緒に弾薬庫に逃げ込んで、内側から鍵かけたんだけど、外から銃声とか悲鳴とか聞こえて、かなり怖くて、震えてたんだけど、大尉励ましてくれてよかった。
やっぱ上司はしっかりした人がいいよね。うん。
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110 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:37:23 ID:eDKVa6GN0 - ●老将の戦記●
「これより、我々はながれ救出に赴く。貴様達の命、わしに預けてくれ」
東郷は全将兵を前にしてそう言うと出撃を命じた。
目的地はウェーク島南西沖。任務はながれ救助と敵の孅滅。
トラックを予想以上に早く攻略出来たのが幸いした。
本来なら防衛軍とともに敵軍を迎え撃つのが当然ではあるが、トラック攻撃中にハワイ方面から期末テスト艦隊が侵入してきたため、すぐに向かうことができなかった。トラックが落ちた今、力を注ぐことができた。
連合艦隊は次のような編成であった。
第一艦隊（旗艦：三笠、東郷乗船）
戦艦：三笠、敷島、富士、朝日
巡洋艦：春日、日進 、出雲、吾妻、常磐、八雲、浅間、磐手
第二艦隊（旗艦：千歳）
巡洋艦：笠置、千歳、音羽、新高 、浪速、高千穂、明石、対馬
第三艦隊（旗艦：厳島）
巡洋艦：厳島、松島、橋立 、須磨、和泉、千代田、秋津洲
連合艦隊は最高速度で航行した。
しばらくして、黒い煙が海の向こうから見えてきた。ながれだ、と東郷は確信した。
双眼鏡でみると、傷だらけのながれの船体と側に寄せて停泊している敵艦が見えた。ながれの甲板には敵兵がいて、積み荷を自分の艦に移していた。
「敵は略奪を働いているようだ。敵艦後方に砲撃せよ。こちらに目を向かせるのだ」
数分後、轟音と共に敵艦のはるか後ろで水柱が上がった。すぐに敵艦はこちらに向かってきた。
東郷は頃合いを見計らって、砲撃を命じた。砲弾は着弾。敵艦は火を噴き上げ、海の藻くずとなった。
「須磨をながれ救助に向かわせよ。それ以外は決戦に臨む」
そう艦長に言うと、東郷は作戦室に向かった。
作戦室では参謀長の秋山真之（あきやまさねゆき）が窓から外を見ていた。
「どうであるか？」
「本日天気晴朗なれども波高し。この波の高さは我々に有利であります。Ｔ字戦法を敢行するのに絶好の状態です」
晴朗、つまり晴れであると敵艦が補足しやすかった。
波が高いと縦長の船体である連合艦隊は揺れが少なく、横に広い敵艦隊は揺れが大きい。揺れが大きいと大砲の標準が定めにくく、連合艦隊に有利であった。
「ふむ・・・・・・。分かった」
それだけ言うと東郷は操舵室に戻った。
「長官！敵艦隊がやって来ました！」
艦長に双眼鏡を手渡された。中をのぞくと、彼方に連連と連なる大艦隊が見えた。
「敵艦隊に対し、平行にすれ違う反対の航路を取るよう、全艦に伝えよ。それから、Ｚ旗を掲げよ」
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111 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:38:35 ID:eDKVa6GN0 - Ｚ旗。黄色、黒、赤、青からなる国際信号旗である。
本来「曳船（船を曳いて移動したりして出入港の補助をする船）が欲しい」という意味であるが、東条はアルファベットの一番最後の文字と言うことで「後には引けない」と独自の意味をつけた。またこの海戦において次のような文言をつけた。
「皇国の興廃此の一戦にあり各員一層奮励努力せよ」
少しずつ敵艦隊と連合艦隊の距離は縮まっていった。どちらの艦隊も一列に並んで航行していた。
午後二時三分。敵艦隊と平行にすれ違おうとした。東郷は右手で左を指した。
「取り舵いっぱい！」
艦長が命じると、三笠は左に傾いた。後続の艦も左に旋回した。連合艦隊は敵艦隊の行く手を遮るように航行し始めた。
これは賭けであった。
Ｔ字戦法とは古くから存在する作戦の一つで、航行する敵艦の正面を遮るように航行し、集中攻撃するものであった。
通常艦砲は艦の側面に多く備えられ、船首部分には少ない。
Ｔ字戦法ではこの側面が敵艦隊の真正面に来るように移動し、集中攻撃をするのだ。
航行する艦隊の正面を横切る形が『Ｔ』に似ていることからこの名がついた。
この時敵艦隊は艦砲の少ない船首を向けているので、こちらの被害は少ない。
戦力差がどんなに開いていても勝てる作戦なのだ。
だが、敵の正面を遮ろうと旋回しても、敵艦が航路を変えてしまってはＴ字戦法は成立しない。また旋回中こちらからは攻撃することは出来ず、旋回中に攻撃を受けてしまうと、全滅のおそれもあり、実行不可能と考えられていた。
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112 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:39:08 ID:eDKVa6GN0 - しかし、東郷と秋山はこの作戦を成功させる確信があった。
旋回中、連合艦隊は２分間無力となる。しかし、敵艦が攻撃するまでに照準合わせなどのため数十秒程の時間がかかる。また第一弾が主要部に命中することは極めてまれであった。
第一弾の攻撃で着弾点を確認して照準を直し、第二弾を正確に命中させるのが常であった。
つまり旋回中、砲撃を受けるには時間があり、先程述べた波の高さも相まって攻撃を受けても致命傷を受けにくいのだ。
また東条は自らが乗船する三笠を先頭にした。当然敵は司令官の乗っている旗艦を真っ先に攻撃する。
しかし三笠は連合艦隊の中で最も装甲の厚い戦艦であり、多少の攻撃で撃沈することはない。
東条は三笠に敵の攻撃を集中させ、他艦を温存するつもりであった。
午後二時七分。三笠旋回完了。敵艦の砲撃が始まった。しかし東条と秋山の予想通り砲弾は三笠の周囲に着弾するばかりで、船体に命中するものはなかった。
午後二時十分。連合艦隊旋回完了。東郷は号令をかけた
「砲撃ィ！」
轟音が響き、船体が震えた。砲弾は前方を航行する敵艦オリジナル問題に直撃、オリジナル問題の司令塔は木端微塵に吹き飛んだ。
「やった−！」
乗員達の歓声が上がった。
「全艦に攻撃命令を出せ。徹底的に攻撃するのだ」
後続の艦も砲撃を開始し、激しい砲撃戦が始まった。
第一艦隊の間、第二艦隊、第三艦隊はそのまま航行し、敵艦の進路を完全に遮断。Ｔ字がここに完成した。
突然の攻勢を受け、敵艦隊からは撃沈、戦線離脱をする艦が相継いだ。
攻撃開始から一時間後、旗艦ネクステが炎上し、勝敗は決した。
敵艦隊はクモの子を散らすように逃げ惑い、次々と連合艦隊の砲弾の餌食となった。日没までに生き残った敵艦はすべて連合艦隊に降伏した。
「長官、作戦は大成功です」
帰路につく三笠の作戦室で、秋山は東郷に微笑みかけた。
「そうであるな」
東郷も安堵の笑みを浮かべた。
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113 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:39:43 ID:eDKVa6GN0 - ●ある留年士の始末書●
ふと先日読んだ新聞の一面を思い出した。
『期末テスト艦隊壊滅（２ちゃんねる新聞）』
『逆転の奇策 Ｔ字戦法（早耳新聞）』
敵艦全滅後、各新聞社はこぞって東郷長官の勇気と知略を讚えた。当然ではあろう。東郷長官は救国の英雄である。
しかし東郷長官はいつもと変わらず、職務に励んでいた。
「勝ってかぶとの緒を締めよ」
東郷長官は側近にそう漏らしていたそうだ。まさに武士と呼ぶに等しい。
敵国はあの海戦での大敗北で自信を失ったのか、和議を申し込んできた。おかげでジャパニーズ英語氏は無事帰国出来た。莫大な賠償金も請求出来た。
国力を大きく落とした敵国はしばらくは大人しくしているだろう。
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114 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:40:16 ID:eDKVa6GN0 - 私は海戦中、海に投げ出された。たまたま浮かんでいた木片に捕まることは出来たものの、もはやこれまでと、覚悟していた。
しかし東郷長官率いる連合艦隊の活躍のおかげで、私は無事生還することができた。いくら感謝しても足りなかった。
フィリピンに帰港すると、波止場で生き残ったながれの船員達と再開した。
すぐに大馬の案内で、仙崎長官がいる病院代わりの建物に向かった。なんでも私が生きていたら連れてくるように大尉に命じられたそうだ。
仙崎長官の病室に向かうと、長官は体中包帯で巻かれ、息も絶え絶えで、見るに忍びない姿で横たわっていた。側で大尉が長官の手を握り、真っ赤に充血させた瞳を長官に向けていた。
大尉は私に気がつくと、私の頬を拳で殴った。
「この泥棒！指輪を返しなさい！」
大尉は私の胸倉をつかんで怒鳴り散らした。その隙に大馬が私の懐に手を入れ、指輪を取り出した。
「あった・・・・・・！」
大尉は、病室の棚に置かれてあった、血だらけでぼろぼろになった長官の軍服の懐に手をいれ、何かを取り出した
「大輔君・・・・・・ほら」
そう言った大尉の手には指輪があった。それを仙崎長官の指にはめ、手を取り、握り締めた。
「ねえ、大輔君」
大尉は目に涙を浮かべていた。それでも気丈にふるまおうとしていた。
「新婚旅行・・・・・・まだ決めてないよね」
呼びかけに反応し、長官はうっすら目を開けた。
「どこ・・・・・・行こうか」
「・・・・・・呉」
「え？」
「環菜と初めてあった・・・・・・あの街に・・・・・・行かないか」
大尉は長官の顔を真っ直ぐ見つめた。目にたたえた涙が一つ、また一つ、頬をつたり、握りあった二人の手に落ちた。大尉は少し肩を震わせ、でも、微笑んで頷いた。
「うん」
長官も微笑を浮かべ、そして、瞳を閉じた。穏やかな顔だった。
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115 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:40:39 ID:eDKVa6GN0 - 葬式の後長官の遺骨の一部は海に撒かれた。
「あの人、海が好きだったから」
火葬して灰になった遺骨が撒かれた海を見つめる大尉の目から、深い悲しみが感じられた。かける言葉が見つからない。
「長官は、いつも大尉の側にいらっしゃいます」
突然大馬が口を開いた。大尉は振り返り、大鹿に顔を向けた。
「この海からいつも大尉を見守って下さるはずです。大尉が長官を忘れない限り、長官はいつも見守って下さるはずです」
大鹿の言葉を聞き、大尉はほんの少し微笑み、また海の方を見つめた。
海は日の光を浴び、踊るようにきらきら輝いていて、まぶしかった。
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116 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:41:01 ID:eDKVa6GN0 - この報告書はフィクションであり、実在の団体、個人は全く関係ありません。
また、戦闘場面、制度など実際のとは大きく異なる場合があります。
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117 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:41:27 ID:eDKVa6GN0 - 主な登場人物】※名前はすべて架空または歴史上の人物です。
加藤・・・戦艦ながれの留年士。階級は軍曹。担当は通信。軍曹のくせに威厳がなく使えない。上からも下からも見放された。どうするべ。
仙崎大輔・・・期末テスト防衛艦隊司令長官。階級は中将。ﾏｯｼｭﾙｰﾑ中毒経験。
伊沢環菜・・・戦艦ながれの艦砲担当の留年士。大尉。数か月後にお見合いした相手と、年内中に結婚予定。
大馬鹿子・・・戦艦ながれの留年士。階級は一等兵。担当は通信。上司の加藤が頼りないのでクーデターを起こそうとしている。仲間も大分集まった。
勝田孝太郎・・・戦艦ながれの艦長。階級は大佐。よぼよぼ。
呉の艦長・・・巡洋艦呉の艦長。中佐。一か月後ビキニ島に漂着して奇跡的に生還した。
山根の艦長・・・海防艦山根の艦長。中佐。艦の名前が気にいらないまま戦死。
ホワイトベースの人・・・ソロモンホワイトベース艦隊の通信担当者。兵長。のちにながれの船員に血祭りにあげられた。組織というものは下っ端にしわ寄せが来るように出来ている。
トラック司令部の人・・・トラック司令部通信担当の一等兵。上とかけ合って選抜隊を送ってくれた。ありがとう。君のおかげで助かった。戦後長野で公務員。
操縦士Ａさん・・・110号機搭乗。享年22歳。晩年は恋人に振られたり、カード破産した り、ワンクリック詐欺にかかったりなど散々であった。
司令部隊員Ｂさん・・・司令部の隊員。最近腹が出てきた。まだ若いのに・・・・・・。
司令部隊員Ｃさん・・・司令部の隊員。アフターファイブは飲み歩き。
お茶くみバイトのお姉さん・・・大学受験は内部進学で楽々♪
東郷平八郎・・・連合艦隊司令長官。大将。歴戦の猛者。引き出しの奥に隠したＨな本が孫に見つかった。口止め料としてもう１５０万も渡した。
秋山真之・・・連合艦隊参謀長。中佐。切れ者。
ジャパニーズ英語・・・官房長官。釣りに出て遭難して、敵国に捕まった。やれやれ。
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118 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:41:54 ID:eDKVa6GN0 - 【階級】※本スレでは陸軍階級を利用しています。行数を減らすため、（上位の階級）←（下位の階級）と表記します。
将校・・・大将←中将←少将←大佐←中佐←少佐←大尉←中尉←少尉
準士官・・・准尉（1932年（昭和7年）に階級名・特務曹長から変更）
下士官・・・曹長←軍曹←伍長
兵・・・兵長←上等兵←一等兵←二等兵
※各階級には細かい役割分担がありますが、あまりにも複雑なため、本スレでは省略させていただきます。
【司令長官と司令官、司令、艦長の違い】※素人がまとめたものであり、実際とは異なる場合があります。
旧日本海軍の呼称を採用。
艦隊の長・・・司令長官（連合艦隊司令長官はこれよりも格が上）
戦隊、根拠地隊の長・・・司令官
その下の部隊（駆逐隊、潜水隊、航空隊、掃海隊等）の長・・・司令
艦長・・・艦船の長。司令長官、司令官、司令とは違う。
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119 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:42:50 ID:eDKVa6GN0 - 【用語説明】※素人がまとめたものであり、実際とは異なる場合があります。
●海軍兵学校・・・旧日本海軍将校（戦闘における指揮官）の養成を目的とした教育機関。卒業後、少尉候補生として練習艦隊に配属されて、実習を経た後に海軍少尉に任じられる。
この上位機関に高級幹部（将官）を養成する海軍大学校が存在する。
●旗艦・・・司令官（司令・司令長官などを含む）が座乗し、指令・命令を発する軍艦。
●連合艦隊・・・本来は二個以上の艦隊で編成した大艦隊だが、日本軍は対外作戦用（敵領攻撃用）の艦隊をほとんど一つにまとめていた。
例えばフィリピン担当の艦隊とハワイ担当の艦隊が同時に存在した場合も連合艦隊といえる。
本スレの連合艦隊は日本海海戦における連合艦隊を再編したものである。実際の編成とは大きく異なる。
参考文献
●フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
●基本地図帳（二宮書店）
●面白いほどよくわかる日本史（日本文芸社）
●新世紀図説世界史のパサージュ（とうほう）
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120 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:44:50 ID:eDKVa6GN0 - 【制作協力】
海猿シリーズキャストの皆様・大日本帝國海軍所属連合艦隊・アメリカ合衆国政府・アメリカ合衆国海軍所属アメリカ太平洋艦隊
ミクロネシア連邦政府・ソロモン諸島政府・２ちゃんねる新聞・早耳新聞・広島県・呉市の皆様・>>26さん・>>29さん・>>31さん
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- ペンを正しく持っていない奴が多い。
875 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw []：2008/01/15(火) 18:47:41 ID:eDKVa6GN0 - 報告書提出しました
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http://school7.2ch.net/test/read.cgi/jsaloon/1195911906/
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- オリエに勉強時間で負けたら懺悔するスレ
354 ：加藤あい姫統一戦線 ◆Xb1uNrfekw [sage]：2008/01/15(火) 18:48:24 ID:eDKVa6GN0 - 報告書提出しました
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http://school7.2ch.net/test/read.cgi/jsaloon/1195911906/
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