- モレックス その5
189 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:31:55.63 ID:U8SnGksO - 庭の千草も、虫の音も
枯れて寂しくなりにけり ああ白菊、ああ白菊 一人遅れて咲きにけり 露もたわむや、菊の花 霜におごるや、菊の花 ああ、あわれあわれ、ああ、白菊 人のみさおも、かくてこそ
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190 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:35:18.57 ID:U8SnGksO - お前は歌うな
お前は赤ままの花やとんぼの羽を歌うな 風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな すべてのひよわなもの すべてのうそうそとしたもの すべての物憂げなものを撥去れ すべての風情をひん斥せよ もっぱら正直のところを 腹の足しになるところを 胸先を突き上げて来るぎりぎりのところを歌え たたかれることによって弾ねかえる歌を 恥辱の底から勇気をくみ来る歌を それらの歌々を 咽喉をふくらまして厳しい旋律に歌い上げよ それらの歌々を 行く行く人々の胸廓にたたきこめ
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191 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:42:16.88 ID:U8SnGksO - 妖怪に似た生あたゝかい
我が腹を撫でまはしてみる 春の夜のつれ/″\ 自殺やめて 壁をみつめてゐるうちに フツと出て来た生あくび一つ
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192 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:43:47.24 ID:U8SnGksO - 白鳥は 悲しからずや 空の青 海の青にも 染まずただよう
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193 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:45:12.43 ID:U8SnGksO - 主よ、みもとに 近づかん
登る道は 十字架に ありとも など 悲しむべき 主よ、みもとに 近づかん さすらう間に 日は暮れ 石の上の 仮寝の 夢にもなお 天(あめ)を望み 主よ、みもとに 近づかん 主の使いは み空に 通う梯(はし)の 上より 招きぬれば いざ登りて 主よ、みもとに 近づかん 目覚めて後(のち) 枕の 石を立てて 恵みを いよよ切に 称えつつぞ 主よ、みもとに 近づかん うつし世をば 離れて 天駆(あまが)ける日 来たらば いよよ近く みもとに行き 主の御顔を 仰ぎ見ん
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194 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:47:54.21 ID:U8SnGksO - 朝顔に つるべ取られて もらい水
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195 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:50:46.70 ID:U8SnGksO -
「君死にたもうことなかれ」 旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて 与謝野晶子作詩・吉田隆子作曲 戻 る ああおとうとよ 君を泣く 君死にたもうことなかれ 末に生まれし君なれば 親のなさけはまさりしも 親は刃(やいば)をにぎらせて 人を殺せとおしえしや 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや 堺(さかい)の街のあきびとの 旧家をほこるあるじにて 親の名を継ぐ君なれば 君死にたもうことなかれ 旅順(りょじゅん)の城はほろぶとも ほろびずとても 何事ぞ 君は知らじな あきびとの 家のおきてに無かりけり 君死にたもうことなかれ すめらみことは 戦いに おおみずからは出でまさね かたみに人の血を流し 獣(けもの)の道に死ねよとは 死ぬるを人のほまれとは 大みこころの深ければ もとよりいかで思(おぼ)されん ああおとうとよ 戦いに 君死にたもうことなかれ すぎにし秋を父ぎみに おくれたまえる母ぎみは なげきの中に いたましく わが子を召され 家を守(も)り 安しと聞ける大御代(おおみよ)も 母のしら髪(が)はまさりぬる 暖簾(のれん)のかげに伏して泣く あえかにわかき新妻(にいづま)を 君わするるや 思えるや 十月(とつき)も添(そ)わでわかれたる 少女(おとめ)ごころを思いみよ この世ひとりの君ならで ああまた誰をたのむべき 君死にたもうことなかれ 戻 る
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196 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 19:58:48.31 ID:U8SnGksO - 言えば言うほど、人は私を信じて呉れません。逢うひと、逢うひと、みんな私を警戒いたします。ただ、なつかしく、顔を
見たくて訪ねていっても、なにしに来たというような目つきでもって迎えて呉れます。たまらない思いでございます。 もう、どこへも行きたくなくなりました。すぐちかくのお湯屋へ行くのにも、きっと日暮れをえらんでまいります。
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- モレックス その5
197 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/26(日) 20:10:50.00 ID:U8SnGksO - 数年前、地下鉄神楽坂駅の伝言板に、白墨の字で「平川君は浅田君といっしょに、吉田拓郎の愛の賛歌をうたったので、部活は中止です。平川君は死んだ。」と書いてあった。
十数年前のある夜、阪神電車西元町駅の伝言板に、「暁子は九時半まで、あなたを待ちました。むごい。」と書いてあった。 いずれも私には関係のない出来事であるが、併しこれらの白墨の文字霊は、ある生々しい思い出として私の記憶に残っている。書かずにはいられない、呪いにも似た悲しみに、じかに触れたということだったのだろうか。
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