- 完璧な虚無主義者で読書人の一人暮らし
164 :774号室の住人さん[sage]:2019/02/12(火) 23:04:54.28 ID:iP5ggeZZ - 長谷川櫂『四季のうた――文字のかなたの声』(中公文庫)を読了。
これは、>>35〜>>45で触れた『四季のうた――微笑む宇宙』の続編。 今回もいろいろ感心した詩歌はあるけれど、特に心に残ったのは美智子皇后 のお作。こんなにいい歌を詠める人だとは知らなかった。全部で十首紹介 されているが、二つだけここに引用する。 幾光年太古の光いまさして地球は春をととのふる大地 (いくこうねん たいこのひかりいまさして ちきゅうははるをととのふるだいち) (続く)
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165 :774号室の住人さん[sage]:2019/02/12(火) 23:06:50.77 ID:iP5ggeZZ - (>>164の続き)
スケールの大きい、おおらかな歌で、この地位にある人としては、まことに 好ましい詠みぶりである。 この歌に添えられた、長谷川櫂氏の小文は以下の通り。 「はるかな星から届く光を描いて、宇宙的な視野で地球の春の訪れをたたえる。 宇宙の時代に生まれた春の讃歌だろう。『皇后美智子さまの御歌』は最新の歌集 である。歌に添えられた鈴木理策の透明感ある写真も美しい」 (続く)
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166 :774号室の住人さん[sage]:2019/02/12(火) 23:15:53.53 ID:iP5ggeZZ - (>>165の続き)
もう一首、今度は趣きが正反対のものを。 今ひとたび立ちあがりゆく村むらよ失せたるものの面影の上に (いまひとたび たちあがりゆくむらむらよ うせたるもののおもかげのへに) 長谷川櫂氏の説明は、 「『面影』は諦めと希望の交差する言葉。母の面影といえば母はすでに 亡き人だが、どこか似ているという意味になる。この歌でも要(かなめ) の働きをしている。大震災後、復興へ動きはじめたみちのくの村々。面影 の一語、哀しく、かつ力強い」。 (続く)
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167 :774号室の住人さん[]:2019/02/12(火) 23:19:36.24 ID:iP5ggeZZ - (>>166の続き)
以上の二首もそうだが、紹介されている後の歌も含め、これらの歌には どこか素人(しろうと)くさいところがあるように俺には感じられる。 プロの歌人に大抵うかがわれる、隙のなさ、張りつめた緊張感、ハッと する技巧の冴え、等々が欠けているように思われるのだ。 これは悪口ではない。むしろ、こういう立場の人であればこそ、それが 好ましく思える。 >>164の歌と、その後に紹介されている我が子を歌った歌などにうかがえる、 そういう緩さと温かさは、実に貴重だ。
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