- 完璧な虚無主義者で読書人の一人暮らし
70 :774号室の住人さん[sage]:2018/11/09(金) 17:38:28.17 ID:wPcmdyzb - >>59の続きで、
山川直人『ハモニカ文庫と詩の漫画』(ちくま文庫)について。 冒頭の短編漫画の『木馬は廻る』は、原作が江戸川乱歩である。 (廻る=まわる) 時代は大正末期か昭和初期であろうか。 最初のページには、木馬館と木馬がまわる情景が描かれている。 それにつけられたセリフは、 「廻れ廻れ 木馬よ廻れ この世は愉しい 木馬の世界 こうして今日も 暮れるのだ 明日も 明後日も 暮れるのだ」 (続く)
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71 :774号室の住人さん[]:2018/11/09(金) 17:39:34.15 ID:wPcmdyzb - そして、この後に、以下のような主人公の説明がある。
「五十幾歳(いくさい)の 格二郎(かくじろう) 好きからなった ラッパ吹き かつては郷里の町の映画館の 花形楽師だったのだが 音の出る 映画が発明されて お払い箱になった 流れ流れて東京の チンドン屋と なり下がり 道行く人の 嘲笑の的と なってきた (続く)
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72 :774号室の住人さん[sage]:2018/11/09(金) 17:42:13.10 ID:wPcmdyzb - (>>71の続き)
それが 去年の末 この木馬館に 拾われた 朝から晩まで 五分ごと 監督さんの 合図でラッパを 吹き鳴らす」 (以下略) ここまでの2ページで、十分切なくなってしまう。 この『ハモニカ文庫と詩の漫画』の漫画すべてがこんな調子だったら、 たまったものではない。 が、幸い、切なさの度が高いのはほぼこの一編だけで、後の漫画は 山川氏本来の作風であろう、淡々とした日常が描かれている。逆に言うと、 そのためにかえって、この一編の印象が際立つ。忘れがたい名編といった感じだ。
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