- 大物近代史家総合スレの25
85 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/10/02(日) 20:47:51.41 ID:fNdZdtFd0 - >>われわれは歴史を振り返るとき、神である。あらゆる事柄について結果を知りうるからだ。問題は、この神が
ときとして間違えるということだ。われわれがながめているのは、結果を知らない人々の行為の集積であることを 忘れてしまうのだ。われわれは、一度は同時代人の眼に映じたイメージを可能な限りたどってみることからはじめるべきであろう。 (有馬学『「国際化」の中の帝国日本』)
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86 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/10/02(日) 20:48:41.06 ID:fNdZdtFd0 - >>われわれの記憶の容量は無限ではなく、過去の一瞬一瞬における文脈と、それぞれの時点で潜在的に
存在した選択肢を記憶していることは不可能である。過去を振り返るには、現在の地点で判明している 帰結から遡って脈絡を見出し、筋道を立てていくしかない。歴史記述とは結局この合理化の作業だろう。 しかしそれによって、肝心なことを忘れてしまいがちである。それは、いつの時点でも、将来はわから なかった、という当たり前の事実である。歴史上のどの時点も、過去の数知れぬ経緯の上にあり、未来に 無限の可能性を秘めている。すべての当事者が、どの可能性がより蓋然性が高いかを全知全能を挙げて判断し、 その結果として一つの現実が生じる。あとから見れば必然的で、定まっているように見える道筋も、その時点では 誰も確かに予想できなかったのである。(池内恵『中東 危機の震源を読む』)
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87 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/10/02(日) 20:49:21.56 ID:fNdZdtFd0 - >>一般に歴史家のおちいりやすい錯誤のひとつに、「後知恵」がある。たしかに、
「後知恵」こそ後世歴史家の持つ大きな知的特権であるとも考えられるが、現在の 時点における時代風潮や価値観を過去に投影して、われわれの世界における位置を 確定しようとするとき、特に危険なものとなりやすい。なぜなら、概して歴史という ものはその行為者の「意図」と「結果」の越えがたいギャップをともなうものだから である。現在知られている「結果」から逆算して、その「意図」を推定することは、 「ある行為の結果生じる受益者をさがせ」という推理小説の犯人探しにも似て、現実の 歴史では誤りやすい推定であり、これは周知のように、その行為者をしばしば全能の英知の 所有者に仕立て上げる一種の陰謀説をみちびきやすい。だが、歴史や政治の舞台におどった 行為者(当事者)は、きわめて限られた状況、不完全な情報、時間の圧力(タイム・リミット)、 当時の時代風潮を所与のものとして不完全な未来へ対処していかざるをえないのである。 (永井陽之助『冷戦の起源』)
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