- 【小説】日向坂46メンバーの物語【フィクション】
92 :走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ cf7c-AkpG)[]:2021/02/23(火) 17:02:50.85 ID:4R1dY1mV0 - 川にまつわる三つの授業(その50)
「私は古典の方面にはあまり造詣がないのでよくわかりません。 ただ、私が知る限りの古いものでは、泉鏡花の『眉かくしの霊』の中にもあります。書かれたのは大正13年、西暦では1924年です。 鏡花らしい幻想的で耽美的な物語ですが、そういう作品でも末端のディテールをリアリティに結びつけているのが一流の所以です。 だから、これから読む箇所で、吝嗇で傲慢な代官婆という登場人物の描写は、大正時代の現実を反映していると思います。 『貴客(きかく)』というのは、お客さんを呼ぶときの敬称です」 そう言いながら、ソレイユ先生は本を取り出して読む。 「癖より病で――あるもの知りの方に承りましたのでは、訴訟狂とか申すんだそうで、 葱が枯れたと言っては村役場だ、小児が睨んだと言えば交番だ。 派出所だ裁判だと、何でも上沙汰にさえ持ち出せば、我に理があると、それ貴客、代官婆だけに思い込んでおりますのでございます」 「うわっ、メンタリティーは5CHで文句付けている人とほとんど同じですね」と鈴花は言う。 「なるほど大正時代にはすでにそんな人はいたんですね」と愛萌も言う。(続く)
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93 :走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ cf7c-AkpG)[]:2021/02/23(火) 17:03:14.01 ID:4R1dY1mV0 - 川にまつわる三つの授業(その51)
「愛萌さん、いつか機会があったら、江戸時代以前の記録もすべて調べつくして、 『クレーマーの発生とその変遷』とかいうタイトルにした本を書いたらどうですか?」 「まったく考えてもいなかったので、急にそんなことを言われても返事に窮します」と愛萌は苦笑する。 「クレームを自制することができない人が昔からいたのはよく分かりました。 でも、自身が依存しているものまで破壊しようとする衝動まで登り詰めるものなんですか?」と好花は訊く。 「もちろん他の要因もあると思います。過剰な承認欲求とかハビトゥスの優位性の押し付けとか。 まあ、承認欲求は必ずしも悪いとは言えませんね。他者から認めてもらうことで人は成長するものですから。 ただ、リアルの場では誰も認めてくれない場合、5CHのような匿名掲示板の中でそれを求めようとするのでしょう。 そういう承認欲求が異常なまでに肥大し臨界点に達したとき、メンバーにまで酷い中傷をするという暴走が起こるのかもしれませんね」(続く)
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94 :走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ cf7c-AkpG)[]:2021/02/23(火) 17:03:39.59 ID:4R1dY1mV0 - 川にまつわる三つの授業(その52)
「5CHでの中傷で、承認欲求が原因と思われる中傷で最近のものはありますか?」と愛萌は訊く。 「そうですね、いくらでもありますが、すぐに思いつくのは、クイズ番組で、 乃木坂の久保史緒里さんが『go to トラベル』ということを答えられなかったことに対して、わざわざスレ立てしてまで貶していたものを見かけましたね。 その貶しが大きければ大きいほど、そのレベルより遥か上に自分はいるという印象付けができると思い込んでいるんでしょうかね。 俺はすごいだろと悦に入っているんでしょうかね。 社会で起こっていることを知る余裕もないくらいアイドル活動に精進しているとかと普通は善意に捕らえるものですよ。 そんなことで貶す人は二重にも三重にも愚かですよ。 まずは、匿名掲示板の中においてすら誰も誉める人はいないし、そう思う人すらいない。 次に、万一誉める人がいたとしても、実生活とは切り離された匿名掲示板の中のことなのでリアルには反映されない。 ドラクエのようなRPGの中で溜めたゴールドや経験値が現実に反映されないのと同じですよ。 さらに、RPGならリアルには誰も傷つけないけど、匿名掲示板での罵詈雑言はリアルに人を傷つける。 人を傷つけるのはリアルだけど、承認欲求は必ず空振りに終わり、リアルには反映されることは絶対にない。 そういうけっして実を結ばない承認欲求の衝動が押さえられず、二十歳そこらのアイドル相手にマウンティングを取るのなら、癖というよりは病ですね。 異常なまでに人の非を訴えるということで、訴訟狂と言うべきですよ」(続く)
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