- 天国はつまらない
16 :田中[]:2011/06/30(木) 18:42:46.25 ID:kxlg3KIt0 - 茅場町の魚屋和泉屋の親方次郎吉は裏では義賊のネズミ小僧。暮れの三っ日間博打で300両すっかり負けてしまった。雪の中、新橋汐留の船宿伊豆屋に船で送ってもらいたく立ち寄る。
船頭と女将相手に雪見酒を飲んでいると、そこに十になったぐらいの素足にわらじ履きの小僧が「お〜ぃ、しじみよ〜」と売りにくる。 次郎吉は全部買い求め前の汐留川に放してやる。 話を聞いてやると、母親と二十三になる患った姉さんがいる。姉はもと新橋の金春新道紀伊国屋の”小春”という売れっ子芸者であった。 三田の紙問屋の若旦那”庄之助”といい仲になったが、通いすぎて庄之助は勘当された。小春が家に置いて面倒を見たが人気が無くなり、庄之助と姉は旅芸者になって箱根にいた。 そのとき、庄之助がかけ碁ですってんてんに巻き上げられて、姉まで人質に取られるところ、隣の部屋から二十四、五の苦み走った男が現れ同じ江戸の者だからと掛け金100両を立て替え救い、ちょぼいちでいかさま師から金を奪い取り、50両を二人の路銀にと与える。 その小判で宿の支払いをするが、金蔵やぶりの小判であったため、捕らえられ伝馬町に送られた。姉は心労が重なり病の床についたままになってしまった。そのため私がしじみを売っています。 次郎吉はその男が自分であったことを悟り、小僧に5両の金を持たせ、姉さんに悪いことばかりは続かないと言い伝えよと言いふくめ、折りを持たせて返す。 「お〜ぃ、しじみよ〜」と空荷で雪の中を行く小僧を見やりながら、情けがあだになったことを知り、子分を自首させて庄之助を牢から出した。勘当が許され小春と夫婦になって、小僧と母親を引き取り仲良く暮らした。 天保義賊の内、ネズミ小僧次郎吉人情話、雪の朝のしじみ売りの一席でした。
|
|