- 天国の心得
4 :田中[]:2011/03/08(火) 00:38:10.24 ID:MMf1a10A0 - 人間の生命とは不思議なもので、自分のためだけに生きて、自分のためだけに死ぬってほど人間は強くないんです。
というのは、人間というのは、何かの理想とか、何かのためとかということを考えているんであって、生きるのも、自分のためだけに生きるのにはすぐに飽きてしまう。 とすると死ぬのも何かのためということが必ず出てくる。それが、昔言われた大義ということです。そして大義のために死ぬというのが人間にとって最も華々しいというか、英雄的、或いは、立派な死にかただということ考えられている。 しかし、今は大義がない。 それは民主主義という政治形態は大義などというものが要らない政治形態ですから当然なんですけれども、 それでも心の中に自分を超える価値が認められなければ、生きてることすら無意味になるというような心理状態がないわけではない。 ことに私、自分に還って考えてみますと、死をいつか来るんだ、それもそれほど遠くない将来に来るんだって考えていた時代の心理状態は今に比べて幸福だったんです。 それは実に不思議なことなんですが、記憶の中で美しく見えるだけでなく、人間そういうときに妙に幸福になる。 そして今我々が求めている幸福というものは、生きるということ、或いは、過程の幸福であり、そして生きるということはレジャーの幸福であり楽しみでありましょうが、 しかし、あんな自分が死ぬって決まっている人間の幸福というものは、今ちょっと無いんじゃないかな。 じゃあ、お前は死を怖れないのか、それは、私は病気になれば死を怖れます。それから癌になるのも一番嫌で、考えても怖ろしく、それだけにもっと何か名誉のある、 もっと何かのためになる死に方をしたいと思いながらも、結局「葉隠」の著者のように、生まれてきた時代が悪くて、一生そういうことを思い暮らしながら畳の上で死ぬことになるだろうなと思います。
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