- レオン・スコット・ケネディの憂鬱スレ【m4aws】 [転載禁止]©2ch.net
923 :れすけ小節[]:2017/02/20(月) 17:34:07.71 ID:NNGNOzPH0 - 「禁じられた恋」
執筆年:1999年〜1999年作品 著者:直江淳一(おこ) ▲Go To Top Page 本章 「私。私、あなたの事、愛してます」 「カット!」 監督の声がかかった。 「はい。OK!」 監督のOKがかかると、スタッフから花束の贈呈があった。映画の最終カットの撮影が終わると、十三歳の幼い女優に笑顔が戻った。 広田千鶴。もうすぐ中学二年生。小学生の高学年より、モデルの仕事を始めた彼女は、初めて映画の主演クラスの大役に挑んだ。 「ありがとうございます」 千鶴は、花束を受け取ると、スタッフに礼をして回った。雨のシーンであった為、マネージャーにタオルを掛けられると、風呂に入る為、マネージャーと共にスタジオ内の浴室へ向かった。二人はスタジオ内の廊下を歩いた。 「良かったわよ。千鶴ちゃん。初めてにしては、上出来だったよ」 「ありがとうございます」 マネージャーは、鈴木紀子。三十歳のベテランだ。 「寒くない?平気?」 「大丈夫です」
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924 :名無し迷彩[]:2017/02/20(月) 17:36:00.25 ID:NNGNOzPH0 - 映画の主要部分は、冬休みを含む十二月と一月に集中して撮影された。学業を優先している千鶴は、授業を出来るだけ休みたくなかった。
そこで学校がある時は、授業が終わってから深夜まで行われ、冬休みになると睡眠時間三時間のペースで撮影をした。 学業優先。その希望を聞いてまで監督は千鶴で行きたかったのだ。監督はオーディションで一目合って、この子しか考えられないと熱望した。 映画は一時間二十分。映画にしては短い方だ。春に他の映画と二本立てで公開されるためだった。『恋。せつなくて』。それが、千鶴の初主演映画だった。 千鶴は、浴室に入ると、髪の毛を洗った。腰まで届きそうな長い髪の毛を丹念に洗った。撮影が一月三十一日に終わったので安心した。三学期で何とか 勉強の遅れを取り戻せるかも知れない。そう思った。四月から中学二年生だ。千鶴はいつも通りに髪の毛を洗った後、顔を洗い、身体を洗った。 そうして、湯船に浸かった。撮影が本当に終わったと思うとほっとした。初めての主演と言う大役をこなした千鶴は、撮影の疲れを湯船で癒した。 千鶴は眉毛のところで一直線で切った前髪を指でいじっていた。それが彼女の癖だった。 自宅に帰ってからも千鶴は朝から深夜四時過ぎまで、勉強の遅れを取り戻そうと猛勉強した。 千鶴は映画俳優である前に、やっぱり普通の中学生であり、高校にも行きたかった。だから、必死になって勉強をした。学校のみんなに遅れを取りたくない。そう言う意味で、頑張り屋さんだった。
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925 :名無し迷彩[]:2017/02/20(月) 17:37:53.24 ID:NNGNOzPH0 - 二月一日の月曜日。千鶴はいつもの電車で学校へ向かうところだった。学校は都内の男女共学の私立中学。制服姿で登校する千鶴は、普通の中学生であった。
いつもの時間、 いつもの電車、 いつもの位置、 そしていつもの友達。 駅に止まると、友達の佐藤明美が電車の乗って来た。そして、声をかけて来た。 「千鶴、おはよう」 千鶴は手を振って応えた。 「おはよう」 「どうだった?撮影」 明美は、千鶴の一番仲の良い友達だった。撮影の事は明美にしか話していなかった。 映画の公開が三月下旬だったため、ぎりぎりまでは他の友達に話すつもりはなかった。 千鶴は学校以外の事は、あまり話したがらなかった。雑誌のモデルとかしていても、 みんなと同じ普通の女の子で居たかったのだ。 「うん、終わった。でも、なんか疲れちゃった」 「だよねー。でも良く頑張ったよねー。千鶴、偉い」 千鶴はふと後ろのドア付近に目をやった。視線を少し明美から外すと、すぐ側にいつもの人がいる。 背の高い、サラリーマンだ。いつからだろう、意識しはじめたのは。そう、中学一年生になって初めての夏が始まる位だろうか。 半袖になった頃、千鶴はその男性に意識する様になってから、必ず同じ時間に同じ電車に乗る事を決めた。明美といっしょに登校する為もあったが、その男性に会えるからでもあった。歳にすると三十代くらいだろうか。優しいその顔に、ほのかな恋心を抱いていた。
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