- 歴代FE主人公が兄弟だったら 59章 [無断転載禁止]©2ch.net
354 :病みの優王女1/3[sage]:2017/02/10(金) 22:52:33.55 ID:Yb+b/eUS - 書き終わったので投下します。
事実上の最終章です。 ※注意 この話にはKINSINネタが含まれています。 このネタが苦手な方とシグルド兄さんはNG登録をお願いします。 第五章 意識を取り戻し、目覚めたエフラムが最初に見た光景は、月を背景に慈しみの笑みを浮かべるエイリークの姿だった。 いつの間にか膝枕されており、幻想的な光景に目を奪われ柄にもなく見惚れてしまった。 「…帰るか、エイリーク」 「はい」 エイリークが治療してくれたのだろうか…刺さっていたはずのジークリンデは抜かれ、傷は塞がっていた。 これならば、歩いて帰るのに支障はなさそうだ。 膝枕の誘惑を振り切り起き上がると、光のオーブを所持しているエフラムが闇のオーブを回収し、光のオーブと一緒に懐にしまう。 ジークムントを拾い上げエイリークの方を見れば、彼女はジークリンデを腰に携えすでに支度を終えていた。 広場からは歩いて帰り始めたが、兄弟家に着くまで会話はなかった。だが不思議と気まずく感じることはなく、沈黙が心地よかった。 ―――しかし、帰ってからは大変だった。 最初に出迎えたミカヤは血濡れのジャージを見て急いで治療して来ようとするし、 騒ぎを駆け付けたリンは「け、結婚したの!?」と誤解していた。 なんとか誤解を解くと、玄関にジークムントを立て掛け、エイリークとは着替えるために別れる。 エフラムも自室で手早く着替え居間に向かうと、卓には料理が置かれ、そういえば夕食前だったと今更ながらに実感する。 男性陣には視線で称えられる中、マルスに二つのオーブを返したが、闇のオーブの色が戻ってると不思議そうに呟いていた。 しばらくするとエイリークも居間に姿を現し、ようやく兄弟家全員が一同に会する。 エイリークの謝罪から始まった食事が終わると、全員で捜索願を取り下げに行くクロムを見送る。 そのあとはサラと一緒に風呂に入ったが、彼女は風呂から上がると「邪魔しちゃ悪いから」と言って帰ってしまった。 一人暮らしの家に戻ろうとしたが、夜も遅いので兄弟家の自室で床に就く。 取り留めもない考え事もしていたが、今頃疲れが出たか…眠気がまた襲ってきて――― 「起きていらっしゃいますか?兄上…」 寝ようと思た矢先、エイリークが部屋を訪れる。 聞けば一緒に寝て欲しいらしく、子供の頃を思い出しながら快諾する。 「兄上…今日は、申し訳ありませんでした」 「みんなも言っていただろう…気にするな」 FETVには後日謝罪に向かうが、 隣で横になっているエイリークは、やはり怪我を負わせたことが気がかりらしい…気に病まなくともよいとは思うのだが。
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355 :病みの優王女2/3[sage]:2017/02/10(金) 22:53:21.50 ID:Yb+b/eUS - 「それよりも、聞いてくれないか…エイリーク」
「…?…はい」 「俺は、なぜエイリークがあの場所を選んだのか、自分なりに考えていた。 他の兄弟の性格を知るお前ならば、別に家を選んでも支障はなかった。 だが、お前の心の内を聞いてようやく分かった。 エイリーク…お前は、リオンとラーチェルへの想いに悩んでいたからあの場所を選んだんじゃないか?」 「そう…ですね」 歯切れの悪い返答だったがエイリークは肯定する。 「何も、二人と別れてくれだなんて言おうとは思っていない。時間も十分にあるし、 この先その二人との関係をどうするか、エイリークがしっかり考えて自分なりの答えを出して欲しい」 「兄上…」 「だがこれだけは言っておく、エイリークがどんな道を進もうとも、俺はいつまでもお前を愛している」 離れていくことにエフラムが寂しさを感じないと言ったら嘘になる。だが、エイリークを縛り続けるのは道理ではない。 将来の選択は分からなくとも自分の愛は変わらないし、道を違えても兄妹の絆は変わらず其処にある。 エイリークの人生は彼女自身の手で切り開かなければならない。 エフラムの言葉に思うことがあったのかエイリークはエフラムに抱き着き――― 「兄う……お兄ちゃん…また、頭を撫でてください」 「ああ…いいぞ」 彼に思い切り甘える。あの時は後ろからだったが、今度は正面から抱きしめ頭を撫でる。 帰ったサラは、おそらくこれを見越していたのかもしれない。相変わらず心の機微に聡い…「ありがとう、サラ」 そして、「愛している、エイリーク」心の中でそう呟く。 やはり兄は、いつも自分を気遣ってくれる…彼自身の好意を後回しにしてでも。 エフラムの手から伝わる温かみは、いつもよりも慈しみが感じられ、エイリークは夢見心地だった。 サラ達が頭を撫でられるところを見かけても遠慮していたエイリークは、 自分がどこか一歩引いたところがあることを自覚していたが、最初から思い切り甘えればよかったと今になって思う。 妹のカムイがそうであるように、同じく妹である自分も我慢せず、素直に甘えればよかったのだ…兄であるエフラムに。 次第に眠りに落ちゆくエイリークが最後に見た光景は、初めて見た―――穏やかな笑顔のエフラムだった。
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356 :病みの優王女3/3[sage]:2017/02/10(金) 22:53:53.11 ID:Yb+b/eUS - 浮き上がるような感覚と共に意識が覚醒し、目が覚める。
どうやら自分は、エイリークの頭を撫でて寝顔を見ているうちに眠っていたらしく、目の前のエイリークの寝顔がその記憶を保証する。 エイリークを起こさぬよう布団から抜け出し、サラから貰ったロプト教団謹製のジャージに着替えると静かに部屋を出る。 廊下を歩くと春が近づいているとはいえ朝はまだ肌寒く、時計を見れば四時だった。 もうしばらくもすれば、エリンシアが朝食の支度で起きてくるだろう。 玄関で靴を履いてジークムントを手に取り、玄関を出れば、夜明け前の独特の色合いが空と雲を彩る。 早朝練習で何度も見ている光景であるが、不思議と飽きることはなく、美しさを感じて心が落ち着く。 玄関前で体をほぐし準備運動を行うと、兄弟間の手合わせで使っている裏庭を目指す。 今日早起きしたのは早朝練習のためではない。ある人を待つためだ。 裏庭に着くと――― 「やはり、来たか…エフラム」 自分が待つはずの人物がそこにいた。 「…引き返すつもりはないか?」 「シグルド兄上…俺は考えを変えるつもりはありません」 待ち人―――シグルドはこちらに背を向けたまま問いかける。彼なりの最終通告なのかもしれない。 それでもエフラムは、その厚意を無碍にしなければならない。 「そうか…まさか、お前にこれを向けることになるとはな」 そういってようやく振り返ったシグルドが手にしていたのは…聖剣ティルフィングだった。 ラケシスとの結婚の折にセリスに託したはずの聖剣…おそらくこの時のために借りておいたのだろう。 AKJとの激戦を共に潜り抜けた、シグルドの相棒にしてKINSIN撲滅という信念の象徴。 彼は決して脅しで向けた訳ではなく、全力を以てエフラムを止めようとしている。 おかしいとは思っていた、KINSINに関する話題になれば逸早く声を上げるシグルドが、昨日は静観に徹していた。 いや、彼にはすでにわかっていたからかもしれない。 エフラムの答えも、エフラムが早起きすることも、そして―――エフラムとこうして戦うことまでも。 シグルドに立ち向かうためジークムントと同調し、彼と同様に臨戦態勢に入る―――ここからは意地の張り合いだ。 シグルドは相手との力の差を量れぬほど衰えてはいない、その上それに臆する男ではないことをエフラムは知っている。 エイリークの隣に立って歩くには、エイリークに相応しい男になるには、越えねばならない壁がある。 リオンはエフラムのことを羨ましいと言っていたが、同様に自分も彼が羨ましい。 リオンとラーチェルの横に並ぶには、同じ土俵に上がるためには―――この戦いに負けられない。 もはやシグルドとエフラムの間に言葉は不要だった、お互いに構え一歩も動かない。 数刻の後、二つの影は一つに重なった。 この戦いの勝者を知るのは当事者ばかりである。 しかし、ロプト教団の蔵書「Eファイル」(作者不明)にはこう記されている。 『優王女の傍には常に覇王在り』 〜fin〜
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357 :助けて!名無しさん![sage]:2017/02/10(金) 22:57:29.06 ID:Yb+b/eUS - 以上で「病みの優王女」は完結です。
読んでくださった方、便乗ネタを書いてくださった方、先人のネタ職人さん方、 ありがとうございました。 書き手に回るのは初めてだったのに長編を書いてしまったので、 拙い点は申し訳ありません。 また、ネタを思いついたら投下したいと思います。
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