- ぼくの かんがえた ロボット13ごうき
346 :それも名無しだ[sage]:2013/05/26(日) 20:10:14.95 ID:XR3u2nod - 『マグマダイバー・プラグマ』その25
これまで(>>294)のあらすじ 雨城に続き父までもが重傷を負い、その責任と恐怖、自らの力の限界に苦悩する豪。 そんな折、帝国の将プロムは、プラグマのアーキタイプ(通称もどき)を駆り訓玉市を襲撃。 迎撃に向かうコロナだが、プラグマのコントロールシステムとザルガン人の彼女の間には、ある問題があった。
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347 :それも名無しだ[sage]:2013/05/26(日) 20:10:46.33 ID:XR3u2nod - ――このままじゃコロナが危ない。
「ウソだろ」なんて、思わず口に出てしまうけれど、よくよく考えれば確かに、そんなそぶりもあった。 コロナとは何度かプラグマに乗っているけれど、その度どこか辛そうにしていた。 ロボットに乗ってればそういうモンだと深く考えなかったけれど、運動とか、乗り物や機械の扱いだって今まで難なくこなしてきた彼女だ。 それぐらいでへばる理由がない。心配かけまいと、黙ってたんだ。 だったらやる事は決まってる。今すぐにでも助けに行かなきゃ。 けれど…… 「なに突っ立ってんだバカ!!」 賢に首根っこをグイと引っ張られる。すぐさま目の前のガラスが割れて、建物も崩れる。 ケータイも落としてしまうが、気にしている場合でもない。 背中を押されてようやく、走りだす。 一つ間違えれば下じきになって、死んでももおかしくなかった。 それって最悪の展開だ。自分が死ぬのも、自分の知ってる人間を助けられないのも、嫌だって痛いほどわかってるはずなのに。 けれど……どうすればいいかわかんなくて、俺は立ち止まってしまっていた。 そうして頭ん中でぐるぐるやってるのが、まんま外に出てしまっていたらしい。 「あーもう、わかった! 助けにいけばいいんだろ、ほら!!」 しびれを切らした賢が、交差点の反対側、プラグマともどきのほうに向きなおってどなった。 「いや、ちょっと待てよ!?」 言うが早いが、返事も聞かずに崩れた道をずいずいと突き進む。 直後にまた地響きがあって、俺も賢もとっさに近くの柱なんかにつかまる。 十何メートルもあるロボットがすぐ先で戦ってて、それに向かおうっていうんだから、こうもなる。 「そりゃ助けたいさ俺だって! でもこんな状況で、どうしろってんだよ!!」 「なんだよウジウジしやがって……よし、じゃあ俺が行く!」 「はぁっ!?」 「お前がやらねえって言うから、それならなぁ?」 「なんでそうなるんだよ! だったら俺が行くよ!!」 「えっ……どうぞどうぞ!」 「お前なぁっ!!」 言ってる間に、事態はまた急変する。爆風と一緒にバカでかい鉄のカタマリが押し寄せた。 派手に吹き飛ばされ、やってきたのはプラグマ。そして、もどきのほうがトドメを刺すべく近づいてくる! 「んなぁーーっ! どいつもこいつも好き勝手やりやがって!!」 目の前に倒れる巨人の体をよじ登る。ヤケになって、ガムシャラにやったって駄目だってのは分かってる。 今の俺になんの力もないって事も。それでもっ!
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348 :それも名無しだ[sage]:2013/05/26(日) 20:11:25.16 ID:XR3u2nod - 「……豪……くん…………?」
「コロナっ!!」 壊れかけのハッチを開いて、コックピットに飛び込む。 息も絶え絶え、目もうつろだってのに、彼女は操縦桿をしっかりと握りしめたままだ。 たった一人で全部背負い込んで、一番つらいのはコロナじゃないか。だのに俺は何やってんだ!! 「賢、彼女を頼む!!」 「ああ? ちょっと待て、さすがに担いで走る余裕ねえぞ!」 正面の画面には迫るプラグマもどきの影。 よしんば降ろすのが間に合ったとしても、足元に気をつけながらの撃退なんて難易度が高すぎる。 「それじゃあ…………」 「後ろで看てろだろ、任せとけって。逃げるタイミング、完全にのがしちまったしな。」 「あてつけがましいな。」 「ジョークだよ。それじゃあ復活したヒーローの活躍を特等席で拝見するとしましょうかね。なんにせよ、負けらんないぜ豪。」 「ああ、わーってるよ!」 どうにもうまい具合に乗せられてしまったらしい。 けど、そこまであいつも考えててくれてんだよな。 『フゥ……ハァ……とどめだ、裏切り者ッ!!』 「そうは、させるかよっ!!」 直後に振り下ろされる手刀を受け止める。 急な動きにおどろいたのか、向こうはいったん後ろに下がる。 『その声は……また貴様か。放っておけばいいものを!』 全速力のタックルが来る! 正面から受け止める。格好つけたはいいけど、正直ビビって手はふるえっぱなしだ。 それでもやらなきゃ――ちがうな。怖いから、やるんだ! 「でえええええいっ!!」 二手目の鉄槌打ちを、プラグマのボディでぶつけて止める。 自分からカウンターパンチもらいにいってるようなものだから、コックピットに来る衝撃もひどい。 けど、かわりにこの距離で腕も空いた。押されて倒れる勢いをねじ曲げて、投げ飛ばす! 「お前いつもこんな無茶やってんの?」 「天才秀才じゃねえからしょうがないだろ! それよかコロナは!?」 「ん、気ぃ失ってるが心拍数は大分落ち着いて来てるな。あんまり悠長な事はやってられんぜ。」 操縦桿を握る手にも自然と力が入る。今しがた乗ったばっかりなのに、手のひらはもう汗だくだ。 『ちいっ……捨て身で来たか、余程死にたいと見える!!』 「んなわけあるかっ!」 起き上がりの飛び蹴りを、なんとかかわす。タイミング逃したと賢が言う通り、辺りに人がいないのが幸いだ。 「俺は死にたくねえ! 俺の代わりに誰かがギセイになるのも……目の前で助けられないのも嫌だ!!」 『そんな我侭を戦場でッ!!』 「――通す!!!」 渾身の正拳突きで、切り返しの蹴りを強引に押し返す。 ただ、それで終わるほど向こうもヤワじゃない。 『ハァ……通せるものか…力がなければ! そのようなものは戯れ言よォ!!』 パイロットがいて、画面があって、ロボットに乗っていて……何重越しにもなっていても、向こうの気迫が伝わってくる。 その勢いをのせた拳が風を突き破って飛んでくる。 激突――すんでのところで掌を合わせるも、その勢いはとどまらない。 もれた衝撃波がイナズマのように周囲をかけめぐる。
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349 :それも名無しだ[sage]:2013/05/26(日) 20:12:08.04 ID:XR3u2nod - 「やばいぞ、豪!」
正面で受け止めるプラグマ自身はなおさらだ。実際に火花だって散り始めてる。 どんなに必死になったって、どうにもならない力の差。 それを実感したからこそ、さっきまでの俺はあきらめてた。 それでもこうやって戦ってるのは、あきらめなければどうにかなるなんて向こう見ずな理由じゃない。 確かに"今の俺"じゃ"できる事"なんてたかが知れてる。だから―― 『……トドメだッ!!』 プラグマもどきの関節が開き、もう一つのミサイル機構が姿を見せる。 「――"できない事"をやるんだ! "今の俺"を……超えてぇっ!!!」 ミサイルの発射よりも早く、最高最大出力でプラグマを突き出す。 高速対高速。ミサイルが爆発するよりも早く、貫通させて突き抜ける! 後は正真正銘の、力勝負。もどきと今一度、取っ組み合う! 『ぐぅ……気合の一つや二つでッ!!』 「足りないってんなら、三つでも四つでも、百万個だって……つけてやらぁああ!!!」 『ぐうっ……ぬおっっ!!』 それは、本当に一瞬のスキだ。プラグマもどき――試作型のプラグマがこんな形で残っていて、今まで使われなかったのは、何も思想がどうこうの問題だけじゃないはずだ。 そしてプラグマが失敗作で、コロナが操縦し続けると危険な理由。 頭の中に流れ込んでくる、熱をもった情報。それが毒になるのはきっと、同じザルガンの人間である、向こうにも言える事だ。 疲労でひるんだその一点を貫く。今度こそ、プラグマに……自分自身に打ち勝って。 そう、目の前にあるのは、超えるべき壁そのもの! 『ぐがぁッ……この…………程度ぉぉおおおおっ!!』 「でえりゃああああああああっっ!!!」 互いの全身全霊がぶつかり合って、その衝撃は、爆発を起こしているみたいに感じられた。 そうして勝ち残ったのは赤い巨人――プラグマ。 「はは、マジで気合でぶっ倒しちまったな。どういう原理だよ……ってオイ!」 ぶっ飛ばしたもどきは、素人目でも戦えないのはりょう然だ。 だけど、パイロットの意志で強引に立ち上がっているようだった。 『くっ……ガイアコアを……ものにしたとでも言うのか……貴様が……!』 「今度こそ、逃がしゃしないぜ。」 『ならば、殺せ。それが敗者の末路……情けなど要らん。』 「なっ……!!」 「おい、なんだよアレ!?」 言葉に戸惑った、その一瞬の間だった。 積み重なって崩れた建物の残がいを押しやって、まるで水から顔を出すのと同じように、地面の中からいきなりにそいつは現れた。 『馬鹿な……アイスマンは全機動けんはず……!!』 おどろいたのは向こうも同じで、どうにも知らない事があるらしかった。 氷のように透き通った、トゲトゲしいパーツだとか、現れたそいつは確かに、アイスマンらしい特徴がある。 けれど、ところどころが機械的で、それでいて生物っぽかったりといったアンバランスさは、そうでない可能性も同時に備えている。 『ぬうっ……!?』 そしてそいつはいきなり、動き出すと、プラグマもどきの土手っ腹に腕をぶち込むと、その中身をひきずり出した。 同じ構造なら、あれはきっとコックピットのはず……まさか殺しに来たのか? それとも助けたのか? あっ気に取られている俺を、ひと目も気にする事もなく、謎のロボットはズブズブと地中にかえっていった。 それを確かめるには、追いかけるしかない。ただ、今はコロナを病院に連れて―――― ―――――――― ―――― ――
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350 :それも名無しだ[sage]:2013/05/26(日) 20:12:42.86 ID:XR3u2nod - 「――――あれ。」
まぶたを開くと、真っ白い天井が映っていた。 閉じたつもりはなかったけれど、つまりはいつの間にか、気を失っていたらしい。 「豪くん、目が覚めたの?」 ベッドのすぐ側には、コロナがいた。「心配したんだよ?」って、これじゃあ立場が逆だ。 でも彼女のほうが先に元気になってたって事で、一安心なのは間違いない。 「ごめんね、私のせいで……。」 「いんや、謝らなきゃいけないのは、俺のほうだ。コロナが頑張ってる間も、俺は逃げようとしてた。それすらも怖くてできなかったんだけどさ。」 「でもそういうのって全部、私が巻き込んだからでしょ? 豪くんが、無理しなきゃいけない理由なんてないのに。」 「……そりゃあ、初めは巻き込まれたからかもしれないけど、でも今はちゃんと、理由あるぜ。」 俺に力があるとかないとか、誰かに必要とされているからとか、そんなんじゃない。 「俺が守りたいんだ。家族も、ダチも、この街みんな……それに、コロナを。」 「豪くん……。」 もちろん、まだまだ及ばない事ばっかりで、現に今日なんて、最後でヘバってまた心配かけさせてる。 だからもっと前に進んで、守れるようにならなきゃな。自分自身の命もだ。 笑顔がもどったコロナを前に、それを見れただけでも今日は、なんて少しクサイ事を思っていた所……。 「ひゅー熱いね! 愛の告白かぁ!」 「おっ……お前いつから!!」 唐突に飛んできた冷やかしに振り返ると、そこにはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる賢の姿が。 なんと最初からいたらしく、「なんで言わないんだよ!!」といえば、「だっていいフンイキだったしな」と、この野郎めは淡々と返してきやがる。 そんな中なんとまた別方向からも声が飛んできた。 「そのまま放っておけばキスのひとつでも拝めたかもな?」 「む……豪まさかお前そんなふしだらな!」 「やあねぇお父さん、それぐらい最近の若い子の間じゃ普通ですよ。」 「でえぇぇぇぇっ!!!?」 窓ぎわに並んで立っているのは、雨城さんに、親父にお袋。 お袋はまあ、わかるとして、二人とも結構に危険な状態のハズ……。 「いやあ、別に内臓飛び出てるわけでもないしな。治ったよ、まあずっと気絶してたようなモンだ。」 「父さんはしばらくギプスが外れそうにないが、まあこの通りだ。心配かけたな。」 そんなのアリかよ。驚きがひとしきり過ぎ去る頃に、もはや逃げられない可能性が浮かび上がってくる。 「それじゃあ、まさかみんなして、今までのまるまる――」 「バッチリ見てたし聞いてたぜ。」 「ああ。悪くない決意表明だったぜ、少年。ちとベタだがよ!」 「……うむ。成長したな、豪。」 「うふふ、お父さんのプロポーズ思い出すわね。」 「うわあぁぁぁぁあああああああ!!!!」 「どうしたの、豪くん?」 プラグマに乗っての戦いが吹っ飛ぶほど、頭ん中が真っ赤に燃え上がった。 つづく
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