- 第三次 0の参戦組み合わせで架空スパロボ雑談
663 :それも名無しだ[sage]:2010/11/02(火) 19:59:25 ID:09zWHdBm - >>661
ゴーダムも加えて5機揃えてみろ
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- ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
472 :中略!![sage]:2010/11/02(火) 20:31:12 ID:09zWHdBm - 着いたのは埠頭の倉庫群だった。サンライズから降り、歩く。倉庫の前を一軒過ぎ、二軒目の端から三軒
目の前に出ようという所で待ち伏せしていた金森が背後から飛び出した。首を極めようとしてきたのでしゃが んで避ける。空を切った金森の両腕がぶつかり合って音を立てた。 「大した反射神経だ」 金森は勘違いしていた。俺が避けられたのは待ち伏せを感知していたし、襲撃方法も予想通りだったという だけだ。とはいえ、敢えて訂正するほどのことでもない。しゃがんだまま進んで少し離れてから、俺は立ち上 がって振り返る。金森を正面から見るのはこれが初めてだった。仕立ての良い茶色のスーツが太った体躯 にフィットしている。そしてまっすぐ立っているのに地面に届きそうなほど長く太い腕にも。間違いなく特注品だ。 「立派な腕をお持ちですね、金森茂造さん」 「随分追い回してくれたな。誰か知らんが儂をこれだけ不愉快にさせたのだ、ただでは済まさんぞ」 金森が垂らしていた腕を持ち上げると、金属の軋む音がした。 「それで殴ろうっていうの、金森さん?」 「痛い目に遭ってもらわんとな!」 振り下ろされる金森の右腕を、俺は受け止めた。片手ではさすがにきついが、左腕にも備えなければならないので仕方がない。奴は驚いたようだった。 「馬鹿な、儂の腕を、ただの人間に出来るはずが……貴様、儂の『同族』だというのか!」 続いて飛んできた左腕をもう片方の手で掴み、相手の両手を引っ張りながら腰を落として地面に背中をつける。 右足を腹に当て、倒れこんだ勢いで両腕を上にやると、巴投げの恰好で金森は飛んでいった。逆さまになった 視界の中で、奴がまだ倒れているのが見え、俺はゆっくりと起き上がる。 「同族?とんでもない。あんたみたいなのと一緒にして欲しくないな。『機族』はプライドが高いんだ」 起き上がりはしたがまだ腰を上げていない金森に、俺は歩み寄る。 「このガキめ……!」 「そんなに若く見えるかい?これでも30過ぎだ。『ステイタス』は腕だけか?生身の所を痛めちまったら大変だからな……」 「調子に乗るな!機族だとしても、そんな貧弱な身体で……!」 金森が立ち上がり拳を繰り出した。俺はそれをくぐり、肩の付け根を手刀で叩いた。金森の表情が歪む。 「ずっと聞いてみたかったことがある。あんたらは、親から貰った身体を作り変えちまうことを何とも思わないのか?」 「生身など不完全さの象徴でしかない。日に日に衰えていく手足を捨てて、老いない身体を手に入れたのだ。だからこそ我らは貴い」 「……日に日に衰えていく、か。俺にはもう少し先の話だった。俺はまだ、自分の体で出来ることを試したかったよ。あんたからすりゃ確かにガキなのかもな」 そんな話をしたから、気が抜けていたかもしれない。金森が急に俺を突き飛ばした。尻餅をついた俺が目を戻 すと、金森はかなりの速さで走り去っていく。どうやら足周りも弄ってあるらしい。 奴は数十メートルを走りぬけ、ひとつの扉の開いた倉庫に入って行った。追いかけた俺は躊躇う。奴は数ある 倉庫の中で、迷わずこのひとつを目指していった。迂闊に足を踏み入れたが最後、待ち構えていた金森の部 下たちが俺を蜂の巣にするかもしれない。あるいは中に積まれている木箱が次々に爆発するかも? 正解はもっとシンプルだった。金森は入った所から同じように出てきた。一台の重機に乗っていることを除けば。 「アームリフトか……偉いさんの割に、手に職を持ってるじゃないか」
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- ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
473 :それも名無しだ[sage]:2010/11/02(火) 20:37:37 ID:09zWHdBm - ここでアームリフトの解説をしておく。というのも、それはかなりマイナーな種類の重機だ。
車高は4mほど、前後に短く、車体前面からはマニピュレーターを備えたアームが左右で一対――簡単に言う と大型のフォークリフトのフォーク部分が手になったようなマシンで、より柔軟、精密な作業が可能だが、高価 でデリケートなため使用している業者は少なく、扱えるオペレーターもまれだ。少なくとも普通はこんな、絶えず 潮風の吹くような埠頭の倉庫にあるような代物ではない。 「と、いうよりも、これ自体が儂の手なのだよ!」 運転席から見下ろす金森が言うや否や、アームリフトは組んだ両手を俺に向かって振り下ろしてきた。俺が跳びすさった跡では、コンクリートの地面が砕けている。 「そうか、操縦してるんじゃなく、マシンと直接連結してるんだな」 生身と機械の身体でさえ繋げる事が出来るのだ、機械の手足をまた別の機械に繋ぐ事などわけない。 「なかなか良いボディを持っているようだが、このパワーには耐えられまい!」 「確かに、さっきみたいに片手でって訳にはいかなそうだ」 「死ね」 振り下ろされたアームを横に跳んで躱す。打たれた地面が砕ける。 「攻撃がワンパターンだな。そんなんじゃいくらやっても無駄だぜ」 「いつまでそんな強がりを言えるかな?手も足も出んくせに!」 その時。高くもなく低くもないモーター音、急ブレーキ音と続いて、倉庫の影から真っ黒な車が飛び出した。言う までもなくサンライズだ。そのサンライズを追い越して、数点の光がこちらに向かってくる。その光――後部トラ ンクから発射された小型ロケットが、金森の眼前で弾けた。攻撃にはならないが、閃光が奴の目を眩ます。そ の隙に俺はサンライズに乗り込んで姿をくらます。 何が起きたのか理解したらしく、何事か叫びながら追ってくる金森がルームミラーに映った。 『ミニガンの使用を許可します。反撃してください』 サンライズがそう言うと背中でゴトリと音がし、スピードメータの横に切ったレンコンのようなマークが点滅した。 ミ ニ ガ ン 銃身の形をモチーフにしたそれは、これまた後部トランクに隠された7.62mmガトリング砲のロック解除を意味 する。アームリフト程度なら5秒で粉砕できる代物だ、もちろん金森も含めて。 「バッカ野郎、そんな危ないもん簡単に許可すんな」 『なら使わなければいいんです。いざという時使えないよりマシでしょう?』 「そりゃそうかも知れんが」 『それよりも使わないのなら代替案を。どうするんです?』 「決まってんだろ、俺たちの『素手』で叩く!」 『んもう、ヤリたがりなんだから』 「……お前、そういうネタどこで憶えてくるの?」 『私と会話する人間は一人しかいませんよ?』 「もういい。ドッキングいくぞ、トランスミッション!」
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- ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
474 :それも名無しだ[sage]:2010/11/02(火) 20:41:19 ID:09zWHdBm - ギアをサードからローまで落とし、さらにレバーを押し込むと7番目のギア、エクストラオーバートップにシ
フトチェンジする。インストボードの下と座席の下からそれぞれ一対のアームセット、フットセットがせり出 す。ここに手足を置くとコネクタが接続し、俺とサンライズがドッキングする。生身と機械の身体でさえ繋げ る事が出来るのだ、機械の手足をまた別の機械に繋ぐ事などわけない。 「ウェイクアップ、デイブレイカー!」 そこからは一瞬だ。フロントガラスがルーフに収納され、乗用車なら本来後部座席があるべき場所に畳ま れていた手足が伸び、助手席は運転席の下に重なって……これ以上は省くが、一瞬後、俺とサンライズ はひとつになり、身の丈5mほどの黒い鉄の巨人になっていた。 こちらが減速した隙に接近していたアームリフトが急停止する。金森は動揺を隠さなかった。 「黒い巨人だと……貴様、まさか」 「夜明けの光、デイブレイカーといえば、あんたらの世界じゃそこそこ知られてるつもりだが?」 「……ククク、そうかお前が。実は今、賭けの対象になっていてな。誰がお前を倒すのか!」 ・ アームリフトが突進してくる。俺は左踵のローラーを逆回転させ、「回れ左」して身を躱す。アームリフト―― いやこちらも金森自身と呼ぶべきか――はぶつかる対象を失って通り過ぎていった。 「そうかい、なら少なくとも、自分に賭けるのはやめといたほうがいいな。俺に言わせれば、あんたは小物だ。 やってることも、揉み消し方も、それからマシンもな」 「口の聞き方を改めろぉっ!」 金森がUターンし、再び突進してくる。アームリフトのむこうの空が白んでいた。 『コウジ、あと1分です』 「オーケイ、エネルギー濃縮開始。クラッシュハンドだ」 金森が俺を掴もうと伸ばしたアームを回り込んで躱し、後ろを取る。俺は東の空を背にした。 「でかい口を叩いて、逃げ回るだけか!」 またターンしてきた金森の拳をローラーを使ったバックで避けた後、今度は脚で前に跳び一気に2本のアーム の間に飛び込んだ。奴の両の二の腕を掴む。 「サンライズ、クラッシュハンド!」 『Load!』 以前に俺が短縮させた返事がかえり、俺の掌から発生した高振動が掴んだ金属をたちまち劣化させる。数秒 後手を放すと、金森のアームは自重に耐えられず、折れて地面に落ちた。 「こ、これは……何だ!?」 『あと10秒』 これまでの経験からすると、俺に敗れた機族は『ネットワーク』の後ろ盾を失い、司直の手が及ぶようになる。だから、 「あんたはもう終わりだ。その目に焼き付けておきなよ、当分見られないだろうから。――コール」 『3、2、1』 「貴様、いったい何を……」 俺はわずかに体を傾けて、俺の後ろにある光景を金森に見せてやった。その瞬間。
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- ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
475 :それも名無しだ[sage]:2010/11/02(火) 20:45:48 ID:09zWHdBm - 「夜明け……」
「デイブレイク!」 俺の正拳突きがアームリフトの正面に激突し、完全に機能を停止させる。その衝撃で金森も気を失い、眠っ たようだった。サンライズが変形を解き、デイブレイカーから一人と一台に戻る。 『警察に通報しました。彼が目覚める前に到着するでしょう。私たちは早く逃げないと』 「ああ。……その前に」 アクセルを踏み込んで倉庫群を突っ切り、俺は船着場に向かった。深夜なら夜釣りに忍び込む者もいるが、 今は誰もいない。海面は煌めき、朝陽が辺りのコンテナやガントリークレーンに、濃く長い影を投げている。 海鳥がの声が聞こえる。俺はダッシュボードから缶コーヒーを取り出すと、車から降りた。まだ温かい。 『コウジ、逃げないと警察が……』 「コーヒー飲むくらいの時間はあるさ」 プルトップを引き、缶を煽る。苦味が徹夜明けの頭を駆け抜ける。 『それに今日も仕事でしょ。早く帰って少しでも眠らないと辛くなりますよ』 「お母さんかよお前は。いいから静かにしてろって」 『……私も飲みたいな』 「どこから。ボンネットにかけたりしたら怒るんだろ?」 『当たり前じゃないですか』 「お前言ってることが……おい、無くなっちまったぞ」 『では帰りましょう。ほら、早く乗って』 「やれやれ」 俺が乗り込むとサンライズは自律で走り出した。こいつは何故いつも俺の夜明けのコーヒーを静かに飲ませよ うとしないのか。そんな事を考えながら、俺は少しまどろむ。 『寝ていてもいいですよ』 サンライズが声をかけてきた。気が利く。まだ道も空いている時間帯だ、帰るだけなら自律運転に任せてしまっ てもいいだろう……。 「悪い。そうさせてもらう」 サイレンを鳴らして走るパトカーの列の最後の一台とすれ違ったのを確認してから、俺は目を閉じた。昇った ばかりの朝陽を背に受けながら、サンライズは俺を日常へと連れ帰っていった。(終)
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- ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
476 :サラリーマン機族デイブレイカー[sage]:2010/11/02(火) 21:04:25 ID:09zWHdBm - エンディング
岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」をバックに 対向車のまったく無い朝の街を走るサンライズ号を空撮するカットが延々と続く ハイ、やっちまいました、中略です。別段ひねりは無いので脳内補完してください。 やはり刑事でも探偵でもない、何のコネもないサラリーマンに事件解決させるのは無理があった。 「ハードボイルドとは何か?」 ググると「犯罪や暴力などを感情を込めずに淡々と描く」などという解説が見られたが、 そんなの海外の冒険ものはだいたいそうじゃないか? 何か違う気がしたので、ハードボイルドの代名詞であるチャンドラーを読むまで書くのはおあずけ。 で、読んだ「ロング・グッドバイ(村上春樹訳)」。ああ、これがハードボイルドなのかと納得できる、読んだことの無い文章でした。 と同時に「これは無理だ」と。 というわけで、「全力で書くぐらいで丁度よいパロディになるだろう」と情けない計算をして 書きました。うん、真面目に目指したのにハードボイルドとは程遠いよ・・・。 でも楽しかった。
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