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ベルフェリオン9話
それも名無しだ
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
【XBOX360】スーパーロボット大戦XO その19

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ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
337 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:29:15 ID:CWvxsbmg
一か月以上経ってしまった、季節を逃してしまう!
こんばんは、ベルフェリオン作者です。
実は少し前から出来ていたのですが、シナリオの方向性とかで悩んでいました。
持っていきたい方向性は出来ているのですが、話を作るのもなかなか難しいですね。
では9話投稿に参ります。
 
 
「―――っ、は、はは」
解いた瞬間。その絵面を、誰かに奪われていると知らずに。
「や、やったぞ、スクープだ、これは、う、売れる、売れるぞ!」
閉鎖地区Dの元スペードビル。出遅れたと思った男に舞い込んできた、身に余る特ダネ。
記事のネタ探しのために飛ばしで来たが、まさかこんなネタが手に入るとは思っていなかった。
「さっそく記事だ! 街を騒がす中心に俺はいるぞ! ぃやーっはっはっは!!」
人間は何か巨大なものが眼前にあると、それ以外の何かを見落としてしまうものである。
この記者も例外でなく、瞬間の映像、これからの妄想がいつまでも頭にまとわりついていた。
少し目を配れば、倒れている二人の人間に目が行くだろうに。
その二人も写真に巻き込みながら、もはや男は注意すら傾けない―――。
 
 
  桜華絢爛ベルフェリオン
    第九話「銃声、残響の果て」
 
 
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
338 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:31:45 ID:CWvxsbmg
「そうだ。速く、もっと速く―――!」
視界に入る全てが、一瞬で背後に。そして遠くに、追いやられていく。
疾走する金色は、他の追走を許さない。
神速の領域において、絶対者と化した『GS01』は、真っ直ぐに駆け抜けていく。
そう。ここまで来てしまえば、この機体は手に入ったも同然。
周囲に立ち並ぶ廃ビルの数々。此処は閉鎖地区D、彼にとっては庭のような場所。
彼以上に道を知る者はそういない。
「……っ、く!」
問題は一つ。
あまりに機動性を重視しすぎたためか、慣れないパイロットには扱いづらいピーキーな仕様であること。
正面衝突しそうになった廃ビルを、ブースターを吹かして間一髪で横にすり抜ける。
「予想外だ、こんなの!」
このままでは追い付かれてしまう。
そうなれば……テストムービング用に調整されており、申し訳程度の基本武装しかないこの機体では、ろくな戦闘もできない。
先は見えている。だが、進めば進むたび、森のような廃墟が行く手を遮り、速度を奪う。
今は少しでも、少しでも速く合流地点に向かうことを考えて……。
 
だが、追走する側は彼の想像をはるかに超える速度で追ってきていた。
あくまで絶対者なのはBMMにおいて。その規格を上回るスーパーロボットの速度など、果たして彼に想像できたろうか。
徐々に差が縮まる―――それでもまだ遠いが―――後方を駆けるツヴァイ、ドライ。
『すまないな、こんなことに巻き込んで。大丈夫か?』
通信画面に出る涼の表情は真剣の一言。
フランベルジュは、一回り大きいツヴァイに文字通り乗る形で追走に加わっている。
「いえ……大丈夫です」
答える誠二は依然疲れたまま。というか、さらに悪化しているようにも感じられる。
先程までの試合で溜まっていた上に、乗ったまま追走するのであれば当然か。
『降りときゃよかったんだよ』
「時間ないだろ」
降りるにも時間がかかる。
コクピットを開けて、高さがあるために昇降用ロープを展開して降りる。
それまでにどのくらい引き離されるのやら。
それを考え自分を乗せたまま追走することを言い出したのは、他でもなく誠二である。
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
339 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:33:13 ID:CWvxsbmg
『邪魔になるだろ』
「そもそも干渉しない」
『酔ったらどうする』
「耐える」
一方、総一はずっと誠二の同行に否定的である。
誠二の疲れっぷりを見れば、これ以上の同行は躊躇われても仕方ない。
咄嗟の判断で連れてきたのだが、失敗だったかもしれない……そう思いはするが、
今はツヴァイに捕まっている状態なので、ため息しか出せない涼。
『……マスター』
そして、ここでさらに雰囲気ブレイカーになる、間の抜けた声が発せられる。
『何だ』
『ぎぼぢわるい』
なんか想像以上に冗談じゃなくヤバい。
『そのままGOで』
『わ、私の扱い悪くありませーん!?』
『日頃の行いが悪い』
こんな時に何をやっているんだ、おのれら。
まるで漫才のように、かみ合うようでかみ合わない会話を続けている。
全く、呑気な奴らだ。今の状況わかってるんだかわかってないんだか。
「……ふ」
でもまあ、随分生き生きとするようになったよ。
ふいに、笑みが漏れる。
 
―――その想いを振り落としたのは、唐突な衝撃。
 
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
340 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:37:54 ID:CWvxsbmg
一瞬の事だった。
叫ぶどころか、言葉を紡ぐ間もない。
突き刺さった『弾丸』は、紅の機体を大きく揺さぶり。
制御も何もなくなってしまったのか、目前の廃ビルに激突。
「せ……誠、二?」
それは、あまりに唐突で、あまりに残酷な一撃。
それゆえに、理解が遅れる。思考が止まる。
『―――ッ。伏兵か、どこから!?』
衝撃で同様に吹き飛ばされたフランベルジュが、跳ねるように立ちあがる。
「え、えーと……このままじゃわかりません!」
律義に答えてくれる。いや今お前に言ったんじゃねーだろという言葉を飲み込んで、はっと気づく。
「……このままじゃ?」
「はい。ベルフェリオンを出せば多分鮮明に……」
モニターのレーダー部を見る。何も映っていない。
だが、ツヴァイが被弾している以上、『何かいるのは間違いない』。
結論はひとつ。
「ステルス機!」
周囲のルミナ粒子を操作することによって物理・電子の両面で策敵を困難にするステルス機能は、
電力消費こそ莫大なものになるが、専用装備でも施さない限り見つけることは至難。
短期決戦で一方的な攻撃も可能になる点、そして絵的に映えないという最大のポイントがあり、
公式大会などでは使用厳禁となっている。装備しているのは警察か、それとも。
―――規模によってだが、組織が私的な目的で所持・使用していることも十分に考えられる。
『奴ら』もいるかもしれない。
「広瀬さん! 俺、出ます!」
この状況を打破できるのは、ベルフェリオン!
「追い付く自信はないですけど、露払いなら!」
『……わかった。ただ私も余裕はない、無理なら言ってくれ』
「了解!」
許可を貰うや否やコクピットの前面を解放、
「行くぞ!」
「え、うひぇぇえええええ〜っ!?」
パールの手を取って強引に飛び降りる。 
瞬間、彼らに安定をもたらす足場は失せ、上空から飛んだ二人は、ただ落ちるのみ。
だが、このまま自殺コースまっしぐらなど御免被る!
「パール!」
「で、でっ」
ひっつかんだ手を前にかざし、唱えるは無窮の誓い!
 
―――デバイス・オン!!
 
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
341 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:44:57 ID:CWvxsbmg
地面が崩れる。
着地の衝撃で、崩れかけていた舗装が一気に剥がれる。
着地の一歩は、同時に踏み込みの一歩。
鋭く前に走り出し、ひときわ大きな廃ビルに向かって飛ぶ。
横っ面を大きく踏みつけ―――集中。周囲の空気が我が物となり、全ての法則が我に味方する!
「シャオラァァァ!!」
爆発。
大きく宙を舞う身体は、空中で姿勢を整えながら、足を突き出す形に。
突き抜ける前方に、歪む景色がひとつ。
「爆牙! 天襲ゥ雷撃ィィィ!!」
意のままに飛び、勢いのままに突き抜けたベルフェリオンが、一瞬宙空で制止する。
手応え、あり。
前方の廃ビルに見えない衝撃が走り、爆発。
同時にステルスが維持不能になり、現れた姿は予想通り。
磔のように廃ビルに突き刺さるロボットの姿、手元から落ちるは長い砲塔。
「ざまァ!」一機撃破!
前方を確認すると、いくつもの廃ビルを抜けつつ駆けるドライフォートが居た。
いくらフランベルジュといえど、空中対応はしていないせいで、
GS01を追走できるほどのスピードを出せる機体ではないが、
ドライフォートが追って足止めをかけられればまだ希望はある。
追走を実行する役割は任せて大丈夫だろう。
「……今」
ここでひとつ、違和感が生じる。
今、総一は『言葉で把握せずに』位置を確認し、相手を蹴り潰した。
パールがレーダーの役割な以上、言葉でなければ位置確認はできないはずだが。
「あ、それはですね―――」
 
だが、そんな時間などない。
瞬間的に頭を過ぎる情報―――動こうにも遅い。
『一撃が放たれた』それを認識する間もなく、一瞬にして思考が、途切れる。
ヘッドショット。
そう、敵が一人であろうはずもない。
二射、三射と続けて引鉄が引かれ、四方八方からの集中砲火が今一身に―――。
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
342 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:48:29 ID:CWvxsbmg
気付けば、宙を舞っていた。
暗闇の世界の中で、どことも分からない空間を漂う。
落ちているのか、昇っているのか。暗がりの中で一人きり。
「此処は―――」
呟いたところで、景色が変わる。
頭上の方から、いくつかの情景が流れてきた。
春緋が居て、誠二が居て。また別のでは、涼が居て、俊暁が居て。
あの白アフロ野郎も、少しだけなら付き添う黒ずくめの少女も居た。白い部屋の中で、悠菜も居た―――
「これ、俺か」
そして、天城総一。
思考が繋がる。これはパールの意識、パールの記憶。
でなければ、この面子の映り方などない。
皆で過ごした光景も、パールと出会ってからのものしかなかった。
誠二の家に突撃かけた日もあった。同じ日に、母・悠菜の病室にお見舞いにも行った。
風のベルフェリオンに負かされて、その後食事にも行った。
学校でひと騒ぎも起こした。無茶な特訓だってやった。
すべてが、パールと出会った後の記憶。
「俺のだったら……」
そうだ。自分自身の記憶だったら、もっと前の記憶も覗けるはず。
二人と初めて会った記憶。三人して初めて、動くロボットに触れた日の記憶。
弱っていた自分に手を差し伸べてくれた記憶。
みんな忘れられない、自分を形成する大切な記憶。
「―――そう、だ」
そして、気付く。目の前の景色は、燃える灼紅に包まれていた。
彼と、パールと、二人の記憶が交わった始まりの記憶。
銃撃を浴び、出口も塞がれたあの日。響いた何かに導かれ、カプセルの中の彼女と出会ったあの日。
『マスターは仮契約のあと、自身の「守りたい」という心だけでロボットたちを相手に戦ったんです』
パールの言葉が蘇る。自身を突き動かしたのは、他ならぬ自身の心だった。
今はどうだ? どうなっている?
誠二を乗せたまま撃ち抜かれ、倒れたツヴァイドリル。
誠二の身を危険に落とした奴らがいるとわかった時、正直事件解決など二の次で飛び出していった。
今どうなっているかは分からないが、ここに居る以上何かしら起きたに違いない。
此処に居ても、何もできない。
「パール!」
そうだ。俺は望む、状況の打開を!
こんなところで、こうもあっさり、いきなり消えてたまるかよ!
頭上へと闇雲に伸ばす先に、何かが見えた。
その何かが、近づいてくる。それとも、自分が飛び込んでいくのか。
得体の知れない塊に触れた瞬間―――頭の中に、何か、直接、ひびい、て
 
頭が焼き切れそうな感覚。勝手に何かの思考が横切っていくのを止められない。
自分の思考の余裕がなくなる。流れ込む何かが急速に思考を奪っていく。
流される、流される―――懸命に、懸命に自分を保とうと言葉を守る。『守る』という言葉を。
 
不意に、耐え抜いた思考が引き、全てがクリアになる。
頭の中に残った何か、そして感じる、存在と言う名のいくつかの『点』。
『視界』が戻る。瞬間、全てを理解する。感じた『点』の場所が脳裏に雪崩れ込む。把握した。
全ての思考が結論に至る。
 
―――試行、開始。
 
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
343 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:50:32 ID:CWvxsbmg
風を焦がす電熱。硝煙代わりに水蒸気を棚引かせる長銃。
ステルスといえど完璧ではなく、本体のカバーで精一杯であり、長物の武器までも覆ってくれるなどといったことはない。
とはいえ、非常に遮蔽物の多い中、数という強みもある以上、その性能で十分役割を果たしてくれる。
周囲に溶け込んだ機体の中、初撃の引鉄を引いた男は、安堵のため息をつきながら思う。
……見事なワンショットだった。
自分で言うのもなんだが、放った弾丸は正確に頭部を捉えた。
貫けないのが残念だったが、命中したのは確認しており、目的は果たした。
二射ともに、実に完璧な狙撃が出来たと思っていた。
一射目、相手を限界まで引きつけての一撃。上手く命中した弾は相手の航行機能を奪い墜とした。
味方が一機犠牲にはなったが、その後止まったのが幸いし二射目が当たった。
当てた弾は電磁パルス弾、電子機器の機能を麻痺させる密度の高いパルスを発信する弾。
これに当たったが最後、中身が精密機械である人型ロボットが受けたらひとたまりもない。
タイマンでもチームでもあまりに強すぎるが故大会等では使えなくなったが、『こういう依頼』では依然現役である。
弾の出来不出来が非常に実戦に響き、その上使いづらく高コストではあるが、専用対策は未だに確立されきっていない。
闇討ちとはいえロボット戦闘の絶対者の戦力を削ぎ、その上謎のロボットにまで致命傷を与えられた。
これ以上なく仕事ができたといってもいいだろう。しかし唯一、直撃はしても吹っ飛びすらしなかったのは疑問だ。
いくらなんでも、ここまでの精密な集中砲火を与えられて無事なはずがないのだが……一瞬浮かんだ不安。
そこまで硬いのであればまるで化け物だ。
だが、その青い機体は彼の想像の範疇を超えていた。
まるで、ではない。これこそ本物、彼の目の前にいたのは紛れもなく、実存する化け物だった。
それはプロでさえも目を疑う光景。だからこそ、反応すらできなかった。
次の瞬間、構えていたライフルが手元を離れ、遥か遠方に吹き飛ばされていた。
正確に位置を、それもステルスが稼働している状態で把握された、確かにそれも大事ではある。
だが、それ以上のことを奴はやらかしていた。
信じられるものではない。誰もが疑うであろう。
謎の機体の手元に―――『一瞬で拳銃が現れた』のだから。
 
「―――ッ、痛ぅ……!」
頭が痛い。最初に、そう感じた。
単純に一点を穿たれたような痛みが走る。
「俺……どうなったんだ?」
『見事なヘッドショットでした。おかげでまだしびしびします』
いつも通りのパールの言葉。それで理解した、撃たれたことを。よくそれで動けるものだ。
『ベルフェリオンの防御力が高くて助かりましたね』
「全くだ、生身なら死んでる。つーか俺の台詞だよそれ……にしても、これか」
掴んでいる感触。目の前にあるその二挺の黄金色の塊は、確かにあの時認知した存在。
おそらくパールの意識の中から印象に残っていたであろう『これ』が、今この場で顕現していた。
誠二の家で見た、BMMサイズの電磁誘導式拳銃だ。どう見てもそれにしか見えない。
「これが出てきたっつーことは……」
総一は、自身が見てきたあの不思議な光景を思い出し確信した。あれは『ただの夢』ではない。
そうでなければ、今の周囲の状況を自分が把握できることもない。
不気味なことに、意識が覚醒した瞬間の周囲の位置関係も全て頭に残ったままなのだ。
何より、頭の中に残ったこの拳銃のイメージが、そのまま具現化されている。
『まあ、後で色々お話しましょう』
「全くだ。9から2引いて全7機! てめーらに手の一つも出させるかよ!」
近場には動けないツヴァイ。この戦闘領域に狙撃装備を持った奴らが9機。
1機でもツヴァイに目を向かされると誠二がまずい。
フランベルジュもついているが、追走するドライフォートを狙撃されても大変だ。
考えるより、全て潰せば早く、確実なのは明確。動くことは、守ることにもつながる。
まさに攻撃は最大の防御といったところか。
「行くぜパール! ここいら全域サーチアンドデストロイだ!」
『はーい! 黄金の鉄の塊で出来たベルフェリオンが隠密装備に……』
「なげーよ」
色々言いたいが今はやめておこう。色々な意味で。
思考を打ち切り、ひたすら潜む敵を見据え―――再び、駆ける!
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
344 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:52:57 ID:CWvxsbmg
「あークソ、どんだけ飛ばしてんだあいつ!」
その遥か後方。一台の特殊装備バイクが戦場に向けて駆け抜けていく。
電子装備を充実させた機体は、戦闘能力自体はお察しくださいではあるものの、
情報戦においてはそれなりに役に立つため、未だに運用されている。
主に配備された機体が使えない時の予備用として。
男、角川俊暁。ベルフェリオンに初めて遭遇した時に機体を中破させられていた。
それがまだ直っていなかったのである。
「こんな時に限って機体壊れてるし……」
「そりゃ災難ね」
後ろからひょっこりと顔を出す少女がひとり。
「ああ災難だよ。そのせいで……」
なんともはや、法を絶対遵守するべき警官が2ケツをする時代になるとは。しかも白バイで。
とはいえ、車では閉鎖地区で飛ばすことは難しいほどに放置されている区域であり、
あと非常時だからしょうがない。
「こいつだけ放置もできないしなー」
「へー、そんなこと言うんだ……」
「わひっ、ちょ、やめろ死ぬぞ!?」
いくらなんでも運転中にくすぐりをかける奴がいるか。ここにいた。
事実バランスを崩しかけて、下手したら転倒しそうだった。
下手なことを言うのはやめておいた方がいいのだろうか。
恐るべくは藍沢春緋……総一の苦労が少しだけ分かる気がする。
「ところで、こっちって閉鎖区域Dの方ですか?」
「ああ……よく分かったな」
「そりゃここから近いバトルフィールドってそこぐらいですし」
バトルフィールド。戦闘用にのみ一般開放されている区域。
直訳すれば戦闘領域となるこの区域では、私闘、練習等で使用者が多い。
この『閉鎖区域』では戦闘に絡まない行為が基本認められていないが、
これは復旧が困難と判断され、そのまま放置されているからである。
建前上は認めないが、実質は放置状態。それゆえ、何が潜んでいるかわかったものではない。
一応違反者は一定のタイミングで取り締まられるが、正直あまり期待できるものではない。
(そうだ、ここは……)
その中でも、此処閉鎖区域Dはかの『創世事変』の被害を直で被り、復旧が困難とみなされた場所である。
春緋が察することは不可能だが、俊暁の表情は少し、曇る。
「……何だ?」
突然、電話の着信が鳴る。
無線とはまた違い、セットした携帯電話が鳴っているのだ。
基本ロボットや他の乗り物に乗る場合は、携帯電話をあらかじめ機体もしくは車体につないでおき、
その媒体を通じてハンズフリーの会話ができる仕様になっており、このバイクも例外ではない。
本来プライベートに使えるような状況ではないが、相手が相手では仕方ない。
エルヴィンの中でも非常に重要な人物であるために、警察の中でも密接に関わっている彼には特例で許可されているのだ。
「広瀬か。どうした?」
彼女との応対のみ、俊暁は特別に回線の使用を黙認されている。
色々な理由があり、警察内で彼女と一番関わりを持っているのが俊暁であるためだ。
『予想外の反撃を受けた。ツヴァイと天城君を置いてきている。世話を頼んだ!』
「ちょ、おい!?」
簡素なやり取り、にしてはあまりに話が大きすぎやしませんか。
しかも「世話を頼んだ」とは、完全に丸投げである。
よっぽど彼女に余裕がないんだろうが、仮にも身を預かっている人間に対する扱いかと疑問に思わざるを得ない。
「……えー、と。それって?」
「急ごう。多分、二人が危ない」
時間を食ってはいられない。アクセルを入れ、舗装の粗くなった道路をひた走る。
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
345 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:55:00 ID:CWvxsbmg
空が泣き始めた。背に頭に、感じる雨はとても小さく、そして冷たい。
光が落ちる周囲の中で、ひときわ派手に光る爆発がやけに眩しい。
「ッく!」
一撃を、避ける。
地面に突き刺さる咆哮、それは最後のヤマを超えたという証になる。
襲い来る銃撃の悉くを回避し、敵の狙撃手段を奪う。
拳銃という武器を手に入れてから、相手の選択肢を潰すところに大きな活躍を見出すことができた。
視界に邪魔が入り始めたとはいえ、位置は既に掴めている。
残り二機、その両者がともに戦線の維持が不可能と見るや否や後退を図る。
『マスター!』
「ああ、見えた!」
相手の位置が把握できる。言葉より早く繋がる二人の思考に、電磁迷彩などという技術介入で阻めるものはなかった。
即座に構え、二挺同時に放つ。強すぎるほどのフィーリングを手元に残し、飛んでいく二つの弾丸が胴体部分を叩く。
強すぎる衝撃が加わった2機は、ともに移動を維持できず停止。
そこに追加される、二挺計四発の銃撃。
威力が減衰しているといえど、集中的なクリーンヒットを受けた胴体部の損傷が認められ、直接コアユニットが落ちる。
全機撃墜―――周囲は静寂に包まれた。
「終わりか」
『ですね』
何もできず終わりかと思えば、案外何とかなるものであった。
今までと比べたらあまりにあっさりすぎて正直不気味だ。
「……身体中痛ェ」
『何回死にかけたと思ってるんですか』
「慣れたくねーよ」
口調は軽い。しかし、それも終わったから言えるようなものである。
実際、あの奇跡のような大逆転さえなければ終わっていたといえよう。
「で、これは何なんだ」
示すのは金色に輝く拳銃。
唐突にこれが顕現してから、遠い場所にも攻撃できるようになったベルフェリオンの戦闘力は大幅に上がったといってもいい。
一度この形は見たことがあり、どんなものか覚えている以上、気になるものは気になる。
『……えーと。多分マスターの意識がこっちに飛んできて、その時に私の何かに触れた影響なんじゃないかって』
お前もわからないのか。
とはいえ、そう考えるのが自然ではある。一度、彼女の知っていることは洗いざらい吐かせたのもある。
「やれやれだ。とりあえず、ツヴァイんとこに戻って広瀬さんに連絡を―――」
『? あ、待ってください』
本当に間が悪いな。溜息をつきながら、悪態ぶって答えようとした……
『あ、そこです、そこに高見さんが!』
「―――な?」
突然の言葉。
見ると、確かに誠二がそこに居た。子供と一緒に、まるでその場でばったりと倒れ伏したような……
「誠二ッ!?」
そして。
 
天城総一は、迷うことなく、その巨身を、解いた。
 
「―――っ、は、はは」
解いた瞬間。その絵面を、誰かに奪われていると知らずに。
「や、やったぞ、スクープだ、これは、う、売れる、売れるぞ!」
閉鎖地区Dの元スペードビル。出遅れたと思った男に舞い込んできた、身に余る特ダネ。
記事のネタ探しのために飛ばしで来たが、まさかこんなネタが手に入るとは思っていなかった。
今お茶の間を騒がせている謎ロボの正体を、今ここで掴んだのだ。喜ばないはずがない。
大スクープにも程がある。
「さっそく記事だ! 街を騒がす中心に俺はいるぞ! ぃやーっはっはっは!!」
人間は何か巨大なものが眼前にあると、それ以外の何かを見落としてしまうものである。
この記者も例外でなく、瞬間の映像、これからの妄想がいつまでも頭にまとわりついていた。
少し目を配れば、倒れている二人の人間に目が行くだろうに。
その二人も写真に巻き込みながら、もはや男は注意すら傾けない―――。
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
346 :ベルフェリオン9話[sage]:2010/03/26(金) 00:57:17 ID:CWvxsbmg
「誠二! 畜生、何があったんだよ! ド畜生!」
必死の形相で肩を揺さぶる総一。だが、誠二は眉の一つ動かそうとしない。
近くには自分達以外誰もいない。思考が浮かんでは消え、まとまらない。
焦りに焦った末、ポケットの携帯電話に気付く。防水加工がしてあるから、多少の雨なら通じるだろう。
パールを見る。駄目だ、そもそもこいつには頼れない。救急の電話番号どころか、まともな会話すら望めない。
「お前、何か分からねえのかよ!」
つい、あたってしまう。パール本人は、え、あの……と、歯切れの悪い返事しかしない。
おそらく、自分と同じだ。目の前の現実にオロオロして、何が正しいか浮かばないのだろう。
「クソ……ッ!」
必死で携帯電話を開く。冷たい空気にかじかみはじめた指先を強引に動かし、番号を打ち込み。
 
カシャンッ……!
 
送信する直前、暗い周囲が突然光に晒される。
警察だ。肩のペイントから、警察がやっと来たんだと判断できた。
この人達なら、何とかしてくれるだろう。
機体胸部のライトに照らされた、頭の左側から頬に血の流れる少年の表情が、やっと安堵に緩む。
何がどうなっているのか分からないが、これで何とかなる。
あとは広瀬さんに報・連・相して、わからないだらけの今を何とか認識するか―――
 
だが、そんな想いは軽々と砕かれる。
降りてきた男達は、必死に状況を説明しようとする総一の出鼻を挫き。
「天城総一。公務執行妨害、ならびに戦闘上過失の疑いで貴様を拘束する」
驚愕に色づいた総一に、有無を言わさず冷たい鎖をかけた。
「ま、待ってくれ! 誠二を、あいつらを病院に!」
必死に訴える。話がまるで飲み込めないが、とりあえず安否を確認したい。
戦闘上過失、つまり自分なのだろうか。そうだとしても、安否くらい知りたいものだ。
なにせ、彼にとって誠二は欠かすことのできない大切な友人の一人だ。こんなところで失いたくはない。
「黙れ」
その想いは裏切られる。わざわざご丁寧に左側から入れられた拳は、流血の収まってきた傷口を開かせるには十分だった。
「ま、マスターっ!?」
慌てて駆け寄ろうとするパールでさえ、他の警察の奴らに抑えられる。
ただでさえ戦闘後、冷たい雨に打たれ、それ以上抵抗する力は残されていない。
歯噛みするも、そこまで。もう、彼に残された行動手段は、何もない。
「……っ、天城君!? 高見君も!?」
「総一!? どうしたのよそれ!? それにこれって……!」
近づいてきたバイクの駆動音が止まる。覚えのある声が聞こえる。
だが、どうしようもない。来ただけで終いだ。
「角川巡査長です、状況の説明を!」
「そうは言われましても。落ち着いてください」
「これが落ち着ける状況か!」
始まる口論を背に、手錠が引かれる。
警察のBMM、そのバックパックに付属する収容スペースが開かれる。
「何なのよこれ!? どういうことなの!? ねえ総一、ねえって!!」
投げかけられる言葉に、答えるような隙間はなかった。
無慈悲に放り込まれ、施錠が確認される。
その瞬間、天城総一という人間は、外界から、全ての環境から―――己の力からも、引きはがされた。
 
「ねえ……何とか言ってよ……」
呆然と、濡れた地面にへたり込む春緋。
彼女の近くで、空を見ていた携帯の画面が、ただ虚しく空の涙を受け止めていた。
ぼくの かんがえた ロボット11ごうき
347 :それも名無しだ[sage]:2010/03/26(金) 01:03:57 ID:CWvxsbmg
投下終了。
ここから事件の流れはもう少し続く予定です。
二挺拳銃でロボットって案外少ないものですね。
印象的なのはデモンベインとか、ビームですがストライクノワールですかね。
 
10話は既に制作を開始しています。
やりたかった話の一つなので、自分としても頑張って仕上げたいと思っております。
また、何かしら意見等がありましたらいつでもお待ちしております。
それでは本日はこれにて。
【XBOX360】スーパーロボット大戦XO その19
624 :それも名無しだ[sage]:2010/03/26(金) 08:45:52 ID:CWvxsbmg
やってみたら結構面白いよ
【XBOX360】スーパーロボット大戦XO その19
627 :それも名無しだ[sage]:2010/03/26(金) 09:28:36 ID:CWvxsbmg
XOをやってたら3Dもありだなと思った


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