トップページ > ロボットゲー > 2010年02月13日 > icim2nxM

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それも名無しだ
◆s2SStITHHc
人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc
スーパーロボット大戦OG3に期待する事 その74
第三次スパロボキャラバトルロワイアル4

書き込みレス一覧

スーパーロボット大戦OG3に期待する事 その74
334 :それも名無しだ[sage]:2010/02/13(土) 11:45:16 ID:icim2nxM
眠りトカゲのお陰でマシンナリーチルドレンも大量生産できるな
うはwww地球安泰wwwww
第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
502 : ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:22:05 ID:icim2nxM
tes
第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
503 : ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:24:02 ID:icim2nxM
おお書き込めた、ラカン、シンジ、鉄也投下します
第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
504 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:25:15 ID:icim2nxM


崩れ落ちる橋を眺める事、二度。
ラカン・ダカランは、D-4の森林の中に隠された補給ポイントで息を潜めていた。
この森の中にポツンと設置されていた施設は、上空からは発見できない仕組みであった。
その施設は、地下ドッグ補給拠点とでも言うべきもの。
木々の合間に潜み立ったピラーに触れると、地面が陥没して地下への扉が開くようになっている。
エネルギーを節約する為、グレートを飛ばさずに歩かせていたからこそ、ラカンはここを発見できたのだ。
無論、ただ隠れていただけではない。ブレーンコンドルで周囲の様子を見回り、ENチャージまでの暇を潰していた。
謎の巨大生物二体の戦闘で、橋が崩落したのもしっかりと目撃し、見つからないように慎重に帰還したのがつい先刻。
ラカンはブレーンコンドルをグレートにドッキングさせ、オートに任せた補給作業の進展状況を確かめる。

「まさか、あちらの橋も落ちるとはな……向こう岸に行くには、スクランブルダッシュで飛んでいくしかないか」

ピピピ、とブレーンコンドルのコックピットに電子音が鳴り響く。
失ったマジンガーブレードの代えも入手し、たった今エネルギーの充填も完了した。
シン・アスカの猛攻によって腹部に空いた穴だけはどうしようもないが、
適当な鉄材をグレート自らの腕と機能で溶接することで、なんとか体裁は整えることに成功した。
ふと、ドッグの片隅に放られた海賊を模したガンダムの、もはや屑鉄の山にしか見えない残骸を見越す。

「……上手く作動すればいいがな」

崩れた橋から逃れて海岸に降りたラカンの前に、偶然流れ着いていた獲物。
獲り終わった標的とはいえそれなりに役には立った、とラカンが呟き、不敵に笑う。
コックピットから抜き出し、海に捨てたジャミルの死体は既に魚のエサだろう。
鎮座させたグレートから降り、ドッグの片隅の電子端末に歩を進めるラカン。
手馴れた様子でパネルを弄り、補給システムのプログラムに若干の付加要素を足し加える。

(結局、『髪の毛』達には遭遇できなかったからな。いや……むしろ好都合。俺の存在を知られる必要はない)

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505 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:27:06 ID:icim2nxM

ラカンが補給システムに施した改竄は、実に簡潔なもの。
誰かが補給を行った時、その対象の機体に、『シン・アスカは危険である』という情報を流す。
具体的には、シンの機体の詳細なデータ、海に放逐する前におさめたジャミルの死体の画像などを、だ。
更におあつらえ向きな事に、どうやらこの島の補給地点はイントラネットのような物で繋がっているらしい。
ここで設定したトリガーが、あるいはどこか別の補給地点で発動するかもしれない。
ラカンは自分が貴重な時間を潰して得た情報を活用することに喜びを覚えながら、パネルを叩き続ける。

「シン・アスカ……俺のグレートに傷を付けた貴様の罪は、やがて贖われるだろう! 貴様の死によってな!」

仕上げに「探しニュータイプ:プルとプルツーを保護してあげてください」と書き添え、己が善人である事をアッピール。
ラカンは高笑いしたい衝動を抑えながら、ブレーンコンドルに戻る。先ほどの偵察飛行を無駄にする気はない。
あの橋を崩壊させた首謀者達は戦闘を停止し、互いに満身創痍で立ち尽くしていた。
上手くすれば一気に二人もの手負いを消せるのだ、急がねば!
ラカンは一部だけ青色に変わったグレートの脇腹の装甲を忌々しげに睨みつけ、叫ぶ。

「行くぞ、魔神よ! あの化け物共の血で、すぐにお前の恥部を塗りたててやる! 感謝するがいい!」

グレートの目が雄雄しく光り、スクランブルダッシュが展開。
魔神と化した勇者が、ドッグの入り口から飛び立った。
加速。加速。加速。加速。到達。淘汰。
目視できた敵は一人。『角突き』の怪物のみ。
もう一体……『ニヤケ顔』の反応を探り、近くにいない事を悟る。
突如飛来したグレートに動揺する『角突き』に、迷わずに突撃。
交錯する魔神と人造神が、両手を組み合わせて膠着した。

「貴様!」

「死ね」

ラカンに、獲物と言葉を交わす趣味はない。
怒声を上げる『角突き』のパイロットが飛ばす通信を遮断し、ラカンは――――。


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506 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:28:33 ID:icim2nxM



『シンジ……』

「うるさい! うるさい! うるさい! 今考えてるんだから静かにしてよ!」

『す、すまん……』

ここは海底。
海底である。
いかなる顛末か、碇シンジは再び、静かで平和な海底に舞い戻っていた。
ゆらゆらと揺れるワカメを再生したゼルエルの腕で斬り飛ばしながら、狂ったように癇癪を起こすシンジ。
だが、名状しがたいその激情もやがては収まる。シンジが鉄也について思考を廻らせるころには、
彼の操り人形たる使徒・ゼルエルはその動きを完全に停止していた。

(あの鉄也さんって人は……あんなに強いのに……なんで、僕なんかに情けをかけるんだ!)

碇シンジは、自分に優しくしてくれる人間に出会った事がない。少なくとも自分ではそう感じていた。
かりそめの親愛を向ける者や同世代の心を重ね合わせようと迫ってくる者あれど、それら全ては自分を裏切る。
虐げられ、突き放される事が日常。一時のやすらぎを得ても、次の瞬間にはその安寧は破壊され、崩壊した。
葛城ミサト。碇ゲンドウ。赤木リツコ。惣流・アスカ・ラングレー。綾波レイ。加持リョウジ。鈴原トウジ。
そして――――最後のシ者、渚カヲル。彼らの誰が、最後まで自分の側にいてくれた?いてくれる?
誰も、最も近しいミサトさえ、自分を愛してなどいない。ただ、利用しているだけだ、とシンジは吐き捨てて。
しかし、彼はそれを心のどこかで否定する。誰も側にいない、誰も自分を愛さない。そんな事はありえない、と。
自分はここにいていいのだと、碇シンジは自己を肯定してきた。それゆえに、今まで生き延びてきた。
だから、彼は幾度選択を強要されても、期待された通りの答え(ベスト・アンサー)を出し続けた。
本物の愛など知らないから、他人に期待して、他人に期待された結果を返す事しか出来ない。
そんな虚しい無言のキャッチボールで信頼は、ましてや愛情など、絶対に生まれないのに。
それでもシンジは、望みに望み続けた。都合のいい未来を、都合のいい現実を。補完された、最善の世界を。

「でも……それは、間違いだったの、かな……」

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507 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:31:44 ID:icim2nxM

『強さ』。
シンジが鉄也に感じたそれは、彼の価値観とは大きく食い違うものだった。
碇シンジにとっての強さの象徴とは、例えば碇ゲンドウ。息子を省みず、理不尽な命令で死地に追いやる、鉄面皮。
例えば葛城ミサト。自分達の命をも作戦に組み込んで道具として扱う事のできる、冷血徒。
例えば惣流・アスカ・ラングレー。自分の才能を、能力を信じて疑わないことが出来る、天才肌。
自分とは異質な、攻撃的で排他的な性質。それが強さなのだと、碇シンジは信じていた。
その強さを求めて、馬鹿もやった。そうして他人に迷惑をかけて、やはり自分に強さはないのだと、落ち込みもした。
だが、鉄也が垣間見せた『強さ』は、自分が接したあらゆる物と相容れない、愚直な物。
ゲンドウもミサトもアスカも、殺意をむき出しにした物の前で武器を捨てるようなことはしないだろう。
相手を説得する? それは結構だが、シンジだって、丸腰でそんな事をするほどバカではない。
剣鉄也は、愚か者だ。現に、自分を説得した後、体力的に限界だったのか、気絶したようだった。
その隙に彼から逃げ、こうして引きこもっている自分もまた愚か。鉄也と自分は、同じ、同じはずなのだ。
だというのに――――なぜ、鉄也の愚行は、こうも自分の心に響く?

「わからない……わからないよ……」

シンジが声に出すが、それは嘘だ。シンジは誰よりも、鉄也と自分の違いを知っている。
強さと弱さの違いを、知っているのだ。ならば、なぜ嘘をつくのか? 答えは明快、怖いから、だ。
シンジはきっと、その気になりさえすれば、鉄也と同じ強さを得られるだろう。
いままで自分が心に描いていた『強さ』とはまるで異質ながら、自分でも手に入れられると思える『強さ』。
だが、それを得てしまえば、自分はきっと自分でいられなくなる。
望んできた都合のいい現実も、都合のいい未来も、想像すらできなくなるだろう。
有り体に言えば、「大人になる」ような物だ。子供である事の心地よさを知っていれば、そうそう踏み込める筈がない。
それでも。剣鉄也の姿は、碇シンジの目に、余りに眩しすぎたから。

「……そうだ。逃げちゃ、駄目なんだ。誰かに期待しておいて、自分には期待しないなんて……駄目なんだ!」

今、シンジは初めて、本当の意味で「逃避」を「否定」した。
追い詰められ、極限を超えた超極限状況にまで落ち込んで初めて、心を成長させた。
視界が変わる。あんなにも畏怖していたゲンドウたちの強さが、手に取るように理解できる。

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508 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:33:33 ID:icim2nxM

「ミサトさんも、父さんも、アスカも! みんなみんな、正しかったんだ! 僕が世界に『いてもいい』んじゃない、
 この世界があるから僕がいて、だから僕も、それ以外の人もきっと正しいんだ! そして、その正しさがぶつかって、
 嬉しい事や悲しい事が起こるって! それで、それでっ! セカイに僕達の生きた証が残るって、わかったから!」

もう、居場所はいらない。進む道に足跡が遺せる、だから自分は前に進めると、碇シンジは確信したから。
立ち止まる為の場所がなくても、自分の「正しさ」に殉じる事で、心の澱みを清め、迷いを断ち切れると知ったから。
                                       ...............
裏切られるかもしれない、傷付けられるかもしれない。だが、 それがなんだというのだ。

「W14ッ!」

『はいな〜?』

「僕はもうシャドウミラーの言いなりにはならない! あいつらと戦って、その上で生き残る! 何か文句はある!?」

『……お前が生存するなら、私にとってはどんな展開でも構わん。好きにすればいいが……不可能だぞ? それは』

「可能だよ! 僕は可能だって信じる!  決 め 付 け る ッ !  もう僕は……前しか向かない!」

『シンジ……っ!』

W14が、感極まったようにシンジに薫陶の眼差しを向ける。
絶対に茶化されると思っていたシンジは不思議そうにその視線を受け止め、やがて微笑んだ。

「笑おう、W14。僕達には、きっとこれから沢山辛いことがある。だから、今は……笑おう、W14」

『そう……そうよ、ね……い、いや、そうでありますですのことよ!』

肉壁のダミープラグ内が、笑顔エナジーに満たされる。
特にシンジの笑顔は、すべての憂いを断ち、すべての喜びに向けて輝く、オリジナル笑顔であった。
そんな歓喜に満ちた静寂を打ち破るように、ゼルエルが二機のロボットの反応を捉え、嘶いた。
もはや、シンジは迷わない。強きを援け、悪きを砕く。
その鉄の決意と共に、海上から空気泡を伴なって突入してきた二機を見据え……初号機の姿を捉えた。
自分との戦闘後よりも、かなり傷ついているのがわかる。

「鉄也さん……!」

シンジはすぐさまゼルエルの出力を上げ、鉄也の下へと駆け出した。



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509 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:38:40 ID:icim2nxM



剣鉄也が目覚めた時、そこには誰もいなかった。
初号機は、パイロットの意識が途絶えた事で機能を停止し、地べたに倒れている。
不覚にも、説得の途中で気絶してしまったのか。鉄也は歯を食いしばって周囲を見渡す。
だがゼルエルは、宙を浮いていたはずだ。足跡などあろうはずもない。
初号機を起こしながら、バン! とダミープラグの壁を殴る鉄也。

「俺としたことが……なんたる失態だ! あと少しで、奴の胸のうちを聞けそうだったのに……」

ふと、刺すような痛みを感じて腹部に手をやる。
どうやら肋骨がいくらか折れているらしい。気絶して初号機ごと倒れた時にでも無理をしたツケが回ったのだろうか?
しかし、内臓に刺さっているような感覚もないし、痛みを気合で押さえ込めばそれほど戦闘に支障はないはずだ。

「……だが、奴には間違いなく、俺と同じ、孤独を味わった者同士のシンパシーを感じた。
 今度会った時には、必ず説得できるだろう……『今度』があれば、だがな……」

気を取り直し、初号機を走らせようと操縦桿を握る。
が、どこに行けばいいのか……橋は二本とも落ちているし、逆方向に進んで基地部へ向かおうか……と、思った矢先。
鉄也の直感音と、それに先んじた初号機の敵襲警告が、鳴り響いた。
敵機は上方。空から来る相手のようだ。

「このスピード、進行方向……間違いなく俺に狙いを絞っていやがる! ……っ!?」

初号機を反転させ、敵の姿を確認した鉄也の顔が驚愕に染まる。
何故なら、そこには……。

「グレート……マジンガー……!?」

自分に向けて突撃してくる空の勇者の威容に、迂闊にもATフィールドの発動がならず、
初号機とグレートが手四つで膠着する形が生まれる。

「貴様! グレートを使って何のつもりだ!? まさかミケーネの……くそっ、通信に応じる気はなしか!」

無言で襲いくるグレートを前に、鉄也に僅かな逡巡が走るが、手加減して勝てる相手でない事は、
鉄也自身が一番良く知っている。ATフィールドを展開、とりあえずグレートを弾き飛ばして距離を取った。

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510 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:41:57 ID:icim2nxM

「バリアーとはな! 手負いの獣はなんとやら、か!?」

対するラカンも、地面に極太の線を引きながら後ずさるグレートを制御して、立ち止まらせる。
同時に、臍からネーブルミサイルを発射。十数発の一斉射は、しかしフィールドを貫けない。
とはいえ、ラカンの狙いはフィールドの突破ではなく、煙と土埃による眼くらましと足場の破壊。
案の定、エヴァ本体を完全に守りきったバリアーも硝煙や崩れた足場を解決する事は出来ないようだ。

「もらったぞ!角突きッ!」

バランスを崩し、視界を失った初号機の側面から、マジンガーブレードが突き入れられる。
ATフィールドを揺らし、ヒビを入れるほどの突き。だが、ラカンの猛攻はそこで終わらなかった。
ブレードを持っていない方の腕を高速回転させ、ヒビの入った部分に突撃させ、削り喰らわせる。
ガリガリ、とATフィールドが破れる音を聞きながら、ラカンは更にブレードを振り上げ、大上段に構えた。
鉄也も負けじとマゴロク・E・ソードを取り出し、先手を打って斬りかかるが、その動きはラカンに読まれていた。
軽々と大剣を避わされ、それとほぼ同時にドリルプレッシャーパンチによって、ATフィールドが完全に消滅していく。

「真っ二つ!」

「くっ!」

振り上げられたブレードを初号機もまた、しゃがんで全力で回避しようとする。
しかし、崩れた足場に足を取られ、完全にかわし切ることは出来なかった。
初号機の頭部の角が分断され、鉄也の額に焼けるような痛みが走る。

(ほう……? 今の動き、もしやこいつは……)

獣のような動きで後退し、自分を睨みつける初号機の瞳を、ラカンが目視する。
その瞳には、突然襲われた怒りよりも強いであろう悪意が篭っていた。
明らかに、こちらを……グレートマジンガーを、必要以上に注視しているのだ。

(表情まがいのものまで備えるとは……高性能も考え物だな。お陰で、次の行動が読みやすい。それに……)

ラカンが物は試し、と言わんばかりに、グレートハリケーンを発動させる。
鉄也は一瞬硬直したが、すぐさまマゴロクを地面に突き刺し、再びATフィールドを張って暴風に備える。
だが、グレートハリケーンが発動する事はなかった。引っ掛けだ、とラカンが愉快そうに漏らす。

(やはりこの敵パイロット……俺のグレートの事をかなり知り尽くしているな。元の持ち主か?)

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511 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 19:47:01 ID:icim2nxM

一年戦争からグレミーの反乱まで生き延びてきた彼、ラカン・ダカランには、彼なりの戦闘理論がある。
機動兵器同士の対決では、人間同士の対決以上に、"間合い"が大事となる。
先ほどの初号機の動きは、明らかにマジンガーブレードの縮尺を知っていたから出来たこと。
かくいうラカンも、一年戦争に従軍していたころから、敵主力MSの武装を知り尽くし、
自機の性能を出し切って生き延びてきた。目の前の初号機は、かっての自分に重なるような動きをしていたのだ。

(……まあ、なまじこちらの性能を知っていると過信しているなら、好都合だ……)

「あくまで通信に応じる気はないか……ならばっ!」

鉄也が吼え、初号機も同じく吼える。
シンジが乗っていた頃には起こらなかった現象だ。
シンクロ率も限りなく100%に近づいていき、初号機の運動性能がさらに向上していく。
初号機がその態勢を四足歩行形態に近づけ、高速でグレートに向けて接近する。
グレートも動き回る為、まさに鬼ごっこといった風情であった。
マゴロクを投げ放ってマジンガーソードを弾き、牽制で発射されるネーブルミサイルを回避しながら、接近する。

(グレートの弱点は、スクランブルダッシュの収納部分だ。そこを突けば、この敵を無力化する事は容易いだろう)

(更に、この距離から攻撃できる武器は……!)

そしてついに鉄也が、初号機が、グレートを捕縛した。
正面から抱きつくように、両腕で両腕を押さえ、体を弾丸にしてアタックする。
無論、普通にこの態勢になっていれば、グレートがブレストバーンを放って初号機といえど溶解していたかもしれない。
だが、鉄也も何も考えずにグレートに飛びかかったわけではない。
グレートと初号機は、ほんの数秒宙を舞い……次の瞬間には、海中へとダイブする運命に囚われていた。

(なるほど……水中では、サンダーブレークもブレストバーンも威力減衰は免れないからな。下で殺る気か)

宙を舞う数秒の間に、ロケットパンチの類を使わせないようにグレートの腕を掴んでいた初号機の腕が離れ、
ラカンが駆るスクランブル・ダッシュ収納部へと伸びていく。自分の機体の弱点は、自分が一番良く知っている。
絶体絶命の筈だったが、宙空のラカンに焦りはない。

「度胸はある。技術も、閃きも申し分なし……だが……若い!」

「!?」

ラカンの檄が飛ぶと同時に、初号機の左腕が焼き切れた。
                                       .........................
グレートマジンガーの脇腹の簡易装甲を突き破って飛び出した、金色の光を放つビームザンバーによって。

(馬鹿な……グレートにこんな装備、はっ……!)

「聞こえていないだろうがな、小僧。戦争とは創意工夫あるのみ、だ。冥土の土産に覚えておけ」

補給作業用の簡易マニュピュレータによって振り回される、クロスボーンガンダムX1のビームザンバー。
その動力源は光子力エネルギーに代えられており、本体そのものが光子力エンジンと直結している。
故に、その威力も推して知るべき破格の光刃。容易く初号機の強化装甲を切り裂いたビームザンバーは、
役目を終えたとばかりに細かい爆発を起こし、完全に機能を停止した。一度きりの、正しく腹中の切り札であった。

「さて……この状態で海に落ちて、どちらが不利か。試してみるとしようかね!」

「ぐっ……!」

深手の初号機に、先制のニー・インパルスキックが炸裂する。
腹部と、頭部、そして左腕への激痛。
破格のハンデを背負った剣鉄也が、まず水中に没した。

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513 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 20:03:02 ID:icim2nxM





剣鉄也は、しかしあきらめない。
当然だ。彼が生きる事を諦めれば、シン・アスカはどうなる? あの少年はどうなる?
道を誤った者が、即・悪になると、鉄也はそんな風には考えたくなかった。
なぜならば、自身がその過ちから抜け出し、勇者と名乗れるほどの魂を取り戻せたからだ。

(こんな機械のような、戦うためだけの俺ですら、正道に戻れたんだ……他の者を、戻せないはずがない!
 俺は死ぬわけにはいかない! 甲児くん、ジュン……! ここには救える者と倒すべき敵がいる! 力を貸してくれ!)

足が残っている。だから、立てる。
腕が一本残っている。だから、敵を引き裂ける。
目が、鼻が、口が残っている。だからきっと……また、笑顔になれる日が来る。
戦い続ける勇者の、ちっぽけな願い。戦いに死ぬ事が決まっていても、最期は仲間達と、最高の笑顔で。

「その為には……グレート! お前が相手だとしても、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ、俺は!」

シンクロ率が、低下していく。無理もない。鉄也自身、意識があるのが不思議な状況なのだ。

それでも、初号機は鉄也の熱く燃える血に応え、右腕を上げ、グレートに向ける。そして――――!

........................
応えた者は、初号機だけではなかった。

「君は!」

「鉄也さん……!」

初号機の背後、海底から凄まじい速度で迫る天使。
それは、鉄也が先ほど心を通わせた少年の乗る機体≪テーゼ≫。
まさかまた水中に引きこもっていたとは想定外だったようで、鉄也の表情が驚きに染まる。
最も、ラカンの驚愕はその比ではない。まさかここに来て増援……撤退すべきか、と思考が弱く染まりかけ……。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


ゼルエルの腕が伸び、初号機とパイロットの神経接続に不可欠な部分を的確に貫き、同時にエントリープラグを完全に粉砕する。

自分の機体の弱点は、自分が一番良く知っている。

シンジは迷いなく"そこ"を狙い、鉄也は驚きの表情のまま死んだ。それだけの事だった。



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514 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 20:04:42 ID:icim2nxM





「……」

『……な、ぜ。何故、剣鉄也を』

ラカンは絶句し、W14は目を瞬かせて、たった今一つの命を貫いた両腕をしげしげと眺めていた。
碇シンジは、号泣していた。

「だっ……って……もう、戦えなくなっ、戦えなくなってたから……うあ、強い鉄也さんは、いなくなっちゃったから……」

すすり泣く声を、ラカンはもちろん拾っていた。
通信回線を開きっぱなしにしていたゼルエルから漏れてくる声は、聞こえはするが理解は出来ない。
誰に言うともなく、ラカンが呟く。その声は、あらゆる意味でシンジには届かない。

「なんだ……お前は……」

「強くなくちゃ、戦えなくちゃ、自分の正しさは貫けない……鉄也さんが教えてくれた、セカイで一番大事なこと。
 だから……辛いけど、強くない人や、道を誤った人は殺さないと、いけないんだね。僕の正しさの邪魔……なんだから」

『シンジ……』

逃げなくてはいけない。ラカンの危機回避神経が全開でそう訴える。
相手は、人間ではない。なにか、もっと……想像を絶するような、禍々しい な に か だ。
が、グレートを全速で反転させて逃げようとしたラカンの"耳"に、更に禍々しい光景が広がる。

「W14。あの初号機にも、S2機関はあるんだよね?」

『……そう聞いている』
 ....
「食べて」

『わかった』

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515 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 20:06:31 ID:icim2nxM

単純明快な発想……創意工夫とすらいえない。一つよりは、二つの方がいいだろう、とか言って。
ゼルエルの口が閉じ、次に開いた時、本来存在しない牙、舌、喉が顕現する。
ラカンは、振り向いて"それ"を見る事ができなかった。
何か、バリボリ、と、何かを、何か、が、齧るような、音が、背中越し、に、聞こえる、だけだった、、、、

むしゃ、むしゃ、むしゃ。

むしゃ、むしゃ、むしゃ。

『 ご ち そ う さ ま 』

ラカンは、叫び声を上げながら逃げだした。
逃げても無駄なのにね、という声が耳元で聞こえた気がした、おれはもうくるっているのか?
何かが伸びて、グレートを捕まえる。サンダーブレーク。効かない。海だもの。ブレストバーンも、同様。海だもの。
大丈夫だ。ラカンは自分に言い聞かせて、ブレーンコンドルで離脱する。
水面を越え、空に出られた。ほら、大丈夫だった。振り向いた。ゼルエル?がいた。

「ううううううあああああッ!……絶対に逃がさない……! 鉄也さんの仇ッ!」

「殺したのはお前だろうが! 子供が、狂ったかッ!」

「お前が居なければ……お前が鉄也さんをあんな目に合わせなければ、鉄也さんは僕と一緒に戦ってくれたんだ!」

『そうだな。私もそう思いますの。レッツ・ジャッジメントですの』

判決は死刑だ。
当然だ。自分と、徹底的に相容れない誰かの正しさ="悪"は、殺して排除するしかない。
鋼の意志と、刃金の心を与えてくれた剣鉄也の為にも、碇シンジは止まらない。止まらないのだ。

止まらなかった。ラカン・ダカランは、死んだ。

ブレーンコンドルを投げ捨て、ゼルエルが上空へと舞い上がる。
同時に、ゼルエルの体内で、二つのS2機関がせめぎあっていた。
これらは、元々同一の物だ。同じ世界の同じ物は、同時に二つ以上存在できない。
絶大なエネルギーを放射しながら対消滅するはずだ。しかし、ATフィールドがそれを許さなかった。
融合しようとする二つの機関を、ゼルエルが体内で産み出したATフィールドが覆い、食い止める。
異様に膨れ上がった"力"は、ATフィールドの激流と共に体内を暴走し、やがてゼルエルの両肩から噴出される。
それは、まるでATフィールドが形成する翼のように見えた。しかし、天使のそれではない。悪魔のそれでもない。

その翼は、人間の翼≪あるはずのないもの≫だった。そうとしか言いようのない、視界に入るのもおぞましい物だった。


「……もうすぐ、うっ……放送……」

『ああ』

S2機関増量の副作用でなんかさらに巨乳になったW14は、微笑んだ。シンジに言われたとおりに。
シンジはまだ、泣いていた。
泣きながら、打ち捨てられたマゴロクとマジンガーブレードを拾っていた。
遺志は受け継がれるものだ。それが勇者の遺志という、重く、強いものならば、特にそうだ。

ただし、受け継がれ方は、選べない。



第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
516 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 20:08:52 ID:icim2nxM


【剣鉄也 搭乗機体:エヴァンゲリオン初号機(新世紀エヴァンゲリオン)
 パイロット状態:死亡 ミンチよりひでえ
 機体状態:大破
 現在位置:D-4 海底】


【ラカン・ダカラン 搭乗機体:グレートマジンガー(グレートマジンガー)
 パイロット状況:死亡 ミンチよりひでえ
 機体状況:ブレーンコンドル完全破壊、本体大破、EN40%
 現在位置:D-4 海底】

【備考】
D-4周辺の補給地点に、ラカンがトラップを仕掛けました。
補給を行うと、その機体に何らかの形で以下の情報が伝わります。
@シン・アスカの情報
Aスレードゲルミルの情報
Bジャミルの死体の画像
C探しニュータイプ:プルとプルツーを保護してあげてください


【碇シンジ 搭乗機体:第14使徒ゼルエル(新世紀エヴァンゲリオン)
 パイロット状況: ハ イ パ ー ヘ ブ ン 状 態 
 機体状況:ゼルエル=S2機関双絃共振励起型、マゴロク・E・ソード、マジンガーブレード所持 W14=特になし
 現在位置:D-4南西 島 上空
 第一行動方針:強くて正しい、鉄也さんのような人を探して仲間にしてもらう(ただし、他人には多くを期待し過ぎない)
 第ニ行動方針:悪人、足手まといな人は積極的に殺す
 最終行動目標:自分の正しさを貫き、強くて正しい人たちと共にシャドウミラーを打倒する】
 ※カヲル殺害後から参戦です。
 ※このまま上昇していくと大気圏を離脱します。

【W14(ゼルエルXX)について】
ゼルエルとの神経接続により、ゼルエルの受けたダメージはW14にもフィールドバックするようです。

【一日目 13:59】
第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
517 : ◆s2SStITHHc [sage]:2010/02/13(土) 20:10:01 ID:icim2nxM
以上で投下終了です。支援ありがとうございました


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