- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル4
319 :それも名無しだ[sage]:2010/02/08(月) 19:50:22 ID:RZEDs/Kq - 投下乙ー
トビアはし―bックに会えずに脱落か・・・ タスクに続いて貴重な声がw
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320 : ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:00:17 ID:RZEDs/Kq - 万丈、バニング、イネス、一騎、真矢、暗黒大将軍
投下します
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322 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:02:22 ID:RZEDs/Kq -
若き聖戦士ショウ・ザマを失い、人にあらざる使徒渚カヲルを撃退した破嵐万丈とサウス・バニング。 バニングは万丈が目を覚ますまでの間に、目前で散ったショウの弔いをすることにした。 市街地の中、ストライクノワールが陽光を弾き凝然と屹立している。 その眼前にあるのはラーゼフォンに、いやカヲルの生み出したATフィールドに粉砕されたクロスボーン・ガンダムX3の残骸。 原形を留めず圧壊したその有様は、戦友の死に慣れているはずのバニングの表情を歪ませる。 若く、未来のあった青年がここで逝った。 バニングの見ている前で――バニングの無力ゆえに。 「ショウ……済まん。お前に救われた借りを返せんまま、俺は……」 ショウの遺体は発見できなかった。 機体の中央部であるコクピットはそれこそ徹底的に破壊されていたからだ。 欠けたドクロのレリーフが物言わずバニングを見つめている。 歯を食い縛り、バニングはその光景を胸に焼き付ける。 やがて巡らせた視界の中に一つ、ショウの残り香とでも言うべき物を発見した。 ムラマサブラスター。 X3の主武装にして、ショウが最後に握った剣。 主の手を離れ地に突き立つその様は、バニングへ向けて叫んでいるように思わせた。 己を引き抜き、連れて行けと。 「……そうだな。渚カヲル、奴を討つ時はお前も一緒だ……ショウ」 ストライクノワールの腕がムラマサブラスターを引き抜く。 握り込めば問題なく起動した。本体が崩壊するほどの衝撃に晒されたというのに。 バニングはそれを、ショウの魂が宿っているからだと解釈する。 リアリストであるバニングにしては珍しいことだが、聖戦士の手にあった剣となればそれくらいの感傷は許されるだろう。 その後、出来る限りX3のパーツを一か所に拾い集めている内に通信が入った。 ストライクノワールのアンカーを用い市街地まで牽引し、隠しておいたトライダーG7からの通信。気を失ったため休ませていた仲間、破嵐万丈からだ。 「済まないね、バニング大尉。手間をかけたようだ」 「いや、礼には及ばん。もう体調はいいのか?」 「動くに支障はありませんよ。大尉は……いえ、僕もそちらに行きます」 どこにいる、というでもなくバニングが何をしているか察したか、万丈は言葉少なに通信を断った。 さほど間を置くこともなくトライダーがやって来た。 集められたX3、中心に置かれたドクロのレリーフへと二人はしばし黙祷を捧げ、これからのことを話し合う。 「とりあえずは東……いや、西ですかね。あの光の壁を越えてG-5エリアの施設へ向かいましょう」 「地図の端と端は繋がっている、か。俄かには信じがたいが……しかし、もう少し待ってからでもよいのではないか? 市街地を目指す者は俺達以外にもいるだろう」 「ええ、ですが早いうちに施設を押さえておいた方がいいというのも事実なんです。特に」 そこで万丈は指でコンコンと自らの首に巻かれた首輪を叩く。 「補給はともかく機体の修理などは、この市街地では望めそうにないですからね」 なるほど、盗聴を警戒しているらしい。 バニングも得心し、ならばとX3のパーツに目をやる。 「そういうことなら、俺に異論はない。……ショウ、済まんがもう一つ、お前の力を借りさせてもらうぞ」
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324 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:04:41 ID:RZEDs/Kq - そう言ってノワールに取り上げさせたのは砕け散ったX3の腕部パーツ。
手甲部にIフィールド発生器を内蔵した、通称「Iフィールド・ハンド」。 ショウと機体の情報を交換した際に聞き及んでいた機能だ。 「このままでは使えんが、G-7の施設――多分研究所か基地だろうな。そこの設備を使えばノワールに組み込めるかもしれん」 「Iフィールドと言うと……バリアみたいなものですか。 フェイズシフトでしたっけ? 実体弾を無効化するノワールにさらにビームの防御手段まで付けばかなりの戦力になりますね」 「バッテリーの関係で乱用はできんが、それでもあるとないとでは全く違うからな」 Iフィールド・ハンドを腰のラックに保持しストライクノワールが西へと機体を向ける。 それに倣い飛びあがろうとしたトライダーだったが、 「万丈……奴は、渚カヲルはまだ生きている」 「……そうかい、僕は彼を倒すことはできなかったか。今どこに?」 「わからん。あの光の壁を越えていったが、もう移動しているだろうな」 そう告げるバニングの声に苦い思いを呑み下す万丈。 万丈達がショウを失ったように、放っておけば彼はまた凶行に走るだろう。 「……止めなければならないな」 「ああ。俺とお前で、奴を討つぞ」 「了解だ、大尉。次こそ僕も仕損じはしない。だから……!」 トライダーG7がフック付きの鎖、トライダーチェーンを伸ばし真っ二つになったラーゼフォンを捕まえた。 万丈が何をする気か察したバニングも、ストライクノワールの頭上にムラマサブラスターを掲げさせる。迸る、目映いばかりの極光。 「世のため人のため、シャドウミラーの野望を打ち砕くトライダーG7、そしてストライクノワール! この双星の輝きを恐れぬのなら……!」 5700万馬力のパワーを誇るトライダーG7が全力で鎖を引き、二つに分かたれたラーゼフォンが宙へと高く舞い上がった。 そこへ黒い力、ストライクノワールが光の剣を携えて突撃する。 ――俺達のオーラ力を受けてみろ! 「うおおおおおっ!」 聞こえたような気がしたショウの声に頷き、振り抜いたムラマサブラスターの一閃。 駆け抜けた先に残るのは、四散するラーゼフォン『だった』もの。 「……かかってこい、ってね」 トライダーと背中合わせに、ストライクノワールが地に降り立つ。 そして――爆発。閃光が紅く染め上げる二体の巨神が、ショウの仇、その片割れを完全に消し去った。 決意を改め、二人の男は西へ向けて進み始めた。 飛び去る機体を送り出すのは聖戦士の墓標。 命は失われたが、志は受け継がれた。 ショウ・ザマの魂は、サウス・バニング、そして破嵐万丈と共にある。
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326 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:06:50 ID:RZEDs/Kq - ■
「見えてきたわ、G-5の施設よ……待って、誰かいる。あの施設はもう押さえられているようね」 告げるイネス・フレサンジュの声に、アルトアイゼン・リーゼのコクピットで待機していた真壁一騎が顔を上げる。 ギリアム・イェーガーが襲撃者を迎撃するために飛び出してからおよそ十五分後にアルトは再起動した。 だが、遅い。もうギリアムが飛び出した位置からはかなり離れてしまっている。 無論全速で向かえば間に合ったかもしれない。しかしそれではクロガネを危険に晒すことになる。 結局、一騎は動けなかった。 あの時のように――春日井甲洋を失った時のように。 ギリアムなら大丈夫だと強く思う。だが、それが希望的観測であることも一騎にはわかっている。 竜宮島のエースとして戦っていた一騎を、慣れぬ機体とはいえ軽くあしらったギリアム。 そのギリアムと戦っているのは旧知の敵であるウォーダン・ユミル。相当に腕の立つ敵手であるらしい。 できるならば共に戦いたかった。そして今度こそ―― 「一騎君、悪いけど出撃してもらえるかしら?」 「はい、行けます」 「私も……」 「待って、真矢ちゃんは艦内で待機していて。初手から手の内を全て明かすのは得策ではないわ」 そんなとりとめもない想いを打ち切り、一騎はクロガネから飛び立つべくアルトをカタパルトハッチへと移動させた。 ここまで接近すれば向こうにも探知されているはずだ。 敵意があるにしろにないにしろ、施設を手に入れるためには接触しなければならない。 海上へと伸ばしていたドローンを収納し、海を断ち割りクロガネが浮上する。 イネスの言う通り真矢を予備戦力としてクロガネに残し、一騎のアルトアイゼンが出撃した。 眼下に見える基地施設、その前に仁王立ちするのはアルトの三倍近い巨体。 身構えるアルトアイゼンをよそに、その機体から通信が入る。 「こちらはトライダーG7、破嵐万丈。これはまた……戦艦とは驚いたな。 とにかく、こちらに戦闘の意志はない。君達もそうであるなら、降りてきてほしい」 モニターに映ったのは、見た目はまだ若い――と言っても一騎よりは相当に年上の男。 おそらくイネスと近い年代であるだろう。軽く笑みを浮かべるその表情は一騎にはない自信が満ちている。 クロガネのブリッジにいるイネスに目をやると、頷き返された。 だが同時に、艦内メールで真矢をヴァイスリッターに待機させたまま接触を行う、との通達。 「こちらはクロガネ、イネス・フレサンジュです。 こちらにも交戦する気はありませんが……だからと言って、そう簡単に武装解除に応じることもできませんわ」 「ふむ、道理だ。なら僕から降りるとしよう」 イネスにそう応え、男――万丈はトライダーに片膝をつかせするすると機体を降りる。 そして見上げる顔はやはり笑顔。
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328 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:08:27 ID:RZEDs/Kq -
「これでいいかい? ああ、言っておくが……僕を殺せば後ろの基地も吹き飛ぶように細工をしてある。変なことは考えないでくれよ」 不敵かつ飄々と。 保険をかけてあるとはいえ自ら戦力を放棄したというのに、一片の怯えもなく万丈は巨大なドリル戦艦に向き合う。 心の機微には疎い一騎だが、なんとなくその行動には裏がないように感じる。 と言うより、戦場に在って迷いのないその行動にやや感銘を受けたということでもあった。 「どう思う、真矢ちゃん?」 が、イネスは一騎ほど幼くもないので、やはり額面通りには受け取らない。 ここで人間嘘発見器(とイネスが心の中で勝手に思っている)遠見真矢の出番。 クロガネの外部カメラが写しだす万丈の映像を真矢に送る。 「ええと、そんなこと聞かれても……多分大丈夫なんじゃないかな。あの人、嘘はついてない……と、思います」 ヴァイスリッターで待機していた真矢からも躊躇いがちだがそんな回答が届いた。 「イネスさん」 「ええ、わかってるわ。どの道私達はここでギリアムさんを待たなければいけない……接触してみましょう」 年少組二人は賛成のようだ。となれば純戦力のないイネスが反対する意味もない。 万丈に対話の意志があると告げると、彼は乗機に戻り何らかの操作を行った。 すると基地のゲートが開き、クロガネが停留できそうなドックが目前に現れた。 「とりあえずは中へどうぞ。なに、この研究所にはレーダー設備もあるのでね、接近してくる機体があればすぐに探知できるよ」 トライダーG7に促され、クロガネとアルトアイゼンが研究所の内部へと消えていった。
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331 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:11:09 ID:RZEDs/Kq - ■
ゲートを閉じてクロガネを係留し、イネスは久方ぶりに大地に立った。 隣には一騎がいる。万が一に備えて、真矢はヴァイスリッターで待機させたままだ。 先ほど交戦したサウス・バニング、ショウ・ザマらがこの万丈と接触していればまずいことになるが、距離を考えても彼らがこの東の果てにいるはずがない。 当然、万丈とも接触はしていないはずだ。 基地の中枢、管制室である程度の安心と共に情報を交換する。 サウス・バニング、ショウ・ザマとの誤解に端を発する戦い。 ギリアム・イェーガーという男がクロガネを逃がすために襲撃者ウォーダン・ユミルと戦っていること。 ギリアムから聞いたシャドウミラーの詳細。 一つを除いてほぼ事実のみを話す。 途中、整合性を合わせるために真矢をクロガネから降ろさせた。 さすがにクロガネ一機では、バニングとショウに攻撃を仕掛けまんまと逃げおおせたと強弁するのは難しかったからだ。 万丈からも有益な情報は得られた。渚カヲルという少年と万丈との戦いのことだ。 「……誤解、ね。では僕からもその両名と君達の仲を取り持とうか」 「そうしていただけると助かりますわ」 主に万丈と言葉を交わすのはイネス。 一騎は口下手であったし、真矢は真矢で万丈の態度に偽りがないか見定める役目だ。 そして真矢の見たところ万丈になんら含むところは見られない。 見られないのだが――何故か、違和感を感じる。 言葉にし難いのだが、完全にこちらの言い分を信じていないような。かと言って嘘だと断定している訳でもない――迷っている? あらかたの情報を交換し終え、万丈が大きく伸びをする。 「さて。大体、聞いておくべきことは聞いたかな?」 「そうですわね。では万丈さん、ここまでの態度を見るにあなたも私達と行動を共にしてくれる……と考えても?」 「美人のお誘いとあらば喜んで……と、言いたいところですが」 万丈が指を一本立て、チッチッチッ、と小刻みに振る。 「もう一点、こちらからあなた方に聞きたいことがあります」 「聞きたいことって……俺達は知ってることは全部話しましたよ?」 「ああ、真壁一騎君、君にじゃない。そちらのお二人、イネスさんと真矢ちゃん、あなた達にですよ」 万丈の指が突き付けられる。 見透かされているような態度。だが、ここまでの会話に矛盾はなかったはずだ。 「サウス・バニング、ショウ・ザマ。彼らに戦闘を仕掛けたのは誤解から……間違いありませんか?」 「ええ。非があるのはこちらですし、それについては彼らに謝罪をしたいと思っています」 「ふむ……」 イネスの返答を聞き、万丈は考え込むような仕草を見せる。 疑っている訳でも、生身である一騎達を襲おうとするでもない。 自分では判別つけ難い。そんな顔の万丈を呼ぶように、手近にあったコンソールから電子音が響く。 万丈がそのパネルを叩いた。
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336 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:14:17 ID:RZEDs/Kq -
「と、言うことですが大尉。何か言いたいことはありますか?」 「ああ、色々とな」 中央モニターに映ったのは――ある意味、イネスが最も再会したくなかった男の顔だ。 数時間前に一度交錯したベテランの軍人。 サウス・バニング。 「イネス女史、あれを君の世界では誤解と呼ぶのか? だったら俺は余程平和な世界に暮らしていたようだ」 淡々と告げるバニングの声には怒りはない。 だが、イネスと真矢を圧迫するには十分な声だ。 「そんな……どうやってここに!? 私達とは逆の方向に逃げたはずなのに!」 「と、遠見?」 さすがに騙し討ちを仕掛けた当の相手が唐突に現れては、いやに達観した少女も冷静ではいられなかった。 今は隣に一騎がいる。真矢を信頼してくれている、島の仲間だと思ってくれている一騎が。 狼狽する真矢を見て、イネスはここで自分まで取り乱せば完全に主導権を握られると口を開く。 が、言葉は出てこない。 何か言える訳がない――あの戦いは明らかに誤解などではなく、明確な敵意を持って仕掛けた物なのだから。 そのイネスと真矢の様子を見て、万丈がやれやれと首を振る。 「どうやら、大尉。ここはあなたを信じた方が良さそうだ」 「済まんな万丈。茶番に付き合わせた」 つまり、最初からこの二人はグルだった訳だとイネスは遅まきながら理解した。 真矢が万丈の企みを看破できなかったのは、単純に万丈にそのつもりがなかったからだ。 一騎達より一時間ほど早くこの基地に辿り着いた万丈達が真っ先にしたのは、万丈が口にしたレーダーの起動である。 機体固有のレーダーよりかなり遠目に索敵できるレーダーを動かしておけば高確率で先手が取れる。 まして基地という施設を率先して破壊しようとする者は少ないはずだから、交渉に持ち込むのは容易だ。 二人が補給や、持ち込んだクロスボーン・ガンダムX3のパーツを加工している間にレーダーは接近する熱源を捉えた。 大型機であるトライダーよりもさらに遥か上を行く熱量、質量。この情報を持ってバニングは熱源をクロガネと断定した。 当然、敵性人物であるとバニングは判断した。交戦すれば勝てるかもしれないが基地を破壊される事態は避けたい。 そうしたバニングの腹を知らない万丈は接触を提案した。 バニングはそこで、自らの存在を隠蔽し万丈のみで交渉に当たるように要請したのだ。 交渉を演じ機体から降ろせば少なくとも無力化はできる。 しかし真矢達の情報は明かさなかった。事前に知らせておけば態度にそれが出るかも知れなかったから。 面食らった万丈だが、バニングが冗談で言っている訳ではないと分かっているから異論を挟まず請け負った。 手法としては些か礼節には欠けるが、この緊急時であれば特にダーティでもないだろう。 実際クロガネ側も最初の内は真矢を隠していたのだから。 万丈自身としては、クロガネはグレーではあるがブラックではなかった。 つまりこの世界における通常の接触以上のものではなく、真矢らの言う「誤解」の真偽もわからない。 イネスの口からバニングとショウの名が出ても一切表情に出さなかったのは、万丈自身の懐の深さゆえ。 共に戦った二人の男が信頼できないはずがない。 だから万丈自身はイネスらの言葉を素直に受け入れ、判断をバニングに託した。 そして、別室で彼らのやり取りを見ていたバニングは、イネスらが真相を話そうとしないのを見て介入したという訳だ。
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340 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:17:24 ID:RZEDs/Kq -
「残念だ、イネス女史。せめて本当のことを話していたのなら、まだ歩み寄る余地はあったんだがな」 重々しいバニングの言葉にイネスは反論しない、できない。 せめてギリアムがいればまだ釈明の余地はあるかもしれないが、一騎では心許ない。 万丈も擁護してくれる雰囲気ではなく、八方塞がりだ。 こうなれば実力行使――と言いたいところだが、生身のイネスらでは筋骨逞しい偉丈夫である万丈一人にすら敵わないだろう。 この研究所内に誘い込まれた時点で詰みだったということだ。 一騎は事態の推移が理解できないか、バニング、万丈、真矢、そしてイネスとしきりに視線を巡らせている。 無理もない。ギリアムはともかく、一騎はイネスらを疑うこと自体が想像の外であるのだから。 「ちょ、ちょっと待ってください! どういうことなんですか? 遠見とイネスさんが何したって言うんですか!? あなたに攻撃したのは誤解したからで、悪気があった訳じゃ……!」 万丈にその意図はなかったものの、空気は明らかにイネスと真矢を責める物になりつつあった。 一騎はせめて何か言わなければならないと声を張り上げるが―― 「カズキ、と言ったな。まあ要点だけ言えばその二人が嘘をついていたということだ」 「う、嘘ってどういうことですか!?」 「ノワール――俺の機体にはそのときの会話が録音されている。これを流してもいいが」 「やめて!」 バニングの声に真矢が割り込んだ。 その形相は今にも泣き出しそうだ。だがそこから反論するでもなく、強く歯を食い縛るだけ。 イネスを見れば彼女もまた沈痛な面持ちだった。その瞳から覗くのは諦観、だろうか。 さすがに一騎でも、どちらが本当のことを言っているかはそろそろ理解出来てきた。 「ほ……本当なのか遠見? 誤解とかじゃなくて、この人を殺そうとして……」 「……うぅ」 「そんな……どうして、遠見……」 詰問する一騎とて、真矢がそうした行為に及んだおおよその見当は付く。 竜宮島の仲間を守る、それだけのことなのだろう。 事実、一騎自身もそうした思考が頭を過ぎることはあった。 ギリアムと出会わなければ、もし最初に会ったのが好戦的な人物だったなら、その道を選んでいた可能性は必ずしもゼロとは言えないのだ。 一騎の頭の中で取るべき道が幾重にも交錯する。 一つ、このまま裁かれるのを待つ――論外。非はこちらにあるとはいえ、仲間を見殺しにはできない。 二つ、この場で万丈達を説得する――無理。そこまで口が回るタイプではないという自信がある。情けないことだが。 三つ、ギリアムが颯爽と登場し仲裁してくれる――馬鹿馬鹿しい。そんな都合良くいくはずがない。 四つ、力づくでこの場から撤退する――難しい。一騎の身体能力は群を抜いて優れているものの、特に格闘技などを学んだ訳ではない。 それでも武道を嗜む同級生を軽くあしらえるのだから非凡さは疑いないのだが、一見して鍛えていると分かる大男相手となれば話は別だ。 だが、選ぶとすればやはり四つ目しかないのは現状。遠見を、ついでにイネスも生かそうとするのなら。 ファフナーに乗らない一騎に戦意は薄い。加えて万丈らにはまったく落ち度はない。 もはや気が乗らないというレベルですらないが、やらなければならない。その一念のみを胸に、万丈に飛びかかろうとする一騎。 足の重心を整え、呼吸を止めて、血液を全身に巡らせて――
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344 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:21:25 ID:RZEDs/Kq -
「大尉、ここは僕に預けてもらえないかな?」 そんな一騎の挙動を知ってか知らずか、万丈が明るく声をあげた。 重い空気を吹き払うがごとく、その声色に陰はない。 「万丈?」 「彼らが一度大尉に仕掛けたことは事実。だがこんな状況なんだ、そうするのは無理もない。 非があるとすれば彼らではなく、殺し合いを強いたシャドウミラー。違いますか?」 「それはそうだが……」 そこで万丈が一騎へと振り向く。 「真壁一騎君。君に聞きたいんだが、君もまたご婦人方と同様にこの殺し合いに身を任せるつもりかな?」 「い……いえ! 俺はそんなことしません! 総士と、遠見と……みんなで竜宮島に帰りたい、それだけです!」 「ふむ、ではどうやってそれを為す? 勝ち残って望みを叶えてもらうのかい?」 試すようにかけられる万丈の言葉。 声は明るくともその瞳には厳しさがある。小手先ではなく、真にお前の望むことを述べろと言うように。 一騎は、深く息を吸い込んだ。 「俺は……」 生きるための戦い。 フェストゥムとの戦い。 シャドウミラーに強いられたこの戦い。 全て、本質は同じだ。 生きるために他人を蹴落とす。自分本位とも言える生き方を貫いた者だけが死の腕から逃れることができる。 だが、一人きりの世界など一騎は望まない。 いいや――望むとすれば、自分だけがいなくなること。そこに親友や友達を巻き込みたくはない。 この場には皆城総士がいる。遠見真矢がいる。死んだはずの羽佐間翔子や、同化現象に呑み込まれた春日井甲洋も。 たとえ違う時間の存在だとしても、彼らは今ここにいる。存在している。 彼らだけではない。今この世界にいる全ての人間もそうだ。 ウォーダンのように仲間を殺そうとする者を倒す、それは躊躇うことはない。だが大半は一騎と同じように元いた場所に帰りたい、そう思っているはずだ。 彼ら全てを殺し、島に帰る。そんなことができようはずもない。 だったら――今、一騎が心から望むことは一つだけだ。 「シャドウミラーを倒して、みんなで島に帰りたい。それだけ……です」 これだけは、借り物ではない一騎だけの言葉。 受けた万丈は意を得たとばかりに微笑み、 「ということだが、真矢君。彼の言葉を聞いても、君はまだ戦うつもりかな?」 「え……?」 「優勝を狙い、いずれ彼すらもその手に掛けるか。 あるいはシャドウミラーを倒すために彼と……そして僕らと共に戦うか。そう聞いているんだよ」 そのまま真矢に告げた言葉を聞いて、モニターの中でバニングが軽く溜息をついた。 この場を預けろとはつまりこういうことか。確かにバニングでは無理な場の収め方だ。 「じゃ、じゃあ……遠見を許してくれるんですか!?」 万丈の言っている意味を理解して一騎が喜色を見せた。 共に戦うというのは、仲間としてと言う意味だろう。つまりは真矢やイネスをここで処断する気はないということだ。
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345 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:24:48 ID:RZEDs/Kq -
「彼女達が承諾すれば、ね。拒むようなら、申し訳ないが……」 女性を手に掛けるなど万丈の美学に反することではある。が、美学とこの先奪われるかもしれない人命を秤に掛けられるはずもない。 殺害するか、あるいは殺しはしないまでも自由を奪いこの基地の一室にでも閉じ込めておくつもりだった。 「この状況で拒める訳ないでしょうに……私はほら、一人で生き残る自信も戦う力もないから。許してくれるというのなら素直に従うわ」 「いやにあっさり翻意するじゃないか。逆に信用されないと思わないのか?」 「生きて帰れるのならそれが一番いいもの。まあ、ついでにシャドウミラーの技術なんかも持ち帰れたら言うことはないけど」 訝しげに問うバニングに、イネスはあっさりと白旗を上げた。 こうなれば真矢が一人で反抗する訳にもいかず。 「わ、わかりました。それとごめんなさい……あ、済みません。私も一騎君と同じで、みんなで島に帰れるのならそれが一番いいです」 「よし!」 パン、と両手を合わせ万丈が交渉の終結を宣言した。 「なに、こうやって仲間を集めていけばシャドウミラーだって必ず成敗できるさ!」 「ふう……まあ、いい。実際お前達に何か痛手を受けた訳でもないしな。これから協力するというのなら、受け入れるさ」 万丈とバニングは、イネス達より余程恐ろしい敵を知っている。 それは渚カヲルであり、アナベル・ガトーであり、そしてシャドウミラーである。 彼らにこんな交渉は通じはしない。だから一人でも多くの仲間が必要だという考えからこのような結果になっただけ。 もちろん、歳若い少年少女を殺すのが忍びなかったというのもあるが。 管制室にバニングが入室し、改めての自己紹介・情報交換が始まる。 今度はイネス、そして一騎も積極的に発言した。 少しでもポイントを稼ぎ地位を固めんとする利己的な考えがなかったとは言えない。 真矢もまた、バニングに謝罪しつつ集団の一員として振る舞った。 数時間前には生存していたショウ・ザマが既に故人であることや、マップ端のループについてなど先ほどはなかった生きた情報も飛び交う。 特にギリアム・イェーガーの情報は重要だった。主催者であるシャドウミラーに最も近い男。 ウォーダン・ユミルと交戦し、その生死も未だ不明。 「ではそのギリアムという男を確保するべきだな。戦力としても集団の長としても、何よりシャドウミラーに近しいという点が重要だ」 「少なくともこの場の誰よりも、ね。勝ったか負けたか、どうなっているにしろこちらから確認に行った方がいいと思うわ」 「あ、じゃあ俺が行きます!」 名乗りを上げた一騎。これは先に述べた地位向上のためでもあるが、それ以上にギリアムが心配だったからだ。 だが、一騎を制するように万丈が手を挙げる。 「待ちたまえよ一騎君。ここは僕が行こう」 「えっ?」 「ここの防備を疎かにするわけにもいかないから、探しに行けるのは一人だ。可能な限り強く、機動力もある機体が望ましい。 君の機体――アルトアイゼン、だっけ? データを見せてもらった限りでは、あんなピーキーな機体は捜索向きではないよ。 今ここにある機体では僕のトライダーG7が一番適しているのさ」 「で、でも!」 「私も万丈さんに賛成ね」
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347 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:29:01 ID:RZEDs/Kq -
食い下がる一騎にイネスが援護、ではなく背後から射撃した。 「いいこと、一騎君――もしもの場合を考えて。ギリアムさんが敗北して、既に死んでいる可能性もあるのよ」 「い、イネスさん!」 「可能性の話よ。もしそうだった場合、あなたは冷静に行動できないでしょう?」 「うっ……」 今し方言葉だけで動揺した一騎には、言い返す言葉もない。 「言い方は悪いけど、他人である万丈さんならそれほど深く傷つくこともない……でしょう?」 「おやおや、僕はそんなに冷血な人間に見えるのかな?」 「落ちつきがある、と解釈してほしいわね。とにかく、一騎君を一人で行かせるには色々不安なのよ」 「でも……」 言い募ろうとする一騎を、そっと真矢が抑える。 「遠見?」 「一騎君、私、思ったんだけど……私達って、この場では絶対的に足りてないものがあると思うの」 「足りないもの?」 「うん。フェストゥムと戦う時は同化されないように、敵を理解しないようにしなきゃいけなかったでしょ? でもここでは、戦う相手のことも考えないと、誰と戦っても私達は勝てないよ」 バニングとの戦い、ギリアムとの模擬戦。どちらも機械やフェストゥムではなく生きた人間が相手だった。 そして、結果的に一騎と真矢は敗北続きである。フェストゥムを相手にする時とは違う戦い方をしなければ、この世界で生き残れない。 「じゃあ、大尉に鍛えてもらえばいい。丁度いいことに大尉は新兵の教官であるそうだからね」 二人の会話を聞いていた万丈が冷やかすように言う。 一騎と真矢はきょとんとした顔でバニングを見た。 「万丈、お前な……」 「大尉、そう悪い話じゃないですよ。彼らは元々基礎はできているんだ、少し慣れさせればすぐに僕らと遜色ないレベルになる」 この状況では子どもといえども戦わないという選択肢は許されない。 なら少しでも生存率を上げるために、あなたが鍛えてやってくれ――言葉とは裏腹に、万丈の瞳は強くそう物語っている。 しばし睨み合った万丈とバニングだが、先に折れたのは老兵の方だった。 「全く……ああ、わかったよ。その代わりギリアムと言う男のことは頼んだぞ、万丈」 「任せてください。この破嵐万丈、必ず彼を連れ帰ってみせますよ」 たとえ遺体であっても。 それは口に出さず、万丈は自分が行くと強引に締めくくった。
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350 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:32:03 ID:RZEDs/Kq -
バニング自身が斬り落としたヴァイスリッターの左腕を突貫作業で接合し、各機の補給が済んだ後。 研究所からトライダーG7が西に向かって飛び立っていき、見送っていたバニングは踵を返して管制室の出口へと向かった。 「時間がない、すぐに始めるぞ。ついてこい、一騎、真矢。 イネス女史、あなたにはここでレーダーの監視をお願いする。わかっているとは思うが――」 「わかってますよ。ここで裏切ったって私には何の得もないでしょう。あなた達がいなければ私も危ないんだから、手抜きなんてしないわよ」 「なら、いいがな」 少年少女を従え、格納庫へ向けて歩き出すバニング。 ふうと溜息をつき、イネスは素直にレーダーや研究所全体の監視に専念することにした。 少し状況は変わったが、イネスにとって現状は悪くない。 真矢への対抗策――にしては少し大仰だが、戦力は倍増した。 実際、主催者の力を得ようとすれば、優勝だけが正解ではない。彼らを倒し技術だけ奪い取ったっていいのだから。 もちろんそれが茨の道であることは疑いない。だが選択肢の一つとしてなら、検討する価値はある。 要は立ち回り方次第だ。 結果を得られるのなら過程にはこだわらない。 力がないのなら頭を使う。それがイネス・フレサンジュの戦い方なのだから。 つまらなそうにコンソールを弄っていたイネスの視線がある点で止まる。 研究所内の一角に、詳細が表示されないブロックがある。 「これは……?」 時間潰しも兼ねて、イネスはそのブロックを重点的に調べ始めた。 やはり『未知』を『既知』へと変える作業は心が躍る。それを誰かに説明できるすれば、なおさらだ。 こんな状況だというのに、イネスは思いがけない娯楽に没入していった。
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353 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:35:39 ID:RZEDs/Kq - ■
少女にとって現状は悪くない。 現状は、見方を変えれば少年を守る戦力が倍増したということだからだ。 加えて老兵は自分達を鍛えてくれるという。まさに今の少年と少女に一番足りないもの、人間との戦闘経験を。 少女の目的はあくまで少年、そして同胞の生存だ。 小さな個であるよりも、一つの大きな集団の中なら生存率はケタ違いに跳ね上がる。 少年と出会ったときのように、各地に散らばる同胞と接触し、集結する。 そのまま主催者を倒せれば良し。そのまま島に帰るだけだ。 だが、そうでない時は―― (止めよう。今はまだそれを考える時じゃない……) 同胞。時間軸の違う世界から来た、同じ顔の同胞。 彼らを助けたところで、自分のいた世界に影響を与える訳では―― (――今は! 今はただ、ここにいる一騎君とみんなを守ることだけを考えていればいい……!) ガクン、と機体が揺れる。 物思いを断ち切り、少女は『戦場でこう在るべき自分』へと深く深く潜行していく――
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358 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:40:21 ID:RZEDs/Kq - ■
「フン……三人か」 満身創痍。 しかし戦意に些かも衰えのない暗黒大将軍の前に立ちはだかったのは、三機の機動兵器。 巨大な杭打ち機を構え猛る赤の孤狼――アルトアイゼン・リーゼ。 長大な銃を携え飛翔する白の堕天使――ヴァイスリッター。 両腕に光刃を握り立つ黒の剣士――ストライクノワール。 いずれも埃に塗れてはいるものの、さして不備なく万全の状態であるらしい。 対して暗黒大将軍はと言えば、本体である自身の身体は激しく傷つき、身を預ける剣――セレブレイダーもエネルギーをほぼ使い切っている。 窮地。そう、窮地だと言えるだろう。しかし暗黒大将軍に後退はない。 進む先に人間が居座るのなら斬り散らすまで。 無言で構えを取り、剣身から竜巻を解き放った。敵もまた応ずるように散開、飛びかかって来る。 「ぬうっ……!」 まずヴァイスリッターが前に出てオクスタン・ランチャーから光を迸らせる。 暗黒大将軍は逃げず真っ向から剣を振り下ろし光の大河を分断、勢い余った衝撃波がヴァイスリッターに殺到した。 直前で割って入ったアルトアイゼンの装甲が衝撃を散らす。 踏み込もうとした暗黒大将軍だが、その眼前にストライクノワールが飛び込んで来た。 振り下ろされた対艦刀フラガラッハ3・ビームブレイドを、セレブレイドで受け止める。 暗黒大将軍の体長のおよそ半分の小兵。だがその一撃は、傷ついた身ではあまりにも重い一撃。 押し込んでくるストライクノワールの重量にたまらず足を踏ん張る。 そこへ左手から回り込んで飛び込んでくる赤カブト。帯電する角が一直線に暗黒大将軍の心臓めがけ迫って来た。 「うおおおっ!」 「小賢しい!」 逆手で腰のサーベルを引き抜き、突き下ろす。馬鹿正直に急所を狙うなど未熟にもほどがある。 間一髪でアルトアイゼンのプラズマホーンは押し留められた。が、それが限界だ。 右方へ回り込んだ白、ヴァイスリッターが伸ばすオクスタン・ランチャーの銃口から放たれた弾丸が、真っ直ぐに暗黒大将軍の右膝を射抜いた。 「ぐあっ!?」 ここぞとばかりに押し込んでくるノワールを、剣持つ柄で殴りつけるように振り払い身体を旋回。 当然サーベルに込められていたベクトルも変化し、いなされたアルトアイゼンの躯体が泳いだ。 その背にセレブレイダーを叩きつけようとした刹那、肘に巻き付く鋼鉄の戒め。 ストライクノワールのアンカーランチャーが暗黒大将軍の振り出す腕を逆に引き、剣閃を鈍らせている。 浮き上がる剣の下を潜りアルトアイゼンが加速、刃の圏内から脱出した。 ヴァイスリッターがその隙をカバーすべくミサイルを放ち、アルトアイゼンと暗黒大将軍を分断した。 膝の痛みをこらえ、暗黒大将軍は後退する。 仕切り直して対峙する四機。 「よし、やれる……!」 「油断するな、一騎! 真矢のフォローがなければ落とされていたぞ!」 「え……は、はい!」 「闇雲に突っ込むんじゃない、周りを良く見ろ! 俺か真矢がカバーできる時こそアルトの突撃は活きる! 真矢、足を狙ったのは良い判断だ。だが前に出すぎだ、ヴァイスの装甲を過信するな! 攻撃を避けるのではなく、攻撃されないことを心掛けろ!」 「はい」 「何をゴチャゴチャと……! 俺を前にしてその態度、舐めるでないわ!」 気勢を上げる暗黒大将軍。 地が震えるほどの怒号、受ける人間達は凄まじいプレッシャーに晒される。
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361 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:44:03 ID:RZEDs/Kq -
「くっ……!?」 「ビビるな、一騎! 気持ちで負けたら押し込まれるぞ!」 「はいッ!」 一時間にも満たない訓練だったが、その濃度は決して薄くはない。 バニング一人に対し、一騎と真矢は合わせて十度以上も地に這わされたのだ。 それもシミュレータ上ではなく、実戦で。今もなお両の脚で立つこの荒野で。 弾丸を発射することのない模擬戦であったとはいえ、バニングの気迫は本物だった。 否応なくその空気に触れた一騎と真矢は、付け焼き刃とは思えないほど急速に戦場に順応していく。 基礎ができているとはいえその余りの成長の速さにバニングは密かに瞠目していた。 これならさほど時を経ることもなく一人前と言えるだろう。 有望な才能を育てることに喜びを感じるようになれば引退の潮時かもしれないなと微かに笑う。 そんな矢先にレーダーに引っ掛かった、研究所に接近する機影。イネスから示された映像を見るにストライクノワールのほぼ倍の大きさ。 新米達の慣熟テストと洒落込むには酷な相手。バニング一人で勝利できるかは怪しいものだ。 それでもなお単身挑もうとしたバニングに我もと名乗りを上げたのは、当の一騎と真矢自身。 いずれぶつかる壁ならば、早いか遅いかの違いでしかない。 ならば三人揃って戦力的に充実している今が最善――そんな判断。その意志の強さにバニングも折れた。 「バニング大尉、クロガネは出港したわ。いつでも動けるわよ」 「よし、そのまま基地の裏手で待機していてくれ。撤退する時は頼ることになる」 「了解」 戦場にあっては動き回ってもタイムラグのないオープン回線が常であるが、クロガネとの通信だけは敵に気取られないように行うバニング。 いよいよとなれば基地を放棄することも考えなければならない。 だが、襲撃者は既に手負い。この分なら撃退も可能であるとバニングは判断した。 「手負いだからと言って油断するなよ。こういった輩は追い詰められれば何をするかわからんからな」 「はい!」 「了解」 言葉を交わしていた先ほどよりも積極的――否、攻撃的な一騎と、逆に氷のように冷静な真矢。 ファフナーというマシンに乗る時の精神状態へ今の自分を近付ける、精神を安定させる自己暗示だとイネスから聞かされてはいたが。 どうにも慣れないものだとバニングは苦笑した。 正直なところこの二人がいてくれて良かった、とバニングは思う。 部下がいるなら指揮官は強く在れる。上が浮足立っては下が総崩れになるからだ。 一人でこの敵と向き合っていれば圧力に呑まれていたかもしれない。だが、守るべき部下がいるなら話は別だ。 恐れを戦意と使命感で封殺し、バニングは改めて敵手へとアプローチを試みる。 「一応、聞いておこうか。俺はサウス・バニング、地球連邦の士官だ」 「地球連邦……フン、シャドウミラーの手の者か」 「違う。同じ組織にあっても俺は奴らの存在を認めん。今、俺達は奴らと戦うための仲間を求めている。 既に剣を交えてはいるが、それはお前も例外ではない。名と、何故攻撃を仕掛けてきたか聞かせてもらえないか?」 「俺の名は暗黒大将軍、ミケーネの将よ。 何故戦うか……? は、愚問。貴様ら人間が前にいるというだけで、この剣を振るうには十分よ。 バニングとやら、貴様も戦場に生きる者なら言葉ではなく剣で語るがよい」 「交渉の余地なし、か。了解だ……!」 バニングとしても正直交渉に応じるとは思っていなかった。名を知れたのだから充分だ。 後は力で打ち破るのみ。 「一騎、俺の動きに合わせろ! 真矢は引き続いて援護、絶対に前に出るなよ!」 バニングは言い捨て、ストライクノワールを前進させた。 追い越すようにヴァイスリッターからミサイルが拡がって展開、暗黒大将軍の踏み込みを封じた。 両腕に握るフラガラッハを大上段から叩き付ける。暗黒大将軍はセレブレイダーで受け止める。 だが動きを止めては先ほどの二の舞だ。
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365 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:48:36 ID:RZEDs/Kq -
「ハァッ!」 暗黒大将軍の両目から真紅の輝きが放たれる。 自らの全長にすら匹敵するセレブレイダーを蹴り付けストライクノワールが飛び離れる。 破壊光線は足先を掠め過ぎ、基地の外壁を撃ち砕いただけだ。 左右、挟み込むように赤と白が散開。 ヴァイスリッターが連続してライフルに火を吹かせる。 飛来する弾丸熱線を斬り払う暗黒大将軍の背中を、アルトアイゼンが強襲した。 「バンカー、セット……!」 「甘いわ、小僧!」 火薬が炸裂し、極太の鉄杭が射出される。 瞬間振り返った暗黒大将軍、一拍遅れて刀身から吹き荒れる竜巻がアルトアイゼンの体勢を崩す。 暴風に押され今一歩の踏み込みが足りず、リボルビングバンカーは暗黒大将軍の脇腹を抉るに留まった。 そのままアルトアイゼンの腕を抱え込む。背にヴァイスリッターからの砲撃が着弾するが、意に介することはない。 暗黒大将軍の向こうにアルトアイゼンがいるため、なまじ強い威力の砲撃を放つ訳にはいかないからだ。 返す刀でアルトアイゼンを一刀の元に両断しようとしたが、やはりと言うべきか。 「はああッ!」 動き出せば止まれない、しかし今ならまだ制動は効く。 そんな絶妙のタイミングで、ストライクノワールが第三の剣を振り回し打ちかかって来た。 柄頭にドクロの意匠を持つ、しかしただの剣だ。 なんだそんなもの、受け止めてくれるわ――構わずアルトアイゼンを斬り裂こうとした暗黒大将軍の視界を、閃光が満たす。 ストライクノワールの掲げた剣から左右に激しく主張する14本のビームサーベル。剣と呼ぶのもおこがましいビームの七支刀、ムラマサブラスターだ。 あれはまずいと暗黒大将軍の本能が叫び、掴んだままのアルトアイゼンを盾にしようと体を入れ替える。 ストライクノワールと暗黒大将軍の中間にアルトアイゼンが押し出される。 だが、それはストライクノワールの攻撃を止めることにはなっても、アルトアイゼンの行動を許すことになる。 アルトアイゼンの肩が展開し、顔を覗かせたのは、 「クレイモア、行けえッ!」 アヴァランチ・クレイモア、射出式のチタンベアリング製炸裂鋼球弾だ。 散弾ゆえに近距離でこそ最大の威力を示すこの武装をほぼゼロ距離で使う。この場では死をも恐れぬ一騎の攻撃性が功を奏した。 刹那に危険を察知した暗黒大将軍がバックステップを刻んだおかげで、跳弾によりアルトアイゼンが傷つくこともなく。 「ぐああああっ!」 結果、一方的に暗黒大将軍の全身をチタンベアリング弾が蹂躙する。 あまりの勢いに吹き飛んでいく暗黒大将軍。先刻自ら開けた研究所の大穴へと姿を消した。 「イネス!」 「ええ、追跡しているわ。基地内北部……っ、監視カメラが破壊されたようね。 動いてるみたいだけど、直前に確認された位置まで誘導するから追ってもらえるかしら」 「ああ。行けるな、一騎?」 「はい、大丈夫です」 「まったく、無茶をする。いいか、数では勝っているが個々の能力では奴が上手だ。常に連携を意識するんだ」 機体の状況をチェックし問題はないと判断したバニングは、一気に勝負を付けるべく基地へと突入した。 後ろには一騎。屋内とはいえクロガネでも通れそうなほど広い通路のため、真矢も距離を取って続いていた。 互いの死角をカバーし合うバニングと一騎。 まさかこの状況で機体を降りて管制室など行くはずもないので、機体用に作られた通路のみを警戒していればいい。 通路を抜け、発電設備を抜け、一段と広い格納庫に侵入する三人。 クロガネが出港しもぬけの殻となったそこで、異形の剣士は待っていた。
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367 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:51:47 ID:RZEDs/Kq -
「来たか……」 道中聞いたイネスの所見によれば、バニングらとは違い敵は生身であるらしい。 どうにも熱源反応や生体反応がストライクノワールなどと比べれば桁違いに大きく、また破損部分から出血の様なものが見られたためだ。 巨人、と呼んでいいのかどうか。一騎などはすわ新たなフェストゥムか、と疑ったほどだ。 もちろんそんな超常的存在と関係がないバニングとイネスの動揺はさらにひどかった。 が、まあそれはそれ、倒してから考えればいいと割り切る辺りが一騎達より歳を取っているということである。 「万全でなかったとはいえ、俺をここまで追い込むとはな。人間もやるものだ」 「降伏する気があるのか?」 「ふ、笑止。ミケーネの武人に後退はない! さあ決着を着けようではないか!」 二刀を手に猛然とストライクノワールへ斬りかかる暗黒大将軍。 そのスピードは真矢が援護の射線を確保する間もなくい。 フラガラッハを交差させ、ストライクノワールが剣閃を受け止めた。 「ぐううっ!」 「バニング大尉!」 ならばと飛び込もうとしたアルトアイゼンの鼻先を穿つ破壊光線。 視線はすなわち射線だ。右に左に飛び跳ねるアルトアイゼンを追うように光の軌跡が刻まれる。 そのアルトアイゼンの背後からヴァイスリッターが飛び出した。 扇状に拡がるスプリットミサイルが周囲に着弾し、瓦礫と噴煙を舞い上げる。 その隙にバニングは離脱を試みた。 至近距離からリニアガンを撃ち込み、暗黒大将軍の目を眩ませる。 「逃がさん!」 だが、合わせたままの剣から巻き起こる風が煙幕を吹き払った。 後退するストライクノワールへ、ダークサーベルを投げつける暗黒大将軍。 「がっ!?」 フェイズシフトの恩恵ゆえに、ストライクノワールはその剣によって損傷を与えられることはない。、 しかし並大抵の衝撃ではなくバニングの意識が一瞬途絶えた。 バニングを援護すべく二機の亡霊から絶え間ない弾丸が送り込まれる。 その只中を暗黒大将軍は両腕を上げ頭と腹をガード、強引に突っ切った。 手を伸ばす。掴んだのはストライクノワール、ではなくその腰元の剣。 「それは……!」 「貴様には過ぎたる物よ!」 取り返そうと手を伸ばすストライクノワールを蹴り付け、眼光でとどめを刺そうとすれば横手から突っ込んでくるアルトアイゼン。 暗黒大将軍は試し斬りにちょうど良いと笑い、手の中の剣を振りかぶる――闇を裂く極光。 「……いかん! 一騎、下がれッ!」 苦痛を押し殺しバニングが呻く。 アルトアイゼン・リーゼの装甲は特筆に値するほどに強固。加えて全面をビームコートで覆い、まさしく鉄壁の城塞だ。 しかし、その壁をも貫くは『村正』の名を冠する一刀。 「くっ……!」 「でぇぇえええいッ!」 構えていたバンカーを前ではなく下方に撃ち込み、急激なブレーキをかけるアルトアイゼン。 慣性で振り出されたチェーンガンを擁する左腕が一瞬にして蒸発する。
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370 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:54:47 ID:RZEDs/Kq -
「うわああっ!」 衝撃で吹き飛ぶアルトアイゼンを、ストライクノワールのアンカーが捕まえて引き寄せた。 未だバニングの身に残るダメージは抜けていない。が、もはやそうも言ってはいられない。 剣の名手である暗黒大将軍に、こちらの最大の打撃力であるムラマサブラスターを奪われたのだから。 落ちていたダークサーベルを拾い、セレブレイダーを背に納刀。 右手にムラマサブラスター、左にダークサーベルを竜の顎の如く上下に構える暗黒大将軍。 「中々いい剣だ。少々短いのが気に入らんが」 「貴様、ショウの剣を……!」 憤るバニング。敵に友の形見を奪われたとあっては失態もいいところだ。 もちろん暗黒大将軍も無傷ではなく、深手であろうことは全身に刻まれた弾痕が示している。 あと一押し、だがその一押しが詰められない。 バニングの後方で真矢がライフルを構えた。 この状況で勝敗を決するに足る兵器と言えばおそらくアルトアイゼンのクレイモアが第一だ。 もう一度近距離であれを叩き込めば今度こそ立ち上がれはしないだろう。 だがさすがにこれほどの猛者が二度目の不覚を許すとは思えない。一騎が接近を試みれば何においても迎撃してくるだろう。 一機でも崩されればこちらが敗北するのは自明だ。だからこそ、バニングは迂闊に動くことはできない。 暗黒大将軍もまた消耗激しい自らの身体を鑑み、攻めるのではなくカウンターを取ることに専念し始めた。 手にする剣なら一撃必殺。相打ち覚悟で一機落とせばこちらのものと、虎視眈々と勝機を待つ。 双方動き出すきっかけを掴めないまま数分が過ぎ、場の均衡が限界に達しようとしたところでストライクノワールのコクピットに通信が届いた。 一騎でも真矢でもなく、クロガネで待機しているはずのイネスからだった。 「大尉、少しいいかしら?」 「話なら後にしてくれ。今気を散らすわけには……」 「その敵を排除できるかもしれない案なのよ」 「何?」 聞き捨てならない言葉に思わず気が逸れるバニング。 幸い敵も動かなかったからいいが、一騎達に偉そうなことは言えないと自責した。 とにかく今はイネスの話を聞くべきだ。 「どういうことだ?」 「さっきこの基地内部を走査したんだけど、変わった設備があったのよ。 多分、シャドウミラーがこの会場を創った時の物だと思うんだけど、行き先が設定されてない転移装置ね」 「転移……装置?」 「ああ、まあワープ装置って思ってくれれば。とにかく今それを起動させたから、そこまで敵を後退させられれば……」 「どことも知れない場所に放逐できる、か。それは良い案だと言いたいが、どうやって奴を押し込むかだ」 元々パワーにおいては40m近い敵の方が圧倒的なのだ。 万丈のトライダーG7ならともかく、ここにいる機体では力不足――いや。 「アルトアイゼンの突進力なら、行けます!」 「一騎……」 「援護してください、大尉!」 左腕を失ったため真矢のヴァイスリッターの手を借りバンカーの薬莢を排出、装填し直すアルトアイゼン。 そう、装甲厚く加速力にも優れ特機並みの出力を誇るアルトアイゼン・リーゼならばあるいは。
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373 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:56:45 ID:RZEDs/Kq -
「危険だぞ、わかっているのか?」 「それはみんな同じです。大尉や遠見だって安全って訳じゃないんだ、だったら少しでも頑丈な俺の機体で!」」 「私も援護します。でも、それだけじゃ足りない……」 「お前達……フン、ひよっ子のくせに。 いいだろう、なら奴の右腕と目の光線は俺に任せろ! 真矢、お前は一騎の援護だ。左の剣を何としても阻止しろ!」 「了解」 「一騎、他のことは何も考えるな。俺が道を開くから全力で突っ込め!」 「はいッ!」 バニングの号令で、戦局は一斉に動き出す。 まずストライクノワールが両腕のフラガラッハで斬りかかっていく。 「まずは俺からだ!」 「正面からか……その意気や良し、斬り伏せてくれる!」 ダークサーベルが一閃。 だがバニングは故意にマニピュレーターを緩め、剣戟に抗わない。フラガラッハが二刀まとめて弾き飛ばされた。 「むっ……だが、これで!」 呆気ない手応えに訝しみながらも、残る右の一刀を繰り出す暗黒大将軍。 フェイズシフトは対実体弾。ビーム力場の剣には抗えない――が。 「Iフィールド、全開ッ!」 ビームシールドさえ斬り抜けるムラマサブラスターを無効化できる唯一無二の機構、Iフィールド。 クロスボーン・ガンダムX3の両腕に試験的に搭載されたIフィールド・ハンドは、ムラマサブラスターと合わせることで最強の矛と盾になるはずだった。 構造的な欠陥がありその後のモビルスーツに正式採用されはしなかったものの、効果のほどは折り紙つきだ。 今まさに、ストライクノワールの両腕がムラマサブラスターを押し留めているように。 「な、何だと……!?」 「来い、一騎ッ!」 一騎達と合流する前に改修をしておいて正解だったとバニングは笑う。 やはり、ショウが共に戦ってくれているのだ――そんな気にさえなる。 ストライクノワールの腕がビームをかき分けムラマサブラスターの本体を掴んだ。 そのまま上昇、暗黒大将軍の頭を乗り越え背中に組み付き、片手を離して暗黒大将軍の頭部を締め上げる。 視線があらぬ方向へ向き、破壊光線の使用は妨げられた。 だから、猛然と突き進んでくるアルトアイゼンを阻めない。 「い……っけぇ!」 「小癪な……ガアッ!?」 暗黒大将軍の腹部、もう一つの顔へ深々と突き刺さるリボルビング・バンカー。 莫大な噴射炎を排するアルトアイゼン・リーゼのチャージは止まらず、暗黒大将軍、ストライクノワールごと後方へと突き進んでいく。 「遠見、道を作ってくれ!」 一騎の声を追い越すように白い流星が傍らを駆け抜ける。 光の奔流が内壁を砕き、進路を切り拓いた。 ストライクノワール、暗黒大将軍、アルトアイゼン・リーゼとが一塊になって基地内を驀進していく。 先行するヴァイスリッターが目的地である転移装置までの壁を撃ち砕き、その歩みを遅滞させず。
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375 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:57:42 ID:RZEDs/Kq -
「き、貴様ら! 何のつもりだ!?」 「少しばかり……ドライブに付き合ってもらおうか!」 状況はわからないまでも、このままではまずいという確信があった。 暗黒大将軍は唯一自由である左腕のダークサーベルを、背のストライクノワールへと撃ち込み出す。 二度、三度と刃が鋼を叩くものの、フェイズシフトを破れない。 「硬い……!」 「そんな攻撃でノワールの装甲は貫けんぞ!」 万全の状態で振り下ろすダークサーベルなら話は別だろう。 だが激しく傷つき、後方に流されているため地を踏み込むこともできず、さらに目標も見えないまま振るう剣では込められる力も微々たるもの。 「ぬう、ならば……!」 老兵の機体は諦め、この瞬間も自らを押し込み続けるアルトアイゼンへと狙いを変えた暗黒大将軍。 逆手に握ったダークサーベルを振り下ろそうとする。 「くっ!?」 「一騎君はやらせない!」 取って返してきたヴァイスリッターが放つ実体弾が、寸前で刃へと喰らいつく。 生まれた一瞬の空白でプラズマホーンが起動し、ダークサーベルと噛み合った。 流れる刃の矛先はコクピットから僅かに逸れ、胸の端から背中まで突き抜ける。 「一騎君!?」 「だ、大丈夫だ遠見! それより……まずい、出力が落ちてきた! このままじゃ……!」 アルトアイゼンから尾を引いていた推進炎がやや陰る。 突進の勢いが収まれば敵に立て直すチャンスを与えてしまう。 「何を企んでいるか知らんが、調子に乗るなよ人間ども!」 「いかん! こっちももう抑えきれんか……!」 自力でストライクノワールに勝る暗黒大将軍が戒めから脱しようとしている。 また、Iフィールド・ハンドもそろそろ限界時間の105秒に近付いていた。 左腕の方はまだ時間が残っているが、手を離せば一騎が破壊光線で落とされる――万事休す。 しかし、その絶望の囁きに屈しようとしない者が、まだ一人。 「私がカバーします!」 ヴァイスリッターが相対速度を合わせ、三機にピタリと並走していく。 オクスタン・ライフルを、暗黒大将軍の左肩に突き付け、 「この距離なら……!」 ゼロ距離で発砲。弾丸は表皮を破って黒い身体へ潜り込み、銃声すらも響かせない。 痛みに呻く暗黒大将軍に構わず『槍』を旋回させ、ムラマサブラスターを握り締める右腕の指を精確に狙い撃つ。 抜け落ちた光剣を一顧だにせず、ヴァイスリッターはライフルをウェポンラックに保持してアルトアイゼンの横に並ぶ。 そのままテスラ・ドライブを全開にしてアルトアイゼンの失った推力を補う。 右腕がフリーになったストライクノワールが、両腕を以て暗黒大将軍の頭部を押さえつけ、視線を封じる。 黒、黒、赤白と、モニターするイネスが機体色を容易には判別できないほどに近接して進んでいく。
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376 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:58:32 ID:RZEDs/Kq -
「ぬおおお……おおおおああああっ!」 「こいつ、まだ抵抗するか!」 「装置はまだなのか!?」 「もう少し……!」 通信回線を開かずとも、接触しているため全員の声が聞こえる。 そんな中、一人離れた場所にいるイネスから待ちわびた報告。 「みんな、転移装置に着くわ!」 声に遅れること数秒、一際広大な空間に出た。 その中心、床に大きく設置された泉のような深い蒼のスペースを湛える機械――ゲートだ。 イネスによって起動された転移装置は既に発動している。 後はここに敵を叩き落とすだけだ。 「よし、離れろ一騎、真矢!」 暗黒大将軍の背中に張り付いていたストライクノワールが飛び離れる。これ以上くっついていても加速の邪魔になるだけだ。 押し込む二機の亡霊も続く。まずヴァイスリッターが手を離した。 「舐めるなァァァァッ!」 とたんに、空手となった右腕でセレブレイダーを抜刀する暗黒大将軍。 そのまま斬りつけるのではなく、床に突き立て後方へ流れる身体を力づくでせき止めようとする。 目に見えて突進の速度が落ちる。 このまま一騎が離れればゲートまで押し込めない――離脱したバニングが一人特攻の決意を固めた。 しかし、ストライクノワールが追いつくよりも速く暗黒大将軍達は進んでいく。 何故、と思う訳もない。 見ればわかる――単に一騎が、アルトアイゼン・リーゼが前に進み続けているからだ。 離脱も何も考えていない。それはまさに特攻だった。 「止せ、一騎!」 「一騎君!?」 制止の声が飛ぶが、一騎は止まらない。 自分ごと敵を装置に落とす、そう言わんばかりに無言で突き進んでいく。 「こ、小僧! 死ぬ気か!?」 「死ぬもんか……死なせるもんか!」 セレブレイダーが床から離れる。 アルトアイゼンが地を蹴り、最後の加速。 バニングが介入する間もなく、転移装置へと一直線に突入した。 「一騎ィッ!」 伸ばしたアンカーはアルトアイゼンを捕まえられない。 そしてその後を――躊躇うことなくヴァイスリッターが追った。 僅か数秒で、三人が消えた。バニングの教え子二人が、敵もろともに。 しばし呆然としていたバニングだが、我に返り自らも後を追おうとする。
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378 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 20:59:19 ID:RZEDs/Kq -
だが、ゲートに突入する寸前で急停止させられた。 蒼い輝きを放っていたゲートが暗くなる。転移機能が停止したためだ。 もちろんバニングの操作ではない。だとすれば、 「どういうつもりだ、イネス!?」 外部から基地の設備を操作していたイネスの仕業に相違ない。 部下を追えなくなったバニングはそれこそ烈火のように怒り、イネスを詰問した。 「落ち着いて下さい大尉。追うのは危険です」 「何を言っている! 一騎達まで飛び込んだんだぞ、俺も……!」 「大尉! ……言ったでしょう、この装置は行き先が設定されていないと。それはつまり、空間が安定していないということなんです。 どこに出るかわからず、もしかしたら原子の塵になるまで分解されるかもしれない。 そんな空間に大きなエネルギーを持った機体が複数同時に突入したら……」 そこで、イネスは言い淀む。 バニングも、怒りより先に行ってしまった二人の安否が気にかかった。 「……どうなるんだ?」 「こうと断言することはできません。ただ、絶対に無事では済まない……それだけは確かです」 「……何ということだ」 ストライクノワールのコクピットの中、バニングは顔を覆う。 合流してまだ数時間だ。それだけの短い時間にまた、別れてしまう――ショウのように。 「イネス、追跡はできないのか!?」 「無理です……それどころか、もう一度ゲートを開くのだって危険なんです。大尉、ここはどうか……」 応えるイネスの声とて苦しげだ。 いなくなったのはよりにもよって年少の二人。握り締めた拳を、コンソールへと叩きつける。 「一騎、真矢……無事でいろよ……!」 バニングは、血を吐くように呟いた。 【12:00】 【サウス・バニング 搭乗機体:ストライクノワール(機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER) パイロット状況:疲労(中) 機体状況:EN50%、ムラマサブラスターを所持 現在位置:G-5 研究所 第1行動方針:研究所を防衛しつつギリアムを待つ。一騎、真矢の捜索 第2行動方針:コウ・ウラキを探す 第3行動方針:アナベル・ガトー、渚カヲルを警戒 最終行動方針:シャドウミラーを打倒する 備考1:地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました 備考2:腕部にクロスボーン・ガンダムX3のIフィールド発生装置を装着】 【イネス・フレサンジュ 搭乗機体:クロガネ(スーパーロボット大戦OGシリーズ) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:G-5 研究所 第1行動方針:ギリアムを待つ 第2行動方針:ルリと合流、ガイもついでに 最終行動方針:願いを叶える「力」の奪取。手段は要検討 備考1:地中に潜れるのは最大一時間まで。それ以上は地上で一時間の間を開けなければ首輪が爆発 備考2:クロガネは改造され一人でも操艦可能】
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380 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:00:20 ID:RZEDs/Kq - ■
一方、偵察に出た万丈。 出発して一時間ほど経っているのに、まだ基地からそれほど距離を取っている訳ではない――何故か。 基地の近くで見覚えのある機体の残骸を見かけたためだ。 それは、ダイタンク。万丈の相棒、いや半身と言ってもいい。ダイターン3の戦車形態、その無惨にも破壊された姿だった。 コクピットから全体に拡がる破壊痕は、もう二度とこの巨人が立ち上がることはないと否応なく万丈に悟らせる。 「僕の、ダイターン……」 埋葬するという訳でもないが、しばし万丈はその場所に留まり愛機と共に戦った日々の記憶に身を浸した。 数分、身じろぎもせず。 次に目を開けた時にはもう、悲しみは拭い去られていた。 「シャドウミラー。君達を成敗する理由が一つ増えたようだ」 代わりに熱く滾るのは、怒り。 誰とも知れないダイターンを破壊した者、ではなく万丈からダイターンを奪ったシャドウミラーへの。 バニング達の前では見せなかった生の感情が万丈を支配していく。 「世のため人のため……そして、今だけは僕自身のために!」 ダイターン3の亡骸から拾い上げたのは、大剣ダイターンザンバー。 トライダーG7とほぼ同じだけの刃渡りの剣をぶんと振り回し、見栄を切る。 「覚悟しろシャドウミラー! 必ず、貴様らの野望を叩き潰して見せる……!」 トライダーG7が蒼穹を貫く矢となって飛んでいく。 怒りに燃え、僅かながらに視野の狭くなった万丈は気付かなかった。 後にした基地へ強大な敵が侵入したことを。 その内部で繰り広げられた激しい戦いを。 この世界から消えた、二人の仲間のことを。 遠く離れた地での異変を知る由もなく、だからこそ未来を知る男との合流を急ぎ西へと一路飛び抜けていく。 【11:45】 【破嵐万丈 搭乗機体:トライダーG7(無敵ロボ トライダーG7) パイロット状況:良好、怒り 機体状況:装甲を損傷、行動に影響なし、ダイターンザンバーを所持 現在位置:G-4 荒野 第1行動方針:ギリアムを捜索する 第2行動方針:弱きを助け強きを挫く。ま、悪党がいたら成敗しときますかね 最終行動方針:ヴィンデル・マウザーの野望を打ち砕く 備考:地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました】
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382 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:01:27 ID:RZEDs/Kq - ■
「ぐ、ううう……こ、ここはどこだ……?」 暗黒大将軍が辿り着いたのは、暗い深淵。 偽りの星が流れる漆黒の宇宙、その片隅にある岩塊の上だった。 黒衣の装甲は全面が砕かれ、腹の顔はもうほとんど原形を留めていないほどに傷ついている。 「何が、起こったというのだ……」 地上、基地内部にいたはずなのに気がつけば宇宙だ。 暗黒大将軍の動揺はかなりのものだった。というか、宇宙に出たことすら初めてだ。 よろよろと、セレブレイダーを杖に立ち上がる。だがその切れ味は、暗黒大将軍の重量を支えるより先に足元の地盤を斬り割ってしまった。 「ぬおっ!」 岩塊の中に落下する暗黒大将軍。もはや踏ん張る力もなかった。 落下――そう、落下だ。無重力の宇宙にいるはずなのに。 予想外の事態に警戒した暗黒大将軍だが、彼が見た光景はこれまた予想の上を行くものだった。 「……基地、いやプラント施設か?」 暗黒大将軍が見た物。 彼がいた岩塊は実は岩塊などではなく、偽装された資源衛星――名を、ウルカヌス。 アフターコロニーの世界で宇宙を彷徨い続けていたOZの無人プラントだった。 シャドウミラーが会場設営に際し現場での前線基地としていたのだが、戦いが始まるとともに放棄されていたのだ。 見渡しても兵器類など残されてはいない。完全に打ち捨てられてはいる、が。 「……フッ、俺が運に救われるとはな」 まだ、施設の機能が死んだわけではなかった。 一歩整備廠らしき場所に足を踏み入れれば、勝手に動力が再起動して施設全体が動き始める。 基地として利用可能。そう睨んだ暗黒大将軍は目当ての物を探す。 さして時間をかけることもなく、見つかった。携えていたセレブレイダーを『それ』に接続。 ウルカヌスから流れ出すのは、失われたエネルギー。それは地上に設置された補給ポイントの試作型だった。 「これでまだ、俺は戦える……」 ようやく張っていた気を抜き、壁に背を預ける暗黒大将軍。もはやその身に傷を負っていない箇所はない。 しかし、隠れ逃げ回る気は毛頭ない。数時間後にはロム・ストールとの決闘が待っている。 立っているのも辛い身体で再戦を約束した男の前に立つのは、武人の誇りが許さない。 少しでも傷を癒さんとする暗黒大将軍。疲労が睡魔となって全身を包み、瞬く間に眠りに落ちていった。 【12:30】 【暗黒大将軍 支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON) パイロット状況:全身に激しいダメージ、激しい怒り、疲労(極大)、気絶 機体状況:良好、EN100%、セレブレイドに変形中 現在位置:c-2 資源衛星 第0行動方針:………… 第1行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する 、剣鉄也を倒す 第2行動方針:19:00にロム・ストールと再戦する 第3行動方針:ダイヤが現れたのなら決着を着ける 第4行動方針:余裕ができたらガンバスターを破壊する 最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する 備考1:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになってます 無論、搭乗者が普通に機体を使う事も可能です】
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387 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:03:35 ID:RZEDs/Kq - ■
ウルカヌスの整備廠で、天井の一角が開いた。そこから顔を覗かせたのは一本の管。 眠る暗黒大将軍めがけ、輝く粒子を吹きかけて、姿を消す。、 暗黒大将軍の身体の表面を、肉眼では確認できないほどに微細な金属が覆っていく。 それはマシンセル。アースクレイドルにて開発された、自立型金属細胞の総称。 指向性を与えれば失った機体箇所の再生すらも可能とする新機軸の技術だ。 「……どういうつもりだ、レモン? 一参加者に肩入れするなとヴィンデルも言っていただろう」 「あら、いたのアクセル」 モニターから眼を離し、振り向いたレモン・ブロウニング。視線の先には鋭い眼でこちらを睨むアクセル・アルマーがいた。 正直、いつ入って来たのかもわからなかった。そこはさすがに特殊部隊の面目躍如といったところか。 「肩入れとは少し違うわ。むしろこれで公平なのよ」 「なに?」 「考えてもみて。彼、暗黒大将軍は他の参加者と違って生身で戦っていると言えるわ。その身体ゆえに機体を乗り換えることも、修理することもできない。 ……まあ他にも何人か機体に乗らずに戦っているのもいるけど、彼らはやろうと思えば普通に機体に乗れる訳だしね」 「だからマシンセルをくれてやったというのか?」 「そう。さすがにパイロットと機体の消耗が直結しているのは可哀想でしょ?」 「……それだけではあるまい」 納得はしたが、苦々しいという表情のアクセル。さすが付き合いが長いだけあり、よくわかっている。 「まあ、ね。まさかウルカヌスに辿り着くとは思っていなかったから、サプライズプレゼントというところかしら。 それも、私達が思いもつかないあんな方法でだもの。少しくらいお目こぼししてあげても罰は当たらないわよ」 「……ヴィンデルは何と言っている?」 「構わない、ですって。むしろ彼に限ってはこちらの配慮が足りなかった、だそうよ」 すでに根回しは終わっていたらしい。アクセルはふぅと溜息をつき、 「なら、俺から言うことは何もない。邪魔したな」 そのまま、足早に立ち去った。見送ったレモンは微笑み、眠り続ける暗黒大将軍を見やる。 「アクセル、何を苛ついていたのかしら……ああ、そういうこと。あの機体だものね……」 零す間も手は止まらず、ウルカヌスの動力を落としていく。 暗黒大将軍が目覚めるまでは維持しておくが、彼があの場を離れたらすぐに爆破するつもりだった。 必要以上にシャドウミラーの痕跡を会場に残しておくのは良くない。ゆえにレモンらが監視可能なのもウルカヌス内部のみ。 いざという時に使うつもりではあったが、参加者に先に見つけられてはもはや抹消するしかないのだ。 今や揺り籠となったウルカヌス。 その内で、来たるべき争覇の時を待ち武人は静かに眠り続ける。 【12:30】 【暗黒大将軍 支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON) パイロット状況:全身に激しいダメージ(修復中)、激しい怒り、疲労(大)、気絶、マシンセルに感染 機体状況:良好、EN100%、セレブレイドに変形中 現在位置:c-2 資源衛星 第0行動方針:………… 第1行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する 、剣鉄也を倒す 第2行動方針:19:00にロム・ストールと再戦する 第3行動方針:ダイヤが現れたのなら決着を着ける 第4行動方針:余裕ができたらガンバスターを破壊する 最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する 備考1:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになっています 搭乗者が普通に機体を使う事も可能】
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388 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:04:37 ID:RZEDs/Kq - ■
「う……?」 ヴァイスリッターのコクピットで、真矢は目覚めた。 どうやら少しの間気を失っていたらしい、と理解するや否や真矢は慌てて周囲を確認した。 地上でも宇宙でもない、そこは不思議な空間だった。 まるで虹の中にいるように、色んな色彩が混沌としてはっきりとしない。 事実、彼女はまだゲートの内部にいたのだ。 隣にあったアルトアイゼンの反応を確認し、真矢はほっと息を吐く。 見渡してもあの敵の反応はない。どうやら追い払えたらしい。後はここから脱出して、基地へ帰還するだけだ。 カメラも不調なのか、アルトアイゼンの姿がぼんやりとしか判別できない。しかし通信はまだ生きている。 「一騎君、大丈夫? ここ、どこかわかる?」 ヴァイスリッターのセンサーでは位置も何も掴めた物ではない。 強襲機であるアルトアイゼンだってそれは変わりないだろうが、とにかく何か情報が欲しかったのだ。 だが、いつまで待っても一騎から返答がない。 何度聞いても、まるで真矢しかいないかのように静寂。 どうしたのかと、アルトアイゼンの前にヴァイスリッターを回り込ませた真矢。 そして、絶句する。 アルトアイゼン・リーゼのコクピットに開いた大穴に。 もはやどこにもいない、そのパイロット。 真壁一騎の、消失に。 思考が全て、フリーズする。 そして思い出す――ゲートに突入したあの瞬間のことを。 一騎が敵ごとゲート内部へと突入し、すぐさま真矢も後を追った。 自身の生存よりも仲間を、とりわけ一騎を。そう掲げる真矢に躊躇いはなかった。 ゲートの中で、アルトアイゼンはまだ戦っていた。 両肩のスクエア・クレイモアが炸裂し、掴んだままの敵に深手を与えた。 刺さっていた剣が引き抜かれたが、アルトアイゼンに振り下ろされる前にヴァイスリッターのネオ・プラズマカッターが押し止めた。 .
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390 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:05:30 ID:RZEDs/Kq -
そして、 敵の両目が紅く輝き、 アルトアイゼンがヴァイスリッターを庇うように押しのけて、 爆発した。 .
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392 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/02/08(月) 21:06:14 ID:RZEDs/Kq -
そこで真矢の意識は途切れたのだ。 クレイモアが全弾当たる距離、それはつまり敵からも掴まれる距離。 一騎は真矢に伸ばされた敵の腕を阻むべくバンカーを撃ち込み、一人矢面に立ち、破壊光線を真正面からその身に受けた。 爆風は暗黒大将軍をも弾き飛ばし、次元の狭間に押し込んで。 無意識の内に機体を寄せたか、あるいは亡霊同士が呼び合ったか。アルトアイゼン・リーゼとヴァイスリッターは一塊のまま虚空を流され続けて。 「か、かず……一騎、君? へ、返事を……」 そして今、鋼鉄の孤狼はその数奇な旅を終える。 漏電し弾けるスパークが肩のクレイモアに引火した。 真矢の見ている前で、至極呆気なく。 アルトアイゼン・リーゼは光の球となって――消えた。 呆然と、ただ言葉もなく真壁一騎の最期を看取った遠見真矢は。 「……あ、あ。そん、な……」 心を塗り潰す感情の意味を、理解する。 すなわち――絶望。 「い……いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」 そして、真矢の世界は暗転する。 【真壁一騎(蒼穹のファフナー) 死亡】 【アルトアイゼン・リーゼ(スーパーロボット大戦OGシリーズ) 大破】 【12:30】 【遠見真矢 搭乗機体:ヴァイスリッター(スーパーロボット大戦OGシリーズ) パイロット状況:疲労(大)、精神的なダメージ(極大) 機体状況:ミサイル残弾0、EN消費(中)、精神的な同調ができないと不快感を覚える模様 もしかしたら何かのきっかけでラインヴァイスリッターになるかも……? 反応速度上昇 現在位置:??? 第1行動方針:………… 最終行動方針:仲間を生き残らせる。誰かが欠けた場合は優勝も視野に入れる 備考:ヴァイスリッターがどこに転移するかは未定です】
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393 :それも名無しだ[sage]:2010/02/08(月) 21:07:19 ID:RZEDs/Kq - 投下終了。
支援ありがとうございました。
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