- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル3
287 :それも名無しだ[sage]:2010/01/19(火) 21:08:46 ID:9/pjrcZz - 支援
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290 :それも名無しだ[sage]:2010/01/19(火) 21:13:37 ID:9/pjrcZz - .
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291 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:16:49 ID:9/pjrcZz - しかし――
「大丈夫だ、落ち着いてくれ!俺は殺し合うつもりはない!」 何を言っているんだ、この人は。 殺し合わなきゃ、生き延びられないのに。 「あの連中の言いなりになってやる義理なんてないからな」 僕を落ち着かせようとしてくれているのかな。 口早な説明。多分、そういうのに慣れてないんだろう。 でも……それを本気で言っているのだろうか。 「なんとかしてこのバトルロワイアルを壊し、シャドウミラーへの反撃に出たいと思っている」 この人は、自分の命が惜しくないんだろうか。 あの人達に刃向かえば、すぐにこの首輪の爆弾で殺されるのに。 「とりあえず今は、殺し合いに乗った人間を止め、少しでも多くの人を助けようと回っているんだが……」 意味がわからない。 自分の命がかかっている中なのに、他の誰かのために行動なんてできるのか。 嘘だ。ありえない。 結局みんな、自分が一番大事なんだ。 みんな自分勝手で、自分の都合ばかり考えて、都合の悪いことは誰かに押し付けて。 この人だって、自分が一番大事なはずだ。何を考えているかわかったもんじゃない。 ……首輪が、冷たい。違和感が気になって仕方がない。 殺されるかもしれない、そして殺さなければならない。 その恐怖がシンジの心を閉ざしていく。 「俺は剣鉄也。一応聞いておくが、君は殺し合いに乗ってはいないんだな?」 「それは……」 鉄也と名乗った男は、念を押すように問いかけてくる。 シンジは思わず言葉を詰まらせた。 殺し合おうだなんて思わない。本当は人殺しなんてしたくない。 だが、それを許さない枷が自分には与えられた。 二回目の放送までに二人殺さないと死――ジョーカーという名の枷が。 「ん……どうした?」 沈黙に不審なものを抱いたか、鉄也が問い詰めてくる。 「殺し合いなんて……したくない……でも」 シンジは掠れるような声で、それでもなんとか言葉を紡ぎ出す。 それはバトルロワイアルに対する、彼の正直な気持ちではある。 だが同時にその声には、他人に対する疑念、そして恐怖が含まれていた。
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292 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:17:29 ID:9/pjrcZz - 『気をつけろ、シンジ』
W14が口を挟んできた。 同時にサブモニターが展開され、そこに初号機の拡大映像が映し出される。 『あの男、既に一度交戦しているぞ』 初号機には、刃物を掠めたかのような無数の傷跡が残っていた。 誰かと戦ったんだ。 誰かと殺し合ったんだ、この人は。 「おい、どうかしたのか?」 あの銃で、誰を撃ってきたんだろう。 あの見慣れない刀で、誰を斬ってきたんだろう。 初号機で……一体誰を殺してきたんだろう。 LCLを染めた紅い血の海。 首のない死体。 浮かび上がる仮面。 ―――死ニタクナイ。 「え……?」 シンジが我に返った時、彼の乗る使徒は既に行動へと移っていた。 それは、シンジにとっては無意識でしかなかったのかもしれない。 だが、シンジの中に確かに存在した意思であることには変わりはない。 ――拒絶。 そして、少年は引き返せなくなった。
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294 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:18:10 ID:9/pjrcZz - 「な……ッ!?」
怪物――ゼルエルの奇妙な両腕に一瞬の違和感を感じ、初号機は真横へと跳んだ。 直後、初号機の左肩を、白い刃が掠めていく。 折り畳まれていた右腕が真っ直ぐに伸び、白い帯状の刃と化して初号機を襲ったのだ。 かつてエヴァ弐号機の両腕と首を瞬時に落とした触腕。 その伸ばされた腕は、間髪いれずに、横薙ぎの一撃を加えてくる。 転がり身を屈めながら、それを回避する初号機。頭上を白い刃が通り過ぎていく。 「やめろ、何をする!?」 体勢を立て直しながら、鉄也は戦いを避けられないことを悟る。 (だが、これは……!!) (殺さなきゃ……殺さなきゃ!!) 攻撃を仕掛けてしまった。今、自分はあの人を殺そうとしたんだ。 これで引っ込みがつかなくなった。あの鉄也という人も、もう自分を許しはしないだろう。 あの人は殺し合う人間を止めると言っていた。今、自分もそのカテゴリに当て嵌められた。 ……いや違う。そんなのあの人の口実だ。 腹の底では、あの人は僕を殺そうとしてるんだ。殺し合いに乗ってるはずだ。 甘い顔をしていても、どうせ最後には裏切るんだ。 僕がいらない人間だとわかれば、すぐに殺しに来るに決まってる。 だから、殺す。そうしなきゃ、死ぬ。早く殺さないと。二人殺さないと。死にたくない。 恐怖。疑念。不信。打算。自虐。正当化。そして逃避。 それらの感情が滅茶苦茶に混ざり合って、シンジを突き動かす。 ただ、これらの感情に共通するもの、そして彼の根本にあるものは一つ。 ――死の恐怖。 だから、他者を拒絶する。傷つける。 「もう嫌だ……もう沢山だッ!!」 シンジの叫びと共に、橋の上に閃光が走り、十字の光が立ち上がった。 ジオフロントの18の特殊装甲を一瞬で無力化した、破壊の光。 その爆発は、巨大な橋をいともたやすく崩壊へと導く。 「ちぃっ!」 崩れ始める橋を全力で疾走する初号機。 初号機に飛行能力はない。このまま橋を破壊されれば足場を失い、海に叩き落される。 水中戦は不利だ。怪物の戦闘力は未知数だが、不利なフィールドで戦う愚を犯すわけにはいかない。 この足場を完全に破壊される前に、橋を渡り切るしかなかった。 破壊の閃光の瞬きはなおも続く。 走る初号機を追いかけるように、十字架が立てられるかのように次々と爆発が巻き起こされる。 それに伴い、背後の足場が次々と崩れていく。それを振り返っている余裕などない。 ――島が、橋の終わりが見えた。 このまま突っ走れば、逃げ切れる。戦いはそこからだ。 (戦い……だが、これは何のための戦いだ?)
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296 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:18:53 ID:9/pjrcZz - 「くそっ、くそぉっ!!」
狙いが定まらない。疾走する初号機に光を当てられない。 初号機とは勝手が違う。シンジは使徒の動きに半ば振り回されていた。 (なんで、なんで当たらないんだ!向こうも慣れてないはずなのに!) 『あの男、初号機の操縦をものにしている。交戦経験の差もあるだろうが……』 シンジの心の中の焦りと疑問を見透かしたように、W14の解説が挟まれる。 平静を保ったその態度が、やけに腹立たしい。 シンジは追い立てられるかのように、ひたすらゼルエルの光を乱射する。 だが焦れば焦るほど、狙いは荒くなっていく。 『シンジ!奴の進行先、橋の付け根だ!!』 W14が叫んだ。 冷静で簡潔、そして容易に意味を理解できる。サポートとしては完璧だ。 「う……あああああああああッ!!!」 初号機のゴール地点、島と橋の繋ぎ目に、最後の十字の爆発が打ちあがる。 進路は防いだ。支えを完全に失い、橋は一気に崩壊する。これで初号機は、海へと落ちる。 ところが、初号機はその爆発と崩壊の中においてなお、走るスピードを緩めない。 「フィールド全開!跳べ!!エヴァンゲリオン!!」 崩れ行く足場を蹴り、初号機が大きく跳躍する。 ATフィールドを展開したまま、爆発の中を突っ切っていく。 「そ、そんな……」 橋を渡り終えた初号機を見て、シンジの声が漏れる。 あの人は迷いなく、突っ込んでいった。 自分にそれができるだろうか?そこまでの判断力があるか? もしかして、自分以上に初号機を扱えているんじゃないだろうかとすら思えた。 その事実が、一層シンジを追い詰めていく。 『逃がすな、シンジ。ここで奴を逃がせば、お前が攻撃を仕掛けたことを、他の者に 触れ回るかもしれん。そうなれば、後々不利な状況に……』 「うるさい!黙ってよ!」 苛立ちも顕に、W14を一蹴する。 いちいち悠長に説明を聞いている余裕など、今のシンジにはなかった。 橋が完全に崩壊する様を見届けていた。 (くっ、このパワー……危険すぎる!) 視線をゼルエルへと移す。初号機を追って、陸へと上がって来ていた。 マゴロクを構える。 この怪物が本格的に暴走を始めれば、大きな被害をもたらすことになる。 そうなる前に、止めなければならない。この身に代えても、なんとしても。 (だが……この子は――!) 少年の発した言葉が引っかかる。 殺し合う気はないと言った、しかし明らかな怯えを含んだあの声が。 「う……うああああああああッ!!!」 ゼルエルの右腕が、真っ直ぐに初号機へと伸ばされた。 その腕は先程までの刃ではなく、意思を持つ布のように、初号機の左腕へと絡みつく。 「くっ……!」 今も感じる。彼の拒絶の叫びの中にある、確かな恐怖を。 当たり前だ。こんな状況の中に放り込まれて、恐怖しない子供がいるものか。 そこで、鉄也は気付く。己の軽率な行動に。 (最後に彼を崖っぷちから突き落としたのは……俺か……!) 鉄也は最初に、彼に銃を向けてしまった。 相手が戦いを知らない一般人だった場合、その行為がどれほどの恐怖を与えるのか。 そんな簡単なことも気付かず、追い詰めてしまった。 「だったら……なおさらここで退くわけにはいかん!」 鉄也の不退転の決意と共に、初号機は左手に絡み付いた布を、マゴロクで断ち切った。
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298 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:19:34 ID:9/pjrcZz - 『くあっ……!』
W14の口から漏れた苦悶の声、しかしシンジはそれに気付かない。 目の前の『敵』に、押し寄せる感情の波に、気付く余裕などなかった。 「く、くそっ!」 「聞いてくれ!!俺は殺し合うつもりはない!!」 聞くな。聞いちゃダメだ。シンジは自分に言い聞かす。 「嘘だ……信じられるもんか!!」 過ちを犯す今の自分からの逃避。人を殺すことへの正当化。 そして何より―― 「そうやって、最後には僕を突き放すんだ!必要ないからって、僕を殺すんだ! 父さんやカヲル君と同じだ!最後は僕の気持ちを裏切るんだ!」 ――どうせ、アンタも奴と一緒だ!口では奇麗事を言っておきながら、いざとなったら裏切るに決まってる! 少年の発した言葉が、鉄也に攻撃を躊躇わせていた。 奇しくも、大剣のロボットのパイロットと同じ内容のことを口走っていた。 (最後には裏切る……か) 無理もない。顔を合わせたばかりの人間を頭から信じるなど、そうそうできるものではないだろう。 だが、彼らの場合は恐らくそれだけではない。 ――アンタも奴と一緒だ――いざとなったら裏切るに決まってる! ――父さんやカヲル君と同じだ――最後は僕の気持ちをを裏切るんだ! どうすれば、彼らを救える? 所詮、自分は戦闘マシーン。戦って止めることしかできない。 しかし。今、仮にこの場で少年を力ずくで止めたとして、それは根本的な解決となりえるのだろうか。 ……ノーだ。 そんな戦いを繰り返したところで……結局は、誰も救えはしない。 スレードゲルミルとの戦いの時点で、鉄也は自分の戦いの限界を薄々ながら自覚はしていた。 (父さん――か) 少年の口にした言葉が頭に残る。 『父さん』そして『カヲル君』……恐らく、友達か何かだろう。 少年の物言いから察するに、彼らに裏切りを受けた過去があるのか。 その心の傷は、今なお少年の中に残っているのだろう。 改めて、自分は恵まれていたのだと感じて。 同時に、かつて過ちを犯した自分の愚かさを恥じて。 そして。
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299 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:20:21 ID:9/pjrcZz -
「だったら……殺し合いに乗っていないことを、証明すればいいんだな」 鉄也はそう言って、賭けに出た。 それはもはや無謀を通り越して、正気とすら言えない賭けと言えるだろう。 あまりにも馬鹿げている。こんな手が通用するのは、安っぽい物語の中だけだ。 それを承知の上で、鉄也は、少年の中に残る良心を信じることを選んだ。 ここで力ずくで捩じ伏せてしまえば、少年は二度と立ち直ることができないように思えたからだ。 少年を突き動かすのは、恐怖だ。そして先程戦った少年よりも覚悟が定まっていない。 だからこそ、彼はまだ引き返せる。 証明。 その単語に、思わずシンジは手を止める。 続いて、初号機の取った行動に目を疑った。 マゴロクを地面に突き立て。 携帯するライフルの数々を、地面へと落とし。 初号機は両手を広げた。 『あの男……正気か!?』 W14が呟いたのは、当然のことだ。 あらんばかりの殺意を向けるシンジの前で、無抵抗を表明した。 それがどれほどの危険を意味するか、わからないはずがあるまい。 「何を……何をやってるんだ、あの人は……」 シンジもまた、鉄也の行動に呆然としていた。 この人は何を考えているんだ。自分の命が惜しくないのか――? 「お前に、譲れない決意と覚悟があるというなら……俺を殺し、踏み越えていくがいい」 馬鹿な。殺されてもいいというのか。なんでそうまでして僕を……助けるつもりなんだ? 「だが……もう一度考えてくれ。本当にそれでいいのかを」 「い……し……?」 違う。そう言って、僕を惑わそうとしているんだ。 そのはずだ。誰か、そうだと言って―― 『油断するな、シンジ。こちらを誘う罠かもしれん』 傍らから、肯定の意見が聞こえた。 これで、攻撃の口実が与えられ、正当化がなされた。 「うああああああああああああああッッ!!!!」 ゼルエルの左腕を刃に変えて、初号機に向け高速で伸ばす。 紫色の左腕が、宙を舞った。 初号機の左腕の付け根から、血が噴出す。
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300 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:21:01 ID:9/pjrcZz -
「ぐ……ッ!!」 「なんで!?なんで避けようとしないんだ……?」 擬似的な痛覚とはいえ、神経接続によってダメージはパイロットにも伝わるはずだ。 その痛みと辛さはよく知っている。 「おかしいじゃないか!なんでッ!」 再び左腕の刃を振るう。 今度は初号機の右脇腹を切り裂いた。同時に、そこからも噴出される鮮血。 初号機の足元が紅い色に染まる。 「……ッ!!」 「見ず知らずの相手に、なんでそこまでできるんだ!!」 「お前は似ているんだよ……昔の俺にな」 鉄也が、口を開いた。 「誰かに裏切られるのが怖いから……拒絶し、傷つけてしまう」 シンジは、それを黙って聞いていた。 「だがな……そいつに身を任せてしまえば、いずれ取り返しがつかなくなる。 自分にとって大切なものを、失ってしまうことになる」 漠然とだが、わかった。それは、鉄也自身のことを言っているのだと。 ミケーネ帝国との戦いの最終局面。 兜甲児が帰国し、兜剣造との親子の対面を果たした時、鉄也の中に蟠りが生まれた。 最初は小さかったはずのそれは徐々に肥大化し、嫉妬心として表面化していく。 兜甲児が憎かったのか。 いや、違う。 それ以上に怖かったのだ。 見捨てられることを、裏切られることを恐れていたのだ。 そんなはずはないのに。わかっていたはずなのに。 所長を、何より自分自身を信じられなかった。 その果てに――鉄也は、取り返しの付かない過ちを犯してしまった。 そしてシローに、甲児に、ジュンに、所長と関わる多くの人達に消えない悲しみを刻み込んでしまった。 目の前の少年は、父親に裏切られたと言った。 少年の過去は、今の鉄也に知る術はない。 だがその一点だけでも、自分より遥かに辛い思いをしてきたのではないかと思えた。 しかし、それだけであるはずがない。それでは、あまりにも悲しすぎる。 彼にだって、かけがえのない何かがあるはずだ。 「お前は本当にこれでいいのか?自分の心に嘘はないのか?」 鉄也は叫ぶ。 「嘘をつき続けていれば、お前はいずれ後悔することになる!」 自分と同じ後悔を踏んで欲しくないが故に。 「お前は……本当に殺し合いなど望んでいるのか!?」
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302 :代理投下 勇者と少年とアンドロイド ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/19(火) 21:21:41 ID:9/pjrcZz - ゼルエルが、シンジの感情にシンクロするかのように、膝をついた。
既にそこには殺意も戦意も存在しなかった。 「だったら……どうしろっていうんだよ!!」 響き渡るのは、半ばヒステリックな少年の声。 「好き好んで殺し合いなんてするわけないだろ…… でも!!だったら、どうしろっていうんだ!!」 そう叫んで……あとは、嗚咽だけ。 答えなんて、すぐになど出せる筈がなかった。 「ぐ……っ」 初号機もまた膝をついた。あくまで擬似的な痛覚とはいえ、深手のはずだ。 「え……あ……」 一瞬、相手の心配をしてしまう自分がいた。 さっきまで殺そうとしていた相手なのに。 これが、自分の本心だとでもいうのか。 『シンジ、今ならあの男にとどめを刺すことは造作もない。 そうすればお前に殺害数が+1され、ノルマ達成に一歩近づくことになる』 W14の冷徹な言葉が差し挟まれた。 少しは空気を読めと、シンジは内心で反発を抱く。 だが次の言葉で、決してそれだけではないことが理解できた。 『だが……言っておく。逃げ続けるだけでは、このバトルロワイアルは生き残れない』 彼女もまた、剣鉄也と同様のことを言っている。 「逃げちゃ……ダメだって言うの。自分から」 『逃げること自体を否定するつもりはない。だが物事の本質から目を逸らしたまま逃げれば、 あの男の言うように、お前はまたいつか後悔することになる』 「わからない……そんなの、すぐにわかるわけないよ」 「すぐにわかる必要なんかない。そんなもんだ」 鉄也が、悩める少年にフォローを入れた。 「すぐに見つかるようなもんじゃない。ゆっくり迷って、見つけ出せばいい。 もし見つけたそれが間違いだと思ったなら…… それを正して、また探せばいい。……俺は、そうした」 彼の戦いは、もしかしたらかつての過ちの罪滅ぼしの意味合いも含んでいるのかもしれない。 なんとなく、シンジはそんな気がした。 シンジの肩に、手が置かれた。 振り返ると、W14が微笑んでいた。 ――どうすればいいんだ、僕は。 ■
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