- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル3
210 : ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:39:47 ID:7cryq+UZ - 大作のあとで気が引けますが、投下します
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212 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:41:01 ID:7cryq+UZ - え? 俺の戦う理由だって?
……以前にもどこかの誰かさんに同じことを聞かれたっけなあ。 それと同じ結論でよければ、まっ、話してもいいけどさ。 ――俺は元々、大人の勝手な都合で始めた戦争なんか乗り気じゃなくって、 ただビーチャたちみんなと一緒にジャンク屋をしながら、その儲けで妹のリィナを山の手の学校に行かせられればそれでよかったんだ。 だけどまあ、なんだか成り行きでガンダムに乗ることになっちゃってさ。 それからはあれよあれよといつの間にか戦争をする側に回っちまってた。 だから、今はともかく最初の頃は全然そんな、人に胸張って言えるような大義名分なんて持ち合わせちゃいなかったんだ。 けど、それでも戦っていく内に見えてくるものってのは、やっぱりあるもんだよね。 戦争をやってると、以前よりもずっとこれがくだらないことだって実感するようになった。 一部の偉い人だか何だか知らないけどさ、そんな連中の勝手な都合で人が死に、地球は汚染され……宇宙だって似たようなもんさ。 そんなの、黙って見てられないじゃないの。 俺はこんなだけど、何が悪いのかっていうのは感覚的に理解できる。 一人の独善で多くの被害が出る。それだけは、絶対に許しちゃいけないんだ。 この殺し合いにしたってそうさ……あのシャドウミラーの何とかって奴ら。 あいつらが何の目的でこんなことを始めたのかは知らないよ。知りたくもない。 ただどうせ、またあいつらの勝手な都合なんだろうね。 だから俺はそれを止める。これは俺だけじゃなくて、こんな馬鹿げたものに巻き込まれたみんなの意思ってやつさ。 ◆ ライディーンの右手の甲が変形し、左右から翼、次いで中心部から刃が飛び出す。 あのガトーとの戦いのあとで町に滞在している間に、あらためてこのライディーンにどんな武器があるのか確認してみるとこれが予想以上に多彩なものだった。 先ほど向こうから不意打ちを食らって多少機体にダメージはあるものの、これだけの武器があるならばそう簡単にやられはしない。 これはその多くの武器の内の一つだ。 鳥のようにも見えるその赤い羽を、ジュドーは前方にいる敵目掛けて勢いよく投げつけた。 「ゴッドブーメラン! ……ってね!」 それは大きく弧を描いて目標から一旦逸れて旋回すると、奴の背後から猛烈に勢いを増して襲い掛かってゆく。 ブーメランの形状をしている以上、こちらに戻ってくるのは承知済みだ。それは当然向こうも同じだろう。 だが、こちらの狙いは攻撃ではなくあくまで牽制だ。 牽制とはいっても、このライディーンの武器の威力ならそれ一つ一つが必殺に繋がりかねない。 よって軽々しく無視はできず、相手の注意が一瞬ゴッドブーメランの軌道を読むことに向けられた。 その思考の隙間が狙い目だ。ジュドーは無手のままライディーンを急加速させる。
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214 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:42:18 ID:7cryq+UZ - 「むっ!?」
こちらの動きに気づいたのか、向こうの獅子を象ったマシンはゴッドブーメランとライディーン、双方から逃れんと上空へ飛び上がる。 案の定ブーメランは相手の下方を通過し、その役割を果たせぬままライディーンの腕に戻ってきて再び装着される。 だが避けられることくらいこっちだって読んでいる。ついでにいえば、どの方向に避けるかも含めた上でだ。 ライディーンもまた相手の動きに合わせて急上昇し、その両の手を開くと相手のそれに合わせ、力任せに握り締めた。 向こうの両手は獣の形をしているため、まるでそれの首根っこを掴んでいるかのようだ。 ライディーンと獅子のマシン……ゴライオンは互いに顔がぶつかり合いそうなほどの至近距離で、万歳のポーズをとったまま動きを止める。 単純な馬力勝負ならそうそう負けはしないはずだ……と踏んでいたのだが、ゴライオンはジュドーの予想をはるかに超えたパワーで逆にこちらを圧倒してきた。 「ふんっ……このゴライオンと!」 一旦掴まれたままの両腕を下げると、そこから勢いよく振り上げる。 瞬間、火花が走ると同時にゴライオンはライディーンの拘束をいとも簡単に破ってみせた。 「レーベン・ゲネラールを!」 間を置かずに自由になった両腕の獅子の牙を、間抜けな格好で動きを止めているライディーンの腕に逆に食い込ませ、 「舐めるなアァアアァァアアアッッッ!」 大気を震わす咆哮と共に、そのまま噛み砕かんと顎に込める力を右脳に任せるままに全開まで上昇させた。 ゴライオンの出力はなんと六百万馬力。 この不思議な空間内で大幅に力が削がれているとはいえ、それでも元々八十万馬力が限界のライディーンとでは根本的にパワーが違う。 嫌な音がしながら腕が次第にひしゃげていくのを、ジュドーは冷や汗を流しながら感じていた。 どうにか外そうにも向こうの牙がぎっちりと食い込んでいるためにそれもままならない。 このままではあと数秒もしない内に確実に使い物にならなくなってしまうのが目に見えていた。 だが、そこでジュドーはにやりと口元を緩ませる。 向こうの力が予想以上ではあったものの、それでもここまでは予定通りだ。 こっちは一瞬でも相手の動きを止めることができればそれでいいのだから。
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216 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:43:52 ID:7cryq+UZ - 「今だ、ディアッカ!」
直後、ゴライオンとライディーンの真下にある新雪が盛り上がり、中から黒い巨体が現出する。 言うまでもなくディアッカの搭乗機、ステルバーだ。 あらかじめ身を隠しておいて、ジュドーがポイントの位置まで敵を誘導するという作戦だったのだがこれが功を奏した形となる。 ディアッカはジュドーの声に応えるようにして、決して命中精度の高いとはいえない銃を構える。 ここからの位置では、下手するとジュドーにも当ててしまうかもしれない。 これがライフルだったらまた話は別なのだが、残念ながらこのステルバーにはそのようなものは備わっていなかった。 だがそれでも、ここはやらなければならない。コーディネイターは伊達じゃないってところを見せる時だ。 どこかでスナイパー専用機を見つけたら絶対に乗り換えてやると心に誓いながら、ディアッカは叫ぶ。 「グゥレイト! 初弾は絶対にお前には当てないから、その間に上手く逃げろよジュドー!」 この銃はマシンガン。当然これだけではあのライオン型マシンの装甲を貫くことは難しいだろう。 だからこそ、銃の引き金を引く直前にステルバーの全砲門を解放。 ガトー相手の時はこちらに注意を引かせるだけでよかったが、今回は出し惜しみなしだ。 「釣りはいらねえよ……全部持ってきな!」 驚異的といえる集中力をもって一瞬の瞬きすらせずに狙いをライオンロボへと定めると、ディアッカは全ての射出武器を解き放った。 ◆ ん? それはこの殺し合いとやらをケースに置いた場合の話かい? だったら話は簡単だ。生き残るためだよ。 そのためならたとえ相手がナチュラルだろうが一時的になら手を組むし、脱出が無理そうならその手を組んだ相手をこの手で殺しもするさ。 ……あーわかってるわかってる。あんたの言いたいことはわかってる。 そりゃ俺だって好き好んでこんなことやるわけじゃねえさ。 だがな、結局のところ人間なんてのはそういうもんじゃないのか? こんな早い段階で自分以外の参加者を皆殺しにしようなんて積極的に動く奴はよほどの馬鹿だ。 そんな目立つ真似してりゃあ、いずれ力尽きるか誰かに殺されるのがオチさ。 やるならよっぽどのチャンスにめぐり合うか、誰にもばれないようにこっそりとってな。 かといってこの場所から脱出できるなんて盲目的に信じる奴もまた馬鹿だな。もしくは現実から逃避しているだけか? いやいや実は全ての人を救えると本気で信じる聖者様かもな。 けど生憎と、俺はその領域にまではとてもたどり着けそうにないんでね……あくまで俺は優先順位を揺るがすつもりはないって話さ。 はっきりここで言っとくと、俺は死にたくない。それは当然、他の連中もみんなそうだろうさ。 さっき俺が言った奴らだって、まず自分が助かることを前提として、それに他の参加者を付随させるかさせないかって違いでしかない。だろ? そこらへんの認識をごまかしてる奴もいるけどな。今俺と一緒にいるジュドーみたいな……さ。 そこいくと俺はどっちでもいい。第一優先順位は俺の命。あとは何だっていいさ。 助かる奴は助かればいいし、無理ならその場で死んでいけばいい。 無理強いはしねえよ。本当に脱出が無理って決まったとき以外はな。 ……ああ、わかってる。 もしかしたら、俺もただ選択する度胸がないだけで本当は迷ってるのかもな。 ま、それならそれでもいい。俺はただ、一貫として人間であり続けるだけだ。
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217 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:45:48 ID:7cryq+UZ - ◆
時間は少し遡る。 あのヴァンとかいういちいちこちらを苛立たせる言動の男との戦いを終え、その際に損傷した十王剣を修理できるものはないかと レーベンは操縦を一旦止めて雪原に降り立ち、側にあった岩場の影に隠れたまま地図を眺めていた。 ついでに先ほどの戦闘で出た汗によって乱れかけた戦化粧をあらためて整えなおす。 やはりこれはいい。身が引き締まる思いだ。 さて、現在の機体の状況だが十王剣の損傷こそ激しいものの、それ以外は今のところ良好だ。 このままでも十分に戦えるだろう、が――やはり決め手に欠けるというのも事実だ。 これから全ての参加者を相手にしなければならないのに、こんな序盤から必殺武器を失っては苦戦を強いられることは必至だろう。 いざとなればこのゴライオン自体から別の機体へ乗り換えることも考慮に入れねばなるまい。 地図によるとすぐ近くに町があるが、そこではとても修理など望めないだろう。目指すなら基地か。 ここからだとG-5からG-6にかけて存在するやつが近い。 「いや、だが待て……」 ふと考え付いて、レーベンはもう一度地図を凝視する。 可能性としては低いが、町に住民が住んでいるかもしれない。 ジ・エーデル・ベルナルという名についての情報を収集するならば一度立ち寄って聞き込みをするという手もある。 どちらにせよ、基地の進行上に町はあるのだ。上空から町の様子を観察する程度ならばさして時間も取るまい。 そう思い立つと、レーベンはひとまず町へ向かおうとあらためてゴライオンの操縦を再開し、空中へと飛び立った。 ――そんな時だ。他の機体と鉢合わせてしまったのは。 「俺はジュドー、よろしく!」 開口一番に、ゴライオンと比較してそこそこ大きい機体に乗っている男は気軽にそう自己紹介してきた。 能天気そうな声だ。それがまたこっちの神経を逆撫でしてくる。ああ、エーデル准将のあの美しくて気高い御声が恋しい。 ……だが、その軽い調子とは裏腹に警戒度はそれなりに高い。 一定の距離を保ったまま、決してこっちの間合いに入ろうとはしていない。どうやら素人というわけでもないらしい。 加えて、一見したところそれなりに戦えそうな機体に乗っている。 今すぐ戦ってもいいのだが、このままでは苦戦を強いられる可能性が高い。 仕方ない……と、レーベンは内心で深く嘆息すると、かつて被っていた仮面を今一度装着する。
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219 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:47:03 ID:7cryq+UZ - 「私はレーベン・ゲネラールといいます……申し訳ありませんが、あなた方はこの殺し合いに乗っていられるのでしょうか」
この口調も久しぶりなので顔面の筋肉が引きつくのがわかった。 まあ、互いに顔は見えないのでそれは大した問題でもないが。 我が友、シュランよ許せ。心のままに生きると誓いながらこのザマだが、それも一時的なことだ。 またすぐにお前の望む俺に戻る……それまで我慢してくれ。全てはエーデル准将のためだ。 対してジュドーと名乗った男は即座に否定してきた。 「いいや! 俺はね、こんな最低なことをやらせるあいつらを倒すつもりだよ。あんたもそうかい?」 そんなことはわかっている。貴様のような奴は当然そうだろうよ。 エーデル准将やシュランの他は全て虫ケラ同然と思っているが、こういう奴はその中でも特に虫唾が走るほどに嫌いなタイプだ。 偽善に満ち溢れていて、しかも本人はそのことに気づかずに正義面だ。本当の正義とはエーデル准将のような方の下にこそ存在するというのに。 まあ別に今はどちらでも構わんがな。どのような性格にせよ、こっちはただ貴様らを狩るだけなのだから。 「それを聞いてほっとしました……私はレーベン・ゲネラール。 あなたと同じく、この悪趣味な催しに怒りを覚えるものの一人です。 こんなことは即座にやめさせて、あのシャドウ・ミラーなる連中に鉄槌を下さなければなりません!」 やや大仰な演技をすると、向こうの張り詰めた空気が多少緩和したのが伝わってきた。 素人ではないとしても、やはり単純馬鹿だ。こういう奴らの相手は実にやりやすくて助かる。 さて、ここからが本題だ。 この応答次第で、この男の寿命が決まる。 「……ところで、あなたがたはジ・エーデル・ベルナルという者について何かご存知でしょうか」 「ジ・エーデル? 知らないなあ。それならそっちもガトーって男のことを――」 有益情報なし。役立たず。用なし。クズ。 ならばもう仮面を被る必要はない。 一瞬でアクセルをフルドライブまで急上昇させると、レーベンは無防備な獲物に向けて猛烈な勢いで突進を開始した。 「ならば今すぐここでエーデル准将のための屍となるがいい!」
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221 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:48:50 ID:7cryq+UZ - ◆
戦う理由だと!? それは当然エーデル准将のために決まっているだろう! エーデル准将こそが正義! 正義こそがエーデル准将! ならば俺はその剣となって全てを屠る! 故にこの場においてやることは一つ! 皆殺しだ! しかしもしジ・エーデル・ベルナルという名を持つ者がエーデル准将ご自身だったとするならば、俺は全ての参加者を殺したあとに自ら喜んで命を絶とう! 俺の命がエーデル准将の礎の一つとなるならば、それは何とも身に余る光栄だとは思わんか! これほどの幸福は他にはあるまい! その光景を想像するだけで、おお――まるで天から光が俺に注いできたかのような心地に包まれるではないか! ああ、エーデル准将……! 貴女こそこの堕落しきった絶望の世界における唯一の女神です! エーデル准将! エーデル准将オオオオオオオオオオオ!! …………。 だが……もしそれがエーデル准将ではなくまったくの別人だとするならば。 楽には殺さんぞ! 機体からパイロットを引きずり出した後、この世の人間が思いつく限りの苦しみを味わわせてやる! 泣き喚け! 命乞いをするがいい! だが発狂は許さん! 壮絶な苦しみを! 凄烈な痛みを! 全て貴様に叩き込むまでは絶対に魂を解放したりなどはせんぞ! 貴様はこの世に生まれてきたことを後悔し、次に人間に生まれ変わることすら拒否するほどの刻印を刻まれた上で死んでいくのだ! エーデル准将の名を騙るというのはそれほど重い罪なのだということを知るがいい! ……ん? なんだもういいのか? まだまだ語るべきことはたくさんあるというのに遠慮せずともいいのだぞ? おい! ◆ ……そこから不意打ちで突撃を食らわせると、ジュドーとかいう男の乗る巨人は敢え無く後方の雪山へ吹っ飛んだ。 出来としては六十点といったところか。一撃で決めるつもりだったが、ぎりぎりでガードされていたらしい。 動きを多少鈍らせることには成功したようだが、それだけだ。 戦闘そのものに支障をきたすほどのダメージを与えているとは言い難い。 やはりもっと警戒度を下げておくべきだったかと歯軋りするが、悔やんでも仕方ないと思い直した。 ならば正面から正々堂々と殺すだけだ。このゴライオンならば容易いこと。 そして戦闘を開始したのだが、戦っている内に向こうはこちらの両腕を掴むなどという身の程知らずな行為をしてきた。 だが、その程度の力で敵うはずもあるまいとレーベンはほくそ笑む。 逆に噛み千切ってやろうと相手の両腕に牙を突き立ててやったが、そこで初めてこの男の目的に気づく。 真下を見れば、そこにはもう一体の黒い機体。 一瞬漁夫の利を狙った第三の敵かと思ったが、よく見るとその砲身の先は確実にこちらだけを捉えていた。 となれば答えは明らか。あらかじめ、こいつらは手を組んでいたのだ。
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223 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:51:03 ID:7cryq+UZ - 「ぐっ!? 貴様ら……!」
舐めていた。ただの単純馬鹿だと思っていた。 こうなってみて思い返せば、ジュドーが警戒度を下げていたのもこちらに敵意があるのか試したのだろう。 味方ならそれも良し、わざと隙を見せることでそこにこっちが踏み込んできたら、自身が囮となる形でこの作戦を実行する腹だったに違いない。 アラートが脳内に鳴り響く。この感覚は危険だ、避けなければならない。 しかし先ほど食い込ませた牙が仇となり、引き抜くのに時間がかかる。これでは間に合わない! 「釣りはいらねえよ……全部持ってきな!」 黒い機体からマシンガンの弾と無数のミサイルが放たれた。 いくらゴライオンの装甲といえど、全弾食らえばただでは済むまい。 こんなところで、エーデル准将のために何もできないままに、あのヴァンに借りを返す前に死ぬというのか。 「ふざけるなああああっ!」 「……!? な、なんだぁ!?」 ジュドーはゴライオンの右足に位置する獅子の喉奥から一発分のミサイルが顔を出したのを見た。 だが、それをどうしようというのか。ディアッカに向けて撃つにしてもそれより早く向こうの攻撃がそっちに着弾するに決まっている。 ならば自分に向けて撃つつもりか。だがこれほどの至近距離なら、当たれば向こうだってタダで済むはずが…… 「フットミサイルウウウウウ!」 瞬間、下方から轟音がしたかと思うとライディーンに凄まじい衝撃が走った。 内臓が潰れそうなほどのGがジュドーの全身にかかり、そのまま後ろへと弾き飛ばされる。 「……うっそ!?」 ここに至り、ジュドーはレーベンが何をしたのか理解する。 奴はまさにその至近距離でミサイルを撃つことで爆発を巻き起こし、その反動で後方へ一瞬にして跳んだのだ。 案の定さっきまで奴のいた場所をたくさんのミサイルが通過していき、そのまま消えていくのが見えた。 この爆発だ。損傷は免れないだろうが、それでも致命傷は避けてみせたのだ。 自分が言うのもなんだが、なんとまあ無茶な戦法をするものだ。もしこの場を生き延びられたら、以降の参考にさせてもらおう。 なんとか雪上に着地してライディーンの損傷度を確かめる。 戦闘はまだ続行できる。が、下半身の左半分をやられてバランス維持が難しい。 さらに先ほどのGによって脳に負担がかかったせいか、目の前が少し歪んでいる。 操作に慣れていないとはいえ、ガトー、そしてこのレーベンという男にもまたここまでやられるとは、情けない話だ。
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226 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:53:28 ID:7cryq+UZ - 「おいジュドー! 平気か!?」
ディアッカが通信で話しかけてきた。 こちらの無事を伝えると、ミサイルが何発か当たったもののほとんど避けられて、仕留め損ねてしまったことを悔しげに報告される。 「向こうも無傷ってわけでもないようだが……こっちはほとんど撃ち尽くしたってのにあれくらいの被害じゃ割りに合わねえぜ」 見ると、ゴライオンもまた被害は軽くないもののまだ戦う余力は十分残っている。 地上に降り立ち、一歩一歩雪原を踏みしめながらこちらを威圧するように歩いてきていた。 「ふふふ……ははははは! さすがこのゴライオンもまた獅子の名を象った機体だな! これこそが我らの本領よ! 貴様らにとっては強大すぎるゴライオンの一パーセントの力を、この俺のさらに強大なエーデル准将への愛が九十九パーセントで補う! 最初から貴様ら徒党を組むような軟弱な虫ケラでは相手になるはずもなかったのだ!」 わけのわからないことを意気揚々と宣言しながら、その足は止まらずどんどん近寄ってくる。 極度の興奮状態にあると見えるが、戦意はまったく衰えていない。まったく大した執念だ。 ディアッカは弾薬をほぼ撃ち尽くしてしまったために残るは予備しかなく、どこまで戦えるか心許ない。 (なら、自分でやるしかないでしょ……!) 馬力の差は先ほど拝んだばかりだが、それでも負けるわけにはいかないのだ。 この世界にはプルやプルツーがいる。顔は知らないが、他に似たような参加者だって。 ここで自分が死ぬことで救えるかもしれない命が消えていくのかと思うと、ジュドーの内側からレーベンのそれとは異なった闘志がわき出てくる。 無言でジュドーは右手の甲から長い刃を飛び出させ、構えた。 接近戦に特化したライディーンの武器の一つ、ゴッドブレイカーだ。 向こうだって無傷ではないのだから、こちらに勝機は十分にあるはず…… 「…………?」 そこで、ジュドーはゴライオンの足が突然止まったことに疑問を持った。 近接戦闘ではなくミサイルなどの遠距離からの攻撃に切り替えたのだろうか、と思ったがそういう様子でもない。 ただじっと、こちらを見ているだけだ。何をするでもなく、無防備なままで。 少し離れた場所にいるディアッカも同じことを感じたらしい。怪訝そうにレーベンの様子を窺っている。 「……ちょっと、もしもーし?」 「…………」 試しに呼びかけてみるが反応がない。 コックピットの中で心臓発作でも起こして倒れているのではないかと馬鹿な考えが一瞬頭をよぎる。 よく見てみればゴライオンはこっちを見ているわけではないらしい。 正確には自分の向こうにある上空を見上げている。まるで自分たちがこの場に存在していないかのように。 実際、現時点での彼の中ではそんなものなのかもしれないが。 敵を前にして後ろを振り向くのには意外と度胸がいったが、ジュドーは意を決して何があるのか確認するために機体を動かして、自分の後方に広がる空を見上げた。
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227 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:55:10 ID:7cryq+UZ - 「……女……」
ぽつりと、レーベンの漏れた声が聞こえた。 それが何を意味しているかはすぐに知れた。空に小さな機影が見える。 こちらに気づいているのかいないのか、次第に近寄ってきているようだ、 カメラを操作してズームしてみると、それは機体というよりむしろ…… 「女……!」 そう、あれは紛れもなく女の子だ。 このライディーンや向こうのゴライオンもMSなどに比べたら大分人の顔に近い形をしているが、今見えるあれはその比じゃない。 ピンク色の髪の毛、肌の張りから造詣、身体各部の艶かしいライン、何もかもが女の子のそれそのものなのだ。 もしかしたらロボットなどではなく、何かの間違いが起きて巨大化した普通の人なんじゃなかろうか。 「女アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 「!?」 その時、レーベンの魂の奥底から憎しみに彩られた感情が迸った。 大気が振動し、天まで突き抜けるその叫び声に驚いてジュドーが振り向くと、その時には既にゴライオンは加速を開始して一瞬でライディーンの横を通り過ぎる。 「な、なんだあ?」 呆気に取られる二人を置いて、レーベンを乗せたゴライオンは一直線に空中の女の子向かって飛んでいく。 その他には何も目に映らない。 思考から色々な雑念が漏れ出てゆき、最後に彼の女性そのものに対する深い憎悪の念だけが残る。 今この瞬間だけ、レーベンはシュランのことも、エーデル准将のことも忘れてしまっていた。 ◆ ああ? 戦う理由だと? それは前回散々語ったからそっちを参照してくれ! て、ていうかだな! 今は何か知らんが猛烈な勢いでこっちに襲い掛かってきた奴の相手しなきゃならんのだ! だから邪魔をするな頼むから!
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230 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:56:26 ID:7cryq+UZ - ◆
「お、おいこらちょっと待て! いきなりお前は何だ! 私はそこまで人に憎まれる覚えは……ないことはないが……い、いやしかしだな!?」 「死ねええええええええええええ!!」 見るからに女の子の形をした機体、ヴァルシオーネに乗っている男……イスペイルは困惑していた。 あれからとりあえずA-1にある基地を目指そうと順風満帆に機体を発進させたところ、いきなり身に覚えのない奴から強烈な憎しみをもって襲われたのだ。 あまりに突然のことで、こっちの戦闘準備もまだ完了していない。故に、今はただ向こうの攻撃を避けるしかない。 大体まだジョーカーとしてこの地に降り立ってから間もないというのに、こんな風に恨まれる筋合いはないはずだ。 まだ誰も殺していないし、それ以前にこの場で他人と遭遇したのはこの男……叫び声から察するに男だろう……が初めてなのだ。 最初からこの殺し合いに乗った殺戮者だというなら話はわかるが、こいつは明らかにこっちに憎悪の念で攻撃を仕掛けている。 正直、誰かと勘違いしちゃいないだろうかと思わざるを得なかった。 「落ち着け! 話し合おう! 話し合いというのは我ら知的生命体に与えられた崇高な財産というべき……」 「死ね、死ね、死ぃぃぃぃねえええええええええ!!」 作られた存在であるイスペイルが知的交流を要求し、れっきとした人間であるはずのレーベンが闘争本能に身を任せる。 それはなんとも皮肉で滑稽な姿だった。 ◆ 放置されてしまった形となったジュドーとディアッカは、戸惑いながらもひとまず窮地を脱したことに胸を撫で下ろしていた。 ライディーンはなんとか動けるもののやはり損傷は軽くはなく、今後に不安を抱かずにはいられない。 そして一方のステルバーの弾薬はほぼなくなっていて、あと一度戦闘をすれば完全に空となってしまうだろう。 あのままレーベンとの戦闘を続行していれば、負けることはなくても共にボロボロになる可能性が高かった。 消耗するだけで得るもののなかった戦いだが、それでも今はこの場を生き延びれただけでも良しとしなければならないのかもしれない。 「とりあえず、弾薬を補給しなきゃな」 遠くの空で戦闘を繰り広げてる二人を眺めながら、ディアッカは次の目的地にG-6を提案した。 見ればそこは軍事基地。 基地というからにはミサイルの一つくらい置いてあるだろうし、うまくいけばもっといい武器だって手に入るかもしれない。 問題は既に他の誰かに奪われている可能性だが……まあそれについては到着してから考えよう。 「しっかし何だったんだろうね、あれ」 ライディーンの機体バランスの調整をしようとレバーを動かしながら、ジュドーは素朴な疑問を発した。 あのレーベンの、女性型の機体に対する反応は常軌を逸していた。 たしかにあの奇抜な格好にはジュドーも驚きはしたものの、嫌悪感などは一切湧き上がるはずもない。 こっちの戦闘を中断してまで優先させるほどのあの憎しみは、正直こちらの背筋を寒くさせるものがあった。 「さあてな。おおかたよっぽど女にモテなかったんだろうよ」 ディアッカのほうはあっさりとその件については流すと、向こうの戦闘から目を離してジュドーに向き直った。 とてもじゃないが現在の状況はとても楽観できたものじゃない。 気を抜いていたわけじゃないが、ここからはより一層慎重にならなければならないだろう。 まだこのジュドーと別れる場面でもないが、いざとなったら見捨てることも選択肢に入れたほうがいいかもしれない。 「ほら、行くぜ」 そんなことを内心で思いつつ決して表には出さずに、ディアッカはジュドーを促そうと先導して空中へ飛び立った。
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233 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:58:22 ID:7cryq+UZ - ◆
ラダム ◆
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236 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:59:14 ID:7cryq+UZ - 「!?」
瞬間、あたりが光に包まれたかと思うとディアッカは凄まじい衝撃に見舞われた。 何が起こったのか理解できないままに、光の発する膨大な熱量にステルバーの装甲が次第に溶かされてゆく。 このステルバーは決して防御面に優れた機体とはいえないが、かといってそんじょそこらの機体とでは比べ物にならないくらいの装甲を持っているはずだ。 だがその言葉が虚しく感じられるほどに、ただただその光の威力は圧倒的だった。 「ディアッカ……」 その光景を、ジュドーは呆然としたまま見上げていた。 ディアッカに続いて自分も飛び上がろうとしたその刹那、空中に爆発的な威力と規模を持ったエネルギー波がどこからか放たれたのだ。 その余波は地上の雪を一瞬で蒸発させ、中の地面を露出させて歪で巨大な一本の線を作り上げている。 自分は寸前で免れたものの、ディアッカはまともにそれを全身に浴びてしまったのだ。 「ディアッカ!」 我に還り、ジュドーは仲間に向かって必死の思いで叫ぶ。 やがて光が収まりくらんだ目が慣れてくると、先ほどまでそこにいたはずのステルバーの姿がどこにもない。 まさか跡形もなく蒸発したというわけでもないだろう。それこそハイメガキャノンほどの威力でもなければ。 慌てて辺りを見回すと、ここから随分と離れた場所、白い雪山の側面に黒い色がぽつりと見えた。 まさか、あんな場所まで飛ばされたというのか。 ディアッカの生死は不明だが、この現状だけであの光熱波がとんでもない代物だということがよくわかる。 信じられない心地でそれが放たれた元となる方向を見上げると、そこには豆粒ほどの大きさ……いや、これはライディーンの大きさと比較すればの話だ。 現実には人間大ほどの身の丈をした、パワードスーツに身を包んだ男が空中を飛んだまま悠然と静止していた。 「思いの外頑丈なラダムだ……まだ原型を保っていられるとは」 ブラスターテッカマンブレード。 全ての理性を闘志と憎悪に費やした破壊の権化が、そこにいた。 【イスペイル 搭乗機体:ヴァルシオーネR(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL) パイロット状況:混乱 機体状況:良好 現在位置:C-7 第一行動方針:戦うにしろ話し合うにしろ逃げるにしろ、とにかくこの場を乗り切る 第二行動方針:まずは生存する為にノルマ(ノーマル、アナザー、どちらでも可)を果たす 第三行動方針:出来れば乗り換える機体が欲しい 最終行動目標:自身の生還 備考:首輪の爆破解除条件(アナザー)に気付きました】
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237 :命題『貴方の戦う理由は何ですか?』 ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 02:59:55 ID:7cryq+UZ - 【レーベン・ゲネラール 搭乗機体:ゴライオン(百獣王ゴライオン)
パイロット状況:ブチギレ(戦化粧済み) 機体状況:左腕にひび、右足一部破損、動力低下、十王剣(全体に傷あり) 現在位置:C-7 最終行動方針:女アアアアア死ねえええええええええ!! 【Dボゥイ 支給機体:なし パイロット状況:疲労(小) 思考能力回復 支給品入りのバッグ紛失 機体状況:- 現在位置:C-6 第1行動方針:参加者(=ラダム)を殲滅する。手段は問わない 第2行動方針:テッカマンは優先して殺す 最終行動方針:ラダムを殲滅する 備考:自分以外の動く全ての物がラダムに見えるように改造されています。 家族の顔など、自分自身の細かい記憶は全て失っているようです。】 【ジュドー・アーシタ ライディーン(勇者ライディーン)】 パイロット状況:緊張状態 機体状況:左足動かず、装甲ダメージ中、動力低下 現在位置:C-6 第一行動目標:逃げることも視野に入れた上で目の前の敵に対処 第二行動目標:ディアッカの生存確認 第三行動目標:プル、プルツーと合流、二人を守る 第四行動目標:ガトーを倒す 最終行動目標:殺し合いの打倒 【ディアッカ・エルスマン ステルバー(真!ゲッターロボ〜世界最後の日〜)】 パイロット状況:…………(気絶中) 機体状況:非グゥレイト 大破(なんとか動ける)、弾薬ほぼ撃ち尽くし、予備弾薬少量 現在位置:D-6 雪山の傾斜 第一行動目標:当面殺し合いには乗らない 第二行動目標:脱出が無理と判断した場合、頃合を見て殺し合いに乗る 【08:10】
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240 : ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 03:01:35 ID:7cryq+UZ - 支援ありがとうございました
レーベンが二回自己紹介してらあ……あとで修正しときます
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247 : ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 17:16:31 ID:7cryq+UZ - みなさま感想ありがとうございます
>>245 本来永続的にブラスター化できるはずだったのですから、 気絶しそうになってたのはボルテッカランサーを放ったことも原因の一つでしょうが どちらかというとウンブラの精神攻撃との併せ技で効いてたんじゃないかと思ってます それで、前回の状態表を見ると疲労度は中だったので ガス欠ってほどでもないかと判断し、7:30から8:10の間の40分間の内に その疲労もある程度は回復しただろうと見越した上での内容でした
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252 : ◆VI1alFlf1E [sage]:2010/01/17(日) 20:45:50 ID:7cryq+UZ - >>250
正直疲労に関しては考えてはいましたが空腹については抜け落ちてました。 その解釈でも結構ですが、 別に空腹だからといってボルテッカが撃てないというわけでもないですし、 ロワが始まってまだ二時間程度ですのでラダム打倒に燃えてるDの字も その怒りで現時点ではさして空腹感を感じていないということで。
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