- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
477 : ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:51:33 ID:BffyALmC - 投下&代理投下乙ー
ハイパームラマサ斬りは夢に終わったか・・・ 三重バリアってやばすぎだろw えー、他の方が投下されてすぐで申し訳ないのですが、明日時間が取れるかどうかわからないので今投下します
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479 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:55:53 ID:BffyALmC - 「なんだ、あれ」
ガラクタと見紛うばかりのポンコツロボ・ボスボロットの中で呟く、ツワブキ・ダイヤ。 その視線は荒野のド真ん中で派手に転倒した巨大な黒いロボに向けられている。 大きい……何というかそう、大きいとしか表現できない、そんなロボだった。 ダイヤの愛機であるガイキングも70mと相当に大きいのだが、あのロボットはそれどころではない。優にガイキングの三倍近くある。 その巨体から連想されるパワーは、おそらくダイヤが知る最強の力――ガイキング・ザ・グレートと同等かそれ以上のはずだ。 戦って勝てる訳がない。というかボスボロットでは戦いにすらなりはしない。 なのに何故、ダイヤはひたすらに呆然とそれを見ているだけなのかと言うと…… 「あ、また転んだ」 そういう訳であった。 「う、うう……?」 「あ、気がついた?」 それから少し経って。 ダイヤが数えただけでも六度目だろうか。 巨体が転倒する衝撃は凄まじく地響きとなって現れる。だからだろうか、眠っていた少女がここにきて目を覚ました。 ダイヤもここを離れるべきかどうか迷っていたが、どうにもあのロボットには戦闘に不慣れなものが乗っている気がして決心がつかないでいたのだ。 「あ……え? あなたは……?」 「俺はツワブキ・ダイヤ! ダイヤって呼んでくれ! 君の名前は何て言うの?」 「え……と、イルイ、です」 「そっか、よろしくイルイ!」 快活な表情で握手を求めるダイヤ。その明け透けな態度に、人見知りする性格のイルイも何となく警戒を解かされる。 歳が近いこともあり、ダイヤもまた男の子としてイルイを守らねばならないという使命感に燃える。 イルイの目が七度目の転倒を迎えた巨大ロボに向いた。 「あの……ダイヤ、あれは……?」 「うーん……よくわかんないんだよね。危ない感じはしなさそうだけど」 イルイから見ても、200m近いロボが立っては転びまた立ってを繰り返す様は異常なようだ。 「どうすっかなぁ。音を聞き付けて誰か来るかもしれない。あんなでかくてもまともに動けないんじゃ、襲われたらひとたまりもないぞ」 「話しかけてみるのは……ダメ?」 「ダメじゃないけど。うーん……そうだ、これを使おう!」 思いついて、ダイヤは腕時計型のコントローラーに向かって(ノリで)叫んだ。 「ロボ! あいつをやっつけろ!」 「や、やっつけちゃダメー!」 「あ、いけね。ロボ、違う! 待て、ストップ!」 でもジャイアントロボは迅速に命令を実行していた。 二人の見ている前でジャイアントロボは指先からミサイルを垂れ流し、立ち上がろうとしていた巨大ロボを八度、地に伏せさせた。 そしてそれきり、動かなくなる。 「…………ダイヤ?」 「…………ごめん」 かなり怒ってるらしいイルイの低い声にビビりつつ。ダイヤはボスボロットを走らせた。
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481 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:56:39 ID:BffyALmC - ◆
「ごめんなさい! すいませんでした! もうしません! 俺が悪かったです! 反省してます!」 「あの、もういいから。私もケガは……あちこち痛いけど。おでこ打ったけど。とにかくケガはしてないから。 ええ、と っ て も 痛 か っ た け ど 、特に気にしてないから」 「うう……ごめんなさい……」 ボスボロットのコクピット。 ちゃぶ台やら炊飯器やら、やたら生活設備が整っているというか普通に家じゃないかとかそんな感じのするでもとにかくコクピットで、ダイヤはひたすら謝っていた。 相手はイルイではなく、巨大ロボから引っ張り出した女性、テレサ・テスタロッサ――通称テッサだ。 イルイがトコトコとコーヒーを淹れてちゃぶ台に持ってくる。 「あの、これどうぞ」 「あ、ありがとうございます……ございます? なんか敬語使うのも変ですね。ありがとう、イルイちゃん」 「いえ……」 ダイヤに向けていた氷点下の視線が、イルイからコーヒーを受け取った瞬間に女神のような優しいものに変わる。 微笑みかけられたイルイもまた、花が咲いた様な笑顔を見せた。 「あの……俺の分は?」 「ダイヤにはないよ。ちゃんと反省しなきゃ」 「あうう……」 ジャイアントロボの攻撃により気絶したテッサはコクピットに侵入してきたダイヤに軽々と抱き上げられ、ボスボロットまで運ばれた。 すぐに気がついた彼女は見知らぬ場所に戸惑ったものの、明らかに自分より年下の子どもが二人いると悟ると取り乱すこともなく、 「あなたたち、ここは危険です! 早く逃げて!」 そう言った。彼女的には気絶する前何者かに攻撃されたのだから当然と言えば当然だが。 で、イルイが無言でダイヤを睨み、ダイヤがものすごい勢いで謝り出して…… 「イルイちゃん、もういいんですよ。ダイヤ君も 多 少 は 軽率なところがあったとはいえ、この状況では仕方ないことです。 私 さ え 我 慢 す れ ば いいことなんですから。ね、ダイヤ君?」 「うう……! すみませんでしたあ! だからもう許してくれよー!」 泣き出さんばかりのダイヤの顔をこれまた冷たく睨み、ふうと一息つくテッサ。 これだけ注意しておけばもういいだろう。少しは溜飲も下がったことだし…… それに何より、テッサがあの機体を扱うことは不可能だと分かった。運動神経などないに等しい自分が扱うには、ガンバスターは敏感すぎる。 過程に問題があるとはいえ、機体から降ろしてくれたことには本気で感謝していた。あのままでは身動きすら取れなかったのだから。 落ち着いたところでテッサは年長者として子どもたちに色々話を聞くことにする。 自己紹介を終え、ダイヤとイルイの元いた場所などを聞いていくうちにテッサは驚愕した。 「ダリウス界、ガイキング、大空魔竜、エアロゲイター、αナンバーズ……どれも聞いたことがないですね」 「俺だってそうだよ! 宇宙から侵略者が来たとか、星が落っこちて来たとか……そんなことがあれば絶対知ってるはずだよ」 「わ、私……嘘ついてないよ?」 「ああ、いえ。イルイちゃんたちを疑っている訳ではないんです。ただ、そう……少し、情報を整理してみましょうか」 この三人の中では必然、考える担当はテッサだ。 地球連邦の特殊部隊、シャドウミラー。 常識を越えた性能、いまだ実現不可能なはずの技術が雨霰と詰め込まれた超絶のスーパーロボット、ガンバスター。 ゲームや物語のような歴史を語るダイヤとイルイ。 70名の人間によるこの殺し合い。
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483 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:57:31 ID:BffyALmC - テッサは熟考する。
出た結論は荒唐無稽なもの。しかしそれが一番納得のいく、整合性のある答え…… 「おそらく、私たちは違う世界から集められたのでしょう。異なる世界の、同じ地球という星から」 「ち、違う世界?」 「並行世界、というやつですね。これまたSFの世界ですが……私も少々疑問ですが、こればかりはどうにもそういうものだと割り切るしかありません」 そもそもテッサの世界に地球連邦などという組織は存在しない。 未だ人は宇宙にその生活圏を伸ばしてはいないし、世界規模の組織と言えば国連の方だろう。 ミスリルのデータベースにも地球連邦並びにシャドウミラーなどという組織は記載されてはいないはずだ。 「あのシャドウミラーと名乗る者たち。彼らが何らかの方法で違う世界に干渉する手段を保有していて、私たちを集めた。 少なくとも私とダイヤ君とイルイちゃん、三つの世界が確認できる。そしてあのホールにいた他の人……ダイヤ君、何か気付いたことはなかった?」 「え? うーん……あ! そう言えば、さっき俺たちを襲ってきた奴! 暗黒大将軍とか言ったっけ……あいつもいた!怪獣みたいな大きさの、頭と胸に二つ顔のある奴!」 「ええ、私もその人……人なのかしら。まあとにかくその人を確認しています。私たちの世界にはあんな生物はいません」 「俺の世界には……い、いるかも。でも多分違うよ。ダリウス帝国ならともかく、ミケーネ帝国なんていなかったし」 「これで四つ。まあ、参加者の数だけ違う世界があると見ていいでしょう……ダイヤ君?」 テッサが見ると、ダイヤは何やら慌てた様子で頭をかきむしる。 「そうだ……! 剣児さんを助けに行かないと! ロボー!」 ボスボロットの窓を開け放ち、ジャイアントロボに移動しようとするダイヤ。 その首根っこをテッサの腕が引き戻す。 「ちょ、ちょっと待ちなさいダイヤ君! いきなりどうしたの!?」 「剣児さんが俺とイルイを逃がすために一人で残ったんだ! 暗黒大将軍って奴、将軍なんだからノーザみたいにバカ強いはずだ……! だから俺も行って一緒に戦わなきゃ! テッサさん、イルイをお願いします!」 だが華奢なテッサの力では、13歳にしてプロのアスリートすら凌駕する体力を誇るダイヤを止められはしない。 振り解かれたテッサは、窓に足を掛けたダイヤの背に叫ぶ。 「待ちなさいダイヤ君! ……イルイちゃんを放っていくんですか!?」 我ながら卑怯だな、とテッサは思う。こんな子どもに他人の命を背負わせるなど。 だが予想通り、ピタリとダイヤの動きは止まる。 自己嫌悪に苛まれつつも、テッサは年長者として、指揮官として、ダイヤを行かせる訳にはいかなかった。 「ダイヤ君。話を聞く限り、私たちの中で一番戦闘力があるのはあなたです。 戦闘に不慣れな私、そもそも戦えないイルイちゃん。あなたとジャイアントロボがいなくなれば……言わなくても、わかってくれますね?」 「……お、俺は……!」 「そもそも、あなたがその剣児さんと別れたのはもう大分前の時間なのでしょう? 剣児さんが勝ったにせよ……負けたにせよ。同じ場所に留まっているとは考えにくいわ。合流地点へ向かった方がいいはずです」 負けた場合。テッサは口にしなかったが草薙剣児が死亡した場合は移動できるはずがない。つまりは暗黒大将軍がこちらを追ってくる可能性。 勝った場合。剣児は必ずや合流地点――北東の基地へとやってくるはずだ。 ダイヤは幼くはあっても決して馬鹿ではない。テッサが言わなかった部分も、頭では理解していた。
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485 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:58:24 ID:BffyALmC - 「私たちにしろ、安全とは言い難いのです。おそらくここにはもうすぐ誰かしらやってくるはずだし、そうなったとき対応できるのはダイヤ君だけ。
そしてこの首輪を何とかするためにも、誰よりも早く基地を押さえなければいけない。 だから……戦いを終わらせるために、まず基地へと向かいましょう」 「ダイヤ……」 イルイがそっと、ダイヤの手を握る。 動かなければいけない時に動けないもどかしさに歪むダイヤの顔を、テッサは顔を逸らし見ないでおいた。 「ダイヤ君。残酷なようだけど……」 「……いいよ、わかってる。俺が……イルイと、テッサさんを守らなきゃいけないんだもんね」 「基地で待っていれば、やがては誰かと合流できるはずです。そうして集団を作れば、この殺し合いだってきっと……」 呟く言葉は尻すぼみに消える。 イルイが握る方とは逆の、固く握り締められた拳がその無念さを推し量らせた。 テッサはこれ以上少年にかけるべき言葉を見つけられない。 だが、一つ。口には出さなかったがテッサは現状を覆し得る一手を考えてもいた。 未だ倒れ伏すガンバスター。 超技術の塊、人間同士の戦いに用いるには余りにも過剰な力がここにはある。 テッサでは扱い切れなかった機体も、ガイキングなるこれまたオーバーテクノロジー満載の機体を駆っていたというダイヤなら、あるいは。 ガンバスターはバスターマシンという戦闘機が(戦闘機と言うにはサイズが非常識だが)二つ合体してその姿を現す。 主に戦闘を行う一号機、管制を担当する二号機。シャドウミラーが改造を施したらしく一人でも操縦できる仕様にはなっているが。 ともあれ運動能力に優れたダイヤが一号を操縦し、情報処理に秀でるテッサが二号に搭乗しダイヤをサポートすれば、ガンバスターはまさしく無敵となる。 この会場にどれだけ戦いに乗る者がいるかは分からないが、その者たちとて容易に駆逐できるだろう。 (問題は……軍人でもない子どもを、人を殺すかもしれない戦いに巻き込んでしまう、ということですが) それこそが、テッサが口を噤む理由。 テッサは本来ならまだ学校に通っている歳ではあるが、自ら望んでミスリルに所属している。人を殺す覚悟もしているつもりだ。 ダイヤの話を信じるなら彼とて己の意志で戦っている立派な戦士だ。 だが、彼がいくら襲われたからといってその相手を殺せるかと言えば……テッサには正直、できるとは思えない。 戦力としては申し分ない。これが部下であったなら、躊躇わず戦えという命令を下せるだろう。 だが、ダイヤはあくまで民間人だ。守るべきではあっても、戦わせるべきではない。 先の言葉とて半分は出まかせだ。ジャイアントロボを失えば痛いのは本当だが、それ以上にダイヤを戦わせたくはないというのが大きい。 (それに、イルイちゃんも……できればどこか安全なところで匿いたいところですが) ダイヤとイルイ。 幼い二人の安全を確保するにはやはり戦力が必要だ。 基地で友好的な誰かと合流できればいいのだが、とテッサが思ったとき、イルイがはっと顔を上げた。 「あ……誰か、来る……?」 「え?」 唐突に呟いたイルイの声に反応し、ダイヤが窓に飛び付いた。 テッサもその後ろから外を除くと、遥か向こうの大河の水面を何かが激しく叩いている。 天まで届かんとばかり噴き上がる水柱。 段々そのシルエットが見えてくる。マフラーのようなものを巻いた、巨人――
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487 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 02:59:23 ID:BffyALmC - 「こっちに来るっ!」
ダイヤの一言で我に返るテッサ。 水面を走ってくるのは紛れもなく他の参加者の機体だろう。真っ直ぐこちらに向かって来ている。 「ダイヤ君、ジャイアントロボを!」 「わかってる! ロボ、前に出るんだ!」 ダイヤの声に、佇んでいたジャイアントロボが唸りを上げて前進、ボスボロットを守るように立ち塞がる。 程なく接近してきた新手の機体が停止した。 赤いマフラーに白と黒のボディ、ところどころに黄色の突起が生えた大型の機体。 (大きい……! ガンバスターほどじゃないけど、ジャイアントロボよりも……べへモスよりも大きい!) どことなく雷を連想させる機体のサイズは、おそらく50m超はあるだろう。ジャイアントロボが30mなことを考えると、倍は近い。 しなやかに伸びた手足、余計な武装のないシンプルな体型。おそらくは格闘戦特化の機体。 そして地平線の彼方からあっという間にここまで接近してきたスピード。どう考えてもジャイアントロボでは逃げられない。 「ダイヤ君、迂闊に仕掛けないでください。あの機体は……」 「うん……わかるよ。あの機体、強い……! こうして見ているだけでも、すごいプレッシャーだ……!」 さすがに直接的な戦闘に関してはテッサよりもダイヤの方が場慣れている。 だからダイヤは対峙した瞬間にわかってしまった。 ガイキングならともかく、ダイヤの能力を完全に発揮できないジャイアントロボとボスボロットでは、この機体には勝てないと。 イルイがテッサの袖を掴む。その手は震えていて、逆にテッサを落ち着かせた。 この機体、問答無用で仕掛けてこないところを見るに対話の余地はあるのかもしれない。 ダイヤに身振りでいつでも動けるように指示しつつ、ボスボロットの通信機に向かって口を開いた。 「こちらはテレサ・テスタロッサ……この機体、ボスボロットのパイロットです。 私に戦う気はありません。あなたもそうであるのなら、話を聞いていただけませんか?」 応答は、ない。 だが代わりに白黒の機体は指を伸ばし、ジャイアントロボを指し示す。 「…………」 ダイヤが通信に出ればジャイアントロボには人が乗っていない、つまりボスボロットを仕留めれば一気に二人始末できるということが伝わってしまう。 今は向こうもジャイアントロボとボスボロットの双方に気を割いているからいいが、片方に狙いを絞られれば対処は難しい。 「あの……この人は怖い人じゃない……と、思います」 悩むテッサに、イルイが呟いた。 「え?」 「この人じゃない……違う、別の……。黒い、炎が……」
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488 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:00:32 ID:BffyALmC - 焦点の合わない瞳で続けるイルイ。その眼はテッサやダイヤ、果ては巨人すらも見ていない。
ぶつぶつと零すイルイが心配ではあったものの、 「テッサさん、ここは俺が話してみるしかないと思う」 「ダイヤ君」 「俺も警戒するけど、もしものときはボスボロットの操縦を頼むよ」 と言うダイヤに押し切られ、通信を再開。 「俺はツワブキ・ダイヤ。俺がそのジャイアントロボのパイロットだ」 「……子どもか?」 驚いたような、少年の声。 ダイヤの幼さにではあろうが、その声の主もまたテッサの歳とさほど変わりがないように思えた。 「シャドウミラーめ……女だけでは飽き足らず力のない子どもまで巻き込んだというのか!」 「あ、あの」 「許さん、許さんぞシャドウミラーめ!」 怒髪天を衝くがごとく何やら盛り上がる少年に呆気に取られるダイヤ達。 とりあえずは敵ではない――多分。そう思って交渉を再開したテッサ。 「済まんが、俺はお前達と共に行く事はできん。やる事があるのでな」 だがあっさり断られた。 少年の名は張五飛。詳しい素性は教えてもらえなかったが、ともかくこういった機動兵器を日常的に操る軍人のようなものらしい。 戦いに乗ってもいないようなので同行を頼んだのだが、即答だった。 「そ、そこを何とか。施設に着くか、他の参加者と合流するまででも構いません。私達を護衛してもらえませんか? こちらにはもう一人、非戦闘員がいるんです」 と、イルイを示し食い下がるテッサ。子どもが二人に女一人の集団と知ると五飛なる少年はまたも怒りを露わにした。 簡単な自己紹介をしてダイヤは戦えることも知らせたのだが、やはり機体の不安がある。 大雷鳳なる機体は相当に強力らしいので、五飛が来てくれれば心強いのだが。 しばし熟考していた五飛が、やれやれと溜息をつき、 「……ここから北の基地までなら、共に行こう。だがそこから先は別行動を取らせてもらう。それでいいか?」 「はい! ありがとうございます」 「へへっ。よろしく、五飛さん!」 「ああ、それとあの巨大な機体はどうするのだ。置いていく訳にもいかんだろう」 「ああ……そうですね。私やイルイちゃんでは扱えませんし、やはりダイヤ君に……でも……」 渋々とはいえ共に来てくれることになり、ダイヤとテッサは喜色を浮かべた。 ガンバスターの処遇について話す五飛とテッサを横目に、ダイヤは残る一人を見やった。 五飛を信用できると言ったきりどこかぼんやりとしていたイルイが、急に頭を押さえて膝を付いた。 「う、うう……!」 「イルイ! どうしたんだ!?」 「あ……危ない……! みんな……逃げて!」 何を、とダイヤが言おうとした瞬間ボスボロットが吹き飛んだ。ダイヤは反射的にイルイを抱きかかえる。 一拍遅れて、凄まじい衝撃波。ボスボロットのコクピットに置いてある雑多な家具が散らばった。
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490 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:02:02 ID:BffyALmC - 「な……なんだ!?」
元々頑丈なダイヤと庇われたイルイに怪我はない。テッサもどこかにぶつけたのか腰を押さえてはいたが、無事だった。 急いで外を確認すると、五飛の大雷鳳がいつの間にか現れていた紫色の新たな機体と対峙している。 大雷鳳の腕から伸びる光の鞭が、新たな機体の左腕に絡みついていた。 その腹部には煙を吹く砲身。どうやらあれで砲撃を受けたらしい。 ボスボロットを突き飛ばしたのはジャイアントロボであるらしかった。命令していなくても、操縦者の危機にはオートで対応してくれるようだ。 「貴様……この戦いに乗るというのか?」 「…………」 五飛の問いかけに、紫の機体は答えない。代わりに光の剣を伸ばし、両腕に構えた。 大雷鳳が光の鞭――プラズマビュートを引っぱり、紫の機体を引き寄せる。 その蹴りに砕かれる刹那、紫の機体が振り下ろした剣がプラズマビュートを切り裂き戒めから脱する。 距離を置いて向かい合う、二機。 「いいだろう……シャドウミラーの口車に乗り弱き者を虐げると言うのなら、俺が貴様を倒す!」 「五飛さん!」 「お前達は下がっていろ。こいつは俺がやる!」 大雷鳳が加速し、プラズマ轟く剛脚を敵機へと叩き付ける。 操縦者の挙動をそのまま機体に反映するダイレクトモーションリンクシステムは、武術の達人である五飛に取ってはまさしく大当たり。 疾風迅雷としか表現できなさそうなスピードで放たれた蹴りをまともに受け、敵機が吹き飛ぶ。 「ダイヤ君、今の内にガンバスターに!」 「え?」 「私達を庇いながらでは五飛さんが不利です!」 五飛の鮮やかな動きに感心していたダイヤにテッサの指示が飛ぶ。 躊躇いはあれど、ボスボロットであの二機の戦いに巻き込まれれば命はない。戦わせたくないとはいえ、ガンバスターに乗っている方が安全なのは明らかだ。 ボスボロットを抱え、ガンバスターの方に向かおうとするジャイアントロボ。 「うわっ!?」 その前に割り込む、紫色の小さなUFOのような物体。口を開け光を吐き出した。 ジャイアントロボが被弾し巨体が傾ぐ。当然、ボスボロットのコクピットも激しく揺れる。 「ダイヤ!? くっ、貴様!」 大雷鳳の脚が一閃、刃状のプラズマ力場――ハーケンインパルスが飛び、機動砲台へ激突する。 だが、砕けない。 吹き飛びはしたものの、寸前で相殺されたか機動砲台は形を崩すことなく紫の機体へと帰還する。 まともに蹴りが入ったというのに、敵機にはさして損傷を受けたようには見えない。 今も、そして先ほども。五飛は蹴りが命中する刹那、妙な感触を感じていた。 形容するとすれば脚が水をかき分けるような、と言えば近いだろうか。 とにかく蹴りのスピードが、敵機の間合いに入った途端鈍ったような気がしたのだ。 再び距離を詰めようとする大雷凰だが、今度は逆に紫の機体が光の剣を鞭状に伸ばし大雷鳳へと巻き付かせた。 だが五飛は怪訝に思う。どうにもこの機体、大雷鳳を狙っているとは思えなかったからだ。 裏付けるように、紫の機体から秘匿通信の申し出が届く。
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492 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:04:10 ID:BffyALmC - 「……やはり張五飛、か。こんなにも早く再会するとはな」
「貴様……レイ・ザ・バレル、と言ったか?」 繋がった敵機パイロットの映像。 映し出された長い金髪の少年、その名は五飛自身が直前に対面した他のジョーカーの一人、レイ・ザ・バレルだった。 「さて、済まないな。俺はどうやら邪魔をしたようだ。そいつらはお前の獲物だったか?」 「フン、謝る必要はない。だが代わりに貴様の命を置いていけ!」 鞭を瞬速の蹴りが裂断し、浮き上がった機体を旋回させもう片方の脚がレイの機体――R-GUNリヴァーレを襲う。 だが予測されていたか、その一撃を軽々とかわしレイは後退する。 追って飛ぶ大雷鳳。突き出した拳は交差した光剣に受け止められた。 「どういうつもりだ。ノルマに俺達ジョーカーは含まれない……忘れたか?」 「いいや、忘れてなどいない。注意しろとは言われたが、絶対にするなとは言われていないな!」 「くっ!」 「望み通り二人、倒してやるさ。だが、その敵は俺が選ぶ! 貴様のように弱者を犠牲にするような奴をな!」 出力に物を言わせ、大雷鳳がR-GUNリヴァーレを押し出すようにして後退させる。 ダブルGの系譜に名を連ねる大雷鳳はそこらのモビルスーツやパーソナルトルーパーなどとは比較にならない力を有する。 いかにEOTで強化されたイングラム・プリスケンの愛機と言えど、純粋なパワーでは抗し得なかった。 「正義なき者に俺は負けん!」 「ぐうううっ!」 雷光閃く蹴りが放たれ、宙へと押し上げられるR-GUNリヴァーレ。 だがその時、必殺の一撃を放たんとする大雷鳳の視界の端を掠める二つの影。 瞬間の判断で五飛は敵機よりもその影の迎撃を選択した。 レイに向き直ったときには既に体勢を整え、距離を開けられている。 「なるほど……お前はジョーカーでありながらこの殺し合いに反逆する、と言う訳か」 「俺は俺の正義しか信じない。そして俺の中の正義はこう言っている――奴らシャドウミラーも貴様のような外道も、等しく地獄へ蹴り落とせとな!」 「甘い事だ。それは弱さだぞ、張五飛!」 今度は三つ。三つ同時にR-GUNリヴァーレの背から機動砲台ガンスレイヴが飛び立った。 それぞれに違う軌道を描き、だが全てが大雷鳳ではなく後方のボスボロットを狙っている。 「っ、ダイヤ!」 「ロボ、撃ち落とせ!」 五飛が叫び終わる前にダイヤの指示により動いたジャイアントロボが指のミサイルランチャーを乱射し、ガンスレイヴの迎撃を図る。 瞬く間に火球が咲き乱れ轟音を響かせるが、ガンスレイヴは巧みに爆発を避け反撃の光弾を撃ち込んでいく。 「このガンスレイヴはただのドラグーンとは違うぞ! 全てが俺の意思通りに動く……!」 レイの言葉通り、ガンスレイヴはまるで人が乗っているかのように滑らかな動きで空を舞う。 時に連携し、時に欺瞞行動を見せ狙いを幻惑するその軌道は華麗ですらあった。 ボスボロットから戦況を確認し指示を飛ばすダイヤでは、その変幻自在の動きに対応しきれない。
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494 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:05:57 ID:BffyALmC - 「ダイヤ、退け! こいつは俺に任せろ!」
「そんな!? 俺も戦うよ!」 「今のお前達では足手まといだ! 俺も気を散らしている余裕はない!」 「……っ、だったら!」 ジャイアントロボを盾に、ボスボロットがガンバスターへと向かっていく。あの機体を動かせれば戦況は逆転する。ならば五飛がやることは一つ。 大雷鳳がマフラーをはためかせR-GUNリヴァーレの前に立ち塞がる。 「ここは通さん! お前の意思通りにその小型機が動くというなら……!」 「むっ!?」 「回避に集中せねばならんほどにお前を追い込めば、そんな余裕はなくなるということだろう!」 乱撃乱舞。 五体全てが凶器である五飛の体術を存分に活かす、高速のラッシュ。 正拳、手刀、貫手、鉤爪、裏拳、肘打ち、頭突き。 回し蹴り、踵落とし、二段蹴り、飛び蹴り、膝蹴り、浴びせ蹴り。 右に左に上に下にと縦横無尽に大雷鳳が飛び回り、これでもかと言うほどの攻撃をR-GUNリヴァーレへと加えていく。 合間に閃くプラズマの輝き。拳から伸びるプラズマビュートと足刀から放たれるハーケンインパルスが、距離を取ることも新たな武装を展開することも許さない。 ロシュブレードとガンスレイヴを防御に回し、必死にレイは怒涛のラッシュを凌いでいく。 やはりこの機体には何かあると五飛は確信した。 五飛の攻撃はいくつかが防御を擦りぬけて直撃している。だというのに、その部位を破壊するには至らないのだ。 おそらくは何か不可視の力場が展開されている。アフターコロニーにはない未知の技術。 だが、万能ではない。敵機が回避運動を取っている事こそその証拠。 ともあれこのまま行けば押し切れる――と、五飛が一層拳と脚に込める力を強くした時。 「くっ、やるな……! だが、張五飛。数で劣る俺が無策で仕掛けてきたとでも思っているのか?」 「何!?」 「俺は勝てると踏んだから仕掛けた。その理由は何か……簡単だ。俺にも仲間がいる、それだけの事だ」 蹴りを交差させた両腕で防いだR-GUNリヴァーレ。 呟くレイに応えるように新たな反応。五飛の領域を迂回し、一直線にダイヤ達へと向かっていく機体――機体? いや、違う。 それは斧。そう、大雷鳳にも匹敵する大きさの斧が、振るう者もいないのに飛んでいく。 急いで救援に向かおうとする大雷凰を、R-GUNリヴァーレが阻む。 「ダイヤ、女!」 「フフフ……。張五飛! ここからは俺がお前を留める番だ!」 そして、鋼が交錯する。
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497 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:07:23 ID:BffyALmC - ◆
ガンバスターまであと一歩、というところまで来たテッサ達も巨大な斧に追いつかれていた。 ジャイアントロボがその身を盾として斧を受ける。だが元の大きさが違う事と斧自体に凄まじい加速がついていたので、あえなく吹き飛ぶ巨人。 瞠目するテッサらの眼前で、斧が折り畳んだ手足を伸ばし人型の機体に変形した。 ディアブロ・オブ・マンデイ――バランスの執行者、オリジナルセブンのヨロイ。 身の内に秘めるは世を支配せんとする死の商人、アマンダラ・カマンダラ。 「さあ、狩りを始めよう!」 「くっ……ロボォォ!」 黄金の戦斧を頭上で旋回させ、ディアブロがボスボロットに迫る。 膝を付いたままでジャイアントロボが主を守るべく腹部四門のスポンゾン砲を発射した。 ディアブロは避けない。 先だってのぬいぐるみの姿をした化け物には遅れを取ったが、それはアマンダラが動揺したせいであって決して機体に問題があった訳ではない。 ディアブロの装甲を貫ける者などそう多くはない。そう、あの化け物――悪魔のようなごく一部の例外を除けば。 そう考えたアマンダラはあえてその砲撃を避けず、ボスボロットへと黄金の戦斧を振り降ろす。 「うおおおおおおおっ! ボロットパーンチッ!」 だが、どう見てもスクラップを寄せ集めたようにしか見えないボスボロットはその一撃を受け止めた。 丸っこい拳で挟み込むようにディアブロの斧を殴りつけ強引に白羽取るボスボロット。 見た目が多少コミカルでも、改造に改造を重ねたボスボロットはパワーだけならマジンガーにすら匹敵する。 テッサが何か言う間もない。反射的にダイヤは動いていた。 「こ……この出来そこないが!」 「ボスボロットの力を、甘く見るなァァァァーッ!」 動きの止まったディアブロを狙いジャイアントロボが背中のミサイルをセットアップする光景が、アマンダラの目に映る。 さすがにあれは無視できないと斧を手放し跳ぶディアブロ。 「カウンタァァァークロォォス!」 「ロボ、今です!」 思い切り回転し遠心力を付けてボスボロットが戦斧を投擲する。 そしてこうなれば行くしかないと、ダイヤからコントローラーを受け取ったテッサがジャイアントロボに全武装の開放を命じる。 猛回転する刃とミサイルの雨がディアブロを包み込んだ。 「ぐおおおっ!? き、貴様ら……!」 「まだだ! ついでにこいつを喰らえっ!」 腕の刃でなんとか斧を喰いとめたが全身に砲撃が命中しディアブロが頭から地面に叩き付けられた。 ボスボロットが自らの右腕を引っこ抜く。腰の後ろから取り出したのは一回り太くなった別の腕。 ドリルのように回転し、あまつさえダイヤは装着している右腕ごと風車のようにブンブンと振り回す。
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- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
499 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:08:52 ID:BffyALmC - 大車輪パンチャーグラインドォォォーッ!」
「熱ッ!? ちょ、ダイヤ君熱いです! 熱い熱い痛い!」 バランスが保てなくなる寸前までブン回した右腕から炎が噴き出し、発射された。 噴射炎は本体であるボスボロットにまでお構いなしに吹き付け、頭部コクピット内のテッサ達まで高温の熱風を浴びせかけていた。 当のダイヤは涼しい顔だが、ジャイアントロボを操るために前に詰めていたテッサはたまったものではない。イルイはちゃっかりちゃぶ台の影に隠れて難を逃れていたが。 ともかく発射された右腕、言うなればロケットパンチはようやく立ち上がったディアブロの腹を深々と抉った。 50mを越える機体が、たった一つの砲弾に押し戻される。 「ぐふっ!」 「ようし……とどめだ! ハイドロォォォ……!」 腕を付け直し、ボスボロットが球を――ボスボロットの頭部を構え、高々と片足を上げる。 流れる視界、ヒートアップするダイヤ。テッサは猛烈に嫌な予感を感じた。 ボスボロットはASと違い、コクピットは頭部にある。つまりは、今ボスボロットが掲げているのはコクピットそのもの。 それを、ダイヤは、 「だ、ダイヤ君、何を……?」 「ブレイザァァァァァァァァァーッ!」 ブン投げた。 「やっぱりぃぃーっ!?」 「きゃあああああ!?」 「行けええええええええっ!」 三者三様の反応を上げ、ボスボロットの頭が大気との摩擦で火を纏いながらもディアブロへと殺到する。 ディアブロの顔面にめり込むハイドロブレイザー、もといボスボロット。 ヨロイの巨体が傾ぐ。一拍遅れて、地に倒れ伏した。 「へへ、どうだ!」 ボスボロットの頭部が零れ墜ち、二転三転して静止する。 当然激しくシェイクされぐちゃぐちゃになったコクピット内で、ダイヤが喝采を上げた。目を回しているのはテッサとイルイだ。 「だ、ダイヤ君……あんな無茶するなら、せめて前もって一言……」 「あ、ごめん。 でも敵はやっつけたよ!」 「……いいや、まだだッ!」 ディアブロが跳ね起きる。近づいていたジャイアントロボを勢いのまま蹴り付け、吹き飛ばした。 唖然とするダイヤ達が行動を起こす前に、ボスボロットの頭部を踏みつける。 「やってくれるじゃないか、若造が……!」 「うわぁっ! こいつ、まだ!」 「ろ、ロボ……!」 「変な真似はするんじゃない! 少しでも動けばお前達を踏み潰すぞ!」 テッサがジャイアントロボを呼ぼうとしたが、アマンダラはそれを許さない。 無人機、口頭で命令を発することでジャイアントロボが動くと看破したアマンダラはまず押さえるべきはそのコントローラーだと定めたのだ。
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502 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:10:26 ID:BffyALmC - 「あの機体のコントローラーを渡せ。そうすれば命は取らない」
「ふざけるな! お前の言う事なんて誰が信じるもんか!」 「元気がいいな、若者よ。だが状況を理解していない……!」 ディアブロが少し脚に力を込める。それだけでボスボロットの柔な装甲はミシミシと軋み出し、圧壊しそうになる。 ジャイアントロボは、動かない。下手に手を出すと即座に主が踏み潰されるとAIが判断したためだ。 「さあ、選べ。このまま死ぬか、私の慈悲に縋るか! 二つに一つだ……!」 「こ、このお!」 ダイヤがなんとか脱出しようとがむしゃらにボスボロットの操縦桿を動かす。 自動操縦で向かってきたボスボロットの胴体は、だがあえなくディアブロの戦斧により真っ二つに斬り捨てられた。 「ああ、ボスボロットが!」 「これでわかっただろう、抵抗するな。さあ、出て来るんだ! 早くしなければ私の気が変わるかもしれんぞ!」 コクピットの天井に、ビシリと亀裂が走る。絶妙な力加減。 イルイが悲鳴を上げてテッサに抱きつく。このままでは本当に、三人まとめて潰されてしまう。 だがジャイアントロボのコントローラーを渡したところで、アマンダラはテッサ達を生かしては置かないだろう。 それどころか今もR-GUNリヴァーレを押さえている五飛にまで危険が及ぶ。 二対一ならまだしも三対一となれば絶望的だ。いかに彼がSRT並みの技量を誇る腕利きの兵士であったとしても。 死ぬのが自分一人ならいい。だが、幼い子ども二人を道連れにはできない――テッサは決断する。 ダイヤとイルイを抱き寄せ、耳元で囁く。アマンダラには聞こえないように。 「ダイヤ君、イルイちゃん。よく聞いてください。今から私が外に出て、あいつの気を引きます」 「な……何言ってるんだよテッサさん! あいつにロボを渡しちゃダメだ!」 「ええ、私もそのつもりです。ですがこの状況、何か手を打たないと本当にみんな死んでしまうんです。 だから、私が出て行ったら隙を見てあなたとイルイちゃんは逆方向から逃げてください。私がロボで援護します」 「逃げる!? 嫌だ、俺も戦うよ!」 「もうボスボロットは動きません。私達が勝てる確率はほとんど0なんです」 「だからって、テッサさんを置いて逃げるなんてできない!」 「ダイヤ君……」 「剣児さんも俺を逃がして自分は残ったんだ! もう、誰かを置き去りにして逃げるのなんて嫌だよ!」 必死に食い下がるダイヤ。どう説得したものかと言葉に詰まるテッサに、イルイがそっと呟く。 「あ、あの……! 私も、嫌です……。逃げるなら、み、みんな一緒でないと……!」 「イルイちゃん……」 「相談は終わったかな? そろそろ決めてくれないと私も力加減を間違えてしまうよ」 男の声に怒気が混じってきた。確かにもう時間がなさそうだ。 逃げるならみんな一緒に。それを叶えるためには、やはり―― 「……ダイヤ君。あなたに……期待しても、いいですか? 過酷な運命を背負う事になりますが……」 「テッサさんが心配してるのは、俺が人を殺すかもしれない事、だろ?」 「ええ。ここにいるのは侵略者でも何でもない、私達と同じただの人間がほとんどのはずです。そんな人達を、あなたに」 「わかってる……わかってるよ。悪いのはこんな殺し合いを仕組んだ奴で、今襲ってきてる奴らだって本当は戦わなくてもいい人なのかもしれない。 でも! でも……。俺はそれでも、テッサさんやイルイ、剣児さんが死ぬのはもっと嫌だ! だから……!」 「……わかりました。では、作戦を変えましょう」
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503 :GUN×KICK ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:12:44 ID:BffyALmC - 大人としては最低だ。でも、今はこの熱く燃える炎に賭けるしかない――
テッサの言葉に強張った顔で頷くダイヤ。イルイもまた泣きそうではあったが、必死に恐怖と戦っている。 年下二人がこうなのだから、年長のテッサとて情けないところを見せる訳にはいかない。 「では、行きますよ!」 ボスボロットから転び出るテッサ。 外のディアブロによく見えるように腕を掲げジャイアントロボのコントローラーを示す。 「これを渡せば……仲間の命は保証してくれるんですね?」 「もちろんだとも。さあ、その時計を外して地面に置き、君は下がりたまえ」 余裕ぶった男の声。それはそうだろう、逆転される要素など一つもない。 だが、その余裕が命取りだ。 時計を外し、地面に置くためしゃがみ込み―― 「……ロボ! 全弾発射!」 最後の命令を下した。 機を窺っていたジャイアントロボが、背中の大型ミサイル、バズーカ、指の小型ミサイルランチャーを全て一斉に解き放つ。 「ぐうっ、それが答えか! ならば!」 ぐしゃっ、とディアブロの脚がボスボロットの頭部を踏み潰す。もはや跡形もなく、一瞬で粉々に。 だがその時には既にダイヤとイルイは脱出している。 俗に言うお姫様抱っこと言うやつで、脆くなったコクピットの外壁を内側から蹴破って。 その向かう先は、ついに辿り着いたガンバスター――宇宙に敵なし、最強無双の力。 テッサがジャイアントロボに下した命令は攻撃ではなく陽動。派手に砲火を上げ、気を逸らす事。 アマンダラは気付かない。砲弾飛び交う戦場を生身の人間が駆け抜けていくなど、普通は考えつけるはずなどない。 そう、普通のパイロットならば。 「甘いわァッ!」 ディアブロの拳をジャイアントロボが受け止める。 最優先すべきは主の安全。砲撃は一時中断され、一瞬の静寂。 アマンダラはその中に、ごく小さい熱源反応――全力でダッシュするダイヤの影を見つける。 「あの化け物と戦っていなければ見逃しただろうな……だが、今の私には通じん!」 「ああっ!」 アマンダラの脳裏に焼き付くぬいぐるみの悪魔。あの化け物との交戦経験が役に立った。 身体を捻り斧を振りかぶるディアブロ。 そして――投擲。 ガンバスターへと駆けていく影。運動は苦手なテッサとは比べ物にならないほど速いが、それでもどうしても遅い。 一瞬で音速にまで達したかもしれない大戦斧が、少年と少女の身体を引き裂く。 ――――轟。
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505 :SWORD×AX ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:15:44 ID:BffyALmC - ◆
一閃。 唸るは剣風、響くは剣戟音。 「お、お前は……!?」 ダイヤを砕き散らすはずだった大戦斧は、遥か天空へと切り払われた。割り込んだ大剣――人剣一体の機体、セレブレイダーによって。 そしてセレブレイドを握るはそびえ立つ巨体。腹にもう一つの顔を持つ誇り高きミケーネの武人、暗黒大将軍。 ダイヤ自身が数刻前に行き逢った、間違いなく敵と言える男。 「フン、よくよく貴様も運がないな。マジンガーに逃がされた先で戦に巻き込まれるとは」 「お前、剣児さんはどうした! なんでお前がここにいるんだ!?」 「剣児……草薙剣児、か。奴は見事な武人であった。この俺をああまで追い詰めた男は、剣鉄也を置いて他におらん」 「ま、まさか……!」 「奴は死んだ」 イルイを抱きかかえるダイヤの顔がくしゃりと歪む。涙を堪えるように――それ以上の怒りで塗り潰すように。 錯覚かどうか、イルイは肌に触れるダイヤの体温が急激に上昇したかのように、ビクリと震える。 「お前……! お前が、剣児さんを殺したのか!?」 「……そうだ。俺がこの手で奴を討った」 「う……うわぁぁぁーっ!」 イルイを下ろし、ダイヤは生身で暗黒大将軍の脚へと殴りかかる。 子どもながらに腰の入った打撃だ。相手が普通の人間だったなら骨まで砕けそうな。 だがもちろん、30mを越える巨体の暗黒大将軍に通じるはずもない。 暗黒大将軍が、軽く脚を振る。腹にめり込む衝撃に、ダイヤは軽々と吹き飛ばされた。 「ダイヤーッ!」 イルイがダイヤを助け起こす。だがダイヤは完全に気を失っていて、イルイの声には応えない。 暗黒大将軍は剣をイルイへと突き付ける。見返す瞳は友を傷つけられた怒りで震えている――それでこそだ。 「その小僧の名、貴様は知っているか?」 「ダイヤ……ツワブキ・ダイヤ!」 「ダイヤ、か。小娘、そやつが目覚めたら伝えるがいい。力を手に入れ、いつでも草薙剣児の仇を取りに来いとな! 俺は暗黒大将軍、挑まれれば逃げも隠れもせん! たとえ相手が女子どもであろうともだ!」 言い捨て、暗黒大将軍は踵を返す。 その眼光が見据えるのは、状況の推移を計りかねていたディアブロ・オブ・マンデイ。 傍らに突き刺さっていた戦斧を抜き、放り投げる。受け取るディアブロ。 暗黒大将軍自身はセレブレイドを正眼に構え、漲る闘気を解放する。 明らかに人でなき者と相対し、その凄まじいプレッシャーに気圧されるアマンダラだが、それはテッサも同様だった。 「貴様も戦場に在る武人ならば名乗るがいい! 俺は暗黒大将軍、ミケーネ帝国の将よ!」 「ぬう、貴様……私の邪魔をするというのか!」 「弱者を嬲る愚か者など、俺の剣の錆にする価値もない。だがな……!」
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506 :SWORD×AX ◆I0g7Cr5wzA [sage]:2010/01/09(土) 03:17:22 ID:BffyALmC - 振り回されるセレブレイドが大気を切り裂き、烈風を巻き起こす。
「草薙剣児はこやつらを守るために俺と戦った、見事な戦士だった! 決着を着けられなかったのが心残りでな……あのまま続けていれば俺が勝っていたかどうかわからん。 だからこそ、奴の同胞であるツワブキ・ダイヤが俺と雌雄を決せねばならんのだ!」 「ダイヤ君と……? そのために私達を助けるというのですか!?」 「勘違いするな、娘。これは草薙剣児への敬意だ。奴が生きておればこうしただろう、ただそれだけの事。 次に相見えた時は容赦せん! 覚えておけ、いずれ貴様もダイヤと言う小僧も俺が討ち果たす!」 それきりテッサには目もくれず、暗黒大将軍はディアブロの間合いへと踏み込んでいく。 交差する剣と戦斧。体格に勝るディアブロだが、暗黒大将軍の湧き上がる闘志はその不利を覆す。 一気に押し込まれ体勢の崩れたディアブロへ、セレブレイドから放たれる竜巻がディアブロを天へと弾き飛ばした。 セレブレイダーは本来ブレイドガイナーと合体する事で、本来の力を発揮する。 だが今セレブレイドを握るのはプラズマドライブを持たない暗黒大将軍。必然、その力を十全に振るう事などできない――はずだった。 だが、シャドウミラーの技術力はセレブレイド単体でもヘルスハリケーンを起こせるほどにプラズマドライブを強化していた。 加えて、暗黒大将軍が本来持つ竜巻を放つ力。 二重の竜巻は全てを薙ぎ払う嵐となって顕現し、猛威を振るう。 「砕け散れェェェいッ!」 「おおおおおおおおっ!?」 異なる二つの気流の流れは反発し、時に混じり合い、中にいるディアブロを木の葉のように惑わせる。 今こそ必殺の一刀を。 脚を踏み出した暗黒大将軍。だが狙うべきディアブロのさらに上、煌めく一点の星が見えた。 星は瞬く間に急降下し、ディアブロを掴み暗黒大将軍目がけて蹴り落とす。 とっさに一歩下がった暗黒大将軍。その身体は不意に横手へと吹き飛んだ。 「ぐあああッ!?」 地を滑り、小山へと激突する暗黒大将軍。 代わりに着地したのは雷の化身――大雷鳳と、吊り下げられた銃――R-GUNリヴァーレ。 そして地面に埋まるほどの勢いで胴から叩き付けられたディアブロ。 「五飛さん!」 「無事か、女! ダイヤ達はどうした!?」 大雷鳳、R-GUNリヴァーレ共に全身に傷を負っている。 特に大雷凰はR-GUNリヴァーレを突破するために相当無理をしたらしい。左腕は肩から欠落していた。 R-GUNリヴァーレは全身の装甲至る所に傷があるものの、さして大きい損傷はない。 暗黒大将軍を吹き飛ばしたのはR-GUNリヴァーレの切り札、アキシオン・キャノン。万全の出力ではなかったので威力はさほどでもなかったが。 身を起こす暗黒大将軍。怒りに震える眼光が、新たに現れた二機を射殺さんばかりに睨み据える。 「貴様ら……許さんぞ! この俺に砂を噛ませるとは何たる屈辱!」 「ええい、また新手か!」 「待って五飛さん、その人は!」 「もはや問答無用! ぬおおおおおおッ!」
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