- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
210 :それも名無しだ[sage]:2010/01/04(月) 01:30:58 ID:uQL9s2QA - 代理投下乱舞ー
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211 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:32:19 ID:uQL9s2QA -
「どんな馬鹿だいったい!?」 ルネは蒼く蠢くコクピット内で怒鳴る。 足元へと突き立てた棍棒を握る手に思わず力が入った。 「オマエハメッチェノカワリニモナラン」 「ドメヲササナイトイツマデモギロチンノスズガナルゾ」 「ナンダ?…ヒトツノイノチノナカニ、フタツノイノチガアルトイウノカ? ナゼダ!」 「キコエルダロ? ギロチンノスズノネガサァ!」 思わず力んだのは随伴機のパイロット達と呼べるかどうか分からない物達がやかましい、からでもなく。 「おちつけ、おちつけ、ハロども」 ソルダートJごっこに興じる男がうざったらしい、からでもなく。 「アレガシロイヤツナラココデクサレエンヲキッテヤル」 極太の光が自機を掠めつつ地面へと突き刺さり、光が収まった後に巨大なガラスのお椀を作る。 この、そう、親の敵といわんばかりに大地へと突き刺さる熱戦を避けるために、意識を空へと集中しているからである。 「うわっ!? くっ、このビームの威力。かなり高い所から撃っているぞ!」 スラスターを噴射させ自機を狙う熱線を避けつつ叫ぶ。 施設から出て十数分たったころにいきなり砲撃を受け、それ以降は回避に専念するほかはなかったが上空から自分達を 誰かが狙っていることは明白だ。熱戦は確実に自分達を標的とした敵が放っているに違いない。 そう、敵だ。目に見えぬ透明人間のような存在ではあるが、コスプレやボールといったわけが分からぬ存在ではない敵が 空の果てにいるのだ。これでうざったらしい馬鹿どもの相手をしなくて済む。 それだけを見えない敵に感謝しつつルネは反撃の手段を考える。
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212 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:34:06 ID:uQL9s2QA - 「さーて、どうやってぶん殴ろうか?」
「君も落ち着くんだルネ・カーディフ・獅子王」 が、どうやらコスプレ馬鹿は臆病風に吹かれたらしい。仮面に隠されていない表情からは撃って出る意思が見受けられない。 「ハッ! びびってんのかい?」 「現実的ではないし、撃って出る意味も無い」 口元がにやりと笑う。格好も合わせれば実に悪役らしい笑みだ。生理的嫌悪など今更抱くような生娘ではないが。 「いくらビーム兵器とはいえレーダーだってある。そうそうあたるものでもない」 「撃たれっぱなしは趣味じゃないんだよっ!」 弱気としか言えない発言しかしない男に怒鳴りつつ、何度目か分からない砲撃を左方向へとステップすることで回避する。 「逃げ回れば死にはしない」 男の方もムカつく位優雅に右方向へと回避する、 「オチツケコウチャ」 ように見えたがハロが適当なレバーか何かにでも当たったのか、あっさりと紅い機体はバランスを崩し前のめりに倒れた。 「何やって……!?」 最後まで言うことができなかった。グランヴェールの回避しようとした先が光の柱によって包まれたからだ。 そう、回避しようとした先だ。こけていなければグランヴェールはあっさり蒸発していただろう。 「…丸っこいのに感謝しなよユウキ・ジェグナン」 「……クゥッ!」 悔しそうに呻きつつも機体をすぐさま立て直すのは腐ってもパイロットと言えるだろう。 間抜けな格好や動作やボールに囲まれている状況からはあまりそうは見えないが。
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213 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:35:23 ID:uQL9s2QA - 「で、どうするだい? このままじゃ」
「すぐにこの場を離れよう。ビーム砲がオーバーヒートしたのか誘いなのかは分からないがこの場にいるよりはマシだ」 あいかわらず弱気なことしか言わない。だからルネ・カーディフ・獅子王は見切りをつけた。 「なら勝手にやらせてもらう!!」 機体を変形させシステムをオートパイロットへ、ソラへと向かうために送還システムを起動させる。 「ちょっ――――――て」 重力とは逆方向へと引っ張られる感覚と共に音声が途切れる。が、意識まで途絶えるほど柔な鋼の体でもなければ獅子の精神で もない。 なにより、ここで万が一にでも意識を失いでもすれば相手が打ってくるであろう次の手に対応できない。 モニターに映る雲が途切れ、青空が黒く染まり掛けた時、一点の光が生まれた。 「来た!?」 光は瞬きをするまもなく巨大となり、己へと踊りかかろうとする。 その一撃はルネにとっては予測できたものである。故に対処しやすい。 棍を通してルネの命令がダリア・オブ・ウェンズデイへと伝えられる。目に見えぬ力場が周囲へと展開され、 放たれるビームと展開された力場が衝突する。 「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」 力場とビームが衝突する衝撃なのか機体が大きく揺さぶられる。だがダリアはビームを切り裂き直進した。 ルネは叫ぶ、叫び続ける。己と機体を鼓舞するように叫びをあげつづける。 このまま上がってすぐにでもぶん殴ってやる。なにしろオートパイロットの状態では衛星に向かって真直ぐにしか進めないのだ から。 「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――ァガ!?」 彼女の叫びは途中で途切れた。 ◆◇◆◇◆
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214 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:37:41 ID:uQL9s2QA -
羽佐間翔子は宇宙の人となっていた。 周囲は黒と光り輝く星だけの世界――――――いや、彼女の眼下には先ほど飛び去った惑星が広がっていた。 その惑星は、とても美しかった。外の世界がフェストゥムに支配されていると思えぬほどに。 「一騎くん達にも見せたいなぁ」 そう呟き彼女は頭を振った。もはやその言葉が叶えられることはないし、その言葉を言う資格すら自分にはない。 仲間を殺し、ただ誰か一人の命だけを願う自分には。 翔子は眼下の地球へとツインバスターライフルを向ける。地上で発見した赤と花のロボットを撃墜するために。 ゼロシステムのサポートにより敵を殲滅するための的確な戦法――――――大気圏を離脱し一方的な位置からの狙撃が提示され 、 翔子はその指示通りに狙いをつける。その肉体は宇宙に昇ったさいの負荷により体のいたる箇所から内出血を起こしていたが、問 題はなかった。 彼女に備わった天才症候群は肉体の負荷を無視する、故にゼロシステムに振り回される負担も無視する。 まずは第一射。ファーストターゲットを破壊。 続いて第二射。セカンドターゲット及びサードターゲットの回避を確認、破壊失敗。
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215 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:39:50 ID:uQL9s2QA -
初撃で敵機を撃破できないことまでは予想通りであり、ゼロシステムにとっては必要なことだ。 相手の行動を予測することで対応した戦術を計算するゼロシステムがその機能をいかんなく発揮するためには相手の挙動を 覚えさせるのが最も効果的なのである。初撃、次撃を外そうとも最終的に敵機を撃破できれば問題ない。 数度バスターライフルからビームを発射したところで赤い機体を破壊するための行動予測が完成した。 自機と敵機の相対距離算出、敵機の運動性、回避パターン、着弾するまでの時間の予測、 ツインバスターライフルの分離、それらを終えたゼロは必殺の攻撃を放つ。 赤と花の機体の間にバスターライフルを発射、続けて赤い機体の回避地点に二つ目のバスターライフルを発射。 第一射により敵機の分断と誘導を確認、続けて第二射が演算された座標へと正確に突き刺さる。 が、正確な一撃故に狙いが外れてしまったことを翔子は知った。 どうやらこけてしまったことにより、赤い機体は着弾点から僅かにずれた位置に倒れ難を逃れたようだ。 流石のゼロシステムとはいえ相手の凡ミスまで予測はできない。 が、翔子はそんなことなど関係ないとばかりに銃爪を弾いた。 照射されたビームが体勢を立て直す前に赤い機体を貫く、はずであった。が、再び一つにまとめられたツインバスターライフルは何故か沈黙していた。
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216 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:41:15 ID:uQL9s2QA - 何故だろうか? 疑問に思う翔子はシステムをチェックし、疑問はあっさりと氷解した。ただ単純に連射により砲身が
熱せられてしまったためリミッターが働いたからである。 それを確認した翔子は赤い機体の運の良さを恨みつつも、ゼロシステムの警告通りに眼下の敵に警戒する。なんらかの反撃があ るかもしれない。 予想通りとでも言えばいいのか、花型の機体が変形しこちらの方向へと突っ込んでくる。 どうやら片方の機体はウイングゼロと同じく単独で大気圏離脱可能な機体なのだろう。 だが、それでも自分の優位は変わらない。ゼロの予測では充分に撃ち落とすことは可能で、それができなくても離脱するための 推力を奪えるはずだ。 クールダウンしたツインバスターライフルを宇宙へと上がってくる敵機へと構える。 「堕ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 何度目かの銃爪を弾き、ツインバスターライフルから放たれる光が、漆黒の宇宙から蒼い海へと向かっていく。 瞬きをする間もなく光が敵機を飲み込み、海へと突き刺さる。 これでいい。これで敵は宇宙へと昇ってくることはできない。 ゼロの言うプラネイトディフェンサーを展開した様子がない以上は撃墜できたか、熱に耐性のある装甲で防いだかのどちらかで はあるが、 例え後者であっても機体がビームの圧力に耐え切れずに押されて地上へと落下するはずだ。 そのことをゼロから伝えられると同時に、モニターにピンクの筐体が映った。 「アグッ!」 機体に大きく衝撃が走る。 ◆◇◆◇◆
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217 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:42:40 ID:uQL9s2QA -
ユウキ・ジェグナンはG-3基地施設から離れ、南へとグランヴェールを疾走させていた。 馬鹿だ。あの女は大馬鹿者だ。僚機を省みず単独で敵に突っ込むなど馬鹿がやることだ。 他にも広大なソラにいる敵を探す当てはあるのか、ソラに出るまでに迎撃されたらどうするのか、敵が複数であった場合はどうするのか、 合流の手段は、敵のいる高度は、狙撃してくる敵機の性能予測は、そもそもソラでの体捌きの経験はあるのかといった問題などあげればキリがない。 「だが本当の大馬鹿者は俺だ!」 操縦桿を握る手にさらに力が入る。 そもそも己がヘマをし続けたが故に彼女に見切りをつけられたのだ。当然、信用などしてもらえるはずもない。 ボールモドキドモにペースを乱され続け、肝心の初対面も心象が最悪な男など誰も当てになどしない。 せめて冷静沈着な姿を見せることができさえすれば、援護の打ち合わせもできたはずだ。 「生きててくれよルネ・カーディフ・獅子王」 こんなことで彼女を死なせとあればグラン・マやカーラに会わせる顔などない。なによりシャドウミラーを倒すことなどできないだろう。 仲間を見捨てるような人間は仲間には決して恵まれはしないことは経験則でよく知っているからだ。 自分に向かってさきほどの攻撃がないうちはルネも生きている。だから狙撃される危険を推してでもソラへと昇らなければいけない。 やがて、黒い煙と共に自分の目指す先が見えてきた。モニターに表示される施設の映像が段々と大きくなっていく。
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218 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:43:54 ID:uQL9s2QA - 彼はその光景を予想していたが故に絶望はしなかった。
ソラから狙撃する相手がソラへと行く手段を潰さない理由はない。なにより相手の初撃がここに落ちたのは確認済みだった。 現実としてグランヴェールは異世界ラ・ギアス以外の空は飛ぶことはできない。見事なまでにルネと分断されてしまった。 「だがシャトルがここにあるだけとは限らない」 ひしゃげ、潰され、ばらばらとなり炎上する二機のシャトルを背にし、格納庫らしき方向へとグランヴェールを走らせる。 G-3エリアへと撃ち込まれたビームは一射のみである。ならば破壊されたシャトルはここにある二機だけのはずだ。 それにA-1にもシャトルはある。地図上では離れてはいるが、自分の予想が外れていなければそこへ行くまでに大きな時間はかからないはずだ。 レプリ地球―――――ルネがここに来るまでに戦っていた惑星。そこには生命など存在しなかったが建築物などは地球のそれと同じものであったらしい。 そのレプリ地球を作る技術さえあれば、いや、ちょっとした小惑星をテラフォーミングする技術でもあれば、用意されたMAP規模の世界を作り出すことなど造作もない。 宇宙MAPのb-2に映る地球らしき惑星はきっとそれなのだろう。なにしろ宇宙ですら戦闘フィールドとしているぐらいだ。 自分の見たものが虚構でもなければ説明がつかない。本物の宇宙人と日夜戦う自分にとっては、それが最も納得のいく仮定である。 「キタイハソノママ、パイロットハシンデモラウ」 不吉なことを言ったハロは、分からなかったので適当なハロを殴りつつシャトルを捜す。 敵機がどの程度の高度にいるのか、ルネがどこまで昇ったかは不明ではあるが、追いつくためにはシャトルが必要だ。 「間に合ってくれよ! ソラ!!」 シャトルを探すために、ルネを追うためにユウキ・ジェグナンはグランヴェールをさらに加速させる。
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219 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 01:45:26 ID:uQL9s2QA - 【羽佐間翔子 搭乗機体:ウイングガンダムゼロカスタム(新機動戦記ガンダムW〜ENDLESS WALTS〜)】
パイロット状況:急加速によるGの負担により体のいたるところに内出血あり 機体状況:EN30%消費 ゼロシステム稼働中、正面衝突のダメージ 現在位置:b-2 大気圏上空 第一行動方針:敵を倒す 第二行動方針:参加者の人数を減らす。 第三行動方針:一騎、真矢、甲洋とは出来れば会いたくない。 最終行動方針:一騎の生存】 【ルネ・カーディフ・獅子王 搭乗機体:ダリア・オブ・ウェンズデイ(ガン×ソード) パイロット状態:良好 機体状態:EN20%消費、正面衝突のダメージ 現在位置:b-2 大気圏上空 第一行動方針:敵を倒す 第二行動方針:基地周辺の探索 第三行動方針:仲間を集め(タスク、ヴィレッタ、ギリアム優先)、脱出方法を模索 最終行動方針:バトル・ロワイアルの破壊】
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220 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 02:00:33 ID:uQL9s2QA - 【ユウキ・ジェグナン 搭乗機体:グランヴェール(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)withハロ軍団
パイロット状態:ソルダートJのコスプレ 機体状態:良好、コクピット内がハロで埋め尽くされている 現在位置:G-3 シャトル発着場 第一行動方針:ルネを追うためにシャトルを確保しソラへと昇る(G-3に無い場合は東へと向かいA-1のシャトルを確保する) 第二行動方針:仲間を集め(タスク、ヴィレッタ、ギリアム優先)、脱出方法を模索 第三行動方針:なるべく基地は戦闘に巻き込ませたくない 最終行動方針:打倒主催 備考1:グランヴェールはハイ・ファミリア使用不可能。 紅茶セット一式を所持 備考2:自分が立つ惑星がMAP規模程度しかない小惑星と認識。MAPの端と端は繋がっている、 もとい小惑星とその周辺宙域のMAPを支給されたと認識】 【一日目 08:30】 備考:G-3において表に野ざらしとなっているシャトルが二機破壊されました。 予備のシャトルが残っているかどうかは以降の書き手さんに任せます。
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221 :代理投下 超高空攻撃の下 ◇06elPxNp8E[sage]:2010/01/04(月) 02:03:25 ID:uQL9s2QA - 130 名前: ◆06elPxNp8E[sage] 投稿日:2010/01/02(土) 03:22:45 ID:j9yKtzx2
投下終了。 規制されちゃったので代理投下お願いします。 ご覧の通りレイアウトとかミスってるのはwiki収録時に修正するつもりです。 投下乙です。 翔子がんばれールネはもっとがんばれー ソルダートUはそらをとべー
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222 :代理投下 サバイブ ◇ZbL7QonnV[sage]:2010/01/04(月) 02:07:45 ID:uQL9s2QA - ――イスペイルは科学者の悪意と怨念を基に発生した意識体である。
ル・コボルの欠片として戦う力を与えられてはいるが、イスペイルの本質は研究者だ。 未知なる技術の解析と研究にこそ、彼の真価は発揮されると言って良い。 この首輪が如何なる技術で作られた物かは知らないが、人の知識と技術で作られた物である事には変わりない。 それ相応の研究設備と首輪のサンプルさえあれば、必ずや首輪の解除を行えると言う自信があった。 「十六時間以内に二人の参加者を仕留める、か。 ゲームの参加者が合計七十人で、殺害のノルマを課された参加者は七……いや、結果的には六人か。 我々以外にも個別で呼び出されて、ノルマを課せられた人間が他に居なければの話だが。 時間的、効率的な事を考えると、厳し過ぎるノルマである事は否めんな」 不機嫌な声で愚痴を零しながら、イスペイルは首輪の解析結果を検分する。 ヴァルシオーネRのコンピューターと首輪を接続端子で繋ぎ合わせて、爆破条件に抵触しない程度で解析を行おうとしたのだが―― なるほど、シャドウミラーの連中が余裕な態度を見せるだけはあって、それなりに厄介なプログラムのようだ。 少なくとも、ソフトウェアの方面から攻略するには、かなりの知識と設備が必要になる事は間違い無いだろう。 ……だが、首輪の爆破コード。 殺害ノルマを課された七人のジョーカー。 イスペイル自身を含めた彼らの首輪に共通する、十六時間のタイムリミットで爆破されると言う条件に関しては別だ。 これについては、かなり有力な情報を知る事が出来た。 二人の参加者を仕留めると言う殺害ノルマをこなす他にも、どうやら爆破条件をクリアする方法は存在するらしい。
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223 :代理投下 サバイブ ◇ZbL7QonnV[sage]:2010/01/04(月) 02:09:26 ID:uQL9s2QA - 「……パスワードの入力。
バトルロワイアルの支給機体である、以下に挙げられた機動兵器の“正式なパイロット名”を答えよ。 全十問。七問以上の正解によって、首輪の爆破条件は解除される。一度答えた問題について、再回答を行う事は不可能。 十問全てに正解した場合、スペシャルボーナスとして支給機体一つ、もしくは参加者一人の詳細情報を得る事が可能。 なお、ジョーカーに課せられた爆破条件を解除する方法は、各人によって異なる事を追記する、か……」 エヴァンゲリオン初号機、ダンクーガ、ファフナー・マークゼクス、アクエリオン、アルトアイゼン・リーゼ、 ジャイアント・ロボ、グレートマジンガー、ZZガンダム、ウイングガンダムゼロカスタム、クロスボーンガンダムX3。 全く見覚えの無い機体名が羅列する様子を眺めながら、イスペイルは今後の方針を頭の中で纏める。 まず真っ先に優先するべきは、首輪の爆破条件を解く事だ。 二人の参加者を殺すか、それともパスワードの入力を行うか。 どちらにせよ、他の参加者との接触は避けられまい。 イスペイルは知らなくとも、他の参加者はパスワードの答えを知っている可能性が非常に高い。 人殺しを厭う気持ちなど、ル・コボルの欠片であるイスペイルには存在しない。 だが、首輪の爆破条件の事を考えると、考え無しに参加者を殺して回る事は避けた方が良さそうだ。 このバトルロワイアルに支給された機体とやらに、直接当たってみるのも手かもしれない。 自意識を持った機体であれば、機体自身の口からパイロット名を聞き出す事が出来る。 ログや設定を調べる事が出来れば、ユーザーネームを探り当てる事も不可能ではあるまい。 コンピューターが破壊されては、何の情報も引き出せなくなる。機体の壊し方についても、ある程度考慮した方が良いだろう。 ……この会場内に存在する施設を調べてみるのはどうだろうか。 可能性は低いかもしれないが、シャドウミラーのデータベースにアクセスする事が出来れば、機体の情報を得る事も可能なはずだ。
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225 :代理投下 サバイブ ◇ZbL7QonnV[sage]:2010/01/04(月) 02:13:41 ID:uQL9s2QA - 「人と機体が集まりやすく、データベースのアクセス権を得られる可能性が高い、最も手近なエリア。目指すべきは、それだな。
この位置からだと、A-1……もしくはG-2周辺の基地を目指すべきか。 私と同じく、ジョーカーとして選ばれた参加者も施設に向かっているやもしれん。 大規模な戦闘が発生しない内に急いだ方が良さそうだな……」 パスワードによる爆破条件の解除について、イスペイルに疑いを持つ気持ちは無かった。 解けないパズルを寄越されたと言う事は、まず無いと考えて良いからだ。 そしてイスペイルが“パスワード”の存在に気が付いたのは、かなり注意深く首輪を調べてみた結果の事だ。 おそらくジョーカーの中でも、このような抜け道が存在する事に気付いた者は多くあるまい。 血気に逸る若者や、怯えた表情を見せる子供。 この殺し合いと言う状況下で冷静さを保ち続けられる人間が多くないだろう事は、あの場に於ける反応を見れば充分であった。 あの場に呼び出された自分以外の六人――いや、今は五人か――の顔と声は記憶している。 自分が握っている解除条件に関する情報は、なんらかの交渉カードに使う事も不可能ではない。 命が助かる方法を増やせるとなれば、あの場に居た六人――また間違えた、五人だ――は恐らく耳を傾けてくれる余地はあるだろう。 「……生き残って見せるぞ、私は」 決意の呟きを洩らしながら、イスペイルは機体を目的地に向かわせる。 ――生存。 ル・コボルの欠片から生れ落ち、いずれ消滅する事を宿命付けられたイスペイルの、それが生きる目的であった。 イスペイルは生きる為に抗い続ける。 このバトルロワイアルと言う状況に於いても、それは全く変わる事が無かった。 【イスペイル 搭乗機体:ヴァルシオーネR(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL) パイロット状況:良好(いつまでも苛立ってはおられん……) 機体状況:良好 現在位置:D-7 南端部 第一行動方針:まずは生存する為にノルマ(ノーマル、アナザー、どちらでも可)を果たす 第二行動方針:出来れば乗り換える機体が欲しい 最終行動目標:自身の生還 備考:首輪の爆破解除条件(アナザー)に気付きました】 【一日目 7:30】
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226 :代理投下 サバイブ ◇ZbL7QonnV[sage]:2010/01/04(月) 02:15:52 ID:uQL9s2QA - 143 名前: ◆ZbL7QonnV.[sage] 投稿日:2010/01/02(土) 22:44:51 ID:cKBC4ViY
イスペイル様投下。 普通に殺し合う以外でもノルマ達成方法があった方が、展開的に幅が広がるかもしれないと個人的に思ったりした。 首輪の解除条件(アナザー)はジョーカー各人で異なり、アナザー条件が存在しない者も中には居るかもしれない。 アナザー条件の存在に全く気付かず、ノルマを達成した後で知る人間も居るかもしれない。 その辺りは、これからの展開次第と言う事で。 ……∀、ガンバスター、オーグバリュー、デュラクシール、ラーゼフォン、ゴッドガンダムと超強機体が普通に支給される中、 特別強い機体とは言えないヴァルシオーネRを「チョー強い機体よぉん♪」と支給されたイスペイル様を哀れに思った事は否定しない。 ちなみにパスワード機体の選出基準は、現時点で二人以上の人間が解答を知っている事だったりします。 ダンクーガは忍が「俺の機体!」と叫んでいたので、アポロ、カナード、ガトーが答えを知っている。 クロスボーンX3はトビアの話を詳しく聞いていたらしいので、トビアとトレーズ様が知っている。 投下乙! イスペイル様が科学者っぽいけどどこか頼りないのは何故だぜ ロボットラリー頑張ってw
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228 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:19:43 ID:uQL9s2QA - 暗い空の下に作られた、隕石の衝突した跡――クレーター。
そのすり鉢状の地形に作られた街も、いまや住む者はいない。 響くのは、一機のモビルスーツの駆動音だけだ。 「やっぱりだ……俺の知っているフォンブラウンによく似ている……」 ∀ガンダムのウィンドウから周囲を探索し、コウ・ウラキは静かにそうつぶやいた。 B-1の月面都市に飛ばされた彼は、移動しているうちに気付いたのだ。 街並みが、どことなく自分の知るものに近いことに。 もちろん、月面都市の構造物は重力その他から似通った形状になる傾向がある。 しかし、それでも通りなどの区画整理までがまったく同じというわけでない。 その、同じというわけでない部分が、確かにコウの知るものに似ていたのだ。 「どうなってるんだ? 俺の知る店もあることはある。けど……」 酷く、老朽化している。 自分の記憶の中で、一番新しくできたくらいの建物が、時代に取り残されたかのように古くなっているのだ。 既知のはずのものが、記憶と正確に繋がらない。大きさが合わないパズルのピースのような違和感。 それに戸惑いながらも、コウは機体をまっすぐに目的地へ進める。 彼が目指すものは、ここがフォンブラウンとするならUC世紀のモビルスーツパイロット誰でも探そうとする施設。 すなわち、アナハイム・エレクトロニクス。数多のモビルスーツを製造してきた軍事企業だった。 もしかしたら、何か機体が、いや機体ではなくてもパーツか何かがあるかもしれない。 もっともこの人っ子一人いない模型のような世界が、本当に自分が知るアナハイムのようになっているという前提だが。 ともかく現状具体的な移動方針がない以上、そこ以外今のところ目指すべき場所がコウには思いつかなかった。 しばらく時間をかけて、周囲を警戒しながらも辿り着いたアナハイム・エレクトロニクス。 心の中でニナに小さく謝りながらも、シャッターを破り工場内に∀ガンダムを押し入れる。 そこにあったのは――― 「なんだ、これは……?」 GP-03があることを期待していたわけではない。 何らかの機体でも、いや核を安置し隠せる場所があればいい。 そのくらいの期待度で工場に入ったコウだったが、入った工場内にあったものは、想像をはるかに超えたものだった。 地面に設置された円形のプールのような物体。その周囲に立っている4本の柱。 当然、こんなものがアナハイムにあるはずがない。 そもそも、モビルスーツ搬入に当たってこんなものがあれば邪魔以外何ものでもないのだから。 機材の意匠ともいうべきものも、UC世紀のものとは一線を画すデザインだった。
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229 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:21:14 ID:uQL9s2QA -
ピピッ、とコクピットに通信、いや録音されていたメッセージが機材から発信された。 コウが送られた音声データを再生すると、合成された機械音声が流れだす。 『空間転移装置使用者へ。空間転移装置は、宇宙と地上の特定の位置同士をつなぐ装置である。 時間にラグなどは起こらないかわり、行先は初期設定された場所にしか飛べない。 宇宙の任意の場所に移動したのであれば、別ブロックに存在するシャトルを利用すること』 さらにずらずらと表示される簡単な注意事項。 「空間転移だって?」 SF小説くらいでしか聞いたことのない技術。 それが現実に実用化されているなど、聞いたことがない。これは主催者の冗談か何かなのか。 踏み込んだ途端死んでしまうようなデストラップではないとは思いたい。だが、にわかに信じがたいのも事実。 どうするべきか――悩むコウだったが、彼は踏み込んでみることにした。 大きな理由があったわけでもない。ふとここと繋がっている場所を見て、踏み出すことを決めた。 空間転移など、信じているわけではない。だがちらりと思う部分があった。 もし、こんな装置が実用化されているとしたら、自分たちはもっと迅速に追いつけたのではないか。 あのような追い込まれた状態になる前に手が打てたのではないか。 そんな、気持ちが。 アナハイムの空間転移装置と繋がっている場所は――コロニーだった。 ■ 「……というわけです」 クルーゼは、突然目の前の装置から現れたモビルスーツの話を聞き、眉を寄せた。 「空間転移……なるほど、にわかに信じがたい話だ。ミスト君、君はどう思うかね?」 そう言いながらも、同行者に話を振るクルーゼ。 すると、顎に手を当て悩んでいた様子のミストが口を開いた。 「空間転移システムは、アトリームにはありましたよ……既に実用化され、機動兵器にも組み込まれていたものが」 「……アトリーム? それは一体どこの地方の名前なのかな?」 「地方じゃありません。俺の生まれた星の名前です」 そう言った後、データウィンドウシステムなる、 兵器をデータ化した後、転移することで呼び出し使用するシステムがあったとミストは告げた。
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231 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:25:41 ID:uQL9s2QA - しかし、コウとクルーゼにとっては、そこよりももっと気にかかる部分ができてしまった。
「星……アトリーム!? それじゃ、もしかして宇宙人……!?」 「そうですけど……別にメンタルはそこまで変わりませんよ、多分」 「いや待ってほしい。先程君は地球と言った。地球のことを知っている宇宙人……ということになるのか? 宇宙クジラから、そういった生物がいるかもしれないという話は聞いていたが……」 「『宇宙クジラ』? また聞いたことがない言葉が……」 「ナチュラルでも『宇宙クジラ』くらいは聞いたことがあると思ったのだが」 「ナチュラル?? ニュータイプみたいなものなのか?」 「ちょっと待ってください、地球に来て日が浅いとはいえ、コウさんの言葉もクルーゼさんの言葉も俺は聞いたことがありません」 「……なんだって?」 「確かに。先程の話で気になっていたがアナハイム・エレクトロニクスという大手軍事企業は聞いたことがない……」 世界間の齟齬、ここに極まれり。 誰もが自分の世界を当然として語っているため、激しい食い違いが生じている。 なにしろ、前提となる知識が違うのだ。かみ合うはずがない。 にわかに不穏な空気が漂い始めた時、それを過敏に察知しクルーゼが言った。 「……どうやら、我々は認識している常識が違うらしい」 クルーゼは口を挟まないように、と前置きした後コズミック・イラの世界における常識を説明した。 顔を歪める二人に、次はコウに説明してくれと話を振ると、コウもいぶかしんだ様子ではあったが話し始めた。 最後は、当然ミストの番だ。 話し終えて残ったのは、なんともいえぬ雰囲気。 「……どうやら、あのヴィンデル・マウザーは想像以上の力の持ち主のようだ」 一番にこの現実へ適応したのは、クルーゼだった。 なにしろ、他でもない自分自身があの主催者の超技術のおかげで生存しているのだから。 あれほど克明な死の感触を覚えている。塵も残らなかった自分が生きている以上、そういうのもありかもしない。 だがそれよりも大きな理由がある。クルーゼが二人の説明する世界を肯定した理由は他でもない、戦争の存在だ。 (実に、愉快だと思わんかね? 君は世界はそうものではないと言ったが……どの世界も変わらないぞ?) クルーゼの脳裏に浮かぶのは、死の直前まで戦っていたフリーダムのパイロット、キラ・ヤマト。 彼は、世界はそんな絶望するものではない、人は手を取り合えると言った。 だが、これは何たる喜劇か。どの世界も、宇宙と地球に分かれて、終わらない戦いに明け暮れている。 宇宙人から見ればあきれるほどに戦争を続け、戦争が終わればテロリズムという形で憎しみの環を広げる地球人の姿。 それは、クルーゼにとってなによりもリアルな人間の姿に思えた。
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232 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:28:11 ID:uQL9s2QA -
「なんてことだ……なら、こんなガンダムもありえるのか……?」 コウの呟きを聞き、クルーゼはどうかしたのかと問う。 「このガンダムには……核ミサイルが搭載されているんです。しかも二発も。 その他の性能も、自分が知るガンダムよりはるかに強力な仕様になっていて……」 「……なるほど、考えられないわけではないな」 ジェネシスという殺戮兵器を生み出した世界があるのなら、世界を滅ぼすため核兵器を搭載したモビルスーツを作った世界があってもおかしくない。 むしろ、広い数多の世界をめぐればそんな兵器も多く転がっているのかもしれない。 「だが、これで謎は解けたというわけだ。見たこともないような兵器、食い違う組織名やその実態。 『世界』そのものが違うと考えれば無理はない。ところでミスト君、アトリームは地球より技術が発達していたようだが……」 「確かに、無数の平衡する次元世界があるという決定的な論文は出ていたはずです。けど、その間を移動する技術までは……」 「……勝てるのか? あのヴィンデル・マウザーに……」 こちらの想像だにできない超技術を持つ以上、当然それは兵器に転用されていると見て間違いはない。 となれば、アカツキのようにあくまでこちらの技術の延長で考えられるレベルの機体では、太刀打ちすら難しいだろう。 「大丈夫です! こうやって、仲間を増やして首輪を外せれば……絶対に勝てます!」 明るいミストの声。なるほど、これほど純粋に人を信じられるのは宇宙人だからなのか。 だが、それはあまりにも無知と言うしかない。何故なら地球人は――― (憎しみに曇った目と、引き金を引くことしか知らぬ指で、なにが出来るというのかね?) ――ああ、滑稽だ。 さらに仲間を探そうとコロニーの探索を再開した三人の頭上に、穴が開く。 ビームの光が、空から降り注ぐ。 「敵襲だ!」 「くそっ! こんな時に争ってる場合じゃないのに……!」 浮足立つ二人。それを見つめるクルーゼ。 「……こんな時だからこそ、人は争うのだよ」 呟きは、どこにも届かず消えていった。 ■
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242 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:43:25 ID:uQL9s2QA -
小型の二機が建物の陰に隠れ、ヴァルシオン改は高層ビルを盾にする。 もちろん60mを超える巨体は隠しきれるものでは到底なかったが、ヴァルシオン改にはABフィールドが搭載されている。 ヴァルシオン改の厚い装甲と合わせれば、ビーム兵器である限り被弾してもたいしたダメージではない。 ∀ガンダムとアカツキが、ビームライフルを抜き、応戦しようとするのが見える。 ミストは、慌てて二人の行動を止めるために叫んだ。 「待ってください! もしかしたら、恐慌状態か何かなのかもしれません! 先に警告……いや話をさせてください!」 射撃のため建物から身を出そうとしていたのを引っ込めると、クルーゼが言う。 「しかし、既に引き金は引かれてしまった。それでも、話そうと言うのかね?」 「わかってます! けど……俺は地球人全体がそこまで愚かとは思わない!」 クルーゼの返事も待たず、ミストは蒼い飛行機体に通信を繋げる。 「攻撃をやめてくれ! 俺たちが殺し合う理由なんてどこにもないはずなんだ。 あの男の言うことを聞くなんて間違っ――っ!」 ヴァルシオン改に向けられる射撃。 巨体を動かすために全身に据え付けられたスラスターが一斉に火を噴き、機体を後ろに飛びすさらせる。 ミストは、改めてこの殺し合いを開いたヴィンデル・マウザーへの怒りを感じた。 今、こちらに攻撃を仕掛けている蒼い飛行機体のパイロットは―― 「まだミドルスクールくらいの子じゃないか……!」 そう、中学生だったのだ。 こんな子供まで殺し合いに巻き込むとは、明らかに常軌を逸している。 「どうかしたのか!?」 「子供です! 子供が乗ってます!」 その言葉を聞き、軍人であるコウも息をのむ。 ゲリラなどでは確かに少年兵などもあるのはコウも知っている。 しかし、彼が向かい合ってきたのは誰もがコウよりも戦い慣れた古兵ばかりだった。 「きみ、止まってくれ! 頼む!」 ミストが攻撃を回避しながらも何度も呼びかける。 しかし、帰ってくるのは「守るんだ」「守らなきゃ」といった呟きのみ。 「なるほど、まだ新兵か。若い兵隊にはまれによくあるものだ」
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246 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:46:27 ID:uQL9s2QA -
クルーゼがそう言いながら、ついに発砲した。 クルーゼの言う通り、まだ慣れていないのか、撃たれて一度身動ぎしてから蒼い飛行機体は回避した。 距離が開いていなければ、間違いなく直撃だったろう。空に昇っていくアカツキ。 さらに制止の言葉をかけようとするミストの声を遮り、クルーゼはすらすらと説明の言葉を紡いでいく。 「待ってください! まだ……」 「まだ戦場に慣れていない兵隊に、まれにあることだ。撃たれる恐怖などから集中、いや熱中し引きこもり、 その状態が慢性的になることで一種自閉的な状態になる。もっとも、戦場全体を見ればよく見るものでもあるが。 矛盾しているが、まさに『まれによくある』ものだよ」 クルーゼの正確な射撃が、蒼い飛行機体を正確に追い詰めていく。 「そういう場合、呼びかけて駄目な場合、機体をどうにかして止めて、コクピットから降ろすしかない。 伊達にモビルスーツ隊の隊長はやってはいないさ」 最小限の動きで簡単に回避するクルーゼ。高い空間把握能力のたまものだった。 「というわけだ。ひとまず機体を停止させるため、戦って止めるべきだと私は提案するが?」 「わかりました! そういうのなら任せてください! 暴動の鎮圧などは慣れてますから!」 ミストは、最初にクルーゼという同行者を得ることが出来たことに感謝した。 大局的に物を見られる隊長としての広い視野。そして、確かなパイロットとしての腕前。 味方になってくれるのであれば、これほどありがたいことはない。 ミストの機体が、一気に前に出る。逆に、∀ガンダムとアカツキは、後ろに下がる。 機体を停止させるため狙うのは、手足と、スラスター部分。となれば、ただ撃墜するだけではだめだ。 狙ってやる場合、撃墜の三倍捕獲、鹵獲は難しいと言われている。 だが、その困難もミストにとっては対して気になるものではなかった。 何故なら、これほど心強い仲間がいるのだから。 「見ていろ……! すぐ救ってやるからな!」 ヴァルシオン改に搭載された射撃兵器を起動。あえて照準を右18ほどずらす。 こちらが攻撃シークエンスに入ったのを見たのか、手に持った巨大な携行火器を撃つ相手。 しかし、AB(アンチ・ビーム)フィールドの名が示す通り低威力のビームはいとも簡単に弾き飛ばす。 逆に、ヴァルシオン改から放たれた一撃は、強烈無比。 「いけっ! クロスマッシャー!」 赤と青。二色の光が混じり合い、螺旋を描きながらも一体化して打ち出される。 その一撃は、直撃せずとも蒼い飛行機体の姿勢をあおり、安定を乱すに十分だった。 しかし、 「なんて威力だ……コロニーの中でそんな武器を使うんじゃない!」 それだけに飽きたらず、いとも簡単にコロニーの外壁を貫通した。 コウからの忠告を、ミストは嫌な汗を流しながら肯定する。 想像以上の一撃がまき散らした破壊を見て、直撃コースで使うはめにならなくてよかったと思う。
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251 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:49:31 ID:uQL9s2QA -
「前に出すぎだ! 行けぇー!!」 その隙に、コウが一気に飛び出る。 その手にもったビームサーベルが勢いよく振り下ろされるが、携行火器から銃剣に似たものが現れ、それを受け止めた。 「くっ! 空中戦は宙間戦闘と勝手が違いすぎる!」 戦闘にスラスターを回しているため、半ば落下しながらでも蒼い飛行機体と互角以上に切り結ぶ∀ガンダム。 相手が素人同然とはいえ、それでも慣れてないとは思えないコウの戦闘への順応性の高さに、ミストは驚嘆する。 「もう少しで捕縛できる高度です! コウさん、お願いします!」 「わかってる!」 「私も忘れてもらっては困るな」 アカツキが蒼い飛行機体の背後から、銃剣型のビームサーベルを抜き放ち、切り掛かる。 「ウラキ君。君は先に降りて、あの武器の準備を。あとは私に任せてもらおう」 「わかりました!」 ∀ガンダムが地上に落下する。そして、地面を踏みしめた。 「あの武器ってなんなんですか!?」 「見れば分かる! 離れてくれ!」 そう言って、∀ガンダムがとりだしたのは―― 「鉄球!?」 鎖のついたトゲ鉄球。これ以上ないほどに原始的な武装だった。 それを、頭上で回転させる∀ガンダム。その回転はどんどん勢いを増していく。 どういうことなんだと考えるミストをよそに、自体は進行する。 通りの少し離れたところに、二機がもみ合いながら落下した。 上になってイニチアチブを取っているのは、もちろんアカツキだ。 蒼い飛行機体を蹴り飛ばし、距離を取るアカツキ。 「これでダウンだ! でやぁぁぁっ!!」 起き上がろうとする蒼い飛行機体を、鉄球が正確に打ちすえた。 ■
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253 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:52:16 ID:uQL9s2QA -
声が聞こえる。 「そうか……! 機体にダメージを与えないように機体内部にだけ衝撃を伝えたんですね!」 「仲間に引き入れるにしても、機体が危険な状況では困るのでね。 むしろ、そう言った武器があることを伝えてくれたウラキ君のアイディアだ」 「けど……これ以上強い相手じゃ手加減は難しいかもしれない」 「大丈夫ですって! こっちもどんどん仲間も増えるんです、絶対に……助けられます!」 誰かの声が聞こえる。 誰の声かわからない。聞いたことのある声かすら思い出せない。 記憶力には自信があった……気がした けど、何があったのか、少し前自分がなにをしていたのか思い出せない。 助けなきゃ。 守らなきゃ。 そう思っていた。 けど、どうやって助ける? 守る? そうだ――殺さないと。そうればいい、と誰かが言っていた。 それだけが、守るための方法だと。 ――守れた――守らなきゃ――守れなかった――守りたかった―― とても悲しいことがあった。 思い出したいと思うのに、忘れちゃいけないと思うのに、思い出せない。 ただひたすらに、悲しい。 ――本当に? ――本当に何故悲しいのか思い出せない? ――守りたければ、悲しめばいい。 ――悲しみが、もっともっと守るための力になる。 矛盾している。 守れなかったから悲しかったはずなのに、守るために悲しめと何かがささやく。 お前の見ているものを。 お前の聞いているものを。 お前の味わっているものを。 お前の感じているものを。 お前の痛み――悲しみを。 もっともっとなにも考えずに渡せばいい。 悲しむためのココロを取り戻せ。 それ以上でもそれ以下でもない。ちょうどただ悲しむためだけのココロを。 自分でない何かが、そう嘯く。けれど、自分の声のようにも思う。 大食らいのナニカが、自分に向かってニヤリと笑った気がした。 ■
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254 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:53:17 ID:uQL9s2QA -
直結されるガナリー・カーバー。 スフィアに取り付けられた外付けの装置に火が灯る。 悲しみの乙女のスフィア――悲しめば悲しむほど力に変換される。 力を使えば使うほど、五感を奪う。 大いなる因果律の果て、大極と結び付くことによって組みだされるエネルギー。 春日井甲洋は選ばれた存在ではない。正しく力を引き出すことはできない。 しかし、変換効率は悪くともレモン・ブロウニングの取り付けた装置は強引に両者を繋ぎ止める。 中枢神経が侵され、思考すら奪われ外部に反応することすら不可能なはずの春日井甲洋が、何故マシンを操縦できるのか。 その答え。 魂の融合ともいえるスフィアと結ばれるため、外付けされた思考するための経路。 廃人ともいえる人間に、さらなる過酷な戦いを強要する思考回路。 悪魔の装置――あるいは、女神の装置。 レモン・ブロウニングの声―― 『こんなタイミングで呼び出すつもりはなかったのだけど……そうなってしまった以上仕方ないわ。 自分という存在を失ったあなたが、それでもあなたであり続けたいのなら……私は可能性をあげる。 完全に自分に戻れるのか、『自分がここにいる』と証明できるのか……見てあげる。 フフッ、いや違うかもしれない。私が見たいだけ、かもね』 フェストゥムと同化したはずの脳を、強引にスフィアの力が潜り込み、彼の意識を呼び戻す。 覚醒したとは言い難い混濁した意識のままの春日井甲洋。 しかし、彼はこの状態とよく似たものを知っていた。 スフィアと機材を通して強引に接続された状態を。 それは――ファフナーを操縦していた時によく似ていた。 「俺は絶対に、仲間を見捨てるようなことはしない……絶対に……絶対に、助けるんだ……!!」 スフィアとの融合――変性意識の影響で零れる本音――いや魂の叫び。 虚ろな金色の瞳に、僅かに光が灯る。 ■
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257 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:54:21 ID:uQL9s2QA -
「なんだ……あの光は!?」 突然、蒼い飛行機体から漏れ出した輝きに、コウが声を上げる。 「まだ戦えるのか!?」 「くそっ、戦う必要なんてないのに……っ!」 三者三様のリアクション。しかし、その一切を無視し、パイロットが叫ぶ。 「俺は絶対に、仲間を見捨てるようなことはしない……絶対に……絶対に、助けるんだ……!!」 そして――爆発。 先程まで蒼い飛行機体がいたはずの場所が、一瞬でえぐれとんだクレーターにかわる。 光の粒子が空まで軌跡となって伸びたいたことで、ミストも気付く。それが、スラスターによる衝撃だったことに。 そして、次の瞬間降り注ぐビームの雨。 ヴァルシオン改のABフィールドが、その雨を防ぐ。しかし、その衝撃は殺しきれるものではない。 クルーゼが、空へうって出る。 ビームライフルが、蒼い飛行機体へ向けられた。 しかしそれを、慣性を無視したような動きで回避すると、一瞬でアカツキに肉迫している――! 携行火器から現れた、機体の倍はあらんというビームサイズ。それが、アカツキに振り落されようとしている。 「くっ!」 コウがビームライフルで両者を割る。 その隙に、アカツキはどうにか距離を取った。 「先程までとは別人……いや、別の機体だな……! ミスト君、引くぞ!」 「引くって……このまま放置するっていうんですか!?」 「そうだ! 撃破するならいざ知らず、殺さないと言うのは不可能だ。ここは引く……!」 ヴァルシオン改を∀ガンダムとアカツキの前に出す。 「俺の機体が一番頑丈です! しんがりを務めるので早く逃げてください!」 「合流する場所は、『ウラキ君とあった場所』だ! そこならば逃げられる!」 「了解しました!」
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259 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:55:37 ID:uQL9s2QA -
クルーゼの言った符号に、ミストも納得する。 空間転移装置なら、移動した後破壊すれば転移を防げるし、相手が転移装置と気付かなければ見過ごされることも期待できる。 ヴァルシオン改が、ディバインアームを引き抜くと、横薙ぎに振るう。 いとも簡単にビルの上部が吹き飛び、瓦礫となって空を舞った。 蒼い飛行機体は、瓦礫の隙間を抜こうとはせず、後ろに下がる。 「確かに機体性能は上がったけど……別にパイロットの腕が上がったわけじゃない。いける!」 ヴァルシオン改の巨体が空に舞い上がる。 回り込むように眩く輝くビームキャノンを相手は放ってくる。 先程より威力があがっているのだろう。しかし全包囲をカバーできるABフィールドはいまだ健在だ。 一撃を決めれば、特機は通常勝てると言われる。それは、圧倒的な質量その他で一撃で相手を粉砕できるから。 だが、ミストはそんな結末を望んでいない。 だから。 ミストは、敢えて周りの建物をディバインアームで壊し、飛礫を空に舞い上げる。 相手は、散弾のように降り注ぐコンクリート片をかわしながら攻撃を繰り返すが、ヴァルシオン改はびくともしないのだ。 時間を稼ぎつつ、致命的な一撃を避けあくまで『制圧』にこだわるミスト。 しかし、繰り返すうち、相手はこちらの攻撃を、余裕を持って回避するようになってきている。 「まさか……こちらのモーションを読んでるのか!?」 単調に見えて、角度やタイミングなどをこう見えても織り交ぜて変えている。 そのはずなのに、相手はこちらの行動の出掛りを正確に判断し、動き始めているのだ。 攻撃こそABフィールドが防いでくれるが、確かに被弾量が増えている。 別の攻撃を織り交ぜるべきだとは思っている。 しかし、クロスマッシャーは威力が高すぎて、コロニーそのものを破壊しかねない以上使用できない。 となれば残弾が二つしかないエナジーテイカーしかヴァルシオン改は持たない。 元々、さまざまな汎用兵器を元に戦うタイプの機体を使っているミストは、 武器の種類がある程度ある前提での戦術しか分からない。 こうやってヴァルシオン改で戦っている今も、だましだましと言っていいのだ。 焦る心からか、行動が本当に単調になってしまっていたことを、懐に飛び込まれてから知る。 「まずいッ!?」 相手の携行武器から、アカツキ相手に使った巨大なビームサイズが伸びる。 慌ててディバインアームで受け止めた。
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261 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:57:01 ID:uQL9s2QA -
「しめた……! これならいける!」 相手の機体の倍近い巨大なビームサイズと、ディバインアームはほぼ同じ大きさだ。 しかし、それを支えている機体の全長は、3倍以上の差がある。 力による押し合いなら、圧倒的にヴァルシオン改が上なのだ。 「このまま地面に抑える!」 ディバインアームに力を込め、相手を上から抑えようとする。 相手も、必死にスラスターを吹かせて、踏ん張っているが、こちらのほうがなお上だ。 このままならいける。そうミストが確信した時だった。 カチリ、とどこかでスイッチの入る音がした。 一気に身体が沸き立つ感覚。脳が痛むほどに負担がかかる。 「が、ァああああああああァァァッッッ!!!?」 ゲイムシステムに抵抗できたのは、一重に彼の救護魂、人を殺すのではなく助けようという思いからだろう。 すぐさま殺意にのまれなかった分――その苦しみは、激痛となってミストを襲う。 だが、そんな状態で機体を正常に制御できるはずがない。ディバインアームが上に引き上げられ、相手が解放される。 「しまっ――――!」 ゲイムシステムを拒否するミストが頭を押さえたその一瞬。 その隙に、空に舞い上がった蒼い飛行機体は、別の場所をロックオンしていた。 ロックオンしている先は――逃げるクルーゼとコウ。 割って入ろうとする。しかし、ヴァルシオン改の動きはあまりに鈍重だった。 防ぐことは叶わず、今までにないほどの巨大な光の柱が打ち出された。 ザ・グローリー・スター。栄光の星を意味する一撃は、この偽りの宇宙に浮かぶコロニーを、星のように輝かせるに十分な一撃だった。 「うあああああああああああああああああああ!!!」 ミストの絶叫。ゲイムシステムへの抵抗の放棄。 仲間を撃った蒼い飛行機体へ、思考の全てを放棄し突撃する。 即座に携行武器がヴァルシオン改に向けられ、ビームキャノンが打ち出された。 ABフィールドと、巨大なビームキャノンがぶつかり合い、金属を蒸発させるような音を立てる。 勢いを増すビームキャノン。スラスターの全てを焼ききれんばかりに燃やすヴァルシオン改。
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264 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:58:48 ID:uQL9s2QA -
しかし弾き飛ばされたのはヴァルシオン改だった。 コロニーの街並みをえぐり飛ばしながら、どこまでもビームの勢いに押され転がっていく。 ミストが、身体を起こそうとする。しかし、できなかった。 ヴァルシオン改は――偶然にも空間転移装置に触れていたのだから。 ヴァルシオン改の姿が消えさる。 カチン、とどこかでシステムのブレーカーが落ちる音がした。 ■ 「……大丈夫かね?」 「ええ、こっちもなんとか……」 月面都市に辿り着いた∀ガンダムとアカツキがその場に崩れた。 「多分、このガンダムじゃなかったら蒸発してるでしょうね……」 「まったくだ……戦艦の主砲にも耐えるとあったがそれ以上と言うことか……今回ばかりはオーブの技術とやらに感謝しよう」 あの超砲撃から咄嗟に彼らがとった方法は、∀ガンダムのIフィールドを限界まで張ったのち、 少しでも弱めたものを全身ビーム反射装甲で覆い尽くしたアカツキの装甲で受け止めると言うものだった。 戦艦の主砲にすら耐えるさしものヤタノカガミも、 因果律から組み上げられる一撃の前には防ぐのがやっとで跳ね返すことなどできなかった。 全身が黒ずみ、手足など末端はもはや燃え尽きているも同然である。 「咄嗟に盾になってもらえなかったら、こっちが大破していたかもしれない……」 アカツキの有様に息をのむコウ。 それにクルーゼは飄々と答えた。 「なに、仲間や部下を助けるのは当然だろう。 ……すまない、機体を起こせない。こちらの手を握って起こしてくれないだろうか」 「わかりました!」
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266 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 02:59:42 ID:uQL9s2QA -
助けてもらったという信頼感。 そして戦闘後と言うことから多少緩んだ意識のまま、伸ばされたアカツキの左腕を掴む。 アカツキの左腕は、焼けて指を失い黒ずんでいる。それを∀ガンダムは掴むと、一気に引き起こし―― 「さよならだ。核を持つそのガンダムは、私が貰い受けよう」 アカツキの右手が、ちょうど目の前にきた∀ガンダムのコクピットをまっすぐに突いた。 【コウ・ウラキ 死亡】 「なるほど……これがナノスキン装甲と言うものか」 コウの死体を降ろし、あらかた血を拭き取った∀ガンダムのコクピットに乗り込んだクルーゼは静かに呟いた。 この∀ガンダム、全ての名を冠する通り、凄まじい能力を秘めている。 「機体は失ったが……結果としてもっといい機体と情報を確保することが出来た。 結果的には、幸運ということか」 強力で、しかも世界を滅ぼす『核』の力を持つガンダム――それは、まさに自分にこそふさわしい。 その時、横で空間転移が起こった。そこにいたのは、全部装甲を破壊されこそしたが、まだまだ健在なヴァルシオン改の姿。 呼びかけるが、返事はない。気絶しているようだ。 さらに都合がいい――このお人よしの青年は、おそらくこちらの嘘を信じてくれるだろう。 なにしろ、アカツキの装甲さえ知らなければ生き残ったこと自体奇跡と思うだろうから。 「人は争う……何故か? ミスト君、それは……それが人間だからだよ」 クルーゼの顔には、邪悪な笑みが広がっていた。
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268 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 03:00:58 ID:uQL9s2QA -
【ミスト・レックス 搭乗機体:ヴァルシオン改@スーパーロボット大戦OGシリーズ パイロット状況:気絶 機体状況:前面部装甲破損 エネルギー消耗(中) 現在位置:B-1 第1行動方針:仲間を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先) 第2行動方針:イスペイルを倒す 第3行動方針:戦いに乗った危険人物は倒す 最終行動方針:シャドウミラーを倒す】 ※ゲイムシステムは、戦闘が終了すると停止します。一定時間戦闘していると再び発動。 【ラウ・ル・クルーゼ 搭乗機体:∀ガンダム@∀ガンダム パイロット状況:良好 機体状況:全身にダメージ(小) コクピットブロックのガラス等を破損 (どちらも短時間で再生します) 核装備(2/2) 現在位置:B-1 第1行動方針:手駒を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先) 第2行動方針:できるだけミストに戦わせ、自身は安全な位置に置く 第3行動方針:ミストを使い邪魔者を間引き、参加者を減らしていく 最終行動方針:優勝し再び泥沼の戦争を引き起こす 】 ※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません。 【アカツキ(シラヌイパック装備)@機動戦士ガンダムSEED DESTINY 機体状況:ほぼ大破、黒こげ】がB-1に放置されています。 【春日井甲洋 搭乗機体:バルゴラ・グローリー(バンプレストオリジナル) パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の一部回復 機体状況:良好 現在位置:a−1 コロニー内 第一行動方針:見敵必殺 最終行動目標:守るんだ……】 ※フェストゥムに同化された直後から参戦です。 ※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。 好きなように書いてもらって構いません。
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270 :代理投下 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◇vtepmyWOxo[sage]:2010/01/04(月) 03:03:14 ID:uQL9s2QA - 160 名前:破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 ◆vtepmyWOxo[sage] 投稿日:2010/01/02(土) 23:54:47 ID:zZ336J7g
投下、完了。 指摘などがありましたら、遠慮せずお願いします。 投下乙です。 クルーゼ汚いな流石隊長汚い そしてコウ追悼 キ○ガイに核とはガンダムでよく言うが、果たしてどうなることやら ミストさんは原作どおりだし甲洋は不幸宝石ゲットするし先行きが怖いですな
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- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
271 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:05:23 ID:uQL9s2QA -
黒き獣が地を走りながら、背負う砲門からビームの光を撃ち放つ。 赤き巨人へと向けられたその光は、しかし巨人の屈強な腕に阻まれ、本体への直撃を許さない。 「邪魔しないでよっ!!」 「って、あれに乗ってんのは子供かよ!?」 獣の中から聞こえるプルの声に、タスクが思い出すのはスクールの少年少女達の話。 あの少女もまた、彼らと同様の訓練や強化・調整を施されているというのだろうか。 操縦は荒ったい、しかし確かにあの獣のような機体を使いこなしている。 少なくとも、年端も行かない普通の女の子に一朝一夕でできる芸当ではない。 「しかもラトゥーニ達よりさらに年下っぽいし……たまったもんじゃねぇな、ったく!」 獣は巨人の周囲をすばしっこく跳び回りながら、ビームを乱射する。 その全てを受けきり、逸らし、やり過ごし……確実に防ぐ巨人。 それは、犬と飼い主のじゃれ合いのようなやり取りに見えなくもなかった。 タスクは特別優秀なパイロットというわけではない。 運動神経は鈍いし、一度はパイロット適正審査の段階で落とされたこともある。 だがそれでも、勘と悪運とそして根性を武器に、DC戦争に始まる幾多の大戦を潜り抜けてきた。 単純に実戦経験に関しては、ここにいるプルよりもタスクのほうが場数を踏んできている。 加えて重装甲の機体の扱いにかけては、ジガンスクードに乗り慣れたタスクに一日の長があった。 武装や格闘性能など、総合的に見ればビッグデュオはむしろジガンより遥かに使い勝手がいいといえよう。 獣――ガイアガンダムの火力は読めた。これなら、隙さえ突かれなければ防ぎきれる。 条件は全てにおいてタスク優位だ。これでヘマをやらかした日には、立場がないというものである。 「もう!ずるいよ、私のガイアにはそんな腕付いてないのに!」 イライラを募らせたプルが、痺れを切らし叫び声をあげた。 ビッグデュオの喉元を噛み千切らんばかりの勢いで飛び掛る。 「うおっと!?」 その際、背面ウイングにビームの光が収縮し、刃を形成しているのをタスクは見逃さない。 飛び込んでくるガイアにタイミングを合わせて……両の手で翼ごと挟みこむ! 「捕まった――!?」 「白羽取りっ!どうよっ!」 白羽取りにしてはスマートさに欠けるが、半ば力任せに機体ごと引っ掴む。斬られ役に甘んじてやる気はない。 ひとまずの動きを封じたことで、タスクは眼下を見回す。 (さっきのあいつは……上手く逃げ切れたみたいだな!) カズマの姿が完全に見えないことを確認し、タスクは行動に出ることにする。 この取り留めのないじゃれ合いもここまでだ。 「よーし!もういいだろお嬢ちゃん、おイタはそこまでだぜ」 元々シャドウミラーの意のままに殺し合いに乗ってやる意思など、タスクには存在しない。 ましてや相手が幼子となってはなおさらだ。 「よくないよ!早く死んでくれなきゃ、ジュドーのところに帰れないんだから!」 「物騒だなぁオイ……ん?」 プルの口から出た言葉がひっかかった。 名簿だ。参加者一覧の中に、ジュドーという表記があったことを思い出す。 「おい、ちょっと待てって!お前、そのジュドーって奴まで殺しちまうつもりかよ!」 「何わかんないこと言ってんのさ!」 「わかんないってお前、ジュドーって名前が名簿に……」 「あたしはジュドーの所に帰るんだ!邪魔すると許さないから!」 言っていることがメチャクチャだ。まるで、自分達と敵対していた頃のゼオラを思い出させる。 あの頃の彼女やオウカ・ナギサ同様、施された洗脳や強化が、思考をも破綻させているのか―― シャドウミラーのやりそうなことだと、タスクは舌を打った。 ……『前例』の存在が、タスクの目を曇らせていた。 本当はそこまで難しく考えるまでもなく、ただ単に名簿を見ていないだけの話だが。
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273 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:06:48 ID:uQL9s2QA - 「沈めぇーっ!!」
砲門にビームが収縮するのを確認し、反射的にビッグデュオはガイアを掴んでいた手を離す。 放たれたビームが空を切る。同時に、空へと跳ぶガイア。 その獣の姿が、別の形――人型へと変わりつつあるのが見えた。 (変形するか!そうはいきますかって!) 元整備兵だったタスクの眼力は伊達ではない。 目の前の機体が何らかの変形機構を秘めていたことは先刻お見通しだ。 接近戦を行いやすい人型となって、体勢を立て直すか。 それを阻止すべく、牽制として巨人の豪腕を大きく振り回した。 その瞬間、ガイアの全ての動きが停止した。 「え……!?」 「なっ……!?」 完全に無防備となったガイアに、ビッグデュオの豪腕が炸裂する。 それが決まり手となって、戦いはあっさりと終わりを告げた。 ガイアは、まるで壊れた人形のように地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。 「や、やべぇ!まともに入っちまった!!おい、大丈夫か!?」 元々殺す気などなかったこともあり、タスクは慌てて声をかける。 ガイアは変形途中の不恰好な形態のまま、微動だにしない。 (なんてこった……コックピットを潰しちまったのか……!?) しかし、タスクの心配は杞憂に終わる。 「う、うぅ……いたたた……」 「あ、よかった。生きてたか〜」 ガイアの外部スピーカーから少女の声が聞こえ、タスクは胸を撫で下ろす。 声の調子から察するに、大した怪我はないようだ。 やがて、動かなくなったガイアがガチャガチャと動き始める。 「う、うそ!?なんで、どうして動かないの!?」 獣から人へ変わる途中段階の状態のまま、もがくように タスクは相手の機体の不備を察した。 (もしかして……) 変形機構に異常個所があり、まともに作動しなかったのだろう。 考えられるのは、最初に放った巨大ドッスン落としだ。 相手の行動を封じるつもりで放った一撃だが、なにせこの重量だ。 その際のショックで変形機構がいかれてしまった、と考えるべきか。 そんな状態で無理に変形を試みたがために、動作不能に陥ったと思われる。 機体の動きを止められたという意味では結果オーライ……だろうか。 動作不能で済んだだけマシだ。ビルトラプターのような爆発事故を起こすよりは。 だが、このまま放置しておくわけにもいかない。 少女はこの状態のままでも、無理に機体を動かそうとしている。 下手に動かされて武器を暴発でもされたら、そこから機体の爆発を引き起こしてしまうかもしれない。 「よし、待ってろお嬢ちゃん。すぐそっちに行くからな」 「やだ、近寄らないでよ!!」 歩み寄ろうとするビッグデュオに、プルは怯えを含んだ声を上げ始める。 やはり、まだ年相応の女の子か。 今しがた自分を殴った怖い巨人が迫ってくるのだ、無防備な状態のまま待つのは辛かろう。 「来ないで!ジュドー!!助けて、ジュドー!!」 外部スピーカーを全開にしているせいか、プルの悲鳴が大音量で周囲まで響き渡った。 耳を劈くような甲高い悲鳴に、思わず耳をふさぎたくなる。 「あー、もう!これじゃこっちが悪者みたいじゃねぇかよ!」
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276 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:08:46 ID:uQL9s2QA -
そう……確かにその通りだった。 この一場面だけを切り取れば、助けを求める少女を襲っているように見えなくもない。 そして。 何と間の悪いことであろうか。 ものの見事に、これを勘違いした輩がやってきてしまった。 「待て待て待てぇぇぇい!!その悪逆非道、許さぁぁぁぁぁん!!!」 閃光、爆音。燃える森。 他の参加者が、殺し合いを始めてしまった合図だ。 それを見つけながら、黙って立ち去るダイゴウジ・ガイではない。すぐさま現場へ急行する。 そして現場にたどり着いてみれば、響き渡るは助けを求める少女の悲鳴。 少女が乗るのは、傷つき倒れた獣のような小さな機体。 そんな無力な少女に今にも襲い掛からんとする、赤く禍々しい巨人。 一目瞭然。正義と悪との識別完了。 「悪党め!!このダイゴウジ・ガイが相手になってやるぜ!!!」 ガイは少女を救うために、巨人に戦いを挑む。立ち上がれ、ゲキ・ガンガー3! 先手必勝、赤い巨人に攻撃を仕掛けた。これで少しでも自分に注意を向けられれば儲けものだ。 「な、なんだぁ……うおっ!?」 新手の乱入に戸惑う余裕も与えてくれず。いきなり放たれたビームに、被弾するビッグデュオ。 「くそ、殺し合いに乗った奴か!?やべぇ!」 ビーム砲によるダメージはさほどではない。 ビッグデュオの機体性能を生かせば、新たな敵機と渡り合うことも可能だろう。 だが問題はガイアだ。動かなくなったガイアは格好の的でしかない。 タスクはプルを庇うために、機体を盾にするべく巨人をガイアのもとへと移動させる。 が、その行動もまた新たな誤解を呼ぶことになった。 「あーっ!?てめぇぇ、少しは空気を読まないかぁぁぁ!!」 どこまでも非道なその振る舞いに、ガイは叫んだ。 自分を無視して、あくまでも少女を殺さんとする悪しき巨人……どこまでも許し難い。 ゲキ・ガンガー3のスピードを全開にして、ガイもまた少女の下へと駆けた。 しかし、これはまずい。距離が離れすぎている。 この距離では、自分のゲキ・ガンガーより先に巨人が少女のもとにたどり着いてしまう。 それを許せば、終わりだ。 心無き殺人者により、あの機体諸共少女の命が失われることになる。 あのヴィンデルにより首を爆破された、仮面の男のように。 「くっそぉぉ!!間に合えぇぇぇぇぇぇ!!!」 さすがのガイにも、焦りを表情に滲ませずにはいられなかった。 唯一の飛び道具を巨人に向けて撃ちまくるも、非力なビーム砲では巨人の足止めすら叶わない。 だがそれでも、たとえ悪足掻きに見えようとも、ガイは諦めることはない。
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280 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:09:52 ID:uQL9s2QA - 「うおおおおおおおおおおおおお!!!!届け、ゲキ・ガンガー!!!
ゲキガン・パァァァァァァァァンチ!!!!!」 無我夢中で、機体の拳を前へと突き出す。 その時、不思議なことが起こった――! ガイの、ゲキ・ガンガーを信じる愚直なまでに純粋な魂の叫びに応えたのか。 ゲキ・ガンガー……否、ソーラーアクエリオンの新たな力が解き放たれる。 突き出された右腕に、奇跡の力が宿った。 腕が――伸びたッ!! 「ウソやっ!?」 その変化に、タスクは我が目を疑った。 アクエリオンの腕に新たな関節が凄まじい勢いで次々と増殖していく。 その拳は真っ直ぐに、ビッグデュオのいる場所へと迫ってくる。 ありえない光景に、一瞬、タスクは防御を忘れた。 だがこのタイミングで、隙を見せることは致命的―― 「が……っ……!?」 コックピット内部に、激しい衝撃が襲い掛かる。 アクエリオンの拳が、ストレートにビッグデュオの胸部を捉えていた。 しかし、それだけには留まらない。 「そのまま……いぃぃぃっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 腕はさらに際限なく伸び続ける。 その拳に巨人を捉えたまま、真っ直ぐに伸び続ける。 腕の関節が無尽蔵に増殖を繰り返し、猛烈な勢いで。 ビッグデュオ諸共、ただひたすらに拳は飛んでいく。 どこまでも、どこまでも、どこまでも―― 「ぐああぁぁぁあぁああああああばばばばばばばばばばばばばばばっっっ!!!!」 既にビッグデュオはバランスを崩し、その身の全てをアクエリオンの拳に任せていた。 放たれる拳の勢いのままに大地を抉りながら、ただひたすら猛烈な勢いで後ろに押し流されていく。 無論、それに伴いコックピット内に響く衝撃は、半端なものではない。 (どこまで!?どこまで伸びるんだ、こりゃあ!?) このまま世界の果てまで押し出されそうな錯覚すら覚えた。 それに抗うべく、揺れるコックピットの中で操縦桿に手を伸ばす。 視界が、焦点が定まらない。それでも、懸命に手を伸ばす。 そして、ようやく操縦桿に届いた、その時。 一際大きな衝撃が、ビッグデュオに襲い掛かった。 「がはぁっ!!」 タスクの視界が暗転した。 身体が一瞬宙に浮き、上下感覚がなくなる。 直後、コックピットがひしゃげるような轟音が鳴り渡り。 全身がバラバラになるかのような振動が響いて―― ――静寂が訪れた。 コックピット内の振動も止まった。 そこで、タスクは後退がようやく収まったことを知る。 朦朧とする意識の中で、タスクは見た。 巨人の胸に突き刺さっていた拳が離れ、伸びた腕がそのまま逆戻りしていくのを。
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283 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:11:12 ID:uQL9s2QA - * * * * * * * * * * *
「おぉ……す、すげぇ……」 伸びた腕が帰ってくる。やがて腕は元の長さまで戻り、何事もなかったかのように元の鞘へと収まった。 ソーラーアクエリオンの腕に起きた突然の変化には、ガイ自身も呆気に取られるほかなかった。 まるでマンガだ。常識で考えられることではない。 「すげぇ……腕が伸びやがった!すげぇぞゲキ・ガンガー!」 もっとも、彼はそんな細かいことにとらわれる人間でもないが。 テレビで見ていた本物のゲキ・ガンガーとは毛色こそ違うものの、これは間違いなくゲキ・ガンガーだ。 彼が憧れ、待ち望み、求めていたスーパーロボットに他ならなかった。 否応なしに、興奮が彼の身体を駆け巡る。だが、それに浸っている場合ではない。 倒れた、黒い獣のような人のような機体――ガイアガンダムに、視線を移した。 「助けて……くれたの……?」 アクエリオンを見上げながら、プルは呟いた。 「なんで……?みんな殺さなきゃいけないのに……ジュドーにだって、会えない……」 「心配するな!君はそんなことをする必要はない!全ては俺に任せておけ!!」 呆然と呟く少女に、ガイははっきりと言ってみせた。 根拠のない自信と言動、だがそれも時として頼もしさとなることもある。 「このバトルロワイアルなんて、俺がぶっ潰してやる! そして君も、そのジュドーって奴に会わせてやるさ!」 「ジュドー……に……?」 特に、こういう殺し合いの場では。死の恐怖を経験した直後の、幼子の場合には。 「俺はガイ……ダイゴウジ・ガイだ。君は俺が守ってやる!」 「ガ……イ……」 その言葉を最後に、少女は気絶したようだった。緊張の糸が切れたのだろう。 (大した怪我もないようだし、しばらく寝かせておいてやるか) 少女を襲っていた赤い巨人は、ゲキガンパンチで遠くまでぶっ飛ばした。だが、倒したという確証はない。 もし生きていたなら……それを放置しておくわけにはいかないだろう。 助けを求める無力な少女を、容赦なく殺しにかかるような外道だ。新たな犠牲者が出る可能性は否定できない。 「心無き悪党め……しかぁしっ!!このダイゴウジ・ガイがいる限り、お前の好きにはさせん!」 巨人を吹っ飛ばした方角に向けて、ビシッと指をさし宣言する。 続いてその指を空へと向け、この状況を見て楽しんでいるであろう諸悪の根源へと叫んだ。 「そして見ていろヴィンデル・マウザー!!お前達の思い通りにはならん!! 悪の野望は俺とゲキ・ガンガーが打ち砕いてやるッッ!!!」 朝日をバックに、勝利を誓う男。なんと頼もしい姿だろう。 眠る少女の近くで大声出すのはどうかとは思うが、それは抜きにして。 弱きを助け、悪党どもを挫く。これこそまさしくヒーローの姿。 実は殺し合いに乗っていたのはプルで、最初に仕掛けたのも彼女で。 タスクはそれにも関わらず、彼女を助けようと頑張っていたわけだが…… そんなことはガイが知る由もなかった。 世の中は無情である。
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286 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:12:15 ID:uQL9s2QA - 【ヤマダ・ジロウ 搭乗機体:ソーラーアクエリオン(創聖のアクエリオン)
パイロット状態:絶好調 機体状態:良好。エネルギー少量消費 現在地:E-2 第一行動方針:目の前の女の子を助ける。 第二行動方針:仲間になってくれる参加者を探す。 第三行動方針:女の子をジュドーとかいう奴に会わせてやる 最終行動方針:打倒ヴィンデル! 備考1:アクエリオンをゲキ・ガンガー3と名付けた。 備考2:エレメントシステムについての説明はちゃんと目を通していない 備考3:タスク(ビッグデュオ)を危険人物と認識しました】 【エルピー・プル 搭乗機体:ガイアガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY) パイロット状態:気絶 機体状態:変形途中形態のまま一時的な行動不能。多少の損壊。 現在地:E-2 第一行動方針:……(気絶中) 最終行動方針:なんでもいいのでおうちに帰る(正直帰れれば何でもいい) 備考:名簿は見てなく、ジュドーがこちらにいることに気づいてません】 【1日目 07:30】
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289 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:13:18 ID:uQL9s2QA - さっきのあの子、今頃あのロボットにやられちまってるだろうか。
そう考えるだけで、俺の端正な顔が悔しさに歪む。 助けてやれなかったどころか、今じゃ自分の命の危機ときた。情けないったらない。 でも、だからと言ってこのまま燻ってる場合じゃねぇ。 全身に響く痛みに耐えつつ、俺は状況確認のために機体を操作していた。 コックピットを中心にダメージこそあれど、ビッグデュオは問題なく動くようだ。頑丈なこった。 ただ機体は平気でも、中にいる俺自身のダメージは無視できるもんじゃなかった。 あばらが完全にいっちまってるのは間違いない。他にも身体を動かすたびに、各所から悲鳴が上がる。 頭からも軽く出血してるみたいだし……こいつは少し動いただけでも結構な苦痛だ。 まだ始まったばかりだってのに、いきなりなんてザマだ。 モニターにマップが映し出され、現在位置が表示される。 どうやら今いる場所はD−1……ちょうど灯台の真下にいるようだ。 無限に続くかと思われたあのズームパンチが止まったのは、灯台にぶつかったせいだろう。 ……ってちょっと待て。D−1って何だ、俺がさっきまで戦ってたのはE−2だったはずだぞ。 この地図を見る限り、1エリアの対角線に近い距離を押し出されたことになるわけだが。 ……。 待て待て待て。おかしいだろ、これ!一体どんなトリックだ!? 1キロ2キロの距離じゃないんだぞ!?そんな長い距離を腕が伸びたってのか!? どういう構造してるんだ、さっきのロボットは。ラージじゃないが、解体してみたい衝動に駆られる。 あるいはマシンセルのようなナノマシンの類か?いや、斬艦刀だってあそこまでメチャクチャじゃないぞ。 それとも修行したらロボットでもここまで伸ばせるものなのか。帰ったらラーダさんに聞いてみよう。 今までいろんな非常識を見てきたし、滅多なことでは驚くまいと思ってたが……ありゃあ規格外だぜ。 苦笑いしながら、シートに深く背を倒す。 正直、よく生きていられたもんだと思った。この悪運、キョウスケ中尉とタメ張れるかもな。 だがその悪運も、後に続かなければ消え失せるだけだ。 もしこの後、さっきの腕が伸びるロボットの追撃を受ければ。 そうでなくても、殺し合いに乗った奴に見つかれば……それで俺は終わりだ。 または、このまま誰にも見つからず放置されて、このエリアを禁止エリア指定された日には…… 畜生、ネガティブなこと考えてるうちにだんだん眠くなってきやがった。 ――あれ?嘘だろ?意識が沈んでいく。 死ぬのか?まさかこのまま、死んじまうのか?俺は。 俺の人生、こんなので終わりだってのか?冗談じゃねぇぞ。 こんなわけのわからない所でわけのわからないままわけのわからない攻撃で殺されてたまるか。 まだやり残したことが山ほどあるんだ。 だってのに、身体にろくに力が入らない。 ちくしょう……目の前が霞んできやがった―― 俺が死んじまっちゃぁ…… あいつ、泣いちまうんだろうなぁ。 ちくしょう。 俺は、まだ、あいつに―― レオ――ナ――
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292 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:15:45 ID:uQL9s2QA - 「聞こえる!?これに乗っている人、生きているなら返事をなさい!」
……っとと。聞き覚えのある声が、突然耳に届いた。 どうやら、俺の悪運はまだ消えていないらしい。 モニターに、見慣れない機体が映っていた。だが、俺の中に不安はない。 見つけてくれた。それも、何より心強い仲間に、だ―― 「あ……ヴィレッタ姐さんじゃないスか」 「その声……タスクなのね!?」 安堵の溜息が思わず漏れた。自分の中の緊張の糸がプチプチと切れていくのがわかった。 この人が見つけてくれるとは、本当についている。 「ハハ……すいません、ちょっと自分でろくに動けない状態でして」 「大丈夫!?すぐそっちに向かうわ!」 「お手間かけるッス」 それだけ言って、もう一度シートに身を任せた。 安堵に任せて、徐々に意識が遠ざかっていく。 程なくして、ハッチが開いた。そこから、ヴィレッタ隊長が入ってくる。 「タスク!」 「へへ、助かりましたよ姐……さ……!?!?」 驚愕の光景が、俺の目に飛び込んできた。
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295 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:17:34 ID:uQL9s2QA - 何が凄いって――姐さんの格好だ。
これは何だろう、水着かボンテージか。 露出度が異常に高いそのスーツは、透き通るような白い柔肌を惜しげもなく晒し、 モデル並みに整ったボディラインをこれ以上ないほどに魅せていた。 この上黒い色がまた、何ともいえぬ大人の妖艶な雰囲気を醸し出している。 引き締まったウェストにヒップ……そして豊満で且つ形の整ったバストは、 それを支える下着を着けていないのか、挑発的なまでに揺れていた。 ついでに言うなら、少し赤みのかかったコックピット内の明かりが、 その艶かしいボディをさらに妖しく引き立てていた…… う…… うわぁ。 こ、これは、なんというか……ものすごいものを見てしまった。 いや、つーか……何やってんスか、姐さん。 一体何考えてそんな格好を。 言葉が出てこない。 頭が真っ白というか、真っピンクというか――あれ――? 意識が遠ざかっていく。 待て、もう少し耐えろ俺の意識よ! まだ全然堪能してねぇ!あと少し、あと少しだけ持ってくれ俺の命!! こんな素晴らしい光景を前にして、俺は何もできずに死ぬっていうのか!? くっ…… 無念…… タスク・シングウジ、一生の……ふか……く―― 実に幸せそうな表情のまま、タスクの意識は闇に堕ちていった。 ――ところで、本人はもっともらしくシリアスを気取っていたようだが。 彼の怪我は確かに軽くはないが、別に 命 に 別 状 は な い ことだけ付け加えておく。 【タスク・シングウジ 搭乗機体:ビッグデュオ(THE BIG・O) パイロット状態:気絶。全身強打、あばら骨数本骨折、頭部より出血 機体状態:コックピット周辺部にダメージ 現在位置:D-1 灯台下 第一行動方針:姐さんの姿を……もう一度……ッ(気絶中) 第二行動方針:仲間になってくれる参加者を探す。 最終行動方針:殺し合いには乗らず、仲間と合流して主催者を打倒する】
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298 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:19:32 ID:uQL9s2QA - ヴィレッタ・バディムは、かつて地球とエアロゲイダーの二重スパイとして活動していた過去がある。
スパイは、的確な状況分析力と判断力を要する。目先の感情だけで動くなど論外。 刻一刻と変化する状況を正確に掴み、立ち回る。でなければ、自らの身に危機が降りかかる。 そうした彼女の能力はスパイ活動のみならず、SRXチームの隊長職においても遺憾なく発揮されていた。 ……では、そんな優秀な彼女の視点から見て、このバトルロワイアルはどうだろうか。 最後の一人になるまで殺し合えと言われた。 しかも自分には、二回目の放送までに二人殺さなければ死、というさらなる枷が加えられている。 そして嵌められた死の首輪。 果たして、この状況下まともでいられる人間がどれだけいるだろうか。 恐怖に駆られ、暴走する者も出るであろう事は、想像に難くない。 ――それは、ヴィレッタ自身にも当然、同じことが言える。 殺し合いに乗った相手を潰せれば、それに越したことはない。 だが、この厳しい現実を考えれば、理想でしかないことは確かだ。 本気で自分が生き延びるならば……その手を血に染める覚悟はしなければならない。 そして、彼女にはその覚悟はあった。 ――では、仲間を殺す覚悟はあるのか? 目の前に、タスクが倒れている。随分と幸せそうな寝顔だ。 見た限り、命には別状はないようだ。しばらく入院でもすれば、すぐに復帰できる程度の怪我だろう。 だがそれは満足な医療施設が整っている環境にあっての話だ。 少なくとも、この過酷な状況の中で三日やそこらで治るような浅い傷でもない。 これから先の戦い。そう、シャドウミラーを相手に共に戦うにしても。 怪我の具合から考えて、戦力として数えるのはあまりに厳しいものがある。 酷なようだが、今後は彼は戦力外……足手まといとなる可能性が高いと言わざるを得ない。 ――逆に言えば、今の彼なら容易に殺すことができる。 (――ッ!?) 自らの思考の中にチラチラと混じるノイズを振り払う。 だが、彼女は冷静な判断力を兼ね備えていた。 だからこそ、彼女の思考はある一つの選択肢へと導かれる。 早く人を二人殺さなければ、自分の命はない。 そして、目の前には、容易に殺せそうな命が一つ。 そこから導き出される選択肢は―― ――チャンスは逃すな。そうそう、訪れるものではない。 (私は……何を馬鹿なことを……!?) 断っておくが、別に彼女は薄情なわけでも、命惜しさに心が屈しかけているわけでもなんでもない。 ただ、情報分析を冷徹に行える彼女だからこそ、その選択肢に辿り着いた。 あくまで現在の状況を正確に踏まえた上で挙げられた、数ある手段の一つにすぎない。 当然のように、その選択肢をすぐに却下した。 元より、彼女はそんな選択肢など選ぶつもりはない。 死ぬ気などないが、かといってかけがえのない仲間を殺して自分だけ生き延びようなどとは思わない。 ――そこまでの覚悟もない。 かつて仲間を欺き続けてきたことに対する負い目は、彼女の心の奥底に、今なお燻っているのだから。 だが、しかし――?
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299 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:20:26 ID:uQL9s2QA - バトルロワイアル。残酷な殺人ゲームは、絆を破壊し、人を狂わせる。
ヴィレッタとて、それは決して例外ではない。 「……疲れているのかしら、ね……」 首の薄皮一枚を隔てて伝わってくる死の感触は、酷く冷たかった。 すぐには、慣れそうにない。 【ヴィレッタ・バディム 搭乗機体:ガルムレイド・ブレイズ(バンプレストオリジナル) パイロット状況:DFCスーツ着用、ちょっと恥ずかしい 機体状況:良好 現在位置:D-1 灯台下 第一行動方針:タスクの救助 第二行動方針:ギリアムを探し、シャドウミラーについての情報を得る。 第三行動方針:出来る限り戦闘は避け、情報を集める。戦いが不可避であれば容赦はしない。 第四行動方針:ノルマのために誰かを殺害することも考えておく。 第五行動方針:そう、誰かを……? 最終行動目標:生き残って元の世界へ帰還する】 ※参戦時期はOG外伝終了後。 【1日目 07:40】
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301 :代理投下 貧乏クジの行方 ◇PfOe5YLrtI[sage]:2010/01/04(月) 03:22:52 ID:uQL9s2QA - 178 名前: ◆PfOe5YLrtI[sage] 投稿日:2010/01/03(日) 21:22:08 ID:ci4twxoo
投下終了。問題があれば指摘お願いします 投下乙です! 誰がタスクを責められるだろう・・・? 俺だってプルを見かけたら襲うし、ヴィレッタ姐さんの水着を見れば鼻血を噴出して死ぬ。 ガイにはそういう不健全な路線なしでプルを可愛がって欲しいですよね!
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302 : ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:25:06 ID:uQL9s2QA - では、シンジを投下します
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304 :3+14=?? ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:26:31 ID:uQL9s2QA -
自分が殺したはずの渚カヲルが生きていた。 碇シンジにとってそれはそう喜ばしいことではない。 後ろめたさもあるし、そもそも渚は人類の敵……最後の使徒だ。 「またカヲル君を殺さないといけないなんて……畜生!」 彼らしくもない罵声を上げながら、コクピット内で地団太を踏む。 シンジが渚を殺したのは、彼が人間を滅ぼすサード・インパクトを起こそうとしたからだ。 人間であるシンジは、渚との友情と人類の存亡を天秤に掛け、結果渚の首を落とした。 「でも、僕は間違ったことはしてないはずだ。カヲル君だって抵抗しなかったじゃないか! 僕達が生き残るべきだって言ってくれた! 僕は……ランスさんみたいにはなりたくないよ……!」 全く持って不愉快だが、今一度エヴァンゲリオン初号機のパイロットとして渚を殺さなくては。 シンジの混乱する思考は殺人への忌避を次第に除外して前回と同じ結論を導き出し、操縦桿を強く握らせる。 彼の思考の推移には、二人殺さなければ十六時間後に首輪が爆発することへの恐怖感も混ざっていただろう。 実際に渚と対峙した時に彼を使徒として認識し、躊躇なく殺害できるかというと……頷きかねる。 「……でもこのロボット、エヴァじゃない……よな……?」 自分が乗っている機体は操縦自体はエヴァと全く同じ感覚で行えるが、LCLが満ちていない。 更に言えば、エントリープラグの内壁が何かおかしい。うねうねと脈打っていて、まるで生物の体内だ。 「外の映像は……海? これじゃ現在位置なんてわからないよ」 視界は見渡すかぎりの水、水水……。地図と照らし合わせても、周囲に目印になりそうな物など何も確認できない。 シンジは幾瞬の躊躇の後、機体を動かして湖底を進む。外部の映像に、紙切れのような腕が揺れて映る。 エヴァを歩かせる時に自分の足に感じる、地面を踏みしめるような反動が来ない。まるでホバー移動だ。 「……ま、まさか」 念じて、腕を動かす。モニターに映し出されるみょーんと伸びる触腕。 シンジの脳裏に、うっすらとスクリームのような顔と男の戦いが浮かび上がる。 「使徒だこれーーーーー!!!」 『そうだ、そのまさかだ』 「!?」
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- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
307 :3+14=?? ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:27:39 ID:uQL9s2QA -
その声は坐臥するシンジの上方――前述の通りここはエントリープラグ内だ――から聞こえた。 機械音風の声が聞こえた、とシンジが見上げると同時に、声の主が現れる。 肉壁風のエントリープラグの装甲が開き、触手に両腕を掴まれた少女がシンジの腰の上辺りにガイナ立ちしたのだ。 触手が少女の腕を放し、その全体重がシンジにかかった。あまりの事態に目を白黒させるシンジ。 少女の顔は、シンジの良く知る人物、綾波レイに酷似していた。だが、雰囲気が絶望的に違う。 組んだ両腕を離し、シンジを上から目線で睨み倒す少女に、恐る恐る話しかける。 「き、君は一体……」 『私は第十四使徒ゼルエルの魂の代替。本来人間が乗る事が不可能なこの存在を改造する過程で産み出された物。 シャドウミラー内部では失われた"W14"の名で呼ばれている。よろしくお願いしちゃったりしますのですよ……む?』 背中から羽を生やし、カラフルなプラグスーツを着込む桃髪赤眼の少女は、自らをW14と名乗った。 シンジは唖然としたままで、まじまじと彼女の容貌を眺める。先ほど彼の脳裏に浮かんだ使徒の姿がフラッシュバック。 『……何をそんなに見ている。お前はエヴァンゲリオンのパイロットだろう? 自分の乗る機体の特性を知らんのか。 EVAシリーズを起動させ、制御する為には人間の魂が内部に宿っていなければならない。 そして、エヴァと使徒はほぼ同一の存在……無論、このゼルエルを人間の手で制御する為にも魂が必要だった。 そこで支給機体として用意されたエヴァに入れられていた魂を分割し、ゼルエルに注入したのだ。 いわば、レモン様の技術力とネルフの科学力のハイブリッド……ベリーバッドクロスオーバー! 誰が乗ってもゼルエルを自在に動かせるように創造されたのがこの私……W14なのであるってこっちゃでありんす!』 「……(綾波に似た顔で変な事言うのやめてくれないかな……)」 『言語機能の調子がおかしいのは気にするな。私は気にしている』
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- 第三次スパロボキャラバトルロワイアル2
312 :3+14=?? ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:30:54 ID:uQL9s2QA -
シンジはW14の説明を全く理解していなかった。ショッキングな事件が続いたのでエヴァの仕組みなど覚えていない。 とりあえず彼女が参加者ではなくシャドウミラーの一派だと言う事は理解したらしく、あからさまに不審な視線を送る。 「でも、エヴァの中には君みたいな子はいなかったよ!」 『使徒とエヴァでは勝手が違う。大体ここではオペレーターもいないのだ、インターフェースは必須だろう? 更に言えば、私はジョーカーであるお前へのサービスでもある。戦闘のサポートからカウンセリングまでフルおk』 「大体、この使徒は初号機に倒されてS2機関を食われちゃったじゃないか! どうして動いているの!?」 『レモン様が直した』 「ま、まさかカヲル君も……?」 『レモン様が直した』 淡々と答えるW14に、次第に気力を失い始めるシンジ。 混乱を抑さえるという意味では、なるほどW14にはカウンセリングの才があると言えよう。 W14はシンジが喋らなくなったと確認すると、もう自室に戻ってもいいか? と問い掛ける。自室があるらしい。 「……要するに君は僕が戦う時、ミサトさん達みたいにサポートしてくれるって事で、いいの?」 『そうだが。お前に危害を加える事はないから安心していい。しかしシンジよ、これだけは言っておこう。 ゼルエルが死んだらたぶん私も死ぬので、お前は全力で生き残らねばならないとW14はW14は笑顔で脅迫した』 (……この機体、ホントに当たりなのかな……) シンジが疑問を消化しきる前に、W14はもう話すことはないとばかりに再びガイナ立ちした。 同時に、エントリープラグの上部装甲が開き、触手が舞い降りる。 触手はW14を掴むと、ゆっくりとその華奢な身体を持ち上げ、やがて姿を消す。 ぽかんと見上げるシンジだったが、しばらくして気を取り直し、これからどうしようと考え込む。
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316 :3+14=?? ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:33:02 ID:uQL9s2QA -
「こんな使徒で会場をふらふらしてたら殺し合いどころじゃないよ……目の敵にされて集中砲火に決まってる。 人を殺すことを前提に動くならそれでもいいけど、積極的に人殺しなんてできるもんか!」 頭を抱え込むシンジに、ふと一つの案が浮かぶ。 「そうだ……しばらくここでじっとしてて、それから陸に上がって戦闘で傷ついている人たちを助けよう! この殺し合いに嬉々として参加するような人が弱っていたら、その人は殺せばいいんだ! よし! これが一番だ!」 パッと表情を明るくして、良心と生存本能を同時に満たす結論を出すシンジ。 どうやって善人と悪人を見分けるかなど、細かいことは何も考えていない。 それを誤魔化すために、ハイテンションを保って次々とまくしたてる。 「よし! あまりのんびりしてもいられないから、六時間! 六時間、ここで休む! それから上陸しよう!」 ゼルエルの操縦を放棄し、敵機が近づいてきた場合の対策として海底のたくましいワカメ群に機体を隠蔽する。 と、エントリープラグの上部がちょっと開き、水筒と毛布と紙切れが落ちてくる。 シンジは紙切れを受け取り、そこに文字が書いてあることを見取った。 『シンジへ 温かくして寝なさいね 何かあったら起こします W14より』 水筒の中にはホットミルクが入っていた。 シンジは狭いエントリープラグの中で20分ほどのストレッチをしてからそれを飲み――――眠りについた。 【碇シンジ 搭乗機体:第14使徒ゼルエル(新世紀エヴァンゲリオン) パイロット状況:熟睡 機体状況:ゼルエル=良好 W14=良好 現在位置:D-4 海底 ワカメゾーン 第一行動方針:六時間くらい寝る 第二行動方針:起きた後、善人を探して助ける。悪人は殺す、人類の敵である渚カヲルはもう一度殺す……? 最終行動目標:生き残る】 ※カヲル殺害後から参戦です。 【W14(ゼルエルXX)について】 ・外見はこれ:ttp://ecx.images-amazon.com/images/I/410GG2X6CNL.jpg ・中身は碇ユイ(初号機に内蔵された魂)と何かが混ざった感じ。詳細は後の書き手さんにお任せします。 ・実体はあるが、ゼルエルから降りると多分死ぬ。ゼルエルが大破しても多分死ぬ。詳細は後の書き手さんにお任(ry ・本来のW14とは当然別物、名前を借りてるだけ。ウォーダン・ユミル(W15)との面識などは後の書き手さん(ry。 【一日目 8:00】
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318 :3+14=?? ◆s2SStITHHc [sage]:2010/01/04(月) 03:34:38 ID:uQL9s2QA - 以上で投下終了です。
長時間に渡る代理投下&投下の間たくさんの支援を頂き本当にありがとうございました!
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