- 塩生康範氏の曲を語るスレ 3曲目
709 :SOUND TEST :774[sage]:2007/02/02(金) 22:50:38 ID:kdPhx9gy - わかった。少しまとめて載せる。
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711 :SOUND TEST :774[sage]:2007/02/02(金) 23:29:46 ID:kdPhx9gy - 無理無理っw
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712 :estpolis1 チラシ裏4[sage]:2007/02/02(金) 23:35:21 ID:kdPhx9gy - 「とにかく、前進あるのみだな」
マキシムの言葉で、我を取り戻した人類代表は、一歩を踏み出した。 ディオスがさっさと登ってこいとは言ったものの、物陰にモンスターが潜んでいて襲いかかってくるのでなかなか大変なものがあった。 炎の上位精霊イフリート、巨大な蛙の王キングフロッグ、亡霊剣士マッドナイトなどにお目にかかった。とはいっても、百戦錬磨の四人の足下に及ぶものはおらず、四人はかすり傷一つ負わずに順調に歩を進めた。 交信を受けてから、一時後。彼らは導きの橋の前に辿り着き、すこし足を休めていた。 「ずいぶん高い所まできたもんだなぁ、アーティ?」 ガイが水を口に含んで、吹き抜けから下に吐き出す。 重力加速度を受けて加速した水の塊は、床に叩き付けられて散り飛んだ。 「そうですねぇ、結構入り組んでましたから」 絵の具の白より自然な風合いをもった白い額に、珠の汗が二つ、三つ浮かんでいた。 それをキルトでさっと拭き取る動作もやはりエルフ、優雅なものである。 一挙手、一投足に気品が感じられる。 座って橋を眺めていたマキシムとセレナは、導きの橋の欄干に数行の彫り文字があるのに気付き、駆け寄った。 「こんな所に彫り込んで何の意味があるのかしら?」 「さぁな、俺達にヒントでもくれているのかもしれない。それにしても、この文字は落書きみたいだな。読める文字が無い」 「アーティーなら知ってるかもね」 セレナの提案を、耳の良い彼は聞き取って、すたすたとやって来た。 無言でしゃがんで欄干の文字へと大きく目を見開いた。 「これは古代神語ですね……。神話などはこれで記されているんですよ。 訳すのは時間がかかるので、そのまま言いますよ。 T是レ人ト神トヲ分ケ隔ツ御橋ナリ。人ニ於イテ一度此処ヲ通リ、神ヲ倒サズシテ戻ル者莫シ。志半バニシテ、此ノ橋ヲ渡ルベカラズ。神ヲ倒サズシテ戻ル者莫シ。U」 マキシムとセレナ、世界最強のカップルはさすがに息が合っている。 同時に深く息を吐くのが、アーティーの目に止まった。 水を落とすのに飽きたガイがやってきて、怪訝そうに尋ねる。 「二人はどうして、落ち込んでるんだ? 」 「あなたも見てみたらどうです」 「なになに、はーん、またけったいな代物だな」 「あなたが古代神語を読めるとは思ってませんでしたよ」 滅多に表情を変えないアーティーが驚きの声を漏らす。 「ただの感だけどな。何となくヤバい感じがするからな。 で、どんなもんなんか説明してくれ」 アーティーがぶっきらぼうに答える。 「だから、向う側に行ってしまうと、四狂神を倒さない限り絶対に戻れないってことですよ」 再び怪訝そうな顔をしたガイが、意気込む。 「良いじゃ無いか、死なばもろとも、呉越同舟。なんか違ったかな。ともかく奴らを倒さないでぬけぬけと戻れるかってんだ! 」 アーティーは慌ててガイを橋から離れさせて、こっそり耳打ちする。 「あなたと私は良いですよ。自分以外に守るものがないでしょう? でも、あの二人は違います。互いを庇って戦っている。どちらかが欠けて戻れなくなっても意味がない。 それも小さな子供の為なのでしょう」 「いまさら四狂神を倒さないで地上に戻るっていうのか? この城が空中に浮かんでいるってことは、世界中の街が狙われているってことなんだぜ」 両手を広げて、大袈裟な身ぶりをする。確かにガイの言うことはもっともだ。 「それは二人にも解っていることでしょう。解っているだけに辛いことって、あったでしょう? あなたにも」 「あぁ、そうだったな……」
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713 :estpolis1 チラシ裏5[sage]:2007/02/02(金) 23:35:53 ID:kdPhx9gy - その二人は腰を降ろし、橋をぼんやりと見ながら物思いにふけっていた。
ふとセレナが背伸びをして、はっきりとわかるような溜息をつく。 「高望みはしないのにね……。子供がいて、好きな人がいて、そんな生活が小さい頃から望みだった。金銀財宝なんていらない。名誉なんていらない。四狂神なんてできることなら倒したくないのに」 途中から涙声が交じってきた彼女の声を、マキシムはただ厳しい表情で聞いている。 彼女が落ちついたのを見計らって、しっかりと目を見てこう言った。 「俺達は人類最後の切り札として、戦う。けれどもまたセレナが言った、当たり前の幸せを手に入れる為に戦うんだ。そして、地上へ戻ろう。その時は、きっとあの子が無邪気な笑顔で出迎えてくれるさ」 その言葉を聞いてか、マキシムの波動の剣が鞘の中でガタガタと動く。 すらっと鞘から抜いて、剣先を眺める。 「この波動の剣の切っ先を見てみろよ。この虚空城にあって、輝きを失うどころか、比類なき深淵の光を保っている」 マキシムが自信に満ちあふれた顔でそう告げる。 「私は剣よりも何よりも、あなたを信じるわ」 セレナが穏やかな顔で、微笑んだ。
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714 :estpolis1 チラシ裏6[sage]:2007/02/02(金) 23:37:17 ID:kdPhx9gy - 「いいですねぇ、あの二人は……」
「盗み聞きはよくないぜ。その為に離れたんだろ」 「エルフは耳が良いから、聞こえてしまうんです。森の生まれですから」 しらっとした顔でそのエルフ、アーティーが答える。 「全く……。とにかく、話はまとまったんだろ。 そんなら、こんな所で立ち止まってる理由なんて無いぜ! 」 そう言い置いて二人の方に歩いていき、出発しようという身ぶりをする。 四人はしっかりとした足取りで、黒灰色の玄武岩でできた導きの橋を渡り切った。 この一部始終を見ていた四狂神には思う所があった。 ディオスら三神は、神に対抗する人間の、頑なに勝利のみを信じる感情を、哀れで低級なものだと嘲け笑った。 エリーヌは一応はその意見に口を合わせていたが、内心ではセレナの思いを計りかねていた。マキシムら四人の強い使命感・決意という硬い波動の中に、一点柔らかく心地よい波を感じた彼女は、困惑した。 神が愛情という概念を持つことは許されていなかったため、殺戮を司る神エリーヌは、表面ではそれを否定するしか無かった。 けれども、強い羨れを胸に抱いた、いや胸に刻み込んだのもまた事実である。
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715 :estpolis1 チラシ裏7[sage]:2007/02/02(金) 23:39:52 ID:kdPhx9gy - 城の最上部、神々の間。普段はここには四柱の神々がいるばかりなのでがらがらだが、今はそれに四人の人間が加わり、少し狭いと思える。神と人が互いに距離を取り、しばし対峙していた。吹き抜けから、冷たい風が止めどなく昇ってくる。戦いの前の静けさを感じていた。
「四神、一つ聞く。どうして、罪も無い人々を殺めた」 マキシムがさっきまでとは別人のように、目に鋭い光を宿す。 「どうして、だと。笑わせてくれるな、理由などというものは無い。破壊・混乱・殺戮・恐怖は我らが使命。自らの使命を果たして何が悪い? 」 恐怖を司る神ディオスが、冷たくそう言い放つ。 「人との調和を考える気は無いということか」 マキシムの顔がより厳しいものとなった。 「そんな狂気は毛頭ない。絶対神もおっしゃった。人など自然に任せれば、平和に甘んじ、堕落していくもの。それを防ぐことが我らの神たる所以」 その口調には絶対の自信と、人への憐れみさえ感じられた。もちろん憐れみは偽のものだが。 四人は口をそろえて、こう叫んだ。 「殺された人々の痛み・無念を、今日この場で返す。心して受け取れ! 」 四神はこんなことを口にした。 「神に対抗する人間の愚かさよ。威勢が良いのは最初だけ、最後になったら命乞いをするもの。まぁ来るが良い。返討ちにしてくれるわ!」 破壊神ガデスが、ディオスのそばに寄り、耳打ちした。 「私めに任せてはくれませぬか。いや、無理なら結構ですが」 ディオスも耳打ちで返す。 「構わんぞ。前の戦いでの屈辱、けして忘れるな」 さっきから人間らしい面もちらちらと覗く四狂神だが、決してかつて人間だったとかいうことはない。彼らは生まれながらにして、神という運命を背負っていた。 人間の姿をしているが、適当な体を作って合わせているだけなので、彼らを滅ぼすには肉体を滅ぼしても無意味である。 言い換えると固定波、残留波動まで完全に消し去る必要がある。 それができるのは、そうマキシムの波動の剣だけであるのだ。 波動の剣は、持つ人の思いの強さを力に変える剣として知られており、とても不思議なことに羽のように軽い。 しかしその切れ味は、ガイの持つ戦斧に勝るとも劣らない。名刀は人を選ぶというが、この剣も例に漏れず、マキシム以外の者はうまく使いこなせなかった。 次回、ガデス戦。お楽しみに?
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