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本編 ◆k7GDmgD5wQ こちらスネーク 雛見沢に潜入した3

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こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
406 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:28:30 ID:CL398NvA
――聞きなれた通信機のコール音が響く。
それに叩かれるように起こされた俺は、舌打ちしながら、スイッチを入れた。
『おはようスネーク。ずいぶん久しぶりだな。……久方ぶりの休暇は、そんなに楽しかったか?』
『朝っぱらからずいぶんな言い草だな大佐。休暇と言うにはそんなに休んでない気もするが』
『だがこの通信は久しぶりだろう? 憎まれ口の一つも叩きたくなるほどにな』
寝起きに聞かされるには、大分堪える小言だ。
『まあそうだな……。俺も久しぶりに、あんたの声が聞けて嬉しいさ大佐』
『そうだろう』
向こうから、皮肉交じりのくぐもった笑い声が聞こえる。
『まあ君の休暇は君が悪いんじゃあない。文句は別の奴にでも言ってくれ』
誰に言えば良いというんだ。
『体のほうはなまっていないだろうな? 今すぐにでも動けるか?』
『いらぬ心配だ大佐。今日も、はちきれんばかりに元気さ』
素直な俺の一部を見て確認する。
『うむ……。スネーク、バックパックの中にあるレーションはもう痛んでいるな。食すのは止めたほうがいい』
『大佐。レーションは保存食だ。腐りはしない。……まあ大分、賞味期限は過ぎてるが』
缶の裏を眺めながら答える。
『いやスネーク。そのレーションには間違いなくフナムシがついている!』
勢い良く大佐は断言する。
『大佐……。ここは海辺じゃない。むしろ山だ。どこにフナムシが……?』
『フナムシを甘く見るなスネーク! 私は以前、自宅のキッチンでフナムシを見た! やつらはどこにでもいる!』
『大佐。それはフナムシじゃなくてG……』
『あれは忘れもしない春うららなホリディ! 私は偶然にも自宅の冷蔵庫から見つけた賞味期限1983年のレーションを、200X年現在に見つけた! 私は悩んだ! 何故ならレーションは保存食だから!』
『……いや、大佐?』
大佐の妙なテンションが怖い。
『そうだスネーク! レーションは食える! 食えるのだどこまでも! それが私を悩ませ! 私を苦しめた! そして私は決心した! レーションを食おうと!』
決心したのだよスネーク――――。そう、大佐は懺悔するように言った。
『レーションの蓋に手をかけ、回すと簡単にレーションの蓋は開いた! そこからだ! そこから、この世の、この世の終わりのようにたくさんの――』
――――――――――たくさんの、フ
                  ナム
                     シ、ga。
『大佐! どうした大佐!? 大佐!』
大佐が危ない! いろんな意味で!
『らりるれろ! らりるれろ! ららりりるるれれらりるれろ! らりるれろ! らりるRERO! RARARIRIRURURERERIRIKARUNANOHA!』
『どうしたんだ大佐!? 大佐! 大佐ァーーーーーーー!!』
『スネーク! MERILwoたすケロ!』
――なぜメリル――そう、俺が薄れゆく意識で考えたとき。

……今度こそ本当に、俺の目は覚めた。
こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
407 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:29:13 ID:CL398NvA
びっしょりと掻いた寝汗を乾かすように、焚き火の前に座り込んだ俺は、ゆっくりと静かに、煙草の煙を吐き出す。
「……食わないほうが、よかったか」
俺が悪夢を見た原因は簡単に特定できた。
俺が任務に赴く前に持ってきていた最後のレーション。
賞味期限が切れていたから慌てて食ったのだったが――、こんな嫌な夢を見るとは思わなかった。
「まあ食わなければ動けないしな……。それに、今日が恐らく、正念場に、なるからな」
俺は、今日、遂に敵の居場所に侵入する。
チャンスは恐らく、今日しかない。
入江京介から聞いた情報。それにより、潜入する目的地は決定した。
それに、協力者も存在する。
彼女の手助けがあれば――、潜り込める。
準備は整った。
蛇は――――――獲物を捉えたのだ。

……昨日の話になる。
入江との接触。そこから得た情報は、この地域に詳しい人物が、他にいる、ということのみ。
足りない情報だった。
不確実な情報だった。
だが……、彼からこれ以上のことを、聞き出すことは、より困難だった。
困難になってしまったのだ。

沙都子の真実――雛見沢症候群というものの正体を、俺は知っている。
その事実に、入江は恐怖した。
何故なら、雛見沢症候群そのものが、この村の隠匿されるべき秘密であり、……同時に、隠蔽しなければならないこの村の暗部でもあったからだ。
それが、知られた。知られて、いた。
このスネークと名乗る、何処の誰ともしれない人間に。
その事実に、入江は心底震えた。
それでも、入江は折れなかった。
呼吸すら出来ない水の中に引き込まれたような感覚に懸命に抗らい、俺の視線を見据え返す。
彼は、彼の中にある、絶対に譲れないものを守るために、意地でも退かない。
俺は忘れていた。
理解できていなかった。
入江京介にとって、俺が口にしたその病の名は、彼が最も恐れるものであり。
それと同時に、彼が最も守らなければならないものだということに。
そう、入江にとって、雛見沢症候群は誰にも譲れるものではない。
研究者としての好奇心もあった。医者として人命を救うという大義もある。
だが、それ以上に護らなければならなかった。
北条沙都子の命を、護らなければならなかった。
雛見沢症候群の研究が途絶えれば、彼女を完治させる方法を失ってしまう。
そしてこの病が、公になってしまってもいけない。
大衆がどんな視線を、この小さな村に向けるか。そしてそうなってしまったら、どうなるかを、彼は想像で知っている。
だから、守るのだ。この村の秘密を、貝のように押し黙って。
――俺に、たった一つ、ヒントを与えただけで。
静まりかえった部屋の中で、俺は胸ポケットから二本目の煙草を取り出して、口に咥える。それに火をつけようとして――、止めた。
「あんたは煙草は嫌いだったな」
「……え。ええ」
入江の硬直が、僅かに解ける。
「いや先生。済まないな。あんたがそこまで意地になるとは知らなかった」
案外頑固者なんだな、と俺が言うと、それほどでも、と入江は言った。
「心配するな。もうあんたにこの話は振らん。そのお魎さんとやらにでも聞いてみるさ」
「そうですか……。気をつけてください、お魎さん、怒ると結構怖い人ですから」
「そうか。……注意することにしよう」
そうしてください。と、入江は言った。
こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
408 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:30:06 ID:CL398NvA
「あと……。もう一つ、約束してくれませんか?」
「約束?」
俺は聞き返す。
「今の話――、絶対に、他言無用にしてください。特に、沙都子ちゃん達の前では、絶対に」
真剣な眼差しで、入江は俺を見た。
「……わかった。約束する。俺の趣味に、あの子達を巻き込む気はない」
「約束、ですよ。もし破ったら……、私は貴方を、きっと……、許しませんから」
「ああ」
そこでようやく、入江の顔に、わずかに笑顔が戻った。
「コーヒー、冷めちゃいましたね。淹れ直してきます」
「いや、構わないでくれ。もう大分時間をとらせてしまったから――――」
どたどたどた、と廊下を駆けてくる音が聞こえてきた。
ばんっ! と勢い良くドアが開くとそこには、
「かかか、監督ゥーーーーーー!! ホントですの!? ホントにホントですの?! 嘘ですわよねーーーー?!!」
なにやら血相を変えて、沙都子が飛び込んできた。
俺と入江は互いに目を合わせる。そして心で頷くと、沙都子に向き直る。
「なんだ、どうした沙都子?」
「か、監督! 圭一さんが言うんですの! 『沙都子が監督のとこに一日お泊りして、なにもなく終わるわけがない。絶対になんかやってるから聞いてみろ』って!
 監督! 私、監督のこと、これでも信用してますわ! 監督、そんなことありませんわよね?! そうですわよね!?」
入江が、沙都子が一泊したのをいいことに、あんなことこんなこと……。
ちょっとだけそのあたりを想像する。……駄目だ。全く何もしていないとは、言い切れない。
俺も入江を見た。そんなことはしてないよな、入江先生。と、低い期待感を寄せて。
「は、……ははは。いやぁ全く。圭一君もひどいことを言いますねぇ。僕が沙都子ちゃんを手に入れたからと言って、手に入れたばかりのメイド服をそっとベッドに忍び寄って毛布に浮かんだ沙都子ちゃんのラインに沿って置いたり、
耳元で『ご主人様と呼んで』と毎分五十回ペースで囁いたりするわけないじゃないですか。全く呆れてものが言えませんね」
髪を書き上げて冷静を装う入江。……目が泳いでいるのだが。
「……監督……やっぱり」
沙都子が、さささっと入江から距離を置く。
「ははははは! 語るに落ちたなイリー! メイドの伝道師が、やってることは犯罪まがいとは笑わせやがるぜぇ!」
ドアの向こうから高らかに響く声。そのドアが厳かに開くと、やはりそこにいたのは圭一だった。
「失敬ですねK。私の行いのどこが犯罪だと? この世に至高のメイドとして君臨せしめる沙都子ちゃんの未曾有の可能性を探り当てたいという私のささやかな探究心を、理解できずに犯罪呼ばわりとは情けない。
それで萌えの伝道師を名乗るとは、片腹痛いですよ。K」
反射した眼鏡の奥から、俺に向けたものとは質が違うオーラを放ち、入江は圭一に向けた。
「じゃあなんで沙都子の寝込みを襲うような真似すんだよイリー! わかってんだろ本当は! 沙都子に正面切ってメイド服着てって言ったって! 断られるだけだもんなあ!」
「寝込みを襲ったわけではありませんよK。ええ当然、沙都子ちゃんには是非に兎にも角にもその服を着てくださいと言おうとしました。しかしそれは怪我をしてゆっくり眠っている沙都子ちゃんに対して言うには余りにも失礼です。
だがしかし! 私は見たかった! 見たかったんですよK! 沙都子ちゃんがこの最新モードのメイド服で武装してしまったら! 一体!? どれだけの破壊力があるのかと!」
「それはずいぶん自分勝手な理由じゃねえかよイリー! 沙都子のことを考えねえ! 自分一人の欲望を満たすだけの! 最低な理由だぜ!」
「私一人!? いま、私一人の欲望と言ったんですかK!! なんと浅はかな! 沙都子ちゃんの至高のメイド姿を堪能する! この願いが私一人のためだけだと?! 違う! それは違いますよK!
これはみんなの願いなんです! 全国に星の数を超えるメイド信者が待ちに待ち望んだ天使のご来光! それが! 沙都子ちゃんの! メイド姿なんですよ!!!」
「だったら沙都子を説得し倒して皆の前でご開帳だろうが! それを一人だけで楽しむような真似しやがって! 俺はそれがよくねえって言ってんだ!」
「勿論ですK。私は沙都子ちゃんの同意させ得られれば、今すぐにでもイベント会場をセッティングしましょう。それが私の罪に対する滅ぼしになるならなおさら!
 ……しかしK。さっきから貴方の言葉を聞いていると、貴方も沙都子ちゃんのメイド姿が見たいように聞こえてくるんですが」
ぎくっ。というリアクションをとる圭一。その姿を、入江は見逃さなかった。
こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
409 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:30:47 ID:CL398NvA
「なるほど。いえ、それは当然の欲求です。沙都子ちゃんのメイド姿。これほど衝動を掻き立てられるものも無いでしょう。ええそうでしょうとも。……ですがそれならなおのこと、一言詫びて貰わなければ」
「へえ。俺に何を詫びろって言うんだよ?」
「いつかのあのエンジェルモートでの一戦。……あのとき貴方は言いました。沙都子ちゃんにはメイド服以外も似合うと! そう言って貴方は、メイド服の存在を否定した! あのときのメイド服に対する無礼を! きちんと詫びていただけたなら!
貴方も沙都子ちゃんのご降臨の末席に加えてあげましょう」
「何を言ってるんだイリー……、俺がいつ、メイド服を否定したよ。ああ確かに言ったさ! 沙都子にはメイド服以外だって似合う! いやむしろ裸だって良いくらいだ! でもな……、普段の沙都子のツン、そして新密度がアップするほど回数が増えるデレ!
この二つを余すことなく楽しむなら! やっぱメイド服だよ! っつーかメイドで決まりだよ! もうメイドじゃない沙都子なんて山のてっぺんが取れたアポロチョコだよ!」
「K……。ついに、ついに理解ってくれたんですね?!」
「バカヤロォイリー! 俺はもうとっくに理解してるっての!!」
がしっ、と強く抱きしめあう男二人。
「つーわけでイリー! 沙都子ご開帳の際には末席といわず、ステージ真ん前ど真ん中を頼むぜ!」
「まかせてくださいK! 今夜は素晴らしいメイド道に踏みこんだ貴方に祝福を兼ねてエンジェルモートで洗礼のミサですよ!」
どんどんわからない話に突っ込んでいく二人と、取り残される俺。
「うわぁぁーーーーん! 結局私に自由はないんですのーー?!」
……なんというか、頑張れ、沙都子。
雰囲気が変わる。
冷たい汗が流れる。寒いぞ。クーラー効きすぎなんじゃないか、ここ。
「……なあ、入江先生」
少し空調いいか? と言おうとして目が合った。
そして俺はこのときの視線を、……忘れられないだろう。
明らかに二人の目は、餌に出くわした、獣のものだったからだ。
「いやいやすみません。二人だけで盛りあがっちゃって」
「ほんとだな。すっかり忘れてたぜ。なあ、ところでスネーク?」
「「メイドって、どう思う?」」
……この話にだけは方向が行かないように、随分努力はしたんだ。したつもりだったんだが。

最後の最後でこれかっっっ!!!

「なあイリー。スネークもメイド初心者のようだし、今日は基礎からみっちり教えてやったらどうだ?」
「それは良い考えです。何事も最初が肝心ですからね」
じりじりと迫ってくる二人。なんとか脱出路を確保したいが、ドアの前には二人がいるし、後ろの窓は鍵が開かない!
なんとかしてくれ大佐! 良い方法はないのかオタコン! こんなときに限って出やしねえ!!!
「さ、沙都子! 助けてくれ……」
最後の頼りは、教え子とは――。だが。
既に沙都子は、ドアの向こう側に一人だけ逃げていた。
「圭一さんから聞きましたわ」
ドアの入り口から顔だけ覗かせて、沙都子は言う。
「今日の部活――、梨花が勝ったんですってね。先生から白星取ったのは梨花だけなんですもの。なんだかとっても羨ましくなりましたわ」
そこで。
「ちょっと圭一さんを唆して、先生に意地悪してみましたのーーーー♪」
元凶はお前かぁぁぁぁ!?
「さあスネーク先生。こっちの世界は楽しいですよ」
「スネーク。住めば都だって」
男二人の笑顔が怖い。
その上にじり寄ってくる。
誰か、誰か助けてくれ。俺には絶対馴染めそうのないこの世界から。誰でもいい! 誰か! 頼む!!

――その時、間一髪で。
病院の、電話が鳴った。
それが罰ゲームの続きだったとしても。
俺は、――飛びつかずには、いられなかった。
こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
411 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:35:59 ID:CL398NvA
流れを読まずに投下スマソ。
>>392さんの言うとおり、本編はリレー形式で良いと思います。
バトンは、どうなんだろう、渡せるように良い区切り方できればいいなぁ……。
テンプレ乙です。
ひぐらし映画化だし、MGS4もでるし、過疎るには勿体無いスレだから、頑張っていきましょう。
こちらスネーク 雛見沢に潜入した3
414 :本編 ◆k7GDmgD5wQ [sage]:2008/02/18(月) 01:46:06 ID:CL398NvA
>>412
             ___,,,,,..... -一ァ
         / ̄;;;´;;、;;;ヾ;;;, -──--、,!
.        /'´|;;;;,、;;;;;;;;;;/      ,!
.         /:.:.:.レ´:.ヾ;;;;;;i   や  な ,!
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ;i  め  ら ,!
.      /:.;.イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..ヽ る    ,!
.       /レ' ;|:.:.:.:.:.:.:,:ィ:.:.:.:〉 __,.,!
     /-、ヽ,:|:.:.:,/ /:.:.://.:,:ィ:.:.:.,!
      /'ヽ、ヾi ゙´.:   /__;:;:-'"´ ,;|:.:.:.,!
.    /ゝ-`';:/ .:〈ニ=-=ニ二 ̄ヽレ',!
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ヽ、jゝ、`ヾ:、゙、   ,..:'.:'"    .: ,!
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       ``ヽ.、..    ノr;ソ~,!
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