- [第八弾]妹に言われたいセリフ
198 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:38:16.17 ID:CjCiNgX6 - 結論から申し上げます。そんな素敵な幸運はありませんでした。
図書室で俺を待っていたのは、 「ご苦労様。大野君」 「……委員長……?」 図書委員長。名前は知りません。聞いた気はしますが。 フレームレスのメガネに、後ろで束ねた髪型、規定通りの制服に長めのスカート。 まぁ、マジメなんだろうなと。 「代わりの人が来るって聞いてますが……」 「ええ。私が冬月さんの代理ですよ」 ……。 責任感強い人だね……。 ただ、男を手配してくれるとありがたかったんだが……。 「……何か不満?」 「え……?」 「なんだか……暗い顔」 暗いに決まってんだろ!!言えないけど。 仕方なく、ちょっと自虐的に 「元からですよ」 「そうですか……それなら……いいのですが」
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199 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:39:18.50 ID:CjCiNgX6 - 委員長は一瞬だけ納得いかないような顔をして、
「さて。さっそく、蔵書整理を始めましょう」 「あぁ……はい」 委員長に仕切られ、黙って仕事をする。 まぁ、気まずいは気まずいが、相手が真雪だってほとんど状況は同じだ。 黙々と仕事を続けていると、 「大野君……」 梯子の上、委員長が静かに声をかける。 「はい?」 「大野君は……冬月さんとお付き合いされているのですか?」 マジメそうに見えても女ってのは基本的には変わらんようだな……。 「そう見えますか」 俺が真雪にそこまで興味が無い以上、そういうふうに見えてもらっちゃ困るんだけどなぁ。 「あ……ゴメンなさい。私、変なことを……」 「いや、別に」 ……俺、大人だなぁ……。 だが、これ以上は触れられたくはない。 黙って作業を続ける。
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200 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:40:19.34 ID:CjCiNgX6 - 「……はぁ……」
ため息。でも、俺じゃない。 まぁ、俺もため息のプロ。ため息の主を見ると、 「お、大野君っ……!?」 あんなに大きなため息をしておいて、見られて焦るってどういうこった……。 それとも、俺の目が相当気持ち悪かったんだろうか……。 そんなことを一瞬のうちに思い浮かべていると、 「わ、わわっ……!!」 脚立のバランスが崩れ…… 「きゃっ!!」 脚立ごと、女が倒れてくる。 何とかしなくては、と思ったのだが、いきなりすぎて、うまく反応できない。 「おぐっ……」 何とか委員長の落下地点に入ったのは良かったが…… 「ぐぅ……」 いまひとつ踏ん張りが利かず、そのまま倒れこんでしまった。 ……背中が痛い。
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201 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:41:28.48 ID:CjCiNgX6 - 「……」
夕暮れ。 誰もいない図書室。 外れたメガネ。 解けた後ろ髪。 目の前の委員長。 俺の腹の上の重圧。 物理的な吐き気……。 「……大野……君……」 大野君。じゃねぇ……降りろ……。 だが、生憎俺はこの空気を壊す術を持ち合わせていない。 どこかで学べないものかと常々思っている。 「……」 顔が近い。 ……息が臭いとか思われてたらどうしよう……。 必死に呼吸回数を減らそうとする俺。 「……」 さっきから、俺何も話してないな、そういえば。
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202 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:42:37.01 ID:CjCiNgX6 - 「……好き……です……」
「は……?」 若干酸欠気味の俺の耳に聞こえる小さな声。 こいつの今の顔は見たくない……。 「だから……私を……大野くんの……恋人に……」 もはや脅迫に近い委員長の言葉。 答え自体は決まっているが、その方法が分からない。 いや、というより……もう限界だった。 「無理だ」 もはや俺の心のキャパを超えて、久々にやさぐれる。 とはいえ、この台詞が出ただけで精一杯。 空気が更に悪化したのをビシビシ感じる。 「……いや、悪い。俺は誰かと付き合う気はなくて……」 飛び出した暴言を庇うように必死で言い訳をする。 委員長は明らかに落胆した様子で、 「そう……ですか……」 まぁ、これで良かったんだよ。 とはいえ、この状況でこの体制はまずい。
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203 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:44:03.90 ID:CjCiNgX6 - 「ケガ、無い?」
とっさに出た言葉がこんなでは。 「うん……大丈夫……大野君は?」 「俺も大丈夫だけど……どいてくれると助かる」 「あ、ごめんなさい!」 慌てて飛び退く委員長を確認し、ゆっくり体を起こす。 服の埃を払う俺に、委員長が背中越しに。 「……一つだけ聞いてもいいですか……?」 「ん……?」 「大野君は、妹さんがお好きなんですか?」 「はっ!?何故!?」 シスコン気味とは言われるものの、この聞き方はそれとは意味合いが違う。 「いや、だって……いろんな女の子に「お兄ちゃん」って呼ばせてるとか……」 ……俺が望んだんじゃねぇ!! 「……あんまり説明したくない……詳しいことは、そういう変な呼び方してる奴を捕まえて聞いてくれ」 「え……あ、はい」 絶対納得してないけど、まぁいい。
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204 :遊星歯車機構 ◆isG/JvRidQ [sage]:2011/04/21(木) 19:46:09.28 ID:CjCiNgX6 - これ以上会話をしても泥沼にはまるだけのような予感がしたので、黙って作業を続ける。
「……あの……最後に一つだけ」 「何か……?」 「私は、なんて呼んだらいいでしょうか!?」 「頼むから……普通にしてくれ」 「普通……というと、やはり『お兄さん』とかでしょうか」 ……もういいや。 ─────────────────────── 文字数制限が厳しいんでダラダラ失礼しました。 長いこと放置してましたが……。次で終わりです。 今回に関してはもはや眼鏡以外に言うことがありませんね。 >>195 毎度毎度さすがですねー。少し見習わなきゃ。
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