- コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 19
607 :名無しくん、、、好きです。。。[sage]:2008/09/15(月) 17:12:27 ID:vNQ0nix6 - >>591
ディートハルトが言ってたように、ギアスとは「誰にかけるか、かけたか」が問題なんで 大した意味はない。そこまではライも知らないし、仮に知ってたとしたらライがゼロを 裏切ると真正の卑怯な裏切り者となってしまう
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- コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 24
549 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:04:02 ID:vNQ0nix6 - 初めてですが、投下したいと思います。
トリップこれでちゃんと出るだろうか… タイトル:LOST PIECE カップリング:なし ジャンル:シリアス 結構長文になるかと思います。
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550 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:09:41 ID:vNQ0nix6 - スタジアムは日本人で満員となっていた。彼らの顔には将来への期待、そして僅かばかりの不安が窺える。
だがそれも仕方ないだろう。彼らは今、数年前に奪われた物を取り返す瀬戸際に立っているのだから。 この場は行政特区日本式典会場―――日本人がその名を取り戻す可能性が宣言される場所。 だが彼らの表情は更に変化する事になる。驚愕のそれに。 漆黒のKMF、ガウェインが空に姿を現し仮面の男が現れたためである。 その名はゼロ。正義の味方を名乗り、神聖ブリタニア帝国に反逆する謎の男である。 彼らはその姿に目を奪われていた。この場に現れた日本の希望の意図を推し量りかねて。 姿を見せただけにも関わらず、彼はまるで王のようにこの場を支配していた。 LOST PIECE TURN 0 終わる世界 ゼロと桃色の少女―――ユーフェミア皇女は二人だけの接見を約束し、G1の艦橋に二人だけで消えていった。 それを見届けると銀髪の少年はようやく息をついた。 漆黒の機体の複座コックピット内で、緑の少女の座るシートより上部に位置するシートに身体をもたれかける。 しかしその端正な容貌には未だ少々の強張りがあった。 それを目端で捉えた緑の少女は彼に向って振り向いた。からかいの混じった笑みと共に。 「どうしたライ?らしくもなく緊張してるみたいじゃないか。こういったのはお手の物だったのだろう、王様?」 ライと呼ばれた銀髪の少年はその王様という呼称に苦笑した。 ライ・ランペルージ―――それが彼の今の名だった。 その名はアッシュフォード学園に滞在する少年の名にして、黒の騎士団リーダー・ゼロの片腕の名である。 しかし緑の少女に呼ばれたように、彼には別の側面もある。真の名をライ・ウル・ブリタニア。 数百年に及ぶ過去の時代において、狂王と呼ばれた王という別の側面が。
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552 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:12:46 ID:vNQ0nix6 - 「別にこの式典に緊張してるわけじゃないよC.C.。君こそ緊張はしないのか?」
「私は魔女だからな。式典には誰よりも主賓としてご縁があったから今更なんだよそんなものは」 「そういう冗談は君の事を知ってると、本当に笑えないからやめろ」 中世の「狩り」の事を揶揄する少女、C.C.に疲れたようにライは力なく告げる。 いつもならこうしてからかわれるのはゼロの役割だが、彼がいない場合にはこうしてライにお鉢が回ってくるのである。 「別に緊張しているわけじゃない。ただ、何か漠然とした不安があるんだ」 「ほう?それはどういう理由でだ?」 「それがわからないから漠然としたって言ってるんじゃないか。まあ…取り越し苦労だとは思うんだが。 ひょっとしたら彼が心配なだけかもしれないし。ルルーシュは変な所で抜けてるから」 「変な所で抜けてるお前が言うと説得力があるんだかないんだかわからないな?」 「ほっといてくれ」 ルルーシュ―――ゼロの正体を事もなげに口に出すライはゼロの本当の姿、目的を知る数少ない人間の一人である。 その言葉を口に出されても全く動じもしない、C.C.もまた。 この場の同行者として全てを話している彼らを選んだのはルルーシュだという事実を後から見ると、実はルルーシュもライと同様の言い知れぬ不安を感じていたのかもしれない。 しかしそれは全て後の話。今、この場でその不安の正体に気づく者などいようはずもなかった。 「外に出てくるよ、少しは気晴らしになる。スザクもいるから話し相手には事欠かない」
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554 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:16:15 ID:vNQ0nix6 - コックピットの解放を行い、パイロットシートからライは立ち上がった。
C.C.はからかうような笑みを浮かべる。 「全く失礼な奴だな、私とでは気晴らしにもならないか?ああ、私と一緒では興奮して気晴らしどころではないか」 「ああ、心臓がうるさくてたまらないんだ。いつ何時ピザを作れってワガママを言われるかと」 「ほう、それはとてもいいアイデアだな?早速―――う、ぁ…!」 苦痛に呻くように左目を押さえた。 「C.C.!?」 「まさか…こんな早く…うっ……」 彼女はまるで夢遊病にでもかかったかのように足元をふらつかせた。 その先はコックピットの外―――そのまま彼女は糸の切れたマリオネットのように倒れこんでいった。 「C.C.!」 ライは反射的にコックピットから身を躍らせ、受け身も取れず自由落下するC.C.の腕を何とか掴み、抱え込んで着地した。 いきなりコックピットから飛び出してきたライに驚いたのか、スザクが走ってこちらに向かってくる。 「ライ!君も来て―――いや、それより一体どうしたんだ?」 「スザク?ああ、彼女が突然倒れてしまって」 「倒れた?確かその子は前にナリタでゼロを庇、うぁっ!?」 容態を見ようとC.C.の額にスザクが手を当てた途端だった。 彼はまるで電流を流されたかのように苦悶の声を上げて倒れた。
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556 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:20:28 ID:vNQ0nix6 - 「スザ―――う、く…!」
それはライも例外ではなかった。 稲妻にも似た光が彼の頭を駆け巡り―――全て取り戻したと思っていた過去の、更に奥の記憶をこじ開ける。 見えるのは遺跡。そして自分の前にいる中性的な少年。彼が纏っている衣服はまるで何かに何度も貫かれたかのようにボロボロになっていた。 「あの軍勢に一人で飛び込むなんて、何をやってるんだい君は?ひょっとして死ぬつもりだった?」 「…そうだと言ったら?もう私は………僕は、疲れた。母も、妹も失ってしまった。僕にはもう生きる理由なんて…」 自分の声とは思えないほどの疲れ切った声だった。 「ダメだよ、そんな事は絶対に許さない。私との契約は守ってもらうよ、ライ」 「…君との契約なんてもう無理だろう。もう母も、妹もどこにもいない。色がなくなったこの世界では果たせなくなってしまった」 『契約』という言葉にライは疑問を浮かべた。 そうだ、自分は彼と契約していた。しかし、その契約内容を思い出せない――― 「確かに今の君じゃ契約を果たすのは難しいだろうね。ならそれは今じゃない」 「…?何を」 トン、と軽く少年が自分の胸を押した。 弱り切った自分にはその程度でも体のバランスが崩れ、泳いだ身体は円状の赤い光の中に入って行った。 淡い輝きを増すサークルにライが驚いていると、彼はライに笑みを向けた。 「それだけで色をなくすのは間違っているよ、ライ。まあ私が言っても聞かないだろうから、それは遥か先の誰かと君とで理解してね」 「遥か、先?一体君は、何、を…」 「私は契約が果たされればそれでいいんだ。そのためだよ、これは。いつかもわからない未来、その時まで」 意識が遠のいていく。記憶が終わろうとしているのだろう。 ただ一つの言葉のリフレインだけがいつまでも耳に残っていた。 ―――おやすみ―――
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558 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:22:47 ID:vNQ0nix6 - 「契約…」
忘我の淵から意識が目覚めたライは、ぼんやりと呟いた。 そうだ、それを果たさせるために彼は自分を眠りにつかせた。 しかしそれならば何故彼は自分の前に姿を現さない? 彼はC.C.と同じように不老不死。故に今もなお、存在しているはず。 コードを奪われでもしない限り、ではあるが…思い出せない契約内容と関係があるのだろうか? 「…いや、今は関係ない」 今、重要なのはそういった事ではない。 それよりもスザクやC.C.を介抱する事の方が遥かに重要だ。 どちらもいずれ目を覚ますだろうが、放っておいていいものではない。 特にユーフェミアの騎士であるスザクを気絶状態にしてしまったというのは非常に拙い。 (行政特区日本が成立するにせよしないにせよ、この件で突つかれかねないしな) 「おい、スザク、C.C.―――」 「あら?あなたは確かライと申しましたか?ここにいるという事はあなたも日本人だったのでしょうか?」 突如聞こえた、どこかゆったりとした声に顔を向ける―――そこには艦橋から出てきたのだろう、ユーフェミアが立っていた。 内心慌てながらも姿勢を正す。相手は一応敵方とはいえ、自分など及びもつかない位置に立つ皇女だ。 礼を失する事があってはならない。
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560 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:25:04 ID:vNQ0nix6 - 「はい、ユーフェミア皇女殿下。私は―――」
「なら、死んでください」 反応する間もなかった。武器を持っているはずがない彼女が取り出したモノ。 その微笑みには殺気が全く感じられなかった事。彼女の立場を考えてもこんな事をするはずがないという一瞬の思考の否定。 それら全ての要素が一瞬だけライの反射的行動を抑え込み。焼けるような熱さが腹部に三か所穿たれた。 「あ、ぐ…っ!」 腹部という人体の急所に同時に三発。 それだけならまだしも、あまりの予期せぬ事態故に痛みに耐える覚悟もなかったため、膝をついた。 (な、何、が…!?) 「あら?まだ生きてらっしゃるのですね」 「!?く、ぎ―――!?」 更なる銃声。 直前に力を振り絞って身をかわした結果、心臓を狙った四発目の弾丸は腹部に当たった。 だが、たとえ即死を免れようと重傷の身に更に鉛玉が打たれた事に変わりはない。 もはや身体に力も入らず、ライは自らの血溜まりに倒れこんだ。 視界がぼやけていき、ただ彼女が死を振りまくために走っていく姿を見ている事しかできない―――恐らくは、彼女自身も望まぬ死を。 (や、め、ろ…君は、そんな、事…) 「やめろユーフェミアッ!」 「お願いがあります!皆さん死んでいただけないでしょうか!」 必死に叫ぶゼロの声と虐殺を喜々として叫ぶユーフェミアの声を子守唄に、彼の意識は閉ざされた。
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562 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:27:49 ID:vNQ0nix6 -
純白のドレスが日本人の血で赤く染まる。 桃色の髪まで真紅に染まってなお、ユーフェミアの日本人虐殺は止まらない。 銃弾と硝煙、血風が巻き起こり、屍が築き上げられていく。 その前に仮面の男、ゼロが立ち――― (やめろルルーシュ!君は…!) 彼女を撃った。 ゼロは震えるように倒れこみ、C.C.がそれを支えた。 仮面を取ったルルーシュは慟哭と罪悪感の嘆きを絞り出すかのように、C.C.を強く抱き寄せ紅い瞳に涙を流した。 後は流れるように過ぎ去っていった。 行政特区日本の虐殺を機に、新たなる国の建国、ブリタニア軍に決戦を挑む黒の騎士団。 ルルーシュは表情を仮面で隠し戦いへと赴く。そして、誰にも触れられないほどに遠くへと。 暗闇の中、彼は必死に手を伸ばした。しかしそれは彼の身体にかする事すら叶わない。 たった一人、歩いて行く。屍と血で築かれた道を、歩く足が血を流している事すら些事と切り捨てて。 「待―――!」 跳ねるように飛び起きた。ずきり、と腹部が痛む。 周囲の音は何もなく、ただ彼の荒い吐息の音だけが響いていた。 (今のは、夢、か…) 彼は荒い息を整えながら、周囲を見渡した。どうやらここはアッシュフォード学園とは違う場所に設置した拠点らしい。 自分はベッドに寝かされていたようだ。身体を起こすと腹部に激痛が走った。 この傷があるという事は、ユーフェミアのあの行動も現実だったという事。 恐らくはルルーシュのギアスの暴走で―――最悪の現実に彼は歯噛みした。そうこうしているうちに、突如扉が開く。
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564 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:31:49 ID:vNQ0nix6 - 「作戦補佐!?お目覚めになられたんですね!」
彼の部下、鈴木が慌てて駆け寄ってきた。 少々慌て者の面が目立つが、思考を分割して事にあたれるという意味では稀有な人材であった。 ライは答えず、まず状況を問い質した。 「特区はどうなった?」 「…特区は終わりました。罠だったんですよ全部。今は」 「―――ブリタニアとの決戦か。状況を見せてくれ」 言われるがままに鈴木は現在の状況をデータ、口頭で迅速に伝えた。 その最悪の一歩手前の状況にライは頭を抱えた。 もはや負けが決定している。時間を稼ぐ事は出来るが既にチェックという結論が決まっているのだ。 「な、何でこんな酷い状況に?ゼロがみすみすこんな」 「………ゼロは藤堂殿に指揮を預け、戦線を離脱しました。今、紅月隊長が彼を追っています」 「何だって!?」 予想だにしない現実のオンパレードにさすがにライも頭がオーバーヒートを起こしかけていた。 自分も追わねばと反射的に考えるが頭の片隅の冷静な部分がそれを諌めた。 今自分がやらねばならない事は出来る限り傷が少ないようにこの負け戦を着地させる事だ。 ルルーシュを追うのはその後だ、と告げている。 「藤堂さんに繋げてくれ。大至急だ」 「待ってください!今のあなたはようやく峠を越えたところなんですよ!?ゼロからも決してあなたを戦闘行為に参加させるなと」 「時間がないんだ早くしろっ!君がやらないのなら僕が自分でやる!」
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566 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:33:53 ID:vNQ0nix6 - 怒鳴りつけて彼はほとんど無理矢理に回線を繋がせた。
用意されたモニタに藤堂の顔が映る。 「ライ!?今は安静に」 「そんな事はどうでもいんです!藤堂さん、あなたならわかるでしょう。この戦いはもう負けが決定してる。せめて傷が少ないように負けなきゃならない。 プランLを使って撤退してください。それから―――」 矢継ぎ早に指示を飛ばし、最も被害が少ないように撤退、潜伏できるよう計画を伝えていく。 藤堂が指揮を任された以上越権行為となるが、もはやそんな事にかまっていられる場合ではなかった。 「…わかった。そうする他はないだろう。ならば君も難しいとは思うが速やかに撤退を」 「僕はまだ撤退しません。ゼロを連れ戻します。撤退するなら当然彼もいなければならない」 「バカを言うな!君はどれほど自分が危険な状態だったのかわかって―――」 全ては聞かず、ライは無理矢理に回線を閉じた。 そのままベッドから起き上がり、身支度を整える。動く度に腹部に激痛が走るがそんな事に構っている暇はない。 「い、今の話、本気ですか!?それだけは絶対に駄目です!本当に死んでしまいますよ!?今生きてる事すら奇跡なんです!ゼロなら紅月隊長が追っています、だからあなたは」 「ライ・ランペルージが命じる。今は僕の邪魔をするな」 「―――はい、お気をつけて」 ギアスが発動し、鈴木の自由意思を奪う。 心苦しくはあったが、そんな事を言っている場合ではなく、余裕もなかった。自分が相手なら間違いなく今の無防備なゼロを狙う。 月下に辿り着くまでの間にも幾人かにあったが、その度にギアスを使って黙らせていく。 愛機、月下に乗り込んで起動させ、ゼロ、ひいてはカレンの後を追う。目的地は神根島。 「ルルーシュ、カレン…!」 Gの衝撃に腹の傷口が開き、服が血で滲んでいく。 口元まで血が昇ってきたが彼はそれを無理矢理に飲み下して機体を発進させた。
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570 :とうふ(10/16) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:49:48 ID:vNQ0nix6 -
神根島の遺跡。ギアスの因縁が眠る地にて、3人の男女が対峙していた。 いや、対峙というには相応しくないだろう。 3人の男女―――ルルーシュはスザクによって倒され、カレンは現実を直視する事が出来ずにいたのだから。 「ゼロっ!」 「こいつはルルーシュだ!日本人を、君を利用しようとした男だ!そんな男を守りたいのか君は!?」 「…………っ!」 息を飲むような掠れた音がカレンの喉から鳴り、除々にその足は後ろへと下がっていく。 しかしそれを遮るかのように、何かの爆発による轟音が響き渡った。 「きゃ!?」 「何だ!?これは、ナイトメアの」 「…!スザクっ!」 彼らより一足先に驚きから戻ったルルーシュは、懐から更にもう一丁の銃を取り出した。 この距離なら万が一にも外れはない。銃に弾丸を弾き出させるべくトリガーを引こうとし――― 「無駄だよルルーシュ」 あっさりとその銃も叩き落とされた。 事、このような戦いにおいてはどのような状態であろうと、ルルーシュが彼に勝つ確率は0である。 容赦なしにスザクの足がルルーシュの身体に振り下ろされる。 「が!?くそっ!スザク…!」 「…ユフィは、そうやって恨む事さえしなかったんだ、君を。それなのに…それなのにっ!君はユフィを過去と言い切り、裏切った!今ここでお前は終われっ!」 憎しみに染まりきり悲しみの混ざった叫びが空しく響く。 「あ、あ……ゼロ…ルルーシュ…」 カレンは混乱の極致にあった。ゼロを守らなければという想い、裏切られたという想い、ゼロへの個人的な淡い想い、信じるものがなくなったという想い。 全てがごちゃ混ぜになり、ただ涙を流し立っている事しか出来なかった。 だが、そこにもう一人のファクターが到着する。 「ま、て…スザク…っ」 腹部を血で染め、足を引きずりながらも眼光だけは衰える事無く。ライ・ランペルージはこの場に在った。
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572 :とうふ(11/16) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 22:54:26 ID:vNQ0nix6 - ライはこの状況を切り抜ける方法を、血が抜けていきうまく頭に血が巡らない中で必死に考えていた。
スザクがいるのはわかっていた。ランスロットがこの神根島にあったのだから。 後で暴れられても困るためランスロットは破壊しておいたが、だからといってこの状況が変わるわけでもない。 完璧な体調だったならばスザクを倒せる自信はあったが、今の状況では彼と戦うなど考える事自体がおこがましい。 ギアスを使おうにも傷の悪化が予想以上に酷いため、使用するほどの集中はとてもできそうにない。 (絶望的としか言いようのない状況だな…) 「え、ラ、ライ…?あなた、身体は…」 ようやく理解できるモノが目の前に出てきたからか、カレンの目に僅かばかりの光が灯る。 「ライ!?そんな身体でバカかお前はっ!早く逃げ―――ぐあぁぁっ!」 スザクはもう一度ルルーシュに足を振り下ろし彼の両足を折り、強制的に黙らせた。 ぞっとするほどの冷たい目で彼はライを見下ろす。 「ライ、君か。こいつを見ても何も驚かないって事はどうやら君もゼロの正体を知ってたらしいね」 「………っ!?ライ、あなた、も…?嘘、嘘よね?そんな、事」 懇願にも似た声だった。罪悪感がこみ上げる。 しかし事ここに至ってはごまかす事もできない。彼は真実を告げるしかなかった。 「…そうだ。僕は、知って、いた」 「―――っ!ラ、イ…」 「そうか。じゃあ君の罪状はこれで3つだ。ゼロの正体を知りながら皆を裏切っていた事、反逆に加担した事、そしてギアスという悪魔の力を持っている事」 「ギアス、も…知ってる、のか」 「ああ」 色の失った声で淡々とスザクは告げた。 感情が剥げ落ちたかのようなその声は逆に、彼が内に持つ激情の大きさを伝えていた。 「あ、あ、あ…」 カレンの手が震え、銃が手から離れる。 ゼロに続き、ライも『見知らぬ何か』になってしまった。 何を信じればいいのか、全てが彼女を裏切っているかのような錯覚にカレンは陥った。 世界が怖い。ぐにゃりと視界が歪む。―――ここに、いたくない。
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575 :とうふ(12/16) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 23:00:27 ID:vNQ0nix6 - 「………っ!」
脇目も振らずに彼女は逃げ出した。 ライはそれを見ていたが、追う事はできない。彼女が逃げ出したのを皮切りに。 「君も、ここで終わらせる」 全身を殺意で満たしたスザクが襲いかかってきたのだから。 空中で回転し、遠心力で威力を増した蹴りがライの首へと伸びる。 「ぐっ!」 かろうじて受け止めたが、その代償にさらに腹部から血が溢れる。 しかしスザクの攻撃は止まらない。更なる連撃が何度も彼を襲う。 彼の行動を予測し、どうにかそれらをしのいでいくが、彼の身体はもはやガラクタだ、すぐに限界は訪れる。 すくい上げるようなアッパーでガードをこじ開けられる。 (しまっ…!) 悔恨の声を出す間もなく、彼は腹部に強烈な一撃をもらい吹き飛ばされた。 そのままの勢いで壁に激突し、ずるずると滑り落ちていく。 「ご、ぐ…がはっ!げほっえほっ」 たまらず、口から血を吐き出す。今ので内臓がイカれたらしい。 壁との激突の際に額も切れたのか、視界が真っ赤に染まっていく。だが、それでも――― 「ぐ、ぅ…」 「…まだ立ち上がるのか」 止まる事などできない。壁に手をついてライは無理矢理に身体を起こした。さすがに驚いたようにスザクの動きが止まる。 全ての武器を奪われ、両足を折られたルルーシュにはそれらを見ている事しかできない。耐え切れず彼は叫んだ。 「やめろ、もうやめてくれ!早く逃げろライ!本当に死ぬぞっ!!」 「君を、逃がし、たら…そうす、るよ。だって、僕たち、は」 都合も義理も過去も関係ない。なぜなら自分達は。 「友達、だろ」 友達だから、見捨てられない。 そんな、何よりも単純で純粋な理由が彼を動かしていた。
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578 :とうふ(13/16) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 23:03:29 ID:vNQ0nix6 - 「―――っ、この、わからず屋がっ!」
ルルーシュはあらん限りの力を持って、ライの目に視線を合わせた。 その眼に浮かぶはもはや消える事のない刻印。 「俺を見捨ててここから逃げろっ!」 「な、ルル…っ!」 「ルルーシュ、お前…っ!くそっ、逃がすものか!」 絶対の命令、王の刻印の翼がライを捕えた。 ライの脳に絶対の遵守項目として「逃走」が刻み込まれる。 スザクが駆け出しているが、遅い。一人だけの逃走に徹するならライは絶対に逃げ切るだろう。 「…っ!!…逃げ…っ、置い、て」 足が逃走しようとライの足が勝手に動き出し始める。 しかし、動き始めただけで、その動作は非常に緩慢だった。 握りしめた拳から血がしたたり落ち、彼はその足を砕けよと言わんばかりに地に叩きつけた。 「嫌、だ」 彼は意思の力でギアスを抑えつけ、『嫌だ』と言った。
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580 :とうふ(14/16) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 23:06:21 ID:vNQ0nix6 - 「そんな、ギアスを拒否…!?」
「―――!?ユ、フィ」 その光景はスザクの脳裏にあの光景をフラッシュバックさせた。 血の通わなくなった白い頬。震える手で自分の手を握った彼女。 『日本人を虐殺しろ』というギアスに逆らい、ただ彼に感謝だけを告げて逝った主君――― (違うっ!) 止まりそうになった足を無理矢理にスザクは動かす。 そうだ、違うのだ。ユフィを殺した悪魔の力を持つ奴等に懺悔も容赦も要るものか―――! 「もう、黙れ!」 ライの懐にまで間合いをつめたスザクはライの首に手刀を振り下ろした。 ガタのきた身体ではそれを防ぐ手もなく、ギアスを抑えつけるのに精一杯の今の状態では避けられるはずもなかった。 首元の衝撃により意識が強制的に断たれ、なす術もなく彼は崩れ落ちた。 「ライっ!」 「騒ぐな、意識を落としただけだ。後は…君だけだ、ルルーシュ」 そう言いながらもスザクの目はライに向けられていた。血に塗れながらも、ギアスに逆らってまでも、友を守ろうとした男。 助け起こす事さえしなかったが―――殺意しかなかった目が理不尽さと悲しみに満ちたものに変わる。 「…知らないんだ、君は。あいつが、友達なんかに値しないって事を」 だがそれも一瞬の事。すぐに目は殺意に満ち、その視線はルルーシュを貫いた。 銃をルルーシュの心臓に定めたまま、ゆっくりと近づいていく。
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582 :とうふ(15/15) ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 23:09:04 ID:vNQ0nix6 - 「君達を皇帝陛下に引き渡す。二人ともその場で裁きを受けるんだ」
ある意味真っ当な処置ではあるかもしれない。 だが、事実は違う。その見返りこそが目的。スザクは手に入れるつもりだった。 彼が求める席、ナイトオブワンに近づくための地位―――ナイトオブラウンズの地位を。 それを悟ったルルーシュは更に憎しみの混じった視線を向ける。 「友達を売っての出世かっ!」 「許しは請わないよ、ルルーシュ、ライ。だって友達だろう、俺達は」 「貴様がそれをっ!ぐっぁ」 ライにしたように、ルルーシュの首筋に手刀を叩き込む。 意識を失い、完全に地に倒れこむルルーシュには目もくれず、ライのナイトメアのキーを探すべくライに近づいて行った。 ランスロットが破壊された事は彼にもわかっていた。修復するにせよ一から作るにせよ、今の状況では乗って帰る事は不可能だ。 ならばライのナイトメアをいただくしかない。 見下ろすスザクの目は真っ黒に塗りつぶされており、以前確かにあったはずの光は失われてしまっていた。 この数日後、ゼロの死亡が全世界に報道された。 ブラック・リベリオンと名付けられたこの戦いは黒の騎士団、ひいては日本の敗北に終わった。日本は2度敗けたのだ。 ある者は絶望し、ある者は嘲笑い、ある者はゼロは死んでいないと現実を認めなかった。 そのようなショックの中では、二人の学生が消え、そしてただ一人だけが戻ってきた事など彼らの周囲を除けば誰も気に留めなかった。 しかしその一年後。再び、いや、世界はより大きな激動の渦に巻き込まれる事となる。 「そう。間違っていたのは俺じゃない。世界の方だ!」 仮面の王を起点に、再び世界は試される。
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585 :とうふ ◆VWLH9tMv3Y [sage]:2008/09/15(月) 23:13:03 ID:vNQ0nix6 - 以上で投下終了です。
支援ありがとうございました。レスが多くなってしまいすいません。 レス数の計算を失敗してしまい、最後にいきなりレス数が変わってしまいました。すいません。 >>567 すいませんでした。ルールを無視してしまって申し訳ない
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