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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド5

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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド5
133 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 00:54:51 ID:GRXwWOsj
「ユイコ? 傷は大丈夫?」
「ああ。元々大した事ない……それをクリス君が大騒ぎにしただけなのだが?」
「うっ……そう言われると言い返せないけど」
「まあ、冗談だ」
「冗談!?」
「ああ、傷が軽いのは本当だからな」
「もう……驚かせないでよ」

全くさっきからこんな調子だ。
ユイコは僕を背中越しからイジってばっか。
どうやら僕が思ってた以上に傷は軽いらしい。
病院にいく必要もないみたいだけどやっぱり連れて行かなくちゃならない。
僕のミスで怪我をさせたのは代わりがないのだから。

雨は変わらず強く振っていて僕とユイコの体を濡らす。
降りしきる雨はとても冷たいのに。
背中に伝わるユイコの体は温かくて。
そして心がドキドキしていて。

何故かそれがとても不思議で温かい。
とても不思議な感覚だった。

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138 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 00:56:34 ID:GRXwWOsj
「……ユイコ。温かいね」
「……なあ!? な、何いってるんだ君は!?」

僕はつい思ったことを口にする。
何ってそのままだけど。
……あれ?
実はかなり恥ずかしい事言ったんじゃないか? 僕は。
途端に僕の顔が赤くなっていく。
どうにもさっきからこういうことが多すぎる気がする。
ペースを狂わされているのだろうか?

「ええい! さっさと行かないか! ファッキンボーイ!」
「いや、何で!?」

こういう冗談のような掛け合いもやっと慣れてきた。
それと同時に楽しく思えてくる。
今までない経験をしたようで。

いや、してないのだ。
僕はこういう経験を。
ピオーヴァに来て約三年間。
楽しく会話するという事を。
話すのはアーシノ、トルタだけで。
僕は積極的に話しに行かないし、僕目的で話に来る人もいない。
会話する事を楽しいとは思わなかったのだ。

だからこそ今ユイコとこう話せてることが新鮮であるのだ。

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143 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 00:58:18 ID:GRXwWOsj
それはまた随分な皮肉だ。
こんな凄惨の殺し合いが行なわれる場所で。
僕は初めてそれを知って。

まったく神様はいったい僕になにをやらせたいんだろう。

……でも、まあ。

「こういうのも……いいか」
「何がだ? クリス君?」
「別に……ただユイコは面白いなと思っただけだよ」
「な!? そういうクリス君も面白いぞ」
「え、何処が?」
「さあ、何処だろうな?……ふふ」

なんだかよく分からない。
でもそのよく分からないことが楽しい。
矛盾してるけどそれが何処かとても心地がいいのだ。

それがコミニケーションというものだろうか?
分からない、経験がないから。
でもそれでもいいかとも思う。

なら僕は僕なりにしていけばいいのだ。
ユイコもユイコなりにやってると思うし。

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148 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 00:59:07 ID:GRXwWOsj
……さて急がなくちゃ。
ユイコの傷がどんなに浅くても心配だから。
僕が犯したミスは僕が償わなくちゃ。
ユイコを無理させちゃいけないし。

僕は歩くペースを上げようとした。

「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」

その時バットを振り般若のような顔して女が襲いかかってきた。
僕はとっさに身を翻しそれを避ける。
ユイコはその拍子に自分から僕の背中から離れた。

「あんた! まだそんな事してるのよ!」

僕はこの声を聞いた事がある。
こんなに元気はなかったけど。
藤色の長髪が翻る。
そうそれは
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151 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 00:59:55 ID:GRXwWOsj
「キョウ!?」

最初に出会った藤林杏だった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ノウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!! 何故なのであるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「じゃかましいいいいわああああああああああ!!! もう少し静にしろおおおおおおお」

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157 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:00:44 ID:GRXwWOsj
ああ、五月蝿い!
さっきからずっとこんな感じだ。
ウエストがなにやら鍵盤のようなものいじってさっきから唸ってばっかである。
どうやら弾けず苦悩してるらしいのだ。
苦悩しているのはわかるんだけどもうちょと声量を下げて欲しい。
これでは誰かに見つかってしまう。
とりあえず黙らす為一発ぶん殴っておく。
これでたまにまともの事を言うのだからたちが悪い。
まったくもう。

「うわあああい!? 何をするのであるかあああああ!? 凡骨リボォォォォン! 
 ハッ!? さては貴様! 巷で大流行のツンデレであるな!
『もう、その声をずっと聞いていたいんだけど、少し静かにしてよね! 馬鹿』
 つまりこういうことであるか! なら早くそういのである! 
 まったく凡骨リボンはツンデレなんだから! もう!」
「アホか! ツンデレなんて最近廃れてきたわあああ!」

あーもう構うだけで疲れてくる。
やっぱりついていくの止めようかしら。

でも止めるわけにはいけない。
朋也にあって謝ってウエストに謝ませるそのときまでは。

私のせいで朋也はああなってしまった。
でも私は謝りたい。
許してくれるなんて思ってない。
でも1パーセントでも可能性が残っているなら私は諦めるわけには行かないのだ。
この事を教えてくれたのは目の前にいる変態。
もといウエストなのだから。

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164 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:02:02 ID:GRXwWOsj
ならやらなくちゃ私が。
そのために私自身を奮い起こす。

会えるかな?
いや、会わなくちゃ。
絶対会うんだ。

そう思った瞬間木々の間から人影が見えた。
もしかして朋也かな?

でもそれは朋也ではなく忌むべき存在。
深い深い緑色の目をした外人さん。

「クリス……ヴェルティン」

私が最初に出会った人。
そして私が怯える原因を作った人。
雨が降ってるなんかいって。
あのスタンガンで私を……


そう思うと再び恐怖が体を襲ってくる。
……大丈夫。
さっき励まされたから落ち着いて。
恐怖に押し潰されてはだめ。
私は心を落ち着かせクリスの方をよく見る。

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173 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:03:37 ID:GRXwWOsj
……紅白の綺麗な服を纏ってる。
……なぜ巫女服?
やっぱり変態だ。
どうして女物の服を着ている?
分からないわ、変態だから?

そしてその背中には……女の人!?
全身をクリスの背中に預けているよな。
なんでクリスの背中に?

……まさか。
私は一つの結論に到った。
それはクリスに襲われたという事。
あのスタンガンで。

きっと体の自由を奪って。
きっと最悪な事をやるんだ。

……最悪、あの男! 

途端に怒りが爆発しそうになる。
そうだ。
あの男が私に近寄らなければ朋也も撃つ事なかった。
あの男が。

行き場のない怒りが全身を覆う。
あの女の人を助けなきゃ。
変態のすきにさせちゃいけない。

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177 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:04:56 ID:GRXwWOsj
助けよう、私が。
そして私はクリスに向けて銃を構える。

……無理だ。
背中にいる女の人に当たるかもしれない。
それは避けなきゃ。
助けようとしてその人撃っちゃったら意味がないのだ。
もう誤射だけは嫌だ。

じゃあどうしたら?
そこで目に入ったのはウェスト。
手に持っているバット。

それだ!

「ウェストちょっと貸しなさい!」
「ちょ!? 凡骨リボン何をする!? それは我輩のだああああ!?」
「いいから! ウェストそこで待ってなさい!」

私はウェストのバットを分捕りクリスのほうに向かって走り出す。
絶対やらせるもんか!

幸いクリスは気づいてない。
今がチャンス!

このくたばれ変態!

「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」

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183 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:06:01 ID:GRXwWOsj
私は思いっきりバットを振る。
だけどそれはクリスが感良く避けた。
この!
クリスはまだ驚いてるままだ。
女の人は離れたみたいだけど

「あんた! まだそんな事してるのよ!」

クリスに向かって叫ぶ。
私だけじゃなくて違う人まで。
クリスはきょとんとしてそして思いついたように

「キョウ!?」

と叫ぶ。
やっと思い出したか。
そんな姿にさらに怒りが増す。

「そんな事って別に大した事じゃ……」

大した事じゃないって!?
私をスタンガンでやろうとしたことが?
ふざんけじゃないわよ!

「この! ふざけるな! 殺し合いに乗った変態が!」

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193 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:07:35 ID:GRXwWOsj
私は怒りに任せてバットを振る。
縦、横とバットを凪ぐ。
クリスはそれをすれすれで避け続ける。

「あんたのせいでええ!」
「わあ!?」

私の渾身の横ぶり。
クリスそれを避けたが尻餅をついてしまった。
チャンス!
私は銃を取り出し彼に向ける。
最後にクリスに一つだけ聞く。

「あんた……なんで雨が降ってるなんて嘘ついたのよ」
「……振ってるよ? 今も土砂降りに。そっちこそなんで嘘ついてるの?」

ああ、この男はなんて嘘を。
今は空があけてきているのに。
分からない、分からない。
でももういい。
嘘つきめ。

私は銃のトリガーをひこうとする。
これで終わり。
でも

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197 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:08:44 ID:GRXwWOsj
「そこまでだ。引いたら貴様ごと撃ち殺す」

背後から底冷えする声。
頭に突きつけられた銃。

突きつたのは襲われたはずの少女。
どうして?

頭の中で疑問符が広がる。
なんで?
私は彼女を助けようとしてるはずなのに。
どうして?

「どうして……?」
「何、言ってるんだ。君は? いいか私は非常に機嫌が悪い。返答次第では容赦しない」

え、え?
なんで?
どうして……。
とりあえず弁明しなきゃ。

「機嫌が悪い?」
「そうだ。非常に機嫌が悪い。折角心地のいい音楽に身を任せてたというのに殺し合いに乗った人間に邪魔された。
 そして今まで折角クリス君を弄って楽しんでたのにまたも邪魔された」
「弄ってたの!?」
「クリス君、気付かなかったのか?……それにクリス君は私の為に病院まで連れて行こうとしたのだ。大した傷でもないのに。
 クリス君は気にして……そんな馬鹿なお人よしを殺し合いに乗った変態だと……ふざけるな!……変人なのはわかっているが」
「わかってる!?」
「まあ、冗談だ。クリス君……で、貴様は何でクリス君を襲った?」

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202 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:10:14 ID:GRXwWOsj
何、この人。
顔が見えないのに凄く恐怖を感じる。
間違いなく全身から怒ってる、さっきの私と一緒だ。
でも怒ってる対象が私。
何でこんな事になってるんだろう?
でも言わなきゃ。今私は死ぬ訳にはいかない。

「だってクリスが貴方を襲っている様に見えたから。スタンガンでやられたかと」
「まさか? それにクリス君はスタンガンなんて持ってないぞ。なあ?」
「うん、それは聞いた事ないし」

嘘。
持ってたよ、クリスは。
今は持ってないかもしれないけど確実に持ってたはずだもん。
持ってったんだ!

「持っていた! クリスは私を襲おうとしていた!」
「……いい加減にしろ。確かに私は殺し合い始まって直にクリス君にあったわけじゃない……君がクリス君にあってたことは信じよう……でもな。
 私はそんな最悪な人間の心を見抜けないほど馬鹿じゃない……クリス君はそんな人間じゃないことはわかってる……だから私はクリス君を信じる」
「ユイコ……」
「ま、という訳だ。勘違いかもしれない。君の……認めるのなら別に殺しやしないさ」

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207 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:11:28 ID:GRXwWOsj
なによ……それ。
私だけ悪役?
そんな訳ないよ。
私は覚えてる。
あの恐怖を。
あの怯えを。
だから

「勘違いじゃない……スタンガンは持っていた!」
「……強情だな。君も」

その女―ユイコ―はため息をつき銃をさらに頭に強く押し込む。
……ああ。
もう無理なのかなあ。
信じてもらえない。
私は間違った事なんかしてないと思ったのに。

「……信じる人間はいないか……」
「なにしょぼくれおるのである! 凡骨リボーーーーーーン! 貴様らしくないのである!」

え……?
ウェスト?
どうして?

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213 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:12:30 ID:GRXwWOsj
「よくも我輩を置いていって! 寂しくて死にそうだったのである! 武器も持っていって! 
 我輩は可愛い子猫であるぞ? もっと扱いをよくするのだ! 仲間なのであるからな!」
「何者だ。貴様は?」
「よくぞ、聞いてくれた! 我輩の名は次元一の科学者ドクタァーーーーーーーーーウェーーーーーーーーーストーーーーーー!」
「うむ……それでこの少女とは仲間なのかな」
「華麗にスルーされたのであ〜〜〜〜〜〜る!? 貴様中々やりおるである!
 まあいいのである。 兎も角その女! か〜〜〜〜なりの凡骨だが言ってることは正しいのである! 我輩が言ってるので正しいである!
 間違いないである!」

ウェスト……
いた信じてくれる人が。
変態どうしようもない人間だけど信じてくれる仲間が。
ありがとう。
私は一人じゃなかった。

「ふむ……ではどうするかな……クリス君?」

ユイコが迷ってる時クリスがこっちに向かってきた。
話の元凶が。
一番最初に私に近づいて時のように。
柔らかい笑みで。
深い深い緑色の目を持って。
そして私の顔を覗き込む。

「……えっと、キョウ……僕が知らないうちに君を不安にさせたようでごめん……でも君を襲おうしたわけじゃないんだ……それは確かだよ」

そしてクリスが必死に頭を下げた。
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219 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:13:48 ID:GRXwWOsj
え……。
なんか凄い意外だった。
クリスがこんな事をするなんて私は思っていなかったのだ。
これは演技?
……違う。
こんなに必死には普通にならない。

……もしかしてクリスは本当に襲うつもりじゃなかったのかな。
あの時の事を冷静に考えよう。
私は怯えてて。
それをクリスが励まして。
雨が降ってるなんか嘘ついて。
それで私はスタンガンを見つけて襲われると思って逃げ出した。

……あれ?
私が駄目なんじゃないの。
クリスに否は……ないと思う。

うわ……私が……

「ねえ……仲直りしてくれるかな? キョウ?」

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221 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:14:41 ID:GRXwWOsj
彼が差し伸べた手。
それはとても温かそうで。
でも何処か震えてて。
……彼も緊張してるんだ。
許してもらえるかと。

私は……
私はどうする?
その手を握るの?

彼なりの誠意に対してどうするの?

勿論決まってる。
私は手に持った銃を……


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225 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:15:43 ID:GRXwWOsj
落とした。
そして彼の手を握る。

「クリス……こちらこそ御免なさい。私が勘違いしてたの。御免なさい」
「うん……こっちもそうだ、なら仲直りで」
「ええ……」

仲直りの握手。
私も笑う。
クリスも笑う。

これでいい。
もう疑う必要性なんかない。

「ふむ……ならいい。元々殺したくなどなかったしな」

ユイコっていった少女が私の頭から銃を下げる。
そしてこっちのほうに着て笑う。

あの底冷えのした声とは予想外の綺麗な笑顔だった。

うん、これでいいんだ。
変に殺しあう事もなく皆で仲良く出来ればそれいいから。
でもひとつだけ気になった事がある。

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230 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:16:26 ID:GRXwWOsj
「ねえ……? クリス。何で雨が降ってるっていうの?」
「……いや、だから振ってるでしょ? キョウこそなんで?」

ああ……また。
これで私は怯えたというのに。
また同じ事を言ってる。
何故?
そこまで嘘をつく必要があるって言うの?

「あ……。キョウっていったな。ウェスト氏も来て欲しい。クリス君はそこで待って欲しい」
「あ、ちょ、ちょっと待って」

ユイコが私をちょっと離れたところに連れて行こうとする。
どうやらクリスに聞かれたくないようだ。
何故だろう?

疑問に思うと同時にきっとこの謎が明かされるんだろうと思った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






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236 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:18:13 ID:GRXwWOsj
ふう……なれない事はするもんじゃないな。
初めて自分からこんな積極的に話した。
でもあの状況は僕が動くしかなかった。

最悪、キョウもユイコもどうなってか判んないから。
僕のせいで誰か死んで欲しくなかったのだ。
だから僕から動いた。

手が震えた。
許してもらえるかと。
初めて積極的に会話をしたせいかもしれない。
でも結果は事なきを得ることが出来た。

よかった。
何もおきなくて。

そんなことを考えてるとユイコたちが帰ってきた。

「待たせたな、クリス君」
「いや……大した事ないよ」
「そうか、ならいい」

ユイコは笑って僕に言った。
続いてウエストさん、キョウが。
キョウは僕の事をまじまじ見つめて

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240 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:19:23 ID:GRXwWOsj
「これからもよろしくね! クリス!」
「う、うん」

そうキョウ自身が納得させるようにキョウはそういった。
どうしたんだろう?
ユイコは何かキョウに話したんだろうか?
判んない。
でも追求するまでもないだろう。

「成程である。青年! 実に面白いである!」
「はい? 僕が?」
「そ〜〜〜うである! 何故そうなるか実に興味深いなのである!」
「は、はあ」

ウェストさんも面白い事を言う。
ユイコと全く一緒だ。
ウェストはまだぶつぶつ何か言っていたが僕は気にする事もなかった。

それにしても随分とにぎやかだ。
こういうとき演奏でもしたいな。
そんなことしてる暇ないんだけど。

あ! そういえば!

「ユイコ! 傷は!」
「……ん? ああ。ウェスト氏に治してもらったよ。どうやら心得があったらしい」

そうなんだ。
ウェストさんって結構凄いのかもしれない。
見た目も変だし言動も何処か変だけど。
人は見かけに寄らないものだ。

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247 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:20:43 ID:GRXwWOsj
「え!?」

その時キョウが突然驚いた声を上げる。
なにやら小さな機械を見て声を上げたようだ。
どうしたんだろう。

「どうしたのだね杏君?」
「手持ち沙汰になったから今……支給された携帯見てたんだけど……アプリの中にこれが」
「……何々? 『暫定死者』!?」

珍しくユイコが焦った声をだす。
そしてユイコがその機械をいじりだして

「『このアプリでは死者を放送より先にお知らせします。現在の情報は開始2時間の間の情報です』か」

どうやら死者の発表らしい。
その瞬間全員の空気が変わった。
僕はどうしても嫌な予感がぬぐえないでいるのだ。

なんだろう? この体に張り付く嫌な汗は。

「『向坂雄二、間桐桜、』」

そして呼ばれた。
呼ばれて欲しくなかった。
そうずっと願っていたというのに。

「『リセルシア=チェザリーニ、以上』」


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251 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:22:00 ID:GRXwWOsj
あ……れ。
おかしいな?
何かおかしい。
おかしいんだ。

雨が急に強くなるのを感じた。
バシャバシャと音が五月蝿い。
そのせいで世界が僕一人しか感じられない。
体がひどく塗れて塗れて何も感じられなくなるぐらいに。
頭が痛い。
のどが渇く。
心がきしむ。
足がふら付く。
体全体が震えてしょうがない。

ああ

「リセ! ……リセルシア!」

ああ

「嘘なんだよね……リセルシア」

……そうなんだ

「嘘じゃないんだ……そうなんだ」

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257 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:24:03 ID:GRXwWOsj
嘘じゃなくて現実。
もう戻ってくる事はない。
それは死。
確実に会えないのだ。
あの少し小動物に似た少女に。
あの透き通るような笑顔に。
聞き手を安らげるあの声に。

「ああ……リセ……あ……死……ああああああああああああああああああああああああ」


リセルシアは死んだ。
もういない。
いないんだ。

頭が痛い。
痛い。
吐き気がする。
これが身近なものでもないのに。

涙が。

止まらない。

「あああああああああああああ!!! どうして! どうして!」


いたい。
心も、頭も。全部が。
全てが拒絶するような。
この世界が偽りであるような。

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262 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:25:10 ID:GRXwWOsj
いたい

涙が滲んで……あれ?

何かが見える。

あれはアリエッタ?
あそこにいるのは僕?

何か話してる?
この後何があったんだっけ?

分からない。
思い出せばいい?

思い出さないほうがいい?

僕は……?

どうする?

僕は……


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268 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:26:38 ID:GRXwWOsj
「クリス君っ!!!!!」

突然覚醒した。

あれ?
ここは?

ああ、殺し合いの場にいて。

そして。

リセが死んだ。

感情が判んない。

僕はどんな顔をしている?
どんな顔でいるんだろう?

分からない。

ああ。

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271 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:27:23 ID:GRXwWOsj
どうすればいい?
どうすれば?

死は。

死は考えさせる事を放棄させるのかなあ?

「クリス君! しっかりしろ! しっかりするんだ」
「ユイコ……」

ユイコが体を震わせる。
そして強く抱きしめる。
まるで僕をこの世界に留まらせるの如く。
僕はここにいなくちゃいけないというように。

じゃあどうすればいいのかな?
僕は何をすればいいのかな?

わかんないよ。

僕は生きるためにどうしたらいいのかな?

「ユイコ……死んだんだ。リセっていう僕の知り合いが」
「……そうか」
「可愛くて……何処か小動物なようで……綺麗な笑顔だった」

そう確実に思う事は一つ。

「こんな所で死ぬ子じゃなかった!」

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276 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:28:35 ID:GRXwWOsj
もっと歌っていたかっただろう。
あの歌を。
アンサンブルもしたかっただろう。
あの場所で。

これからも。ずーっと。

そのはずだったんだ。

なのに。

「どうして……死んだのかな?」

どうしてというそんな疑問が体を襲ってくる。
彼女に死ぬ理由なんてあったかな。

あるわけない。

皆、皆一生懸命生きてるのに。

「それはわかんないな。私にも……でもクリス君? 今の君はできる事はある筈だよ?」
「何が……?」
「それは君が決める事だ。リセルシアという子に君ができる事を」

僕がリセにできる事?

ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド5
283 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:29:52 ID:GRXwWOsj
わかんない。

リセの為にどうすればいいのかな?

僕は何をすればいいのかな?

彼女が笑っていられる為に。

その時ふと目に付いたものがあった。
それは僕が長い間いじっていた物だった。
何故こんなところになんて疑問は直に消えて思いついたものがある。

「おもいついた……ユイコ。リセにできる事」
「そうか……」

ユイコが僕を放すと僕はそれに向かって歩き出す。
一歩一歩確かに。

雨が体を激しく打つ。
体がもう悲惨だ。
最も気にしないけど。
だって今はやりたい事があるから。

「ウェストさん……借ります」
「ホワイ? 何故なのである? ってもう持っていってるのである!」

僕はその道具が入ってる鞄を受け取る。
取り出したのは
そう

「……フォルテール……こんなところにあったのか」

ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド5
288 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:30:52 ID:GRXwWOsj
フォルテール。
僕が三年間演奏していたもの。
変わらない姿で鞄に入ってた。
その時偶然フォルテールに刻み込まれた名前を知る。

ああ。

神様はどうしていつも僕に悪戯をするのだろう?

刻み込まれた刻印それは

『Liselsia Cesarini』

ああ……なんて運命。
ここで僕はリセに会うなんて。

リセのフォルテール。
彼女にとっては苦痛の何物でもなかったものに。
でも今はちょうどいい。

借りるよ。リセ。

なら鞄にもあれがあるはず。
そう思って鞄をまさぐるとあった。

彼女が歌った歌の楽譜が。
これでいい。
これで準備は出来た。

フォルテールをセットする。
3年間の慣れた手つきで簡単に出来た。

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295 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:32:24 ID:GRXwWOsj
そして予備動作。
軽く鍵盤を叩く。
変わらぬフォルテールの音色。


……準備完了。

送るよ。リセ。

君に、君の為に。
僕が君にできる精一杯のことを。
だから聞いて欲しい。

「……何かひくのかい? クリス君」
「……うん。彼女の為に」

そうリセルシアに送るこの曲。
どんな感じで響くのだろうか?

わかってる。
多分僕が出せる最高の音色で。
出せると思ってるからだ。

「……何の曲を弾くの?」

キョウが尋ねて来る。

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298 : ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:33:19 ID:GRXwWOsj
それはとっくに決まってる。
リセが歌い続けたあの歌。
あの透き通るようなそれでいて心を暖める歌。

曲名は決まってないんだっけ?

「曲名はないんだけど……そうだなあ……リセの為に送る曲……いやあれはリセそのもの曲」

あの歌はリセしか歌ってなかった。
そしてリセの為。

だからこう告げる。

その曲名は。

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303 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:34:03 ID:GRXwWOsj
「リセに送る曲……リセエンヌ」

どうか。

この曲が彼女に届きますようにと。

祈りつつ僕は演奏を始める。
全ての感情を篭めて。
いや篭めないものなど今の僕には残す必要はない。
だから弾こう。
彼女の為に彼女の為だけの曲を。

ねえ? 聞いてるかな?

リセルシア。




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307 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:35:01 ID:GRXwWOsj
――――教室の隅に まるで そこにいないみたいに 言葉もなく 息を殺し 私は居たの
窓の外には木漏れ日 木々の間を揺れてる――――





ふむ、実にいい演奏だ。
少なくとも聖堂で聞いた時よりもずっといい。
体全身に伝わってくるクリス君の感情。
それが違う。

哀悼、悲しみ、怒り。

他にも様々な感情折りなって一つに綺麗に纏まっている。
でもとても儚い。

まるであの時のクリス君のようだ。
リセルシアという子が亡くなった時の。

信じられなくて、世界を拒絶するような。

あの時、私はただクリス君を繋ぎ止めるのに必死だった。
クリス君まで居なくなってしまいそうで。
それを防ぎたかった。
何故そんな気持ちになったか不明だが。

しかし今のクリス君はちょっと違う。

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312 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:36:12 ID:GRXwWOsj
そんな辛い世界でも精一杯生きようとしてるような感じがする。
まるで誰かの人格が乗り移ってるような。

誰の影響だろうか?
……いや、考えるまでもないか。
そんな事直ぐにわかる。

小動物みたいな子だったか。
クドリャフカ君みたいな子だな。
……可愛がりがいがありそうだ。

ふむ、あってみたかったな。

それにしてもクリス君の演奏はいいのだが何かが足りない。
フォルテールの音色は素晴らしいのだが。

私はクリス君の傍に行き楽譜を見る。
クリス君はとうに楽譜など見てなく私がとっても何の反応もなかった。

……やはり。
そこにはリセルシア君が書いてであろう歌詞が書かれていた。
そう、この曲には歌が必要不可欠なのだ。

何故ならリセルシア君の為の歌なのだから。

私は歌詞を見る。

ふむ、とても綺麗な歌詞だ。
どんな時でも未来には希望があるか。

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318 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:37:57 ID:GRXwWOsj
本当にそうなのであろうか?
リセルシア君は死ぬ直前までそう思っていたのだろうか?

……愚問だな。
きっと信じていたに違いない。
こんな素直な歌詞を書けるのだから。

教室の隅でまるでそこにいないみたいに私はいた、か。

……存外、私と似ていたのかもしれないな。
彼女とは。

……私もリトルバスターズにはいる前はそうだったかもしれない。
木漏れ日に当たりながら一人で過ごしていた。

……感傷だな、これ以上は。

さて、なら私ができることは一つしかないな。
1曲が終わりそうだ。
でもクリス君はやめはしないだろう。
恐らく彼が気が済むまで。

……なら、その演奏に華を添えてやろうではないか。
私では劣るかもしれないがな。
ないよりはマシだろう。
彼女の為の曲なら。

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322 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:38:54 ID:GRXwWOsj
そしてまた繰り返される曲が。
そのメロディーに乗って

「……教室の隅に〜まるで〜そこにいないみたいに〜♪」

私は歌いだした。
クリス君が驚きこっちの方を見る。
私はただ頷くだけ。
それしかいらない。

もう気持ちは伝わった。

さあ……私も参加しようか。

彼女の為の曲に。
私自身の気持ちも乗せて。

さあ、続けよう。

……こんな空の下で。




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327 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:40:19 ID:GRXwWOsj
――――きっと誰もが今この瞬間を胸いっぱいに感じているんだろう
どんな明日が来ても私こわいものはない だって
今日を 今を生きてる 陽射しの中で―――




私は来ヶ谷ほどクリスを知ってない。
会ったのは先だけど。
だから亡くなった子の事なんか判る訳ない。

でも。

この演奏から伝わってくるもの判る。
理屈じゃなくて感情で。

クリスの演奏に来ヶ谷の歌も加わって。

それは1+1ではなくもっともっと深いもの。
何十も何倍にもなって。

リセって子の為に。
ただそれだけなのにこんな心が温かい。

それがとても不思議で、でもなんかそれが嬉しい。
本当何故だろう。

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332 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:41:26 ID:GRXwWOsj
リセが死んで私は朋也も、って考えてしまった。
そんなことはないと思いたい。

もし、居なくなった事を考えたらとても怖い。
喪失の怖さ。

……でも。
私はきっと進みたい。
だって私は今を生きてる。
この瞬間を。

例えどんな明日でも、未来でも。

それは私次第。

だからどんな時でも前を向いてよう。
そう思った。
この歌を聴いてね。

さーて私も加勢しますか。
来ヶ谷ばっかに歌わせるものね。
私も送りたい。
だから

「今日を今を生きてる〜陽射しの中で〜♪」

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336 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:42:08 ID:GRXwWOsj
歌おう、私も。
来ヶ谷が視線だけこっちに向ける。
うん、私も頑張ろう。

暖かい日差しの中で。



―――悲しみならば この両手に いっぱいもういらない でも時には 涙が 出るほどの幸せ
誰もいない放課後の長い廊下は夕映え―――



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341 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:43:28 ID:GRXwWOsj
何たる事であるか!
この超、超、超天才であるドクタクタァァァァァウェェェェストッッッがっ!
この演奏にィィ参加できないぃいいいとは!

次元一を通りこして最悪な出来事である!
ギターをかき鳴らしまくっても壊れて音もでないとは!
凡骨リボンのような高い声もでないとは!

NOォォォォォォォォォォォォ!

いや諦めるのはまだ早いである!
この我輩が超絶なほど素晴らしい閃きで演奏に加わる手段を考え付くのである!
我輩に不可能なんか存在するわけないであるのからな!

……まあ、でも今回はおとなしく聞いているのである。
史上最大の屈辱であるが。
この演奏に観客も必要であるからな。
決して『悔しい!……でも聞いちゃう!』状態じゃないのであるからな!

涙が出るほどの幸せであるか。
我輩はラヴリィィなエルザちゃんといるであるけで幸せなのである!
その為にも我輩は首輪を解除せねばな!
何! 我輩に不可能なんて言葉はブラックホールに投げ捨てたのである!

だから我輩は絶対解除できるのである!

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345 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:44:31 ID:GRXwWOsj
だが今はこの演奏を聞くのである!
我輩にも休息が必要なのだ!

静かに聴くことがその子の追悼にもなるのであるからな。

こんな森の中で


―――ふいに あふれる 情熱がある 走る走るよ光の向こう側へ
どんな未来としてもきっとそれは 私次第ね
たどりついてみせるよ 透明な場所へ



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350 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:45:42 ID:GRXwWOsj
僕は演奏を続けていた。
乗せるのは全ての僕の感情。
そこにはユイコ、キョウも加わって。

何重もの広がりを持ってこの場所に響く。

聞こえてるかい?
リセルシア。

君の為に広がってるよ。
皆が協力して君の為に。

何故こんなにも熱心になるかは僕にも分からない。
僕自身だけのけじめだけかもしれない。

でも、それでもこの演奏を続けていたいと思うんだ。
考えてじゃない、ただ心で。

リセルシア。
もう会うことないと思う。
……とても悲しい事だ。
それこそ神様が悪戯でもしな限り。
もし、もし会えたらまたアンサンブルしたいね。

でも、僕はまだ歩き続けるよ。
例え未来が絶望だらけでも。

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353 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:46:19 ID:GRXwWOsj
きっとそこには一掴みの希望があると信じて。
僕がそれを信じる限り辿り着けると思ってる。

リセルシア、君もそうだったのだろう?
死の、その直前まで。

だったら僕もちょっとだけでもいい。
それを信じるよ。
それがリセの為にもなるから。

そして演奏は最後の一節へ。

恐らくリセが最も望み信じ続けた理想。

それに今の僕出せる全てのものを乗せて。

それは

「「どんな今日だとしても〜新しい日々が塗り替えてゆく〜そして〜明日は希望〜♪」」

どんな今だとしても明日は希望に満ち溢れてると信じて。
僕はそのことを信じる為に。
リセの為に。

弾き切った!

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358 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:47:29 ID:GRXwWOsj
そして長かった演奏を止める。
もう体に力は残ってなくて。
でもとても満ち溢れて。

不思議な感覚だった。

リセルシア。
届いたかな?
聞けたかな?

分からない。
でも届いてると信じてる。

だから。
どうか安らかに。
笑顔で。

僕は祈り続ける。

こんな雨の下で。



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361 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:48:28 ID:GRXwWOsj
―――どんな今日だとしても 新しい日々が塗り替えてゆく
そして 明日は希望
夜の空にも 星が瞬く―――




僕はその演奏を終えると崩れ落ちた。
結構な体力を使ったみたい。
ひどく眠い。

でも不安なのだ。
すごく。
あんなにも綺麗に演奏できたというのに

「クリス君! 大丈夫か!」
「……ユイコ……うん大丈夫。眠いだけ」

ユイコが駆けつけ抱きしめる。
あたたかい、とても。
だからちょっとだけ不安を聞いてもらうかと思った。

「ねえ……ユイコ?」
「なんだ?」
「本当に……明日は希望に満ち溢れてるのかな?」

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364 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:49:40 ID:GRXwWOsj
そう、不安なのだ、それが。
本当なのかと信じ続けられるのか。
ずっと思い続けられるのかが。
そんな僕にユイコは笑ってこう告げる。
さも当然のように。

「……そうだな。満ち溢れてると思うよ、君が思う限り」
「本当かな?」
「ああ……それは」

彼女は僕を強く抱きしめこういった。
そして不安が融けていく。

「思い続ければ……思い続けていれば……願いはきっと叶うから」

そうか。
そうなんだ。
僕が思い続けさえすれば。
それはなくなることはないんだ絶対。
うん……。
安心した。
ああ……本当に。

「ごめん……ユイコ……ちょっと寝るよ……」
「ああ……ゆっくり寝るがいい」

そして僕はその安堵と共に目を閉じる。
最後に見えたのはユイコの笑顔。
それがなぜかにリセに重なって。

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365 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:50:12 ID:GRXwWOsj
僕は笑った。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





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368 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:51:24 ID:GRXwWOsj
クリス君は私のひざで静かに寝ていた。
とても深く。
寝顔がとても子供っぽくってかわいい。

やれやれ私らしくないことを言った。
クリス君は私のペースを普通に崩してくるから本当に困る。

そして明日は希望か。

果たしてあるのかどうか。
でも信じたい。
そう思わせる演奏だった。

「来ヶ谷……これからどうするの?」
「杏君……そうだな。病院にいく意義も無くなったし……ふむ」

そういえばこれからどうするかを全く考えてなかった。
病院にも行かなくていいし……ふむ。

「よかったら……私たちとこない? 仲間が多いほうがいいし」
「ふむ……それもいいな。クリス君と相談するよ。起きるまで待っていてくれ」
「そうね……私もまだ離れたくないし……この余韻を味わっていたい」
「奇遇だな……私もだよ」

そう私もこの余韻を味わっていたい。
この素晴らしい演奏の後なんだから。
しばらく心に残しておきたい。

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370 :リセエンヌ ◆UcWYhusQhw [sage]:2008/04/15(火) 01:52:15 ID:GRXwWOsj
「明日は……希望か」
「叶えましょう。来ヶ谷。私たちの手で」
「ああ……そうだな」

リセルシアが願った。
『明日は希望』
それを願って私たちは進もう。

それがあの子の追悼になると思って。



――待ってたんだ 欲しかった――


僕が目を開けるとそこはあの旧校舎。
でも凄くあやふや。
だからきっと夢だとわかる。

僕はある期待に胸を躍らせながら進み始める。

ある一室へ。

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