- FFDQバトルロワイアル3rd PART11
478 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 1/9[sage]:2007/04/01(日) 22:10:43 ID:ZhCRhCHp0 - 倒すべき者の姿を求め、どれほど走り続けただろうか。
道無き道、生い茂る木々の彼方からやってきたのは、壮年の剣士だった。 どことなくリュカ様に似ているとも思いはしたが、そのようなことは大した問題ではない。 私の姿を認めた男が、剣を抜き放ちながら我が名を言い当てたことも、大した問題ではない。 あまつさえ主君の名を呼び捨てにし、息子だと嘯いたことすら、どうでもいい。 誰とどのような関わりを持ち、どのような思考に基づいて行動していようが、 リュカ様以外は全て倒すべき敵でしかないのだ。 だが、それでもあえて男に告げることがあるとすれば、二つ。 「これは全て、私の意志と独断で行っていること。 故に、……何者であろうと、例えリュカ様自身であろうと、私の道を阻ませはしない!」 そう言い放ち、私は鞭を振り下ろした。 虚空を切り裂いて躍り掛かる炎の刃を、しかし男は驚くべき事に、手にした剣で弾き飛ばす。 何たる鋭い太刀筋か。しなる鞭で刀身を絡めとることすら許さない。 ただ一撃で、格の違いを感じるほどの実力。 そしてその剣。グランバニア城内に飾られた肖像画と、支給されたリストでしか知らぬ顔。 "偽者か魔女の傀儡として蘇った死人"、そんな認識を抱いていた自らの愚かさを恥じる。 そう、認めねばなるまい。 この男は、紛れもなくリュカ様の父君たるグランバニア先代王。 サンチョ様をして"リュカ様以上に強い"と言わしめた、ただ1人の人間。 魔力や体力の温存は、この際考えるべきではない。 全力を尽くしてなお、勝てる見込みは一割あるかどうか。 私は、その一割を掴み取らねばならぬのだ。
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479 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 2/9[sage]:2007/04/01(日) 22:12:17 ID:ZhCRhCHp0 - 一秒に満たぬ思考を終え、私は呪文を紡ぐ。
相手は神速と豪腕を併せ持つ剣士。恐らく接近戦を挑もうとするだろう。 だからこそ、まずは距離を稼がねばなるまい。 見越したとおりに間合いを詰めてくる剣士に向かい、イオラを放つ。 この程度で怯むとは思っていないが、視界を遮られれば、とりあえず前方に攻撃しようとするだろう。 私は一旦右手の方へ跳び、そして素早く後ずさる。 武器は構えたまま、本体を動かして、ザックから二本の杖を取り出す。 そして、舞う砂ぼこりの向こうで大した傷もなく剣を構える男を、今一度睨みつけた。 牽制しながら隙を探すこと、数秒か数分か。 不意に、男が動いた。 私も、本体の弾力を利用して中空に飛び上がる。 スライムナイトが得意とするジャンプ攻撃―― そのように見せかけながら、私は唱えていた呪文を完成させる。 再びの爆発。 その光が止まぬうちに、素早く杖の片方を投げつける。 攻撃ではない。これもフェイントだ。 真の攻撃はこの後に続く、鞭の一閃。 そのはずだった。 だが、おかしなことが起きた。 投げつけた杖が、突然光を放ったのだ。 光は男の身体を包み、そして、周囲に紫色の霧が立ち込める。 闇夜でも淡く光る独特の色彩は、紛れもなくマヌーサの霧だ。 投げつけただけで幻惑呪文を発動する、妖術師の杖にはこんな効果があったのだろうか。 疑問に思いはしたが、この好機は逃せない。 私は鞭を振るい、動揺して隙を見せた男の剣を弾き飛ばす。 そして主が父親の形見として振るっていたはずの剣を、手中に収めた。
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480 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 3/9[sage]:2007/04/01(日) 22:13:15 ID:ZhCRhCHp0 - 後は男の命を絶つのみ。
態勢を立て直される前にと、私は男に突進する。 男の名を冠した剣で、その心臓を貫くべく。 しかし、その時。 私の本体は、地面から伝わる振動を捉えた。 足音。何者かがこちらに向かってきている。 それを証明するように、木立が大きく揺れる。 私はとっさにもう一本の杖を振った。 引き寄せの杖。 その力は乱入者の身体を絡めとり、私の元へ運んでくるだろう。 私は即座に剣を構える。 それだけだ。待つ必要すらない。 猛スピードで引き寄せられた不幸な乱入者は、避ける間もなく自ら串刺しになる。 そして、私が空想した光景と同じように。 "彼"の身体は、怜悧な刃に吸い込まれるかのごとく、その中心を貫かれた。
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481 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 4/9[sage]:2007/04/01(日) 22:16:49 ID:ZhCRhCHp0 - ピエールが走り去っていってから、私とお父さんはどれほど立ち尽くしていたでしょうか。
1人で行ってしまったピエールを心配する気持ちと、お父さんと離れ離れになりたくない気持ち。 釣り合った、相反する思いを傾けたのは、お父さんの言葉でした。 「タバサ」 お父さんは私の名前を呼び、泣きそうな表情で私を見つめました。 「急いでピエールを連れ戻してくる。 いい子だから、ここで待っていてくれ」 その言葉に、私はびっくりして、お父さんを見上げました。 そして、右腕にぎゅっとしがみついて叫びました。 「嫌! お父さんが行くなら、私も一緒に行く!」 わかってはいました。そんな我侭を言っても、お父さんは聞き入れてくれないと。 私の予想通り、お父さんは首を横に振って、聞き入れてくれませんでした。 「僕は、タバサもピエールも、危ない目に合わせたくないんだよ」 お父さんは悲しげに顔を伏せました。 「タバサのことは大事だ。だから、"あの女"が向かっている先に連れて行くなんてできない。 でも、セージもジタンもピエールを疑っている。 僕達の姿がなければ、ピエールが僕達を殺したと決め付けて、殺そうとしてしまうかもしれない」 あの女――アリーナ。 お母さんを殺した、凶悪で、最低の殺人鬼。 あいつのような悪者を倒そうと、ピエールは1人で行ってしまったのです。 ピエールのことも、セージお兄さんたちのことも……お父さんの気持ちは痛いほどよくわかります。 私も同じ気持ちで、だから、私はお父さんと一緒にいたくて。 「行かないで、お父さん!」 私はお父さんを引きとめようとしました。 けれど、お父さんの心を動かす事はできませんでした。 「僕はもう、誰も失いたくないんだよ」 お父さんは辛そうな顔で、私の頭を撫でました 「必ず戻ってくるから……ごめんね」
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482 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 5/9[sage]:2007/04/01(日) 22:17:34 ID:ZhCRhCHp0 - 私は顔を上げました。
お父さんは、もう、背中を向けていました。 ピエールが渡してくれたマントは、あっという間に闇に溶けて、見えなくなっていきました。 私は悪い子です。 お父さんの言いつけを守れない、悪い子です。 でも、私はお父さんと離れたくなかった。 お兄さんと勉強した呪文で、お父さんとピエールを助けたかった。 だから、私はお父さんの後を追いかけました。 月が雲の中に隠れる度、森は真っ暗になります。 木の根や石につまづいて、二度ほど転んでしまったけれど、私はお父さん達に追いつこうと走りました。 どれほど走ったことでしょう。 突然、離れた場所で爆発が起きました。 私はすぐに、イオラの呪文だと気付きました。 きっとピエールが、アリーナか、殺し合いに乗った人と戦っているんだ。 そう思った私は、急いで、爆発があった方に走りました。 数十メートルほど走ったところで、再び、爆発が起こりました。 熱風に伴って生まれた光は、ピエールと、誰かの姿を映し出しました。 ピエールと戦っていたのは、アリーナではなく、男の人でした。 どこかで見たことのある剣を握り、男の人は、ピエールに切りかかろうとしていました。 私はピエールが殺されてしまうと思いました。 だから、男の人に気付かれないように小さな声で、急いで呪文を唱えました。 巻き込まれてもピエールが傷ついたりしないように、いつも使っていた得意な呪文を。 (マヌーサ!) 私が小さく叫ぶと同時に、紫色の霧が立ち込めました。 雲から出てきた月の光を受けて、霧はピエールの幻を映し出しました。 男の人は狼狽して立ち止まり、そして、ピエールの握っていた鞭がしなりました。 鞭は男の人が持っていた剣に当たり、宙へと弾き飛ばしました。 くるくると舞った剣は、ジャンプしたピエールの掌に、見事に収まりました。
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483 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 6/9[sage]:2007/04/01(日) 22:19:24 ID:ZhCRhCHp0 - これで勝負がついた。
私は、そう思いました。 でも、ピエールは…… ピエールが剣を構えたとき、私は自分の目を疑いました。 だって、男の人が持っていた武器は、その剣だけだったから。 "殺す気がないのなら"、それ以上攻撃する必要なんてなかった。 なのに、ピエールは、剣を構えて男の人に突進したのです。 多分、止めを刺すために。……殺すために。 愕然とする私の身体を、誰かが突き飛ばしました。 お父さんだ、と気付くには、時間がかかりました。 私は知らなかったのです。 ここが、サスーン城より東に進んだ森の中だということ。 お父さんは、ピエールがサスーンに戻っていないか確かめようと、お城の方へ向かっていたこと。 だから、私とお父さんが爆発に気付いた時、私の方が少しだけピエール達の近くにいたことを。 月は、もう、隠れていました。 闇の中には紫色の霧が立ち込めていました。 だから。ピエールも、気付かなかった。 光が闇を切り裂いて。 お父さんの姿が、消えて。 嫌な音が、響いて。 「リュカ、様……?」 ピエールの声が、ひどく空しく聞こえて。 気紛れで残酷な月明かりが、木々の切れ間から差し込みました。
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484 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 7/9[sage]:2007/04/01(日) 22:22:15 ID:ZhCRhCHp0 - いつかはこうなると思っていた。
親友の弟と再会した、あの時から。 けれど、どうせこうなるなら、もっと速く訪れてくれれば良かったのだ。 胸を貫いた剣と、ピエールの瞳の奥底で揺れる感情に気付いた今は、ただそう思う。 何が魔物使いだ、エルヘブンの血だ。 僕が一番、ピエールのことをわかっていなかった。 自分の力に自惚れて、わかっているつもりになっていただけなんだ。 タバサが僕の元に駆け寄ってくる。 そして、紫色の霧を超えて、人影が歩み寄ってくる。 忘れるはずもない懐かしい姿に、僕は思わず口を開いた。 「……父さん」 言いたいことは一杯あったのに、たった一言で限界がやってくる。 涙を流して座り込むタバサにも、何一つ言ってやれなかった。 せめてもと、声の代わりに、ジタンが渡してくれた石を握らせる。 本当にタバサを心配している人達と、もう一度出会えるようにと祈って。 「リュカ! しっかりしろ、リュカ!」 父さんが僕を抱きかかえ、僕の名前を呼ぶ。 でも、押し寄せる闇は、止まらない。 もしもあの時、リノアと一緒に死ねていたなら、きっとここまで悔しくはなかっただろう。 ピエール。 僕がいなければ、良かったんだろうか。 それとも、君がいなければ良かったんだろうか。 今更になって、もう少しだけタバサの傍にいたかったと思うのは、傲慢なんだろうか。 父さんとちゃんと話がしたかった、そう思うことは身勝手なのか。 だけど、僕だって……僕だって、父親で、息子なんだ。 ああ。僕と出会わなければ、君も、ここまで道を誤ることはなかったのに。 どうして、僕達は……出会って、しまったんだろう……ね……
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485 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 8/9[sage]:2007/04/01(日) 22:25:04 ID:ZhCRhCHp0 - その時の私は、キャンプで出会った青年と同じ目をしていたのだろう。
気がつけば、私は息子の身体から剣を引き抜き、憎き魔物に切りかかっていた。 術者の集中が解けたのだろう、紫色の霧も我が目を惑わす幻影を映しはしなかった。 スライムナイトの弱点たる足元のスライムを一刀の元に両断する。 幾多の命を奪った魔物は、抵抗一つせず、崩れ落ちた。 私には魔物の言葉はわからない。 だが、緑色の体液を撒き散らすスライムの瞳は、諦めと絶望を湛えていたように思えた。 魔物の死を見届けた後、私はビアンカに良く似た少女に――息子の娘に向き直る。 娘、タバサは、しかし私を怯えた目で見つめた。 「来ないで!」 恐怖に顔を歪ませながら、タバサは森の奥へと駆け出す。 私は、その手を掴んで繋ぎとめようとした。 息子の分まで、彼女の身を守ってやりたかったのだ。 だが、……魔物の、最後の呪いだろうか。 私の足は、鉛の枷を嵌めたかのごとく、遅々として進まず。 幼い後姿は、みるみるうちに遠ざかって消えてゆく。 私は、リュカの荷物と、見覚えのあるリボンを手に取った。 リュカにはとうとう、父親らしいことを何一つしてやれなかった。 本来ならば、せめて私の手で弔ってやるべきなのだろう。 だが、その時間と余裕は、最早無い。 私がすべきこと、そしてリュカが真に願うことは、タバサを守ることであるはずだからだ。 「許せ、リュカ」 私は呟き、歩き出す。 一人残された孫娘を守る事こそ、私の責務であると信じて。
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486 :君に出会ったことが間違いと言うのなら 9/9[sage]:2007/04/01(日) 22:25:57 ID:ZhCRhCHp0 - 【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、 悟りの書、服数着 、魔石ミドガルズオルム(召喚不可) 基本行動方針:???】 【現在位置:サスーン城東の森→移動(行き先は不明)】 【パパス(鈍足状態、軽傷) 所持品:パパスの剣、ルビーの腕輪、ビアンカのリボン リュカのザック(お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)、ブラッドソード、スネークソード) 第一行動方針:タバサを追いかけ、守ってやる 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する 第三行動方針:仲間を探す 最終行動方針:ゲームの破壊】 【現在位置:サスーン城東の森→低速で移動】 *毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート 王者のマント、以上のアイテムはリュカとピエールの遺体の近くにあります。 【リュカ 死亡】 【ピエール 死亡】 【残り 46人】
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