- ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 4
225 :YANA 87-1[sage]:2006/05/17(水) 02:51:21 ID:/X870EJx0 -
―――――――――かつん。 黒一色の暗黒に向かって、階段を踏み抜く。 前人未到。ついぞ誰も到達できなかった大魔王の本陣。そこに今、人の手がかかる。 ―――――――――かつん。 「―――なぁ、アリス」 「…?」 珍しい。階段を降り始めてから無言を徹していた、更にいうならこういった局面で自ら口を開くことのないゴドーが、傍らの少女に呼びかける。 「お前。勇者って、どういうものだと思う?」 かつん。 「え?なによ、いきなり」 かつん。 「いいから。お前の意見を、聞いておきたい」 かつん。 「ん…あたしは勇者じゃないから、いまいちわかんないけど。やっぱり、皆を守るために悪と戦うとか、そういうのじゃない?」 かつん。 「…そうか。まぁ、そうだろうな」 「???」 かつん。 「…俺は、勇者失格なのかも知れん」 「どういうこと?」 かつん。 「目指すものがどうであれ。こんな方法しか思いつかねぇ俺は、勇者とはいえないかも、っていう話だ」 「…ちょっと。わけがわかんないんだけど」 かつん。
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226 :YANA 87-2[sage]:2006/05/17(水) 02:52:02 ID:/X870EJx0 - 「まぁ、なんだ。とりあえず、俺がいいたいのは一つだけ」
かつん。 「俺がこれからするのは、勝算なんてあるかどうかもわからねぇ賭けだ。もしかしたら、もう今の段階で勝ちは有り得ないかもしれない」 「………」 「やる前から敗色濃厚。それでもお前は。―――ついて来て、くれるか?」 かつん。 いつになく、不安げに問い掛ける。おそらくは、まだ後戻りが出来るだろう最後の瞬間の、確認。 …嘆息。呆れてくる。これここに至って、尚そんなことをいうのか、こいつは。 「何度も同じ事いわせないの」 かつ、べちん。足音に混ざって、変な打撃音が響く。 アリスが、ゴドーの脳天に手刀を打ち込んだのだ。 「む…」 「あんたはそれを、正しいと思ってやるんでしょ?だったら、あたしはそれに従う。失敗して、世界中があんたを責めたって… その、あたしも、一緒に責められてあげる。例え―――」 かつんっ。 「これからのあんたが、勇者≠カゃなかったとしても」 ―――階段が、途切れる。ここが、最後の戦場。大魔王の、玉座。 「…ふ」 一瞬の迷いが消える。そうだろう。やめるのなら、もっと早くにやめている。 俺はやる≠ニ決めてしまった。ならば―――ツケも呵責も咎も、全て背負う覚悟で挑むだけ。 …生憎だったな、親父。俺はあんたのようには生きられない。あんたのに比べれば、曲がりに曲がった酷く歪な信念だけど。 それでも俺は。俺の選んだ勇者としての道が、決して間違いなんかじゃないって、信じてる。 ―――道を進む。先にあるのは、一つの祭壇。目的があるわけでもないし、何より敵の供物になりに行くようで気分が悪い。 だが。わかっている。彼らは、そこに行くべきだということを。
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227 :YANA 87-3[sage]:2006/05/17(水) 02:52:36 ID:/X870EJx0 - …それにしても、なんだ。俺も大概、成長してないな。
失敗した時、一緒に叱られてくれる仲間がいるって言うだけで、随分楽になるもんだな。子供じゃあるまいし。 今後の課題にでも―――。 「ようこそ。我が生贄の祭壇に、よくぞ来た」 「っ!!」 「………お前が、ゾーマか」 まぁ、最も。それも、今後の人生があれば、という仮定の上での話なのだが。 …祭壇の中心に歩みを進め、立ち止まる。暗黒に満ちた、巨大な玉座の間に、次々と蜀台の灯がともっていく。 徐々に光に塗りつぶされていく、闇。それに伴い、玉座の間の実像が見えてきた。 部屋の左右には水が満たされ、やや幅の広い一本道が、その間を縦断する。 …そして。その道を通り、闇の中から悠然と、現れた―――――――――成る程。あれが、大魔王。 ズンッ 「…我こそは全てを滅ぼす者。この世界を絶望で覆い尽くす存在。 我が数多の軍勢を退け、よくぞここまで辿り着いた。貴様こそ、真の勇者であろう。…ゴドーよ」 「………は」 不気味に、邪悪な微笑を浮かべるゾーマ。 全ての災厄の根源を前に、アリスは立ち竦み、確信する。間違いない。 ―――アレは、私など眼中にない。始めから、勇者以外に興味などないのだ。 立ち上る凍りつくような邪気。ねめつける、視線だけで人を殺しかねない悪意。 しかし、それらを前に、彼女の相棒は、怯む様子もない。先ほどまでの弱気は、どこかに吹っ飛んでしまったようで―――ああ、そうだった。すっかり忘れていた。 あいつは、今まで。「自分と自分から出でたモノ以外の何かに怯んだ事などなかった」のだった。 「…ふふっ。よいぞ。我を前に、臆さぬか。ますます気に入った」 「そうか。俺のほうは、どうとも」
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228 :YANA 87-4[sage]:2006/05/17(水) 02:53:36 ID:/X870EJx0 - ゴドーの返答は、意に介さない。ゾーマにとっては、勇者でさえも、ただ殺すだけの存在なのか。
やがて一頻りゴドーに視線を這わせた後、ゾーマは顔を曇らせる。 「………ふむ」 「………?」 「―――貴様。未だ、目覚めておらぬな?」 「…めざ…?」 「?」 「興が削がれた」 ズンッ。 振り返り、玉座へと戻っていくゾーマ。 「…何のつもりだ」 「案ずるな。逃げも隠れもせん。ただ、貴様に機会をくれてやるだけの話」 「機会?」 ゾーマはつまらなげに、ゴドーに目線をやる。 「なに。今の貴様では我に勝てぬ故。少しばかり、荒療治で目を覚ましてやろうというのだ」 グオオオオオオォォォォォォッ!!! 「ゴドーっ!あれ!!」 「あいつは…」 忘れるわけがない。五つ首に、紫の鱗。…上の階層で、勇者オルテガを葬り去った竜の怪物。 背を向けて去るゾーマの背後、何もない空間に突如として出現した黒い洞穴から這い出てくる、規格外の魔物。 「余興を設けておいて正解であったな」 「…なんだと?」 「―――話は簡単だ。我が僕どもを殺して来い。奥で待っている、心してかかれ」 「俺たちを消耗させようっていう腹か?」 「自惚れるな、雑種め」 「………」 「………」 睨み合う、善と悪、二つの象徴。そして。
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229 :YANA 87-5[sage]:2006/05/17(水) 02:54:24 ID:/X870EJx0 -
グオオオオオオオォォォッ!! それを引き裂く、怪物―――キングヒドラの咆哮。 ゾーマは、もう振り返らず、奥の玉座に向かう。 「来るぞ、アリスっ」 「ええ、わかってる!」 ゴオオオオオォォォォォッ。 先制の一撃、怪物の口から火炎が迸る。 「!」 高熱に、身構えるゴドー。 ―――やまたのおろち、そしてバラモスとの戦い。過去二つの激戦において、対処することができなかった攻撃。 それが、炎と吹雪。誕生の瞬間から、彼らの体に刻み込まれた、灼熱と極寒を作り出す機能。それらは、呪文や何かで封じることなどできない、生物としてのハンデ。 今までただ耐えるのみだったそれを、『彼女』は――― 「フバーハッ!!」 キュンッ。 「!?」 退けた。完全に、とまでは行かなくとも、そのダメージは確実に半分以下にまで減少されている。 「アリス?」 「こういうのは、あたしの仕事でしょ。…あたしだってね、いつまでもそのまんまじゃいられないんだから」 「………」
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230 :YANA 87-6[sage]:2006/05/17(水) 02:55:01 ID:/X870EJx0 - 「忘れてた?あたしも、賢者の端くれなんだから」
「いや。助かる。じゃあ、攻撃の方も、頼むぞ」 踏み込む。剣を構え、怪物の首を落としに掛かる。 キングヒドラは、全てを焼き尽くす己の炎が弾かれる、という未だかつて体験したことがなかった状況に、狼狽する。 もとより、知能はあまり高い方ではなかったかの魔物は、その一瞬の戸惑いを抱いたまま―――。 「バイキルトっ!!」 ブシャッ。 グオオオオオオオオオオオオッ!!!? 二つの首を切り落とされ、そして。 「―――ギガデインッッッ!!!」 ピシャアアアアアアァァァァァンッッッ。 ―――そのまま、黒い消し炭となって倒れ伏した。 「………生憎だな。俺たちは、二人≠ネんだよ」 「オルテガさんの仇討ち、ってことになるのかな、これ」 居並び、呼吸を整える。 「さあ。俺はそんなこと考えてなかったし。おまえは?」 「ん、なんでかな、あたしも。あんまり、恨みとかは、感じなかった」 一泊置いて、頷く。 原因は恐らく、オルテガと魔物の戦いが、文句のつけようのない一対一の果し合いであったことと、魔物が策を弄するほどの知略を持ち合わせなかったこと。 そして、なにより。二人が、そんな過去の私怨を、未来のための戦いに持ち込むほど後ろ向きでなかったということか。 「次か…来るぞっ!!」 「うんっ!」 一糸乱れぬ呼吸で、彼と彼女は、第二波の魔物を迎え撃つ。
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231 :YANA 87-7[sage]:2006/05/17(水) 02:55:32 ID:/X870EJx0 - ・ ・ ・
我は、我が何処で生まれたのか、知らない。 ただあったのは。発生した瞬間から持った、絶望・嘆き・憎悪、あらゆる負への渇望。 それと、もう一つ。これだけが、記憶と呼べる、たった一つのモノ。 ―――宿敵への、抑えがたい殺意。 それが果たして、我が生まれる前日か、はたまた数万年の時の彼方に起因するものかは、最早分からぬ。 否、そもそも、その「敵」が何者なのかさえわからない。ただ、その「敵」が、憎かった。 我が本能が、我を突き動かすのだ。その敵を討つ方へ、討つ方へと。 我が生まれ、この世界に闇からの亀裂が走った。我はすぐさま、このアレフガルドを手中に収め、闇で覆い尽くした。 だが。「敵」は、我の前に現れぬ。 …すぐに理解した。この世界に、「敵」がいないということに。 だから、繋げた。アレフガルドと地上、二つの世界を。 ―――数百年、待った。それでも「敵」は、現れぬ。 闇に息づく我は、陽光降り注ぎ、魔王の爪痕のような「魔の綻び」もない地上に往くことは出来ん…何より、我は「敵」を知らぬ。 我では、「敵」を探ることが出来ぬのだ。 ならば、話は簡単だ。分からぬのなら、分かる者に探させればよい。 我に敵対する者…恐らくは、光ある者。それは転じて精霊どもに依る者。 適任者は…この世界の創世に携わった者ども―――!
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232 :YANA 87-8[sage]:2006/05/17(水) 02:56:04 ID:/X870EJx0 - それまで、数世紀にわたって我の邪魔立てをしていた、精霊神ルビス。
精霊どもに、地上に助けを求めさせるために、まずは彼奴等の支柱を奪わねば。そのために奴を封じるのには、更に百年を要した。 流石に、仮にも神と謳われた存在。容易くはなかった。 だが、苦ではなかった。我が本能が訴える、この渇きをさえ潤せるのなら、どれだけの時間と労力を賭したとしても。 世界を暗黒で包まれ、ルビスを失い、アレフガルドの人間どもは絶望に平伏した。その様も、実に心地よかった。 ルビスを捕らえ、アレフガルドの基盤は我が手中に落ちた。そうしてからは話が早い。 案の定、妖精どもが、ルビスを助けさせるためにあちら側の勇者から、我の「敵」の選定を開始した。 本能は告げる。「敵」はまだ、目覚めていない。それでは駄目だ。 完全に目覚めた「敵」を、嬲り、蹂躙し、絶望の海に叩き伏せてやらなければならない、と。 我は世界を繋げる際、あちら側にも軍勢を放っておいた。 もしあちらの軍勢の指揮者が倒されるようならば。我の存在をそやつに知らせる。 そうすれば、あとは、必ず「敵」の方から我の方に出向いてくる。 我が軍勢を退けるほどに成長した「敵」ならば、必ずや覚醒を迎えているだろう。 そう。そう、思っていたのだが―――。 ―――ザンッッッ。 地上の指揮官を務めたバラモス。その製造の過程で生まれた失敗作。 バラモスブロス。粗悪な欠陥品とはいえ、とっておけば少しは役に立つかと思っていたが…話にならん、か。 敵の、ゴドーの剣と、連れ合いの呪文の連携で、瞬く間に殺滅される。 「………王者の剣」
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233 :YANA 87-9[sage]:2006/05/17(水) 02:56:36 ID:/X870EJx0 - バラモスを討ち、我が封印した勇者の盾と光の鎧を奪還。ここまではよい。
だが、どう立ち回ったかは知らぬが―――影の話を聞いてまさかとは思っていたが、かつて我自らが砕いた王者の剣を持っているなどとは、流石に予想していなかった。成る程、それほどの番狂わせ、賞賛に値しよう。 …三つの神器全てを携え、更には石化させたルビスをさえ救い出した、「敵」―――勇者、ゴドー。 何故だ。貴様は間違いなく、待ち望んだ最強の怨敵。 だというのに。そこまでの条件を揃えて尚、何故、未だ目覚めておらぬのだ…! ・ ・ ・ 「―――出番だ。バラモス=c」 ドオオオオォォォォォンッッッ 「「!!」」 二体の極大の怪物を屠り、ゾーマへと迫る二人。あと一息、まさにゾーマの玉座に肉薄する直前。脇の壁が轟音を立てて崩れ落ちた。 …否。そうではない。巨大な石の壁を粉砕したのは、バシャバシャとけたたましく水面に落ちる瓦礫をものともせず踊り出る―――竜。 ゴドォォ………ゴドオオオオオオォォォォォッッッ!!! 「………なに、よ…あれ…」 戦慄。聳え立ち、寄る辺なく、だが異質なほど力漲るその魔物は。 それほどの存在規模を誇りながら、その姿は―――ただ、朽ちた竜の屍であった。 ゴドオオォォォッ! 「!ちっ」 ズドンッッッ、ギンッッッ 竜は吼える。その、勇者の名を。 咆哮と共に竜の放った左腕の一撃を、ゴドーは右手の剣で切り払う。が。 「!!」 ズンッッッ。その威力を受けきれず、吹き飛ばされ、転がる。 「ゴドー、大丈夫!?」 「…ああ。それより、アリス。あいつ…」 屍の竜を見つめ、眉を顰めるゴドー。そうだろう。 肉弾戦において、強敵の一撃は百の言葉よりも雄弁に、その相手が本物≠ナあることを語るという。 名を呼ばれ、一撃を受け、その相手≠、ゴドーが思い出さないはずがない。
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234 :YANA 87-10[sage]:2006/05/17(水) 02:57:10 ID:/X870EJx0 - 「―――――――――バラモス」
「え………?」 小さく、呟く。直後。 「―――これが、お前のやり方か。ゾーマ」 見つめる、第三者にまでその音が聞こえそうなほどの歯噛み。ゴドーはありったけの嫌悪と共に、玉座に腰を下ろすゾーマを睨む。 ニタリ、と、口元を吊り上げるゾーマ。 ふん。勘違いをするな。復讐を望んだのは奴自身だ。我はそのきっかけを与えただけだ。 「じゃあ…あれは…バラモス、だっていうの?」 ゴドオオオオオォォォォォッッッ!!! 何度目かの咆哮。 朽ちて、骨だけとなり、尚もその生気のない目に狂気じみた殺意だけを灯し、動き続ける、地上の魔王。 その姿には、以前の数百、数千の魔物を御した王の威厳など、微塵もなく。それはただ、復讐心だけに突き動かされる、哀れな魔物。 「―――――――――」 数瞬、目を閉じ、見開く。それでゴドーの嫌悪は、完全に消えた。 そう。元より、敵の思想や方針に不満はもっても、文句をつけるのは、彼の在り方ではない。 「いくぞ、アリス。強化、ありったけ頼む」 「え………うん!わかったわ!」 彼女もまた、すぐさまに戸惑いを消し去る。 ・ ・ ・ 「………」 正気か。未だ目覚めぬ貴様が、アレとまともに殴りあうつもりか。 こと物理的な破壊力だけであれば、この身をも凌駕しかねない、バラモスゾンビを。人の身のままで退けようというのか? ギンッ、ドンッッッ、バキンッッッ
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235 :YANA 87-11[sage]:2006/05/17(水) 02:58:47 ID:/X870EJx0 - 苛立たしい。目の前で繰り広げられる死闘が、まるで出来の悪い三文喜劇のようだ。
ふざけている。貴様は我と戦う資格を得た。だというのに。何故、そのような女に頼ってまで、目覚めを拒む? 貴様の中に眠るものが何なのか、我には分からぬ。だが、これだけは分かる。 ―――我が永劫の時の彼方に求めた宿命の敵は、こんな矮小な生き物ではない―――! ・ ・ ・ ゴドオオオオオオオオォォォォォァァァァッッッ!!! 「…あああああああっっっ!!」 バギンッッッ。 数十合に及ぶ打ち合いの末、ゴドーの剣がバラモスゾンビの額を割る。 破裂音は、まるで金属が砕けたような、とても生き物から発せられたとは思えない代物だった。 ゴ…!!! 崩れ落ちる、魔王の骸。ガラガラと、自身の攻撃で作ったいくつもの罅割れの走る地面へ、頭部から順に落下していく骨格。 それで、最後。かつて地上の魔を統べった魔物の王は、執念のみで生き長らえ、二度目の戦いを挑み、一度目よりも、無様に、あっけなく、死に絶えた。 「………じゃあな。…ちっ」 ビチャッ。打ち合いでついた口の中の傷からの出血を、吐き捨てる。 無論、ゴドーの負傷はそれだけではない。魔王の骸の攻撃は、今までのどの魔物よりも強かった。 純粋で、原始的で、小細工のない、単純な破壊力。それ以外を持ち合わせなかったかの魔王のナレノハテは、十二分に彼を苦しめた。 裂傷・打撲・骨格損傷。両手両足を以っても、数えるのにはとても足りないだろう。 「ベホマ」 瞬時に、アリスが彼の傷を癒す。外傷だけでも、治癒するとしないでは雲泥の差なのだ。 「…アリス」 「…うん」 やりとりは、それだけ。余計な言葉は要らない。それはもう、先ほどの祭壇においてきた。 向かう先は玉座。見据えるは、大魔王。 最後の戦い。全ては、この時のために。
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236 :YANA 87-12[sage]:2006/05/17(水) 02:59:30 ID:/X870EJx0 - ・ ・ ・
目前で、「敵」が自分を見据えている。人の勇者が、己が名を呼ぶ。 「………ゾーマ」 遂に来た。この時が。幾世紀も待ち望んだ、この瞬間。 用意した幾多の罠を、軍勢を掻い潜り。差し向けた我が僕を薙ぎ払い。 だが、それでも。あのような連中では、こやつを目覚めさせるには役者不足であったか。 「敵」はまだ、人のままだ。…正直、失望だ。どうやらこやつは、本当に今のままで我を倒すつもりでいるらしい。 「―――ゴドーよ。何故もがき、生きるのか」 そのような矮小な人間の器のままで。貴様ならば、更なる高位の存在となりうるだろうに。 「―――俺は、人間だからな。足掻いても、みっともなくても、命ある限り、生きていたい」 淀みない瞳で、答える。 「―――滅びこそ、我が喜び。死に逝く者こそ美しい」 たわ言を。人のような塵に等しき力弱き生き物が、この世界にいたとてどれほどの価値がある。 貴様らのような小さき命は。憎み、嘲り、悔やみ、朽ち、死に絶えるその瞬間こそが、最も華々しい。 「―――冗談。死ぬのが美しいっていうのはな。精一杯、力の限り生きた%zだけが誇れる、最後の勲章だ。 無理矢理与えた死を美しいっていうおまえらには、わからねぇかもしれないけどな」 分からぬよ。弱き者を蹂躙し、憎き者に絶望を与えるこの喜び。それに勝る快楽など、我は知らぬ。 戯れ事は終わりだ。貴様が未だ人のままであるというのなら。どうしても目覚めぬというのなら。 この我が!この手で貴様の内に眠るモノを、引き出してやろう! 開幕だ。永年に渡る本能の訴えに、今こそ終止符を打とうぞ! 「―――さあ、始めよう。ゴドーよ。そして―――」 第四節 「眠れ、我が腕に抱かれて」
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- ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 4
237 :YANA[sage]:2006/05/17(水) 03:21:29 ID:/X870EJx0 - どう見てもスパ○ボ厨です。本当に(ry
難産に継ぐ難産だった第四節。こんにちは、月刊アリスワードの時間です(ぇー 某所の「ロト、ルビスに関する考古学」の影響で、ボス三連戦はゾーマの一人称中心で書きたかった次第です。 ここから先、俺は多くは語りません。本格的に佳境に入る中、俺みたいな五月蝿いのが騒いでたらぶち壊しですし。 んじゃま、運がよければまた一週間以内に。
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