- 不食・ブレサリアンを目指すスレ Part5
361 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2015/08/20(木) 12:25:25.59 ID:MtaHXcsG - 「即神仏へ浄化される修行は大変苦しいものです。もし万が一、私が我を忘れて逃げ出すようなことがあった時は、洞穴に閉じ込めて下さい」
村長はお坊さんの申し出を了解すると、洞穴近くの村人数人に交代で食事を運ぶよう言い付けた。 即神仏の行が始まってかなり経ったある日のこと。 曾祖父は自分の父親から洞穴へ水を届けるよう言い付けられた。父親は仕事の都合で町場まで出かける用事があったので、十才を過ぎた長男の曾祖父に、代わりを頼んだのだ。 曾祖父が水を持って洞穴まで行くと、お坊さんは骨と皮ばかりの姿で洞穴の外に寝そべっていた。水を差し出すと、お坊さんは嬉しそうにそれを飲んだ。まだ子どもだった曾祖父は、あまりに痩せこけたお坊さんが心配になって、 「何か食べるものを持ってきましょうか?」 と声をかけた。 お坊さんは寝そべったまま、少し笑った。 曾祖父は急いで家に帰ると、母親がふかしたばかりのサツマイモを懐に抱えて、お坊さんに届けようとした。 そこで母親に見つかってしまったのだ。 母親はサツマイモを何処へ持って行くのかと訊ねた。曾祖父が正直に答えると、母親は急いで近所の男衆を集めて山の方へ歩いて行った。 曾祖父は、自分がとんでもなく悪い事をしたような気持ちになって、家に残った。 お坊さんは即神仏の修行が辛すぎて、洞穴から這い出していたのだ。村人たちはお坊さんを洞穴に閉じ込めると、出てこられないように石を積んで閉じ込めてしまった。それが、お坊さんとの約束だったから。 数日の間、洞穴からはお経を唱える声が聞こえた。でも、その声もだんだん小さくなり、やがて何も聞こえなくなった。 それから幾年か過ぎ、村人たちが洞穴の石積みを退かすと、立派な即神仏となったお坊さんの姿があった。 狭い洞穴の中に、凛と座禅を組んだ姿で座っているミイラを見て、曾祖父は何故かサツマイモを思い出したのだそうだ。 あの時、お坊さんはきっと、サツマイモを食べたかったろうと。 自分がお坊さんのことを母親に言わなければ、あのままお坊さんは山を降りて、今でも生きていたかもしれないと。 「だから俺は、死ぬまでこうやってサツマイモを届けるんだ」 曾祖父は静かにそう言った。 即神仏となったお坊さんの亡骸は、どこかのお寺に、今でも祀られているそうだ。
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